2025¶
2025-05-23 近藤一夫¶
GW中に近藤一夫という存在を知った。日本ではほとんど知られていないらしい。数理科学の独自の理解を元に大量の研究ノートを同人誌的に数十年書き続けてなくなったらしい。https://arxiv.org/pdf/0712.0641 彼の書いたRAAGノートというのが世界中に散らばってるらしい。
昨年後半に出た甘利俊一氏の自叙伝『めくるめく数理の世界』の冒頭および第一章末コラムに恩師として登場しています。売れてはいて、読まれているのであれば、この半年で国内でもいくばくか知名度は上昇しているはずです。
ありがとうございます。おお、本当ですか。確かに甘利先生との共著があるのを先日検索して知りました。
2025-05-23 Thiago T. Tsutsui, Edilberto O. Silva, Antonio S. M. de Castro, Fabiano M. Andrade, 2025 4, The Dirac equation: historical context, comparisons with the Schrödinger and Klein-Gordon equations, and elementary consequences¶
ディラック方程式に興味を覚える学生さんにお勧め
2025-05-14 倉坪茂彦, 多変数フーリエ級数と格子点問題について---Gibbs–Wilbraham 現象,Pinsky 現象そして第 3 の現象---¶
d次元単位球の定義関数(原点からの距離が1以下の点で1、それより遠い点で0をとる関数)は極めて普通な関数に見える。 ところが、この関数をフーリエ変換してフーリエ逆変換すると、 5次元以上の場合、任意の有理点で元の関数に戻らず、発散するという恐ろしい事態が生じるという https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku/63/1/63_0631103/_pdf/-char/ja
画像はhttps://nippyo.co.jp/blogsusemi/wp-content/uploads/2010/09/nakai-color.pdfより。 なお、3次元以上の場合には原点発散が生じることが知られており、これは「Pinsky現象」と呼ばれているらしい(前tweetのリンク先参照)。 しかし物理学者は、この程度の多変数関数は平気でフーリエ変換して逆変換してるよなぁぁ・・・
物理学者が扱う偏微分方程式の解の多く古典解より緩い枠組み(超関数解)で可解となります. したがって有理数全体のように測度論的に無視できる集合上での値のエラーは超関数のフレームワークで問題にはなりません. ちなみに単位球体の定義関数は緩増加超関数であるためそのフーリエ変換の逆変換は元の関数に超関数の意味では一致します.
2025-05-14 CTとギブス現象¶
CTの画像を説明してくれる医者「CTってのは実際に写真を撮るわけじゃないんで、正確なものじゃないし、時々そこにないものが映ることもあってな……」 僕「フーリエ解析のギプス現象とかですよね」 医者「なんや君、僕より詳しいんか?」 僕「いえ!そんなことないです!すみません!」
CTじゃなくて初期のMRIはマジでギブス現象によるアーティファクト(本当はないのにそこに映ってる像)でやらなくていい手術が発生したりした。 大学レベルの数学的知識の伝達失敗が、人災を発生させた貴重な例の一つ。
単なる「数学的知識の伝達失敗」というよりは、「医者がその影を見て何を思うのか」という現場の知識との組み合わせの失敗だよな。 ソリューションドメインの知識とプロブレムドメインの知識を合わせないと、理論の応用は失敗する。
いまでもMagnetic resonance spectroscopic imaging (MRSI)は画素が荒く、 高速化で信号収集時間が短くなりがちなのでGibbs Ringingやtruncation artifactが生じます
Pixelのcrosstalkは強くなりますがもともと画素が荒いのでそこは目をつぶってfilterしっかりかけてK-spaceの両端を落としています...
2025-05-14 流体力学での点源¶
三次元空間に点電荷を置くことで電場が沸きだすのは物理学的にあり得そうな設定に感じられるけど、三次元空間に流体のsourceを置くのは非現実的に感じてしまって、そんな問題設定でも良いの?と思っちゃう。 無限に流体を出すワープホールみたいなのが急に空間に現れるわけだし。
どっちかというと、非現実的な無限沸きだしsourceの存在を仮定してポテンシャルを求めると、それを使って、剛体の周囲を通る流体のポテンシャルを求めることができて、実用的にはそっちのほうが大事なのだと気付けてからは、そんなに違和感もなくなったけど。
流体で素直な全空間はあまりないと思うので、例えば海底の噴火口を点近似して、噴火口から熱水なり何なりが出てくる条件下で水を含めた流体系の挙動を調べるような状況ならそれなりに意味があるのではないでしょうか。
確かに、三次元空間全体に渡らず何かしら境界のある領域でのみ考えるならば、例えば噴火口のように、境界上に属してるsourceの存在は現実でも考えられそうですね。 そういう境界のない空間にポツンと孤立点のようなsourceが1つ置かれてる状況は想像しにくいですが
現実的にも色々例はあるだろうと思ってChatGPT先生にお伺いを立ててみたら、点源近似が有効になりうる例が出てきました。その中だと一番全空間っぽい(宇宙電磁)流体力学の例は電離プラズマが星表面から連続的に放出される恒星風に対して太陽を点源近似するParker風方程式でした。
あー、なるほどです 天体を点源近似する例は確かに言われてみれば納得感ありますが、思い浮かばなかったです
ちなみに一瞬だけ点源が存在する近似として、馬鹿でかい水槽の真ん中に細い針でインクを入れて静かに引き抜いた状況の模型なども考えられます。流体なのか拡散なのかは微妙と言えば微妙ですが、拡散も流体系の一側面といえなくもないので。
2025-02-23¶
以前の共同研究者の初田さん(と共立出版さん)からご著書をいただきました。https://kyoritsu-pub.co.jp/book/b10107082.html 有限自由度系からはじめて、一次元の一粒子の系も丁寧に扱ってあり、簡潔にまとまっていました。後半に簡単だが色々僕の知らなかった例が扱ってあり面白かったです。二重井戸型ポテンシャルで V(x)=(A cosh(x) + B)^2 で、うまく A, B を選ぶと下からいくつかの固有関数と固有値を明示的に書き下せるとか、びっくりしました。みなさん本屋さんで手に取ってみては、と思います。 一箇所だけコメントを追加するなら、固有関数が解ける例として超対称量子力学を「あまり現実とは関係ないのだが解けるから例としてよい」と前置きして扱ってありましたが、かなり現実と関係ある(?)モデルでも超対称量子力学の構造をもつものもあって、僕好きなので、ここに書いておきます。二次元を 動く磁場中の電子でスピン1/2をちゃんと考慮に入れたものは、偶然(?)超対称量子力学の構造をもち、基底状態のランダウ縮退とかが超対称量子力学のテクニックを使うと素敵に導出できます。これは1979に Aharonov-Casher によって指摘されており https://journals.aps.org/pra/abstract/10.1103/PhysRevA.19.2461 弊学科の院試問題としても取り上げられております(H28年度、第一問): https://phys.s.u-tokyo.ac.jp/wp-content/uploads/2016/04/butsuriH28.pdf まあ、初田さんの教科書では無限次元ヒルベルト空間になるのは空間一次元系に限るとはじめから書いているので、守備範囲外ではありますが、ふと、思い出したので、書きました。
2025-02-16 sun 砂川理論電磁気学の計算の行間を埋めたサポートサイト¶
砂川理論電磁気学の計算の行間埋めて(私なりに)読みやすくなるようにサポートしたページを作っているので皆様ぜひ(宣伝)