ニュートン力学での力の定義とは

はじめに

大学生とハートフルなやりとりをしてきたのでその記録をしておく. この辺からはじまる.

引用

ニュートン力学において, 力の定義とは…? #相対論前日祭

@zomi1202 運動量の時間変化じゃね

@dream_taro やっぱそっちから定義した方が合理的だよなあ.

@zomi1202 そうすると運動方程式はどういう意味になるのでしょうか

@phasetr 系を閉じたときに力の和が 0 になるという要請でしょうか…?

@zomi1202 @phasetr すみません, もうちょっと考えます.

@phasetr ずっと考えてますが, 定義と捉えるのかなと思いました.

@zomi1202 運動方程式は物体の運動の様子をとらえる (運動の軌跡を求める, 積分する) のが本来の役割のはずですが, 力の定義式としてしまった場合, 前者についてどう認識すればいいのかという話です

@zomi1202 すみません. きちんと書かないといけなかった:「運動量の時間変化=力」は運動方程式と式としては同じです. 見かけだけでいうなら運動方程式を力の定義式だとしているわけですが, そうなると運動方程式から「力から軌跡を求める」という意味がなくなりかねません

@phasetr (その"意味"の感覚が僕に無いのかもしれないのですが) 運動の軌跡が先に決まってて力が定義されて, 各要素 (重力だとか電磁力とか) は後付でいいのかなとか思ってたのですが, 山元さんにも指摘されてかなりムリがあるなあと今は思ってます.

@zomi1202 言ってしまったらつまらないのでどうしようかと迷っているのですが, 実際には軌跡を既知としてその軌跡を描くための力が何か, という, まさに「力の定義式」として使われることはあります

@zomi1202 それはニュートンの仕事で, 惑星が楕円軌道を描いて太陽の周りを公転することが実験的に分かっている状況で, この軌道を描くにはどんな力が働いていればいいかというのを求めるのに運動方程式を逆向き (力の定義式) として使っています

@zomi1202 なので, 実際に「運動の時間変化=力」は 2 つの使い方がされているわけですが, 力学を考える上で一番大事な式の位置づけがあいまいで, 同じく大事な概念である力もあいまい (求めるものなのか既知とするのか状況によって変わる) なのが困るわけです

@zomi1202 そこまで認識したうえで「運動量の時間変化=力」を力の定義式とするのが「合理的」といったのか, というような質問です. 応用上はどうでもいいと言ってもいいですが, 力学をやる上で一番の基礎なので, そこが適当だと物理にはなりません

@phasetr いえ, その辺は全く考えずに, 単に数学的なモデルとして簡単に定義しやすいな, という意味で使いました. 位置づけの重要さがよく分かりましたので, もう 1 回考えてみます. 高校時代からぼやっとしてて分からなかったところなので, ありがたいです.

@zomi1202 ここを突っ込んで考える余裕を与えられているのが物理学科の特権です. 実数論やる暇があるのが数学科というのと同じです. それぞれの学科にそれぞれの特権がありますが, これはまさにそういうところなので思う存分考え抜いてください

@phasetr ありがとうございます. 絶賛堪能してます.

他のツイート

y_bonten さんのこのツイートなども参考になる.

「質量×加速度=(その物体にかかる) 力」を力の定義式と見たとき, 正確には「合力」の定義しかなされていない. このことをどう解決するか, とか.

これはとても大事な指摘で, 解析力学の目的の 1 つ にもなっている. 解析力学は, 力学で一番大事であるにも関わらず曖昧な位置付けになっている運動方程式の論理的地位を明確にする試みとも言える. この辺については山本義隆・中村孔一の『解析力学』が詳しくて面白い. ただし, 簡単に読める本ではない.

そういえば, 解析力学のゼミ的なアレ, いつ始まるのだろう. ゆきみさんとの物質の安定性ゼミ的なアレも都合つけないといけないし, つどいの原稿作りもしないといけないし, DVD 制作も積んだままだった.

ラベル

物理, 力学, 解析力学