短いメモ集

2015-01-24 arXivの謎論文紹介: Quantum voting and violation of Arrow's Impossibility Theorem

意味がわからないが読んでみたい. これがquant-phに上がっているというのも魔界っぽくてすごい.

2015-01-30 田崎さんが繰り込みに関して連続ツイートしていたので備忘録としてまとめた

田崎さんが繰り込みに関して連続ツイートしていたので備忘録としてまとめる.

田崎さんのPDF, 学生の頃にダウンロードして一度は読んだが, 内容を全く覚えていなくてつらい.

2015-02-02 今や流体力学を Navier-Stokes まで計算機で速習できるオンラインコースウェアがあるという

流体に限らず目で見えるタイプの現象については, 方程式の妥当性だとかそういうのをある程度数値実験で検証するとか そういうのがあるとすごい楽しそう.

すぐに何かできるわけではないが備忘録として記録しておきたい.

追記

上のリンクが死んでいたので, おそらく本質的に同じであろうGithubのリポジトリのリンクを張っておく.

2015-02-12 真空中の光の群速度は一定ではないという研究が出たらしいので

あとで論文も読んでみたいが無料で読めるようになっているだろうか. こういうとき本当に市井の身がつらい.

追記: プレプリントのリンクを教えてもらった.

2015-02-24 バークレーでの村山斉さんの量子力学の講義録が充実しているそうなので

何かあったら参考にしたい. あと次のツイートもまとめておこう.

取り組みとして参考にしたい.

2015-02-28 Witten京都賞受賞時の座談会の記録が公開されたそうなので

PDFはあとで読もう.

2015-03-29 警察官とのやり取りの記録が面白かったので

何か面白かったので記録. こういうのを見ると普遍市民Im_Weltkriege師はすごいなと改めて思う.

2015-04-21 清水さんが thermal pure quantum formulation での統計力学の本を出すらしいので

thermal pure quantum formulationの統計力学は気になる. 読みたい.

2015-04-29 原-田崎の『相転移と臨界現象の数理』が2015/6にようやく発売になるらしいので

ようやく出るのか, という感じだ. Togetterでも査読の宣伝をしたが, 市民なので, 実際に東大で東大の助教さんやポスドク, 院生の方ともちょっとしたセミナー形式で査読をしたりして, そうした形でも査読に貢献した.

査読に名前(本名)を載せてくれるらしいので, 学術にも貢献するニコマスPとして活動をさらに広げ, 積極的に数学や物理をプロデュースしていきたい.

2015-05-10 記事紹介: 液体・液体相転移

いくつか引用しよう.

単一成分の液体が複数の液体相を有し、その液体相間を一次転移する現象を液体・液体転移と言う。これまで、炭素や水で見られるように単一成分からなる物質であっても、複数の結晶相を持つ結晶多形を示すことはよく知られていたが、無秩序相である気体や液体には1つの相しか存在しないと考えられてきた。

今回の研究では、時分割小角・広角X線散乱法を用いて、転移の過渡的過程における構造変化を一分子スケールからメゾスコピックスケールに渡る範囲で追跡した。その結果、液体・液体転移の進行に伴って、数個程度の分子で構成されるクラスターの数密度が急激に増加し、その変化が理論的に予測された秩序変数の時間発展方程式で記述できることが分かった。

また、このクラスターの協同的形成により駆動される秩序変数の空間揺らぎも観察され、田中肇教授らの研究グループが以前に行った位相差顕微鏡観察の結果とよく一致することが明らかになった。

これらの結果から、このクラスターが液体・液体転移を支配する隠れた構造ユニット(局所安定構造と命名)であり、分子性液体における液体・液体転移の存在が明確な形で示された。

相転移の物理, もっときちんとやらないといけないのだがさぼりまくっている.

コメント

この先生のセミナーは4月か5月ごろに聞きましたが、内容自体はそんなに難しくなかったですよ。今までは、動径分布関数だけを使って解析していたので、液体の構造が十分見えなかったのだけれども、それに、たしかに水素結合の角度分布という情報を加えることで、より細かい区別ができて、上の相の違いがわかるようになって、さらにその相転移に構造変化のステップも見られたということでした。要旨だけをのべればこんな内容でしたね。

相転移の物理はどうしても物理を中心に学ぶと混沌してきて終わりが見えないんですよね。かといって数学的に完備しているかというとそこもいまいちよくわからない。

2015-05-24 Togetter紹介: 変分法でオイラー・ラグランジュ方程式を出すときに端点の条件は必要か?

このTogetterに関連した中村さんのブログポストはこれ. いま時間が取れないが, とりあえず記録だけして後でじっくり読みたい.

2015-05-27 メモ: 名大谷村省吾さんのPDF『ハミルトン力学の幾何学的定式化と幾何学的量子化・変形量子化』

PDFのタイトルは『ハミルトン力学の幾何学的定式化と幾何学的量子化・変形量子化』だった. 正準量子化はともかく, 幾何的量子化・変形量子化は名前しか知らないので適当な時に眺めたい. メモを残しておこう.

2015-06-29 ツイート紹介, メモ: 日本物理学会誌「現代物理のキーワード」が無料で公開されているそうなので

詳しく中身を見ていないがとりあえずメモ.

2015-07-17 ノーベル物理学賞受賞者の南部陽一郎さんが亡くなったそうなので南部さん情報をまとめてみた

【速報 ノーベル物理学賞受賞の南部陽一郎さん死去】 物質を構成する「素粒子」の理論的な研究に取り組み、7年前の平成20年、ノーベル物理学賞を受賞したアメリカ・シカゴ大学名誉教授の南部陽一郎さんが今月5日、急性心筋梗塞のため亡くなりました。94歳でした。

— NHK科学文化部 (@nhk_kabun) 2015, 7月 17

さすがに衝撃を受けた. 自分用の備忘録も込めて南部さんの業績や仕事を簡単にまとめておこう.

世間的にはノーベル賞を取ったことが一躍有名になった人だろう. 私にとっては相転移関係, 自発的対称性の破れがやはり印象深い.

ノーベル賞受賞時, 日本人が 3 人受賞という話になったが, アメリカに帰化しているので厳密には「日本人」ではない. 1960 年代に量子色力学と自発的対称性の破れの分野において先駆的な研究をしていたり, 弦理論 (string theory) の創始者の 1 人でもある. 現在の素粒子物理学の基礎に猛烈に貢献していていろいろな領域に大きく貢献していて凄まじい.

もちろん自発的対称性の破れに関係して小林・益川とともに2008年にノーベル物理学賞を受賞している.

1945年, 終戦後に東京帝大で朝永グループに参加している. 朝永は Klein-Nishina で有名な仁科芳雄の下にいて, 仁科芳雄はボーアを中心とするコペンハーゲン学派にいた.

1950年, 朝永振一郎の推薦で早川幸男, 山口嘉夫, 西島和彦, 中野董夫とともに大阪市立大学理工学部に理論物理学のグループを立ち上げた. 早川幸男というとTwitterにもいる早川尚男さんのお父上だ. 西島和彦というと相対論的量子力学の本が勝手に印象深い: 読んでいないのだが. 大阪市立大ではベーテ=サルピーター(=南部)方程式の導出, K中間子の対発生の研究などの成果を挙げている. ベーテ=サルピーター方程式というと, 雑誌の『数理科学』か何かで英略のBSE(Bethe–Salpeter equation)が牛のBSEのときに「このBSEはもちろんいま話題の牛のBSEではない」という注があったというどうでもいいことを良く覚えている. あまり歴史的経緯などを知らなかったのだが, Wikipediaによると次のような経緯のようだ.

The equation was actually first published in 1950 at the end of a paper by Yoichiro Nambu, but without derivation.

南部さんやばい.

1952年, 再び朝永の推薦を受けて木下東一郎とともにプリンストン高等研究所に赴任する. 木下東一郎というと相対論的量子電気力学の摂動計算というイメージがあるが, 他にどんなことをしているのだろう. 1954年にゴールドバーガーの誘いを受けてシカゴ大学の核物理研究所に着任したそうだが, 同研究所には小柴昌俊らもいたとのこと. 羨ましい.

シカゴ大ではグリーン関数の表示法を研究したそうだが, 表示法の研究というのは何をしたのだろう.

もちろん(当時)どんな意味・意義があったのかも知りたいし, いま全く知らないのだが.

そして1970年にアメリカ合衆国に帰化.

1960年代にはクォークが持つ自由度としてのカラーチャージの導入, 自発的対称性の破れなど素粒子の強い相互作用において先駆的な研究をしている. 自発的対称性の破れに関しては素粒子模型での研究がやはり難しくて, 何か調べやすいモデルを探していたらIsing, Heisenbergなどのスピン系が調べやすく直観も効きやすいため強磁性の研究の隆盛が起きたと聞いている. 私はこの強磁性相転移の流れを組んで数理物理している.

1970年にハドロンの性質を記述する模型として弦理論(ひも理論)を提案. 弦理論はハドロンの理論としては問題点があった. 一方でゲージ理論としての量子色力学が確立していった時期でもあり, 多くの研究者は弦理論から離れていった. 弦理論はジョン・シュワルツ達が重力を含む統一理論として研究が続けられて, 今の超弦理論の流れに繋がっている.

この辺は大栗さんの『大栗先生の超弦理論入門』にも書いてあった気がする. あとで読み直そう.

他にもまた最近話題になったヒッグス機構も南部さんのアイデアが始まりとか, クォークに連なる「西島-ゲルマンの公式」も南部さんが西島さんに与えたヒントが基礎とか何とかいう話だし, もうだいたい意味がわからない. 「素粒子理論の10年後の姿を見たいなら南部の論文を読め」とか言われていたそうだが, 改めて凄まじさを感じる.

いろいろ見ていたら面白そうな話があった. 次のURLから引用する.

そこで、一般の人にも南部さんの「すごさ」がわかるのは、インタビューに答えて、何気なくもらした言葉かも知れません。南部はアメリカ在住五〇年ですか ら、当然英語は完壁なので、「何語で考えるのですか」という質問に対し、「だいたい数式で考えます」と答えています。また、「私は計算は、だいたい頭の申 でやります」とも答えています。計算といっても勘定書の計算ではなく、理論物理の計算です。ギリシャ文字の数式を移項したり微分したりの計算ですが、紙何 枚にわたる数式が、頭の中に完全に正確に見えていなければ出来ない計算です。紙に書いて計算するより、その方がはるかに速いし、先が見えるからでしょう。 将棋の名人も同じでしょうが、常人のとても真似できない精神集中の結果と思います。 精神集中というと、沈思黙考、自己沈潜の人を想像しますが、仕事から見える南部の人柄は違います。大物理学者を、自己の思考にだけ集中して一挙に真理に 達する湯川秀樹タイプと、最高の武器を手に入れ、つねに最先端での計算を絶やさない朝永振一郎タイプに分けると、南部は基本的には朝永タイプです。しか し、自分の思考を確信し、大胆なことを考える点は、湯川さんの影響でしょう。

あと次のページもあった. 全文引用したい勢いで面白かったのでぜひ読んでほしい.

私も研究したいし, こんな研究を見せてくれる友達もたくさんほしい. 数学も物理もただただ楽しい.

追記

大栗さんによる南部さんの記事が出ている. あと特別栄誉教授になっていた阪大からもニュースが出ている.

2015-07-31 記事紹介: 雷雲の中で反物質が見つかったとかいうニュース

何ですと, という感じで 観測から6年後にようやく「反物質(アンチマター)」が雷雲の中で発見 というニュースが.

いくつか引用したい.

そんな反物質が、なんと雷雲の中で検知されたことが明らかになりました。

ニューハンプシャー大学で大気物理学者として働くジョセフ・ドワイヤー博士が、雷雲の中で予期せず反物質を検知していたことを明かしています。

よく知らないのだが大気物理の人がどれだけ反物質関係の物理に強いのか, その辺からまず気になる.

そして懐疑的なコメント.

そして観測から6年後の2015年になってようやく反物質が存在していたかもしれないことが明らかになったわけですが、CERNの粒子物理学者であるジャスパー・カークビー博士は、ドワイヤー博士の検知したデータには「確かに信号がある」としながらも、「ドワイヤー博士の解釈を裏付けるための説得力が足りていない」とコメントしています。より具体的に言うと、ドワイヤー博士の研究チームが推測した陽電子雲のサイズ推測があいまいすぎる、とのことです。

面白いのは面白いのでどんどんやってほしい.

2015-08-07 イベント宣伝協力: 2015-12-06 市民講座「物理と宇宙」12月6日@京大の案内

どうでもいいことだが, 佐々さんはいわゆる「ら抜き」言葉をよく使うなと前から思っている.

東京だったらぜひ行きたかったので無念.

2015-08-10 論文メモ: Hal Tasaki, 2015, Typicality of thermal equilibrium and thermalization in isolated macroscopic quantum systems

読みたい. 読んだらメルマガにアウトプットとして流そう.

2015-09-11 超高温超伝導と1960年代末にアシュクロフトとギンツブルクの議論

高温超伝導の理論, どのくらい確立しているのだろう. それがとても気になる. 低温であっても超伝導の勉強をまともにやっていないのでそれをきちんとやりたい.

やりたいことがたくさんある.

2015-09-12 大栗博司さん筋の情報: 役に立たない研究の効能

大栗博司さんが【役に立たない研究の効能】と題して文章を書いているので. いくつか印象的な部分を引用したい.

これは70年も昔の記事ですから、もっと最近の引用をしましょう。カリフォルニア工科大学の学長であるジャン=ルー・シャモーは、今年春に次のようなスピーチをしています。

「科学の研究が何をもたらすかを予め予測することはできないが、真のイノベーションは人々が自由な心と集中力を持って夢を見ることのできる環境から生まれることは確かである」

「一見役に立たないような知識の追求や好奇心を応援することは、わが国の利益になることであり、守り育てていかなければいけない」

数学や理論物理学などの研究を目的とする高等研究所の初代所長のフレクスナーが役に立たない研究の弁護をするのは当然と言えるかも知れませんが、土木工学を専攻とするシャモー学長がこれを奨励するのには説得力があります。しかも、これが米国の利益になるというのです。役に立たない研究の重要性を理解してもらう素地は十分にあるのだと思います。

いま東大にいる儀我先生の言葉を思い出した. Allen-Cahn方程式だかCahn–Hilliard方程式だか忘れたが, このCahnの方が非常に有名な工学者で,

Cahnが数学的に厳密な偏微分方程式の解析がとても大事だと言っている. 自分達数学者が言っていても説得力はないだろうが, 工学畑の人でもこういう人はいるし, しかも著名な研究者がこう言ってくれている. 私達もその期待に答える義務があるだろう.

みたいなことを言っていた.

私が所属するカリフォルニア工科大学は私立大学なので、財団や篤志家に基礎研究の意義を説明する機会がよくあります。その際に、

「このような研究が精神的な豊かさをもたらすことはわかるが、それが人々の生活をどのように改善することになるのかも知りたい」

ということをよく聞かれます。後者のような理由のほうが、幅広い支援を得やすいという親切なアドバイスなのだと思います。このようなときには、「興味の赴くままに研究しているのだ」と突き放すのではなく、質問の意図を真摯に受け止めて、基礎科学の普遍的価値について丁寧に説明するようにしています。

その辺の愚鈍な凡夫が言っているならともかく, 大栗さんレベルでこう言っている. 私も非常に反省した.

私はプロでもないしやりたいようにやるが, それでもこの辺, 意識はしたい.

2015-09-08 超弦理論が特許に繋がった話: Dブレーンが量子細線のジャンクションを通じて米国での特許へ

さすがにこれは驚く. 量子細線とかもちゃんとやってみたい.

量子細線というとちょっと違うが, 無限に長い 1 次元系の両端に違う温度の熱浴をつけて非平衡定常状態を実現させるとかそういう話を田崎先生がやっていて, 数理科学にそういう記事を書いていらっしゃった気がする.

遠い記憶になりつつあるのが悲しい.

2015-09-17 大栗さんのブログメモ: ストーニーブルック大学, サイモンズ物理学幾何学センターのワークショップでの講演動画

該当記事へのリンクはこれ. 講演の動画は次のリンクから見られる.

講演内容については次の通り.

講演を2つ依頼されたので、ひとつは、「エンタングルメント・エントロピーの不等式」と、「ホログラフィー原理で対応する重力理論のエネルギー条件」の関係について、昨年の12月に書いた論文の話を、もうひとつは、先月中山優さんと書いた重力理論の局所作用素に対応する共形場の理論の作用素を構成するという論文の話をしました。

大栗さん, やっていること手広い感ある.

2015-09-18 田崎さんの『熱力学: 現代的な視点』の本でCarnotの定理の証明の改良がなされたとのことなので

あとでしっかり読み込もう.

2015-10-11 2015年Nobel物理学賞梶田さんに対するNEWS小山さんの質問に対する私の感想と他の人の反応紹介

ニュースの小山さんがNobel物理学賞の梶田さんにした質問というのが話題になっている. 最後に私の感想をまとめるが, まずは他の人の反応をいくつか紹介したい. 例えば次の記事とか.

いろいろな反応があると思う. いくつか引用したい. まずはニュースから.

7日放送の番組「news every.」(日本テレビ系)で、NEWS・小山慶一郎の質問にノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章教授が答えに詰まる場面があった。

この日の番組では、梶田教授が東京大学から中継で生出演し、スタジオからの質問に答えていった。

梶田教授は、子どものころ好きだったという鉄腕アトムの「お茶の水博士」について質問されたが、「申し訳ないんですけど、わたし、覚えてないんですよね」と飄々と答えるなど、リラックスした様子で質問に答えいた。

そんな中、小山が「今後ご自身の研究をどのように活かしていかれたいと思われていますか?」と質問した。

ところがこの質問には梶田教授が、目を大きく開いてきょとんとした表情に変わった。

梶田教授は質問の内容がわからないようで困惑しながら「え? どういう意味ですか?」と聞き返した。小山が再度質問を繰り返しても、教授は「活かしていくというと…ちょっと、申し訳ない。意味がわからないんですけども」と、恐縮した様子で答えていた。

小山は慌て始め、「どのように、こう、役立てていくということになるんでしょうかね?」と質問を言い換え、藤井貴彦アナウンサーが「基礎研究ですと難しいと思うのですが…」とフォローする。すると梶田教授は「役立たない…」と言い始め、スタジオの面々は「いやいやいや」の大合唱となった。

梶田教授はつづけて「…ぐらいに思っていたほうがよろしいんじゃないでしょうか」と和やかな表情で述べ、次の質問を受け付けていた。

小山さんへの否定的な意見として次のような記事がある.

明治大学という立派な大学を“模範卒業生”として修了しているわけですから、いくら物理学とは縁遠い文学部出身とはいえ、基礎物理学の分野での発見が直ちに工学的分野への応用にはつながらないことくらい、理解できると思うんですけど…

もし知らなかったとしても、「こういう質問をしたらどういう答えが返ってくるのか」といった想定問答をきちんと準備しておけば、こんな恥ずかしい事態にならなかったのでは?

梶田教授だってなんだか微妙な気分になったことでしょうし、お茶の間の皆さんから「やっぱジャニーズキャスターは無知だな…」って思われるのが、なんとも悔しいというか…

櫻井くんならこんなアホなことにはならなかったでしょうし、もっとちゃんと真面目に仕事して下さい!

梶田さんというか科学コミュニティへの否定的な意見はこれ.

「研究が何の役に立つのか」ってのは一般大衆からすればFAQなわけで、梶田先生も事前に回答を用意しておくべきだった。てか、事業仕分けで予算削減された教訓は活かされていないのか。 - iGCN のコメント / はてなブックマーク

一部には質問をした小山さんを責めるコメントも見られたけど、ニュースショー番組の司会者として、一般視聴者が知りたがっていることを質問するのは至極当然のことと思う。

先端科学技術の研究はそれ自体が一般大衆には分かりにくい未知の領域であり、さらにそれが基礎科学の研究テーマともなればわれわれ一般大衆は内容について想像のしようもない。

そうなると最もナイーブな質問として「それって何の役に立つの?」というのは、誰しもが訊ねたくなってしまうFAQ(Frequently Asked Question)と言えるのではないか。

NHKではなく民法の、一般視聴者向けのニュースショーに出演するのであれば、それは想定質問の一つとして事前に答えを用意しておくべきだったと思うのだ。

本当にFAQなのか, 何故FAQなのか, FAQになってしまったのかという経緯がまず気になっている. そもそも【役に立つ】の定義からしてかなり曖昧だ.

ちなみにこの記事, 蓮舫さんの「二位じゃダメなんでしょうか」を典型的な悪意ある誤解で解釈している. 全てきちんと見たわけではないが, スパコンの仕分けにはきちんと音声を聞いて経緯を追ったことがある. 少なくともスパコンの仕分けに対しての上の発言は, きちんと文脈を追うと

という救いの手だった.

それはともかく引用を続ける.

一流の科学者は研究だけに専念していればいいと言う意見もあるかもしれない。それはごもっともな意見だけど、ならば周りの広報担当者などが適切なアドバイスをしておくべきだったと思うのだ。

東京大学宇宙線研究所, そもそも広報担当者が存在するのだろうか. そんな人を雇う資金の余裕があるのだろうか. それがない状況ではただの難癖だろう.

科学コミュニケーションについては、日本科学未来館と言う施設がお台場にあり*1、そこには多数の科学コミュニケーターが勤務されている。

彼らの地道な活動が日本国民の科学知識の底上げに繋がっている。ここで科学に興味を持ったこども達の中から、未来のノーベル賞学者が生まれるかもしれない。

いつも思うが他人任せ過ぎるだろう. 別に自然科学に限らず, 各家庭なり何なりで 各人ができる範囲でいろいろやるしかないとずっと思っている. これは学生時代に江沢先生の『理科が危ない』を読んでからずっと思っていることだ.

ここまで長かったが私の感想をまとめておく.

モーズリーの話については改めて後でまとめて調べてメルマガにしよう.

あと上のコメントに対して次のような反応もあった.

やはり最後は人とお金の話になる. マネタイズは真剣に取り組みたい.

2015-10-27 文献紹介: 中西㐮『余次元は物理として意味があるだろうか』

中西㐮さんの余次元は物理として意味があるだろうかというPDFを発見した. 超弦理論に批判的な文章をどこかで見たことがある.

読んで動画にしよう.

2015-11-02 変分と最小作用の原理: いろぶつ先生のページ紹介

変分の勉強きちんとしたい. 新規に立ち上げる(予定)の数学・物理コミュニティの宣伝も兼ねた動画教材でその辺の紹介はしていく予定だ. そういう強制力をつけて勉強していく.

2015-11-12 ツイート・講演紹介: 米倉和也「ラグランジアンの無い(かも知れない)場の理論について」

素頓狂な感想だが, こんなところでWightman公理系という単語を見るとは思わなかった.

Lagrangian, いまだによくわかっていないし, 解析力学もいまだによくわからない.

2015-12-17 イベント紹介: 2016-03-07~03-08 第4回統計物理学懇談会のお知らせ, 学習院

今の時点でわかっている講演者も突っ込んでおこう.

講演者  宇田川 将文(学習院大物理)  江澤 雅彦(東大物理工学)  桑原知剛(東大物理)  沙川 貴大(東大物理工学)  田島裕康(理研)  中村 壮伸(東北大 AIMR)  西田 祐介(東工大物理)  畠山 哲央(東大総合文化)  平野 哲文(上智大理工)  森前 智行(群馬大理工)

平日なので行きたくても行けない. つらい.

沙川さんの研究室のページにリンクがあったので 飛んでみたが, 写真, めっちゃフォトショ入っている印象がある.

あと沙川さん, 総合文化だか何かから物工に移ったのか. 沙川さんというと, 「相転移P」と自己紹介して通じることがわかっている. 以前Twitterにいた頃に少しお話したことがある程度なのだが 覚えられていて割と衝撃を受けた記憶がある.

2015-12-21 記事紹介: 佐藤文隆さんとPenroseの対談『われわれはフィジカルな世界をもっともっと知る必要がある』

せっかくなので読んでみた. ペンローズというと, 鴨浩靖さんがいつも『皇帝の新しい心』で(鴨さんの専門である) 計算論についてめちゃくちゃ言っていて, 読者のそこから来る誤解を何度となくとく羽目になって本当に迷惑しているという話をこれまた何度も目にしていて, 非常に印象が悪い.

いくつか気になるところを引用する.

他の例をあげてみると, 例えば, 鉄道もそうですね. 運行システムも駅の構造も, 日本の場合, じつに整然と作られている. 他の国では, プラットフォームと列車の乗車口の高さが違っていたりします.

どこだったか忘れたが, 東京都内でも激しくプラットフォームと列車の乗車口の高さが違っているところとかあった気がするし, プラットフォームと乗車口の幅が広くて落ちてしまいそうなところも時々ある.

物理学をやる場合, アーティスティックな価値に対するある種の感性が必要だというのは, 絶対的に確かです. 物理学, 数学を含めて, あらゆる科学に当てはまるのですが, それらに取り組む際には, 事物/ 事象のアーティスティックな価値に対して鋭敏な感受性をもっていなければなりません. 特に数学はそうですね. アーティスティックな感性がないと, 自分がやっていることが何かわからないという ことになってしまう. 純粋数学の場合には, これは一種の駆動力でもあります. 純粋数学は, いわば純粋数学がもたらす喜び, 主題の美的な質のために, やっているわけですから. しかし, 物理学の場合は少し違う. 物理学の場合は, 世界がどのように機能しているかを見出そうとしているわけですから, 必ずしもアーティスティックな価値が重要になるとは断言できない. まあ, 数学もその点では同じかもしれませんけれど.

「アーティスティックな価値」とか「ある種の感性」とか, 「未定義語」が多くて割と困る. 私は純粋な数学の人間でもなければ純粋な物理の人間でもないので仲間外れ感あって切ない.

佐藤-- 純粋数学の美というのは, 専門家でない人にとっても感得しうるものでしょうか? それとも,それを感知するには特別の訓練が必要なのでしょうか? ペンローズ-- 私としては, 専門の訓練を受けていないと, 理解するのはなかなか難しいだろうと思いますね. 数学においては特にそうです. 数学は一種の奥義と言っていいものですから, あるアスベクトを十全に理解し味わうには, 絶対にエキスバートである必要があります.

いつもつらいところではある. 何とかしたいとは思っているが.

佐藤 -- 純粋数学というのは極端なまでに専門化されている. しかし, 幾何学的な記号や幾何学的な美, 単純さといったものは, 一般の人々にも感得しうるものだ,と. ぺンローズ -- そうです. その点で, いつも大変皮肉だと思うことがあって, よく, 一般の人たちにこれこれの考えを説明してくれと頼まれるのですが, その際, できるだけ図をたくさん使ってくれ, 幾何学的な形で説明してくれと言われます. ところが, 数学を専攻する学生たちは, 幾何学的な捉え方が非常に苦手だという場合が往々にしてあるんですね. 計算をやっているほうがずっと楽らしい. 数学の専門家ですら, 幾何学を十全に理解し味わうのはたいそう難しいという場合が多いのです.

「幾何学的な単純さ」というのがよくわからないし, わかった気になれるだけの話がどれだけ意味があるのかもよくわかっていないが, 「わかった気になれた」錯覚がモチベーションを上げてくれるというのもわかる.

後半のペンローズの話, そもそもうまく図に描けない話もたくさんあるから自然と図から離れていって, そのうち本当によくわからなくなるのだとは思っている.

幾何, やはりもう少しきちんとやらねば駄目か.

重要なのは観念であって, それを表現する手段, 形ではないということですね. 数学ではもちろんそれは真です. よく, 数学は一つの言語であるというふうに言われますが, 私自身はそうは思わない. 確かにいくつかの記号は使うし, 特定のかたちでの操作も行なう. でも, それは本質的なことではない. 厳密にそれをどう書くかということは, まったく重要なことではない. 重要なのは, 基底にある概念です. 要するにあなたは, あらゆるものの基盤に存在するものを抽出されたわけだ. この中国古典の言葉と数学は近いところがあるように思えます.

中略

「松葉杖」という言葉が適切かもしれません. 松葉杖が必要なあいだは, 杖にすがって歩かなくてはならないが, いったん不要になったら. . . . . . . そういうことですね.

松葉杖という例えは面白い.

私はまた, ディラックから量子力学を学びました.

何て羨ましいんだ.

読んで面白かったのはこの辺り. 人によって面白いところは当然違うから興味がある人はぜひ読んでみてほしい.

やはりもう少し幾何はきちんと勉強しないと駄目かと改めて思っている.

2016-01-06 ツイート・文献紹介: 物理に寄り添って幾何が学べるいい本ないだろうか

hiroki_fさん, 物理と幾何まわりで面白そうなことをよく呟いているので参考にしている. 物理と幾何, もっときちんとやりたいのだが, 何で学ぶといいのかいまだにわかっていない. 物理にフォーカスした形でhirokif さんが言っているようなことを きっちり学べるいい本ないだろうか.

2016-01-11 時空の物理学と無限集合・連続体の数学に関する異常な質問があったようなので

何かご要望を頂いたので.

まず質問を見やすく編集して引用.

時空の物理学なんかで例えば因果集合アプローチでは時空は離散的で時空の事象の集合も有限であり得るような数理モデルさえ提案されていて寧ろ連続体の方が時空の近似になってきてます。こんな状況にあって無限集合や連続体の存在を扱う公理的集合論の妥当性は揺らいできているとは言えないでしょうか?

まず一言. この言説, 根本的に無価値であり, 物理と数学を半端にかじった愚者の妄言だ.

もちろん質問者は質問者で真摯に学んだ上でこう言っていて, 周囲に聞いたり議論できる人もおらず, 藁にもすがる思いの質問かもしれない. 私自身直接観測したことはない(そもそも物理学会行ったことない)が, 物理学会で有名なトンデモ講演奢をちょっと見に行こうと思ってひやかしで参加したら, 実はとても真摯な人で「私の言っていることは正しいでしょうか. 何かぜひコメントをお願いします」といういわば「素人」で, ひやかしで行った自分がいたたまれなくなった, という話を見かけたことがある.

そういうこともあるので一概にその行動や心意気を否定していいわけでもないが, それでも無価値は無価値と断じる.

その上でコメント.

寧ろ連続体の方が時空の近似になってきてます

とりあえずそれ, 素粒子レベル, 量子重力レベルの時空物理の話であって, 物理全体どころか時空物理の枠内で見てもそんな話ないのでは. 一分野の中でもローカルな話だけ捉えてこいつ何言ってんの, という感じしかしない. 物理全体の潮流というならむしろそういうの教えてほしい.

時空物理の中でもローカルな話題を牽強付会に持ってくる, 極めて視野の狭い無価値な言説だろう. 時空物理, 一般相対性理論を基礎にした古典論レベルの話もあるはずで, その中では当然連続時空が前提のはずだ. 量子重力レベルで時空の離散化, 有限化が確立したとしても, 物理の階層性, 普遍性の問題もあり, そんな綺麗に話が切れるわけがない.

あと, 時空物理の主流になっていたとしても, 杓子定規に言うなら有限な時空上では相転移が存在しないので, その辺どうけりをつけるつもりなのか問い詰めたい. Ising, Heisenberg, Hubbardなど離散化したモデルは物性でも使うし, Hubbardでは有限格子上での相転移を扱いすらするが, Ising, Heisenbergでの強磁性とHubbardでの強磁性の定義が違うし, その定義問題からして物理としては深刻な検討が必要だ.

全く関係ないが, 離散可積分系の話が 最近盛り上がっているとか何とかPaulが言っていた記憶がある.

あとkururu_goedelさんのコメントも.

言えないでしょ。そもそも物理学にそんな動きがなかったとしても、物理学から正当化されてしまうような、そんな生易しいことはやってませんよ集合論は。

数学で物理から正当化できることなどあったらそれこそ一大事だ. 物理から正当化できる数学の存在の証明とかスーパー難しいだろう. Banach-Tarski のような物理的に実現不可能という意味で異常な数学的手段を使って 直観からは全く理解できない結果を出すとかいう例もある. よく選択公理のせいにされるが, (現在の技術水準からして) 物理的に不可能ということと 数学の定理としての正しさとか全くの無関係だし.

まあ私はそうは思わないのだけれども。時空(?)が有限だとしても、無限で近似できるなら十分に利用価値があると思うので。

質問者の言う「連続体」と, 「連続体の物理」とかいう意味での連続体が微妙に混同されているような感じがする. 集合論詳しくないのでそれらを適当な意味で一致させていいのかが本当にわからない. あと有限と無限と離散と連続 (体) がぐちゃぐちゃに混じりあっている感じもする. どこにどうフォーカスあてていけばいいか全くわからないが, とりあえず有限と無限にフォーカスあてておく.

物理だと時間・空間ともに有限なところを無限で近似することは定石だ. 一般相対性理論で宇宙には大きさがある, みたいな話があるが, そんなことを取り出すまでもない.

学部の電磁気で「無限に長い棒」とか無茶なの平気で出てくる. 他にも量子力学や素粒子の散乱をやるとき, 粒子の衝突時刻を 0 として, 衝突させる粒子が無限遠から発射された時刻を時刻 $- \infty$, 無限遠に飛んでいく時刻を時刻 $\infty$ として近似した理論を作っている. またこの時点で空間の無限遠も導入している. 当然だが, 有限の距離と有限の時間で実験した結果と この無限の過去・未来と無限の距離を導入した理論を比較して研究している.

元の質問が意味不明すぎてどう答えればいいのかもわからず, 回答らしきものも内容と流れがめちゃくちゃだが, 面倒になってきたしとりあえずよしとする.

追記

やはりやたべさんからツッコミを頂いた.

「そうにゃんか〜」という感じでさっぱりわからないが, とりあえずメモだ.

追記 その 2

哲学方面から怒られているようだが, 確かにその方面の思慮が欠けているというか, そもそも何も知らない. お叱りはお叱りとして, もとのくるるさんの発言も引用していったん終わりにしよう.

集合論自体はひどく離散的な理論だと思っているからです。

これが何か面白かった. 意味はよくわからないが.

それはそれとして, 知らないところにまで踏み込んで適当なこと書くの, 本当によくないなと超反省している.

2016-01-13 幾何と物理に関するhiroki_fさんとの問答記録

幾何と幾何の物理への応用というあたり, 挫折しっぱなしなのでどこかの時点できちんと時間取りたい.

2016-01-15 重力波が検出されたとの噂? 2016-01-12での阪大教授橋本幸士さんのツイート紹介

真偽のほどは定かではないが, さすがにちょっとびっくりしたので. とりあえずメモだけしておこう.

2016-01-19 Togetter紹介:「垂直抗力は重力の反作用ではない」話

「垂直抗力は重力の反作用ではない」話 というtogetterがあったのでとりあえずメモ. その他上記ページであげられているページ.

あとでもっとしっかり読もう.

大事なのはこれ.

あとで動画作りたい.** 2016-01-29 イベント企画: 「中二病で学ぶ量子力学」

時間が取れるかはともかく, こういう無茶をぶっ込んでいけるのが専門家の長所だ. こういうのができない自分が情けない.

2016-02-03 相対論が絡んだときにいきなり虚数が出てきて気持ち悪い件をもっときちんと消化したい

相対論と電磁気がわからなすぎて適当につぶやいたらコメントもらえたので.

その1. ピカチュウさんから.

その2. hiroki_fさんからのコメント.

頼んだわけでもないのにその筋の人がいろいろコメントくれるとか凄過ぎる. 何ていい時代なんだ.

2016--02-5 記事紹介: 『ケルビンの「19世紀物理学の二つの暗雲」に関する誤解』

とても気になる.

またあとできちんと読み込もう. メルマガにも書くのだ.

2016-02-21 東大理学系研究科 佐野雅己教授, 玉井敬一さんによる「乱流発生の法則を発見:130年以上の未解決問題にブレークスルー」という話に関する記事とか批判とか私の感想とか

全くわからないがとりあえず気になったので眺める. まずは理学系研究科のサイトから引用しつつ.

『乱流発生の法則を発見:130年以上の未解決問題にブレークスルー — 東京大学 大学院理学系研究科・理学部』への感想

発表概要でまず「ちょっと待て」感のある記述を見つける.

流体の方程式が非線形性(注2)のため数学的に解けないこと

理学系研究科の広報でこれはどういうことだ, と「数学警察」的に気になって仕方ない. めっちゃ ill-defined 感溢れる「数学的に解けない」というこの文言, 工学系研究科とかならまだしも, よりによって東大の理学系研究科から出るのかと眩暈がした. 実際, これどういう意味で使ったのかを本当に教えてほしい.

出鼻を挫かれまくったが先に進もう.

実験ではそれよりもはるかに小さな速度(レイノルズ数で1000以下)で乱流になることが以前から知られていました。

流体力学に対する感覚が全くないので, レイノルズ数が 1000 以下というのがどんな感じなのかが全く掴めていない.

このことは他の形状の流れでも同様で、層流が乱流になるためには、一定以上の大きな振幅の外乱を加える必要があります。

振幅というのが何なのか, そこからしてわかっていないので, これ以上読んでも概要全くわからないな? 感に満ち満ちてきた.

でもとりあえず全部読もう.

現代のスーパーコンピューターをもってしても、乱流への遷移を調べるためには、大規模な計算を長時間行う必要があり、乱流遷移はシミュレーションが実験を凌駕できない現象の一つとなっています。

シミュレーションが実験を凌駕できる現象, どんなのがあるのだろう. 宇宙関係とか割と綺麗そう (「ノイズ」が少なそう) なので, うまくはまりそうな感じはある. むしろ実験が本当につらい分野だ.

これまでで最大級のチャネル実験装置を製作し

最大というのの比較対象がよくわからない. もう原論文読んだ方が早いのではないか感も出てきた.

上流で外乱を一様に与えて観測を行うとともに、統計的な法則を明らかにするための新たな解析方法を考案しました。

統計的な法則というのが何なのかよくわからない. 何か確率的な話なのこれ.

図1は、チャネル流の一部を可視化した図を示しており、一様な層流中に乱流スポットが見えます。

図をどう見ればいいのか全くわからない.

乱流スポットが空間を占める割合(乱流割合)を測定し、その空間依存性を調べること、さらには、測定場所を固定して乱流スポットが通過する時間間隔などを測定することで、相転移と類似した複数の現象を見いだしました。

これがさっきの統計的な法則というやつか?

注も読む.

注1 中略 しかし、その後、流体の運動を正しく記述しているはずの流体方程式(ナビエストークス方程式)は、外部から微小な摂動を加えても層流は層流のままで乱流にならず、乱流を発生させるためには、一定以上の大きさの外乱が必要なことが明らかとなりました。

この「しかし」が何にどうかかっているのかがわからない. 注入したインクのレイノルズ数が大きくても Navier-Stokes では「外部からの微小な摂動」という扱いにしかならなくて, Navier-Stokes がおかしいという話?

この辺の基本的っぽいところからして 流体を全く理解していないことがわかってしまいつらい.

任意の場合について解を得ることができ、一般的な解法が存在するが、方程式が非線形の場合には一般的な解法は存在しない。

これ, 最初の「数学的に解けない」というやつへの回答っぽい. 解法の定義自体がよくわからないが, 厳密解が出るか出ないかという話なのだろう. 厳密解の有無を「数学的に解ける」というのどうなのだろう. 「解析的に解く」という物理ジャーゴンがあるのは知っているし, そちらの方がいいのでは感もある.

注3 チャネル流 2枚の平行な平板の間の流体の流れのこと。本実験では、長さ6メートル、幅90センチメートル、ギャップ幅5ミリメートルというこれまでで最大級のチャネル流装置を作成した。

これもさっきの疑問に対する回答だった. でかいのどこなのだろう. 長さ 6 メートル, 幅 90 センチメートルというのが大きいのだろうか.

今までこの大きさでの研究がなかった理由とかも気になって仕方ない.

20世紀の後半から、非平衡状態の間の相転移が興味を持たれてきた。

非平衡相転移, 数学的にどういう定義なのだろう.

注6 レイノルズ数 流れを特徴付ける速度をU、長さをL,動粘性率をνとすると、レイノルズ数は、Re=UL/νで与えられる。流体の慣性力と粘性力の比を表す無次元のパラメーターである。

何というかこう, レイノルズ数に関する感覚が全くない.

注9 有向浸透現象(Directed Percolation) 有向浸透現象(Directed Percolation)とは、疫病の伝播や森林火災、砂山のなだれ、細胞内でのカルシウムの伝播など一見確率的な伝播現象を表す数理モデルが示す振る舞いを指します。

いきなり敬体に戻った.

岡山理科大学教授, あらきけいすけさんによる批判記事『130年の放置プレイ?タイトル盛り過ぎでしょう、佐野先生』への感想

Perfect_Insiderさん紹介の記事, 130年の放置プレイ?タイトル盛り過ぎでしょう、佐野先生について.

プレスリリースがかなりミスリーディングで「はでに盛った」解説の書き方になっているのだが*1、立場上センセーションを追いかけざるを得ない大学広報の意向を汲んでいるのではないかと邪推している。

タイトルだけ見るなら「130年以上の未解決問題」であり, 130 年放置プレイとか言っていないので, この批判記事の記事タイトル自体に悪意を感じる.

ただこのプレスリリースの中身を理解するには流体の研究を始めた大学院生程度の知識は必要だし

これはそうだろう.

そうであればこそ大学院に入りそうなくらいの学生向けのカウンター情報は必要だろう。

というわけで読み進める.

流体の運動の研究をややこしくしているのは何も「非線形性」だけではなくて、流体の流れる場所の境界の形状や温度などの「境界条件」によってもコロコロ変わるからだ。流体の絡んでくる自然現象は多様であり、それだけに「境界条件」も「方程式の解」も多様である。

ふだん $\mathbb{R^n}$ でしか考えないので, 境界条件に関する感覚が著しく乏しいのがつらい.

今回の研究で「法則規則性」は見つかって理論物理学者は喜びそうだが、工学的には「予測」「制御」への応用は難しいと思う。

一足飛びの工学的応用, 誰も期待していないのでは感があって, これはさすがにただの難癖では.

乱流の発生は130年間未解決だったか?というと、そうではない。例えば気象現象の基礎となる熱対流による乱流を例に取ると、線形安定性の解析は1960年代の Chandrasekhar の教科書3や、カオス研究の紹介ではおやくそくの題材の Lorenz アトラクタを出す Lorenz モデル4、倍周期分岐 (period-doubling bifurcation) による乱流への遷移5など、1980年代くらいのカオス研究や数値シミュレーション研究の勃興期くらいから、かなりの基礎的なことが実験的にもシミュレーション的にも分かっている(佐野先生も液晶を使って対流のパターンとかの実験をやってらしたはず)6。

「かなり基礎的なことが実験的にもシミュレーション的にもわかっている」というの, 少なくとも理論的にはわかっていないのだろうし, とうぜん根本解決はできていないのだろうから, 未解決というのに間違いはないのでは.

その一方で、壁に挟まれた領域の流れやパイプの中の流れの不安定化の問題は亜臨界分岐 (subcritical bifurcation) であり、理論的にかなりハードであることが知られていた。

今は実験 (とシミュレーション) の話をしているのではなかったか. 話がごちゃごちゃ飛び過ぎていて何が言いたいのかわからない.

まずはじめに「揺さぶり」を記述する方程式が線形だけれども非エルミートになるし(量子力学の固有値問題がなんとうらやましいことか)、さらには分岐の後の解は(乱流まで含めて)数値計算で求めるしかない。

エルミートにするなら 複素数値関数で考えないといけないはずだが, 「壁に挟まれた領域の流れやパイプの中の流れの不安定化」は 2 次元の系というか, 複素数の世界で記述できると思っていいのだろうか.

この辺は大学院レベルの流体力学の基本的なことだから 説明ないのだろうと思っているが, 何にせよ私はよくわからない.

あと量子力学の固有値問題を引き合いに出している理由は全くわからなかった. ちょっとずれるが, 量子力学というか量子統計というか場の理論といえばいいか微妙だが, 学部 3 年でもやる共鳴の話をやるとき, 「準安定状態」の議論をするために非自己共役作用素のスペクトル解析に叩き落としたりする.

相互作用を入れたあとに入れる前の固有値が実数から虚数になるので, その動きを追いかけるために解析接続的なことをするのだが, そこでスペクトルを回転させる処理を入れて調べる. そこで自己共役作用素が非自己共役作用素に変換される.

今回の研究の「研究者向けの目玉」は流れが速くなるにつれて乱流の振るまいがどのように変化するかを丁寧に整理していることなのだ。「乱流の変化」を整理したら「乱流の発生」の振る舞いに臨界現象との類似が見つかったということ。

いままではある意味で「何が問題なのかわからない」という出来の悪い学生のような状態であったところに、「directed percolation で記述できるダイナミクスは何か」という研究目標ができたのだ。もちろんこれが理解のすべてではないと思う。

ポイントポイントではまあそれなりに感じはわかるが, 全体的に何を言いたいのかいまひとつ判然としない批判記事だったという感じがある.

2016-02-24 書籍紹介: 大井 喜久夫, 大井 みさほ, 鈴木 康平, いたや さとし『自転車のなぜ 物理のキホン!』

めちゃくちゃ難しそうだがどう扱っているのかはとても気になる.

とりあえずはメモ. それにしても高い. 値段, もう少し何とかならないか. この価格では子供に買い与えるの大変だろう.

2016-03-13 早川尚男「流れる砂と流れない砂」 : 京大基礎物理研究所の早川尚男さんの品川セミナー動画

面白い. 勉強してKindleとかに出してみたい小ネタもできた. 頑張ってコンテンツ作るのだ.

2016-03-16 ワニの胆汁が毒?

裏を取れるのは取った方がもちろんいいし, 気にした方がいいのはいいが, それ以上に鰐とか日本で普段見かける対象ではないので, ちょっと面白かったということでメモ.

2016-03-17 SimonsとYangのゲージ場・ファイバー束を見出したときの回想動画

見たい. とりあえずメモ.

2016-03-24 ツイート紹介・記事紹介: 冨田博之, 『ケルビンの「19世紀物理学の二つの暗雲」に関する誤解』, 京都大学

「お寺で宇宙学」というのがまず謎だが面白そうだから何はともあれメモ.

2016-04-04 谷本溶さんによる理論物理学者の衝撃発言と理論物理の本の衝撃的な記述

先輩でもある谷本溶さんの悲しみに満ちたツイート.

前も書いたし物理ではないが, 学部二年の実験のとき, 工学系の教官にレポートの常微分方程式の解き方を見られて 「(はじめに解を$x = A \sin \ometa t$とするなどと書かずにやるのは)数学的にいい加減な書き方だね」とか言われて衝撃を受けたことはいまでも覚えている.

その程度でいい加減という扱いになることが衝撃的だし, そして工学の人間にその程度で数学的にいい加減とか言われるの, 心外以上の何者でもない.

その当時, 私も物理学科だったのでそんなに強く言えたものでもないが, 学部一年のときに必修で実数論, 集合・位相やったし, 二年の常微分方程式の講義も (応用物理学科にいる) 本当に数学として偏微分方程式を研究している教官による厳密な常微分方程式の講義を受けていたし, それで工学の人間にそんなこと言われないといけないの, やるなら解の存在とか一意性からだろう, とかいろいろなことを思った記憶がある.

ふだん「物理で数学的に厳密じゃないのがいやだ」とか言っている学生に 「数学やりたければ数学科に行け」と言っているような性質だが, あれは受け入れられなかった.

そんなことを思い出すツイートだった.

2016-04-06 朝永振一郎教授の「思い出ばなし」

このページだ. あとできちんと全部読みたいが, 割とつらい話ばかりっぽい. 冒頭からしてすごい.

学長をやめて、このごろはいくらかひまである。しかし、どうせまたいろいろ用事を持ち込まれるにちがいないから、そうなる前に昔の思い出などを綴っておこう。 古めかしい煉瓦建築の入口を入ると、灰色に汚れたしっくい壁の暗い廊下に、ほこりくさい空気がよどんでいる。この陰気で沈滞したようなふんいきが京都大学の物理科に入ったときの第一印象であった。 今から思い出してみても、学生時代に楽しかったこと、生きがいを感じたことなど、一つもなかった。一つには健康がすぐれなかったせいもあって、何かわけのわからぬ微熱が続いたり、不眠になやまされたり、冬は必らず二度も三度も風邪をひき、胃弱、ノイローゼ、神経痛、そんなぱっとしない状態がいつまでもつづいた。一方講義はちんぷ平凡に思われ、物理学というものに何となくあこがれのようなものを感じていただけに、それは大変な幻滅であった。

とりあえずあとこれ.

数学演習というのは、毎週十題ぐらいの宿題が出て、次の週に黒板の所で解いてみせるものだが、大いそぎで黒板に出て、やさしい問題に手をつけてしまわないと、乗物にのってまごまごしている間に席をとられてしまうように、あとは手ごわい問題ばかりが残ってしまうものである。しかしすばやく席をとろうなどとすると、胸はどきどきするし、それは何とも浅ましいことのように思われた。そこでいっそのこと、一番むつかしい問題を一つか二つだけやっておくという手を使うことにした。そうしておけば、そんな問題にあまり手をつける者はないので、そうあわてないですむことになる。やってみると、いくらむつかしくても、一題か二題だけに集中して一週間の時間をかければ、何とか解けることがわかった。何日も何日も考えつづけて、むつかしい問題が解けたときのよろこびは、たとい答のすでに出ている練習問題であっても、それは純粋に学問的な創造のよろこびに近い。 岡先生にしても秋月先生にしても、今ではレッキとした大数学者だが、当時はまだ大学を出たての若僧で、われわれにとっては、兄貴のように親しみやすかった。それに、すでに智的好奇心も探究意慾もかれてしまったような老先生の中で、この二人はいかにも若々しく、情熱を研究にささげているらしい空気が学生に伝わってくるように思われた。若い先生というものは、学生にわからせるというよりも、自身の興味に溺れて、話が脱線することもよくあるものだが、そういうとき、わからぬままにかえって好奇心をそそられ数学の新しい動向の片鱗がみえたような気がして、今まで習った古くさいものとくらべて、それは何とも魅力あるもののように感じられるのであった。

京大の数学演習, 修羅の道と聞いている. いま東大工学部にいる, 統計力学の若きスーパースター沙川さんですら, 問題演習の解答を黒板に書いたときに担当の人に散々言われただか何かで, 「自分には数学絶対無理だ」とか思わせたと聞いている. 京大やばい.

あと気になるのはやはりここ.

若い先生というものは、学生にわからせるというよりも、自身の興味に溺れて、話が脱線することもよくあるものだが、そういうとき、わからぬままにかえって好奇心をそそられ数学の新しい動向の片鱗がみえたような気がして、今まで習った古くさいものとくらべて、それは何とも魅力あるもののように感じられるのであった。

これをやりたい. 頑張ろう.

2016-05-16 Maxwellの悪魔に関する学習院の田崎晴明さんの解説

よくわからないがとりあえずメモしておく. 全然わからないのだがこの(実験)結果, 平衡系と解釈できるのだろうか. 沙川さんすごいな, と陳腐な感想だけ残しておく.

2016-06-02 動画紹介: The Magnus effect. No Spin v Spin

よくわからないが動画の威力を強く感じる. 動画とかマンガ, もっとたくさん使いたい.

2016-06-11 アマチュア向け場の量子論の本にはじまる「本書は読者の予備知識は仮定しない云々」という話

元のツイート(の1つ?)が非公開になっていて読めなかったがとりあえず.

発端っぽいツイートの一つ.

才能のない還暦過ぎの感想です。 RyderのQuantum Field Theoryを読み進めたのですが、だんだん式を追うのが難しくなり、p224の散乱振幅の計算でダウンしてしまいました。 そこで試しに購入したのがこの本です。わかりやすくしようと工夫があります。手続きをダイアグラム風に示したり、手書きの図を添えたり、言葉と式を交えて基礎的なレベルから場の量子論の基本概念を説明しようとしています。専門的な本はそれこそ数多く存在するので、こういった非専門家のための本の存在意義はあると思います。しかし、Landauの「場の古典論」のような読みながら興奮することがありません。(才能のない者のぼやきですが) 式のジャングルで遭難し、木々の観察も森の構造も理解できない足腰の弱い者には、「場の量子論」のための数学といった入門書が望まれます。そのうえで式の意味、概念の必然性、歴史的な理論の発展史などが初心者向けに書かれるとうれしいのですが。

「興奮」と非専門家向けの記述がどれほど両立するのかよくわからないが, 恐ろしく挑戦的な要求だ. とりあえず要望はあるらしいし, 自分も地道に世に問うていこう.

2016-06-20 記事紹介: 京大, 重力物理学の国際拠点 米欧大学と相互交流

新聞はすぐリンクが死ぬので, あとでも読めるよう読めるところは(全文)引用しておく.

京大、重力物理学の国際拠点 米欧大学と相互交流

京都大学基礎物理学研究所は、重力に関連する理論物理を幅広く研究する「重力物理学研究センター」を4月に発足する。宇宙の誕生直後に発生した重力波や、重力を含めた様々な力を統合する超弦理論(超ひも理論)などを研究する。海外の研究機関と連携し、国際的な研究拠点とする。

新センターは、同所の「重力波物理学研究センター」を改組して立ち上げる。専任教員2人を含む7~8人で発足。米…

2016-06-27 メモ: 田崎さんの『「ゆらぐ界面」をめぐる実験と理論』: 竹内さんの結果と笹本さん・Spohn が出てくる

竹内さんはもちろんのこと, 文中で出てくるSpohn, 笹本さん, 田崎さんという面子がすごい.

Spohn というと修士のとき, たまたま修論が終わったタイミングで舟木先生のゲストで東大に来ていて, 岡山大の廣川先生から「せっかく日本に来ているから議論しに行ってきた. あなたもせっかくなのだから Spohn に修論を聞いてもらうといい. 来るかもしれないと紹介しておいたから.」という話になったので, Spohnに修論を聞いてもらうという凄まじい機会を得た.

Hubbardとフォノンの相互作用系で引力の発言について話をしたとき, ``Nice observation!''と言ってもらえたのを覚えている.

研究したい.

2016-07-13 記事紹介: 【誰でも分かる】「量子力学」ってなんなの?詳しい人に聞いてきた【入門編】

まだ読めていないが話題だったのでとりあえずメモ.

2016-09-08 日本生物物理学会の学会誌「生物物理」のバックナンバーページがあったので

よくわからないがとりあえずメモしておく.

2016-09-09 郷信弘『過去半世紀から未来を見る』生物物理 52(2), 066-067(2012)

何かつらい.

桂法称『量子多体系入門 --格子模型を中心に--』平成28年度 (2016, A) 京都大学 集中講義 サポートページ

『パズドラとHubbard模型 [教室談話会]』が前からずっと気になっている. あとHubbardというかフェルミオン系での相関不等式は議論ないのだろうか. 連続系でのFrohlichおじさんの論文はあるが, 学生のときに読んで全然読めなかった記憶しかない.

宣伝協力も兼ねてとりあえずはメモ.

空気抵抗の考察と物理での理想化問題: 久徳先生のask.fmから

URLは次の通り.

面白かったので記録として引用. 全部引用とかいいのかな? と思わないでもないが, ask.fm消失時に悲しみに耐えるための処置とする.

もとの質問はこれ.

高校物理では、空気抵抗を無視する、など理想化して問題を解かされますが、現実に沿った設定の問題を考えるのは誰がどういうときしてるのでしょうか?

久徳先生による回答は以下の通り.

空気抵抗くらいであれば高校物理でも気の利いたカリキュラムならやるし、また大学の力学では割と扱われることの多い題材に思えます。 それはそれとして、ちょっと文量を使ってもいいかなあと思ったので徒然に。 (他の学問でもそうなんでしょうが)少なくとも現状の物理で問題を扱うときに、恐らく全ての場合で何らかの理想化は入っているはずです。 あるいは、どこでどういう理想化をするかの選択こそが物理のセンスなのだと思っています。 空気抵抗を入れるならどうやって入れるかというところも、どういう理想化をするか(モデルを入れるか)が問われる場面です。 例として出ていたのでそのまま使うと、身の回りで空気抵抗を無視できるかどうかというのは結構シビアに問題依存ですが、なぜ空気抵抗を考えたいのか/考えたくないのかというのはその話とは別の問題という場面が特に勉強の段階では起こります。 真空中での物質の運動を知ることを通して力学現象の基本的な性質を理解したいから抵抗はいらないのか、それとも抵抗や散逸という現象自体を理解したいから抵抗を入れるのか、など考えている段階によって当然考えるべきことは変わってきます。 その意味で、空気抵抗を無視するという理想化は、それ自体が物理を理解するために本質的に重要なステップでありえると思っています。 そういう勉強の話でなく、応用のために我々の身の回りでの物質の運動を知りたい場合なら、抵抗を入れること自体という前に抵抗が効くのか効かないのかの定量的な判断をすることが重要になるので、まず抵抗の大きさを見積もるなどしてみて、その上で空気抵抗を入れる必要があれば入れることになるでしょう。 具体的な実験の際や(大雑把だけど)工学など何かを設計する際には、空気抵抗の影響は当然考える必要がある場面も多々あるでしょうが、その場合はもっと色々な効果についてこれは入れる、これは入れないなどの判断をしているのだと思います。 もっとも理論計算でも入れる物理の選択という意味では概ね同じですが。

研究という意味でふだんこういう定量的な検討をまずやらないので反省した.

沙川貴大, 上田正仁『Maxwellのデーモンと情報熱力学』

もうツイートした人がアカウントを消してしまい, いわゆる正規の形でのTwitter引用はできないのでふつうの引用スタイルで.

おもろい | Maxwell のデーモンと情報熱力学 http://cat.phys.s.u-tokyo.ac.jp/publication/Suri_Kagaku_Final_Version.pdf

沙川さんと上田先生(何となく先生づけしてしまう)のPDF. この辺もやってみたいと思いつつ全く何もできていない. とりあえずメモ.

沙川さんというと久保亮五記念賞の講演会でいろいろ質問して, 講演後も気になったことがあったので追加質問したときに, 「お名前伺ってもいいですか?」「いわゆる相転移Pです」「ああ」みたいなやりとりをしたことを思い出す.

沙川さんは以前Twitterをやっていて, ちょっとだけやりとりしたことがあったのだ.

最近全く研究できていなくてよくない. 研究したい. 頑張ろう.

谷村省吾『量子論における超選択則の力学的起源とカラーの閉じ込め』

谷村省吾さんの『量子論における超選択則の力学的起源とカラーの閉じ込め』という文章だった. 測定関係も面白そうと思っているものの, 全く何も勉強できていない.

小嶋先生のmicro-macro dualityもちゃんと勉強したいと思いつつ, まるで何もできていない. 悲しい.

『江沢先生の先生に遭遇』: 記事紹介

俺達の江沢先生. 私には新井先生との共著, 『量子力学の数学的構造』と『場の量子論と統計力学』が印象深い.

特に前者は学部 3-4 年のときに一所懸命読んだ. 後者はいまだに読めない・読み切れない.

算数が『初等魔法学』なら物理は何だろう?

見せ方が大事なことを学んだ. これは教訓としたい.

2016ノーベル物理学賞「トポロジカル相転移」の公式解説: 専門家から見てもかなり面白いらしいので

自分の専門もかなり近いところだし, 何とか時間を作って読みたい.

谷村省吾さんのスライド「きちんと理解するのは意外に難しい潮汐力」

確かに面白いのだが, これ, 序盤で次のように出てくる.

地球物理・惑星物理の専門家にとっては完全に解決されている問題なのだが、門外漢たちが何度も誤解を蒸し返しているのである。

この話が中心になるのかと思っていたら, 物理の人間からの考察がメインで, 「いや, 完全に解決された視点で話した方が速くて正確なのでは」という気持ちになった.

こういうコンテンツももっと出した方がいいのだろうな, という気はしている.

「物理学を買えた二人の男」

科学史系のコンテンツを充実させたいと思っているのでとりあえずメモ.

Keith Moffatt, Rattleback Reversals

解析的に解くというジャーゴンがふと気になった. 何はともあれ記録.

熱エンジンの効率を最大限に上げると出力がほぼゼロになることを証明, Shiraishi, Saito, Tasaki, Universal trade-off relation between power and efficiency for heat engines

いろいろとアレだが文章引用.

古くから推測されていた熱エンジンと効率向上と出力の大きさとの間にはトレードオフの関係があることが慶應義塾大学理工学部の齊藤圭司准教授と、東京大学大学院総合文化研究科白石直人氏、学習院大学理学部の田崎晴明教授らの研究グループによって証明された。

火力発電所の発電機のように、高温の物体から熱を受け取り、それを電気のような「使えるエネルギー」に変える装置を一般的に「熱エンジン」と呼ぶ。高温の物体から受け取った熱エネルギーのうち、どれだけ利用できたかの比率を「効率」という。この効率には、原理的に超えられない「カルノー効率」という上限があることが分かっている。一方、発電機では、効率だけでなく「何Wの電力が発電できるか」という「仕事率」が問題になる。

カルノー効率が達成されると、効率は上がるが、トレードオフの関係で、同時に仕事率がゼロになることが漠然と予想されていた。しかし、従来の熱力学には動作時間という概念が組み込まれていないため、仕事率を解析できず決定的な答えを得られていなかった。

確かによく言われる準静的過程で説明される話を真に受けて, そしてそれしか最大効率達成法がないのだとすれば気分的には十二分にありうる話だ. 量子論的にはどうなのだろうとかいろいろ気になることはある. 楽しそう

論文(プレプリント)これっぽい. 読んでみよう.

やっぱりちゃんとプレスリリースあった.

2016年のノーベル物理学賞のどこがすごいのか? - 田崎晴明|WEBRONZA - 朝日新聞社: 記事紹介

ログインなしでは途中までしか読めなかった.

もう試してすらいないが, 報道各社のログイン, やたらたくさん情報を入力させるので本当に登録が面倒で, それなら記事なんて読めなくて構わないと思わせるのに十分だった.

こういうので情報取るのはいいとして, その情報を有効活用しているのだろうか?

新聞社とかIT死ぬほど弱いイメージしかないが実際のところはどうなのだろう?

物理の話を書こうと思ったのに一瞬で心が折られたことを記録する.

Kazumasa A. Takeuchi $1/f^{\alpha}$ power spectrum in the Kardar-Parisi-Zhang universality class

KPZ, 名前しか知らないといって前にも調べた気がして, そしてまたすっかり忘れている. とりあえず Wikipedia をぺたり.

最近全然研究していない. 悲しい.

あと何かここで論文が読めるらしい.

いつまで読めるのだろう.

元素の存在に関する原理的な限界と物質の安定性

Wikipediaからちょっと引用しておこう.

ウンセプトトリウム(unsepttrium)は、原子番号173にあたる未発見の超重元素に付けられた一時的な仮名(元素の系統名)。理論上存在しうる最後の元素とされている(174番元素以降になると、1s軌道の電子の束縛エネルギーが電子-陽電子の対生成に必要なエネルギーを超えるため。)。

理論上、原子核を点として扱うディラック方程式では陽子数137を超えると虚数解となって式が成り立たなくなる。

これstability of matter事案なのだろうとは思う. Stability of matter, 学部の頃からずっと興味あっていまだにきちんとやりきれていない. 無料講座開講にかこつけてきちんと勉強し直すという最強のライフハックも検討している.

講義中の証明通りにやらないと零点にさせられたことで湯川秀樹は数学への道を断たれたという凄惨な話

あまりにもむごいとしか言い様がない. 後に湯川秀樹がノーベル賞を取ったとかいうのは何ら関係がない.

教わった通りにしなければ駄目という人達, こんな惨い仕打ちをしようというのか.

ただただ許せない.

madnodaさんの次のツイート群を目にした.

私も『旅人』を読んでみなければならないようだ.

コメント

量子力学のハイゼンベルグも数学者に幻滅して、物理に転向したようなことを「部分と全体」に書いてます。πの超越性の証明のリンデマンに会いに行った時のエピソードと関連して語られています。

空が青く見える理由: 物理学と生理学と

太陽光のスペクトルデータも視覚の感度分布もよく知らない(調べていない)ので真偽がよくわからないのだが, とりあえず記録しておきたい.

このデータで遊びたい: 高エネルギー物理の就職事情

いじりたくなるデータというのがなくて統計学の勉強で困っていたがこれは面白そう. とりあえずメモしておく.

渡辺澄夫『物理学者でない人にとっての平衡統計力学とは』

後で読もう. とても気になる.

書籍紹介: 山本義隆 『幾何光学の正準理論』

本文

何これほしい.

ラベル

幾何光学, 光学, 解析力学, 物理

本の紹介: 高田健次郎・池田清美『原子核構造論』

本文

原子核は通常の統計力学の無限粒子数の近似は使えず, もろに有限多体系で独特の魔界を形成していると聞いている. 前から興味自体はあったものの結局何も勉強したことない.

ラベル

物理, 量子力学, 原子核, 統計力学, 場の量子論

動画紹介: 東京大学素粒子論研究室の学生さんが作った、論文のプロモーション・ビデオがおもしろい

本文

この間せっかく Premiere Elements 買ったし, 私も今度こういうの作ろう.

ラベル

数学, 相転移プロダクション

arXivにある量子情報理論の本情報: Wilde, 2018, From Classical to Quantum Shannon Theory

Paul筋の情報: Erdosの論文集ページ

本文

Paul からの有益な情報だった.

ラベル

本文

とりあえずメモ.

ラベル

物理, 量子情報

クーラン・ヒルベルト, やはりちょっと読んでみたい

本文

立川さんコメントだった.

こないだの学部二年生物理数学 II のテストの大問 1 の 4 が解けなかったので, 答えが知りたいという声をいくつか聞きました. というわけで略解をつくりました: http://www-hep.phys.s.u-tokyo.ac.jp/~yujitach/tmp/ans.pdf 解けた人はごく少数でした. 何でも持ち込み可インターネット可なのに, 解けないのは何故.

この記述が気になる. 読んでみたい.

一般にどうやって示すかを知りたい人は例えばクーラン・ヒルベルトの原書一巻, 日本語版二巻の 6 章 4 節を参照して下さい.

ラベル

数学, 物理, 微分方程式

「学会のプログラムの発表タイトルを眺めるだけでも, 最先端で院生や研究者がどのような研究をしているかの感じがつかめます.」

本文

言われてみればそうか, という感がある.

物理に興味ある高校生, 物理学科の大学生の方は, 物理学会のプログラムの発表タイトルを眺めるだけも, 最先端で院生や研究者がどのような研究をしているかの感じがつかめます. http://w4.gakkai-web.net/jps_search/2014sp/index.html

私も参考にしよう.

ラベル

数学, 物理

X 線レーザー研究施設擬人化: 播磨 SACLA

本文

立川さんがまた謎な事案を発掘していたので.

理研の X 線レーザー研究施設が公式萌え (?) アニメを作っていたようです. 不思議な世界です. http://xfel.riken.jp/pr/sacla/?cat=3

俺達の SACLA さんだ. それはそれとして, 立川さんはどこからこういう情報を仕入れてくるのだろう.

ラベル

物理, 理研

Steven Hawking, Information Preservation and Weather Forecasting for Black Holes

本文

Hawking が「ブラックホールは存在しない」といいはじめたとか何とか.

ホーキングが「ブラックホールは存在しない」と言い始めたそうです. あるいはブラックホールに事象の地平も特異点もない, と. Nature News | Stephen Hawking: 'There are no black holes' http://bit.ly/KUuVKP

気になる人は arXiv にある論文を読んでみよう. アブストを引用しておく.

It has been suggested that the resolution of the information paradox for evaporating black holes is that the holes are surrounded by firewalls, bolts of outgoing radiation that would destroy any infalling observer. Such firewalls would break the CPT invariance of quantum gravity and seem to be ruled out on other grounds. A different resolution of the paradox is proposed, namely that gravitational collapse produces apparent horizons but no event horizons behind which information is lost. This proposal is supported by ADS-CFT and is the only resolution of the paradox compatible with CPT. The collapse to form a black hole will in general be chaotic and the dual CFT on the boundary of ADS will be turbulent. Thus, like weather forecasting on Earth, information will effectively be lost, although there would be no loss of unitarity.

Skype ミーティングから起こした文章のようで, 式はない. 式がないから簡単とか気が狂ったようなことをいうつもりはないが, 4P しかないし, 興味がある向きは読んでみるといいだろう. 私もそのうち読んでみたい.

ラベル

物理, 一般相対性理論, 量子力学

山本義隆『世界の見方の転換』が 3/20 に出るらしい

本文

山本義隆がまた本を出すらしい.

山本義隆『世界の見方の転換』. 3 巻で計 1400 頁超. みすず書房から 3 月 20 日刊行予定. http://www.msz.co.jp/book/new/

ほしい. あと積読状態の熱力学の本も片付けたいし, 他の本も読みたい. やりたいこと山程あるし, 人生, 本当に退屈しない. 皆もっと数学するといい.

ラベル

物理

Kalien-Lehmann の Kalien は「シェリエン」と読むらしい

本文

立川さんのツイートから衝撃の事実を知った.

場の量子論の教科書を勉強すると, KaLlen – Lehmann 表示というのが出てきて, 発音が良く分からなかったのだけれど, 今でている研究会に Kallen さんのお孫さんが来ていて, 直接聞くと シェリエン と読むそうです. というわけで最近勉強を始めた皆さんも宜しく.

@yujitach 当家の人が言うのだから間違いないですね. 私は長らくチェレンとばかり発音してきた.

えええっ!!@yujitach 場の量子論の教科書を勉強すると, KaLlen – Lehmann 表示というのが出てきて, 発音が良く分からなかったのだけれど, 今でている研究会に Kalien さんのお孫さんが来ていて, 直接聞くと シェリエン と読むそうです.

@yujitach 古いけど, Kalien の QED は一本スジの通った名著でした.

@kz_itakura スウェーデン語では http://el.minoh.osaka-u.ac.jp/flc/swe/lands/03.html によると, K は a 等 front vowel が続くと発音記号では ɕ http://en.wikipedia.org/wiki/Voiceless_alveolo-palatal_sibilant になるようです. 僕の耳にはシェに聞こえます. e はィエになると言ってました.

私もずっと「チェレン」だと思っていた.

ラベル

物理, 場の量子論

いろぶつ先生が書いた本の「よく分からない」バージョンを作ることを今年の目標にしよう

本文

こんなことを呟いたら垣谷御大が反応したので.

いろぶつ先生が書いた本の「よく分からない」バージョンを作ることを今年の目標にしよう

これに対してこうきた.

書いてなくてもいいんじゃないか. 僕ならまずは「よくわからない群論」から始めたいが.

きちんとやったことないので「よく分からない点群」とかやりたい.

ラベル

相転移プロダクション

2 次元連続スピン系の連続相転移に関する解説など

本文

「2 次元連続スピン系の連続相転移」に関するプレゼンテーションファイルなどが公開されていたのでとりあえずメモ. これこれ.

https://twitter.com/tnksh/status/417610817039650816 【Shu Tanaka's Blog: 2 次元フラストレート連続スピン系における連続相転移に関する解説を作成しました http://shutanaka.blogspot.com/2013/12/blog-post_30.html?spref=tw

https://twitter.com/tnksh/status/417595165101293568 【以前論文を書いた「 2 次元連続スピン系の連続相転移」に関するプレゼンテーションファイルを slideshare に掲載しました. http://www.slideshare.net/shu-t/prb-87214401slideshare

あとで読もう.

ラベル

物理, 相転移

東大, 原子 1 個に記録された磁気情報を長期間保持するためのメカニズムを解明. 原子磁石の情報保持時間を従来比 10 億倍に向上

本文

いまは原子 1 個をいじるのもさほど難しくなくなったらしい.

原子一個を普通に扱う時代なんだねえ… https://twitter.com/sjn_news/status/401719791079002112

東大, 原子 1 個に記録された磁気情報を長期間保持するためのメカニズムを解明. 原子磁石の情報保持時間を従来比 10 億倍に向上 (発表資料) http://bit.ly/1bCzyCC http://pic.twitter.com/uHrwD3goEU

この辺, 多体系ではないはずだし数学的にも色々突っ込んで調べられる範囲ではなかろうか. 岡山大の廣川先生とかこういうの好きそう. 自分でもいじってみたい.

量子力学, 何だかんだで物性物理的にきちんとした数学的結果はほとんどないような印象がある. 数学的にはそれだけ結構な難易度があると言ってもいい. 数学の人もこの辺, 何かもっとやってくれないだろうかと思っている.

ラベル

物理, 数理物理, 量子力学, 磁性

メトロノームの同期動画が見ていて楽しかったので共有する

本文

立川さんが次のような動画を紹介していた.

なかなか素敵な物理実験です. ずれているメトロノーム 32 個が同期します. http://www.youtube.com/watch?v=JWToUATLGzs

単純に見ていて楽しい. 実験系構成能力, 鍛えたい.

ラベル

物理, 物理教育, 実験

市民論文メモ: 大栗・中村論文 Holographic Refrigerator

ツイート

佐々さんのツイートで大栗さんの非平衡論文への言及があった.

引用

中村さんと大栗さんのほろぐらふぃっく非平衡論文 (ほろぐらふぃーで解析できる) 特別な模型の性質ではなくて, 一般的な性質として議論する枠組みを作るのが僕たちの課題. 先週, 集中討議したが, 時間があいてしまって休憩中.

コメント

先日大栗さんの超弦理論の本の感想を書いたが, ブレーンの熱力学・統計力学みたいな話があったので少し気になっていた. 軽く眺めたがもちろんさっぱり分からない.

とりあえず超弦からの宇宙の非平衡状態に関するリファレンスの 1 つとして覚えておきたい.

ラベル

物理, 熱力学, 統計力学, 非平衡, 超弦理論