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アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を英語・多言語で読む会

理工系向けの語学教材作成・整備が主な目的で, 特に英語を中心にして多言語翻訳とともにアインシュタインの原論文を読みます. 単語まわりの情報は英語・英単語のページを参照してください. 文法や読解に関するコンテンツは会員ページで公開しています.

YouTubeでの講義動画

勉強会の案内

はじめに

先日 (2020-08-17) Twitter で上のような告知をした上で, 連続ツイートで簡単に想定の内容を紹介した. この記事の一番下のリンクから参加登録できる. 勉強会についていくつか注意があるので, それを読んだ上で興味があれば参加登録してほしい. まだ参加者間のやり取り用の連絡手段を決めていないこともあり, いったんメルマガに登録してもらう形にしている. 最近メールが届きにくくなっているので, 登録後迷惑メールなどに入っていないか確認してほしい. また勉強会の進め方に関するアンケートもつけていて, 大事な注意があるので確認の上回答してほしい.

2021-06-11 追記

半年以上勉強会を続けてきて気付いたことがいくつかあり, その知見をここにまとめた.

勉強会の進め方に関する大事な点

詳細に入る前に最初にまとめておく.

  • 趣旨としては私がコンテンツを作る上で「その解説はおかしい」と指摘してもらうことが目的で, 参加者が英語を一から勉強することは一切意図していない. 参加者の物理・数学学習はより一層意図していない.
  • 最終的には中高生向けコンテンツ・サービスとして提供していく予定だが, いったん大人向けのコンテンツ作成に向けた勉強会として企画・運営する. つまり最低限の英語学習が済んでいない中高生について, 参加を排除することはないが, 中高生向けの配慮もしない. そして英語の論文を最低限読み進められる程度の英語力を前提にする. 大学受験で要求される単語力・読解力があれば十分だろう.
  • 最終的に中高生に提供するときは物理・数学学習とも並行して提供するので, その意味では物理・数学教育の視点は忘れていないが, 今回の勉強会では読解に必要な最低限の物理の解説以外の物理・数学の解説をする予定はない.
    • これの「指導」は相当大変なので, もし希望される方がいたとして, 指導するとしても有料のサービスとして展開する.
    • 参加者同士で別途物理・数学の勉強会を開くのは全く構わないし, むしろそれを勧める. 参加者同士が交流できるように適当な SNS や Slack を使う予定だが, これは語学以外は参加者同士で何とかしてほしいからという理由もある.

以下, この前提で読んでほしい.

原論文と多言語翻訳

ドイツ語原論文・英訳を含め, 私が直近で興味ある言語への翻訳 PDF のリンクを紹介する. 勉強会では英語メインでドイツ語・フランス語を眺める予定. 他の言語ができる人がいれば, ぜひその人にその言語の解説をやってほしい気持ちはあるが強制はしない.

物理・数学的予備知識

もし物理や数学についても並行して勉強したいなら次の 2 冊, 特に前者を勧めておく.

唐木田本にも翻訳は入っているから内山本は買わなくてもいい.

企画の背景

極論を承知で一言で言えば, 人文系教員および理工系教員の知的怠慢がひどく「理工系のための語学」のような教材がないからだ. 大学院レベルの「語源で単語暗記」のような本はあるが, 中高生が触れるような内容ではないし, 変に理工系一般を意識していて数学にゴリゴリに特化, 物理にゴリゴリに特化といった感じではなく使いづらい. ここでも少し書いているように, 理工系のための歴史・科学史のようなコンテンツもない. 「文系のための数学」のような本はたくさんあるにも関わらず. 人文系・社会学・教育学系教員の知的怠惰・教育上の配慮のなさ・理工系向け教養教育の軽視は甚だしくただただ怒りに震えている.

次のような話もある: 東京外国語大学の言語モジュールがある.

次のような趣旨で作られたそうだ.

TUFS言語モジュールは,東京外国語大学大学院の21世紀COEプログラム「言語運用を基盤とする言語情報学拠点」の研究成果を活かして開発した,新しいインターネット上の言語教材です。英語以外の言語教材は,主として大学生が初めて新しい外国語を学ぶための教材を想定しています。英語については,小学校での総合学習や中学校で初めて学ぶ外国語としての英語を念頭において開発しました。

これのドイツ語の語彙モジュールの「場面による学習」には次のような場面しかない.

  • 海外旅行
  • スポーツ
  • 会社
  • 図書館
  • 家庭/家
  • 部屋
  • 交番
  • 美容院
  • 学校
  • 授業
  • 病院
  • 喫茶店
  • レストラン/食堂
  • 銀行
  • 郵便局
  • デパート
  • 不動産屋

ここで「学校」の項目があるが, この中で理工系の学習・教育・研究という視点はかすりさえしない. 言語学に対する国内最高峰が理工系をこの程度にしか扱わないのならもう何も期待できない. よく本の前書きで「浅学非才の身の私が本を書くなど云々」という話がある. 私はどう控え目に言っても浅学非才というレベルでさえない. それでも誰もやってくれないのなら自分でやるしかない. YouTube などでよく地獄コンテンツを見かけるが, 私が作る語学教材は所詮そのレベルだろう. それでも泥水をすすり生き恥を晒してコンテンツを作るのだ.

勉強会の詳細

数学・物理で大事な類推力を語学学習でも強要するという修羅のコンテンツを作りたい. まず文法は西欧の系統で一定の類似がある. 単語は英語・フランス語では特に類似があり, ドイツ語も多少の類似があるため, そこから強引に手繰り寄せていく感じにしたい. そもそもフランス語由来の語彙は英語の語彙の 70% 程度あると聞いているし, 英語自体はもともとゲルマン系の言語で, ドイツ語がまさにゲルマン系言語と聞いているので, そうした類推をうまく使って言語の世界での類推力をうまく育てたい. そしてその手の類推はいろいろな形で数学や物理でも出てくる. 実際の数学記号の運用の観点からもいろいろな話ができると思っている.

私の観測範囲ではフランス語はイタリア語と語彙がよく似ていて, イタリア語は現代ラテン語とも呼ばれているそうなので, できる限りラテン語まで切り込みたい. 例えば高校数学・物理でも出てくるベクトルはラテン語の「動く」といった意味を持つ vehere がもとであるといったところまで掘りたい. このサイトによると vehicle の ve とも語源を同じくするようだし, 速度を意味する velocity とも語源を同じくするようだ. こういう形で語彙を増強することも考えている. 生物系では学名に本当にラテン語を採用していて, 人文系・社会学系でどうなのかは全く知らないが, ラテンまで遡ってイメージ豊かに言語を理解することは実用的でさえある. 少なくとも理工系にとっては.

語源関係の話については日本語の感覚も使いたい. 中国語でどこまで感覚が一致するのかはわからないが, 少なくとも日本語なら「さんずい」が入っている漢字は水に関わるのは誰でも知っている. 英・独・仏単語についても同じような感覚で臨みたいし, 上で紹介したように実際にある程度までは本当にそれで臨める.

もう少し例を挙げておこう. 例えば「sp」を含む単語はスペル・音からもある程度想像できるように「シュパーン」という感覚がある単語に使われる. ディズニーランドでスプラッシュマウンテンというアトラクションがある. これの splash はやはり水のしぶきの気分がある. スプラッター映画の splatter も血が飛び散るイメージがある. sparkle も Google 画像検索で見るとわかるように「キラキラ光が飛び散る」イメージの「光る」だ. スパンコールのキラキラも同じイメージで, まさしく「さんずい」のような部首の趣がある. これを必要ならラテン語まで遡りつつ, 物理・数学のイメージも載せながら学習したい. 場合によってはギリシャ語も必要だろう.

この語源・部首イメージとは関係ないが件の外語大モジュールのロシア語のページで次のような記述があった.

初めてロシア語を学習する方は,見慣れない文字が多いことに圧倒されるかもしれませんが,よく見ると英語のアルファベットによく似ているものや,数学に用いるギリシャ文字に似ているものがあることに気付かれると思います。

外語大人材からしても, ギリシャ語専攻でもない人間がギリシャ文字を目にする機会の筆頭は数学らしい. ラテン語・ギリシャ語は西欧言語の基礎のようだし, vehere のように物理・数学系の語彙にも深く寄与していると聞くのでそうしたところをついでに突いていきたい.

参考までに他にももう少し単語の類推などに関してどんな感じか気分を書いておく. 例えば日本語でも「た」と「だ」事案があるように t と d は近い. それに対応するように英・独・仏でよく入れ替わる文字だ. 例えば英語の day とドイツ語の der Tag がある. 他に y と g にも入れ替わりがある. いままさに紹介した day と Tag がそうだし, 英語内部でも garden と yard 事案がある. フランス語と比較するなら jardin だ. これらを英独仏でできる範囲で見ていきたい.

ちなみに私は学部の時ドイツ語選択だった程度でしかドイツ語を知らないし, フランス語に至ってほぼ独学である. 文法も少しはやったが, 数学の本を読むための勉強を最優先にしていて, 文法はほぼ全く身についていない. 独・仏については本当に無茶をやるのでそのつもりで来てほしい. あと, 今回に関しては中高英語の文法は一通り扱える前提を敷くことにして, 基本的な文法を把握していない実際の中高生は対象に想定していない. 最終的には中高生向けの整備はするが, いまはまだそこまで行けない.

ついでに書くと, 単語編・文法編は別途コンテンツを作る予定で, 単語編についてはごく簡単な単語帳も作るし, 作りかけのものはある. できればこれの整備も手伝ってほしい気分がある. Google スプレッドシートに編集権限をつけて参加者だけに公開する.

読解以外に大事なこと: 音読

このコンテンツで 1 番重視するのはあくまで読解力の涵養, そしてそのための単語力の増強, 文法の基礎知識の定着だが, 最終的には発音・音読も重視したい. 何故かというと「Russian for the Mathematician」という数学関係者向けロシア語学習の本があり, その中で「読むだけだからと発音を軽視するものがいるようだが, それでもきちんと発音練習をしろ, 音読をしろ」と書いてあったりするほど音読は語学学習で大事だからだ. 上で書いたように, 音の類似とスペルの類似・意味の類似があるので, きちんと音を知ることを甘く見てはいけない.

残念ながらこの勉強会で音読や発音の話を深く触れはしない: 私にその能力・知識がないからだ. ただ大事なことではあるので強調しておく. 並行して詳しい人にコンタクトして, いろいろ勉強する予定ではある.

あえて原論文にアタックするご利益

これは中高生向けコンテンツとして展開するときのご利益だ. 大人が読むご利益は知らない. 1 つあるのは単語暗記の都合だ. 上で紹介したようにその気でやれば 1 つの単語から凄まじい広範囲の語彙を獲得できる. その基盤語彙を物理で覚える, そういう気分だ. 単語を覚えるためにはいくつか「コツ」のようなものもあると思うが, 何にせよ記憶を定着させるためにはくり返しが必要だ. 論文を読んでいると特定語彙が馬鹿みたいにくり返し出てくる. もちろん論文の主要テーマに関わる語彙だ. こういう言葉は中二病をくすぐるので, 物理・数学が好きな中高生なら自然とくり返したくなる. 興味が持てる単語が論文で何度も出てきて, それをくり返し濫用するなら当然覚えやすくもある. そうした効果を狙っている.

物理・数学は深く触れない

この勉強会を開く背景の 1 つとして, いままで実際にいろいろなコンテンツを作り, アンケートを取ってきた経緯から相対性理論に興味があるという人が多かったというのもある. やはり量子力学と同じく「物理といえば」という分野で 1 つ憧れの存在であるらしい. いますぐ全ての要望に応えられるわけでもなく, 私が当面やりたいこととや現状の能力の兼ね合いもある. 今回はあくまで「アインシュタインの思考に触れる」という意味で相対性理論の原論文を読解する語学教材という体で挑む.

読解にダイレクトにかかわるので多少は物理の説明はするがそれも限度がある: 実際には物理も数学も解説なしと思ってほしい. あくまで中高生向け語学教材としての内容を整えるための第一歩としての勉強会開催だ. 参加者には語学の水準についても適度なレベルの大学受験を乗り越えられる程度の水準を要求しているように, きちんと理解しようというならそれ相応の水準が必要だ. 厳密に言えば数学・物理とも高校程度は遥かに超える. 以前, 東大物理の清水明さんが「中学のときに特殊相対性理論の発表をしたことがあって, 中学生くらいの数学でもかなりよくわかる」と言っていた記憶はあるが, 東大の教授になるくらいの人物の「中学数学でもわかる」がどの程度信用できるか問題がある. 実際には次の本の内容程度は知っている必要がある.

物理まで理解したければこの本を並行して読み進めてほしい. この本では必要な数学の解説もしてある. 勉強会では触れる予定はない. 関係ある数学についてプログラミングとセットでコンテンツと作っていたりもするので, 必要なら活用してほしい.

ちなみに今回の勉強会で配慮をしないだけであって, 物理・数学がわからない人の参加を排除したりはしない. 興味があれば気楽に参加してほしい. 合わなければいつ抜けてもらっても構わない.

開催スケジュール

勉強会は Zoom を使ってオンライン形式で, 週に 1 回, 1 時間を想定する. 基本的には私が話す前提で, 他にもふつうに仕事があり, プライベートでもいろいろやっているのでそれ以上は準備が間に合わない. 参加者の都合も見ようとは思うが, いまのところ平日, 金曜日の 20:00-21:00 あたりを考えている. 原論文がドイツ語なのでドイツ語に詳しい人がいると嬉しい.

作成途中コンテンツの公開

「こんなやつがこんなことをやっている・やろうとしている」のをアピールするため, YouTube に勉強会の録画を放流する. これについて次の点を注意してほしい.

参加者の顔出しは要求しない (する意味がわからない) のでそれは気にしなくて構わない. 名前については参加者の識別のために使うだけなので本名である必要はないが, 何かしらの「識別名」は公開してもらう. しかし勉強会で発言したら声は YouTube に上がるし, 場合によっては名前も出てしまう: zoom の表示名が本名になっているとついそれで呼んでしまう可能性がある. こうしたデメリットを重視する人は参加を控えてほしい.

登録はこちらから

もしあなたがこの勉強会に興味があるのなら, 次のフォームから登録してほしい. いくつかのメディアで同時に募集するので, いったんメルマガ登録の形で募集する. 上に書いた通り, 参加者同士で交流して勉強会で触れられない部分を補足し合ってほしいので, 最終的にはメルマガ以外のメディアやツールを使う予定だが, とりあえず募集はメルマガに集約する.

  • (閉鎖) 特殊相対性理論の元論文を多言語で読む 勉強会登録フォーム

注意: 最近 icloud.com, me.com, mac.com や docomo, ezweb, softbank などの携帯メールアドレス, hotmail.com, hotmail.jp などのマイクロソフト系のメールアドレスにはメールが届きにくくなっている. Gmail は比較的届きやすいようなので, Gmail で登録してほしい. メールが届かない場合, 迷惑メールになっていないか, 確認すること.

最後に: 学生時代の思い出, そして屋敷先生

実はアインシュタインの原論文は早稲田の物理学科所属, 学部 2 年当時の語学のドイツ語の講義で少し読んだことがある. 残念ながらというか当然というべきか, 勉強していなかったからドイツ語自体はもうほとんど覚えていない.

そのときの先生はいわゆる人文系の先生で屋敷先生と言った. 「どうしてもアインシュタインの相対性理論を理解したいから」といって原論文を読んだのだそうだ. そのとき基本的な数学・物理の勉強に使ったというのが上で紹介した唐木田本だ. 実際に講義でもこれも併用していた.

学生当時は絶版になっていて, このコピーを使っていた. ちくま学芸文庫で復刊したので喜ばしい. 当時, 屋敷先生が次のようなことを言っていた.

「こういう本は本当に大事だと思う. アインシュタインの知的財産は私の人文学の人間にも触れられるようになってほしい. みなさんも将来, こういう本を書くような人になってほしい」

大学を出てから久しい今も覚えているし, 心に刻んでいる. 実際に勉強会を主催してコンテンツを作っていこうと思う程度には.

ちなみに屋敷先生は「アインシュタインのドイツ語は上品で素晴らしいです. ドイツ語教材としても非常に優れているので, 全理工系学生に触れてほしい」と言っていた. 英語だけではなく無理やりドイツ語原論文も持ち出すのはこう聞いていたから, という理由もある. 私自身, もっときちんと読んでみたい.

改めて: 登録はこちらから

もしあなたがこの勉強会に興味があるのなら, 次のフォームから登録してほしい. いくつかのメディアで同時に募集するので, いったんメルマガ登録の形で募集する. 上に書いた通り, 参加者同士で交流して勉強会で触れられない部分を補足し合ってほしいので, 最終的にはメルマガ以外のメディアやツールを使う予定だが, とりあえず募集はメルマガに集約する.

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第001回 勉強会の概要と論文タイトル解説

まず自分への確認

  • 録画はじめた?

これを読んでいる方への注意

これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください.

勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します.

適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

講義動画と関連リンク

はじめに

  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
  • 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.

(改めて) 内容

  • 勉強会案内ページの URL
  • 理工系向けの語学教材作成・整備が主な目的.
  • 特に英語を中心にしてアインシュタインの原論文を読む.

原論文と各種翻訳へのリンク

参考: 日本語訳と数学・物理に対する補足 (購入の必要なし, お好みで)

当面の進め方の予定

  • メイン: 本文を構文などをきちんと取りながら文法的に丁寧に読む.
    • しばらくは英語だけ.
    • たぶん毎回 1-2 文程度しか読まない (読めない).
  • 補足: ボキャビル用コンテンツの作成.
    • 理工系のためのボキャビルという視点で面白そうな単語を深く掘る.
    • 英語がメイン.
    • 英語のボキャビルを目的に単語についてはドイツ語・フランス語も適宜掘る.
  • ひたすらに私が話し, おかしなところがあれば指摘してもらう.
  • コンテンツの構成なども何かあれば適宜指摘をもらう.

作ろうと思っているコンテンツの全体像

大きくわけて次のモジュールからなる.

  • 中高生向けの数学・物理・プログラミングに関わるコンテンツ
  • 単語 (ボキャビル)
  • 文法
  • 面白そうな文章・論文などの読解
  • 語学学習のための英文作法や発展的・雑多な話題
    • テクニカルライティング
    • 工業英語
    • コロンとセミコロンの意味や使い分け
    • 理工系文章に we が多い理由
    • etc
  • 未整理のいろいろなメモ (現代数学探険隊などに記録)

ここではあくまで語学に集中する. 文法は (面白さを除けば) 既存のコンテンツでもかなりカバーできるはずなので優先度は低い. まずは単語と読解を重視して進める.

参考: 数学・物理・プログラミング系でやった・やっていること

読解

  • 当面はアインシュタインの原論文を読む.
  • 文法は既存のコンテンツに任せることにしてその実地応用という視点で進める.

単語 (ボキャビル)

  • 日本語を含めた多言語の視点を取り入れる.
  • 日本語の視点: 漢字の部首やつくりが漢字の意味を指定している.
    • 英語でいう部首やつくりは何か?
    • 部首をどう見抜くのか?
    • 単語の発音からの類推.
    • 単語のスペルからの類推.
    • アルファベットの転換.
  • 例: bewegen を先に見てみよう.
    • 原論文のタイトルに含まれるキーワードでもある.
  • アルファベットレベルで文字・言語に対する感度を上げてほしい.
    • 物理で $E$ と書いたら (文脈依存で) 電場, エネルギーを想像する.
    • 数学で $E$ と書いたら (文脈依存で) 単位行列, 射影, ベクトル束, 期待値 (expectation) などをイメージする.
      • 単位行列は Einheitsmatrix である模様.
        • die Einheitsmatrix / die Matrizen
  • アルファベットと類推
    • e.g. 現象と偏微分方程式
    • 文字・式に落として抽象化した上で方程式の類似で類推する.
    • ある種の物理的・数学的直観とも関係する.
  • 勉強会本体へ.

指摘メモ

  • 交代原則の言葉を調べておく
  • math_lang の bewegen などに TODO メモを入れておいたので, あとで調べて埋める.
    • 対応
  • 佐藤健太郎, 炭素文明論
    • 有機化学者による科学史・化学史の本.
    • めちゃくちゃ面白いので必読.
    • 語学から歴史・科学史にも迫りたい.

今日話した内容メモ

  • そのうち適当な形で有料コンテンツ・有料サービスとしてリリースする予定.
    • 勉強会みたいな感じの有料サービスの方がいい?
    • 独学したい・できる人もいるだろうし, 「それは違う」とコメントをもらえた方がいいので, この勉強会ログとしては内容を公開していく.
    • 理工系の人達向けに「こういう有料サービスがあってもいいし, 需要もあるし, それで食ってもいける」ことを示したいので, 最終的には何らかの形で有料サービスとして展開したい.
    • この記録をもとにして (私に無許可で) 個々に勉強会を開いてもくれても構わない.

今日の英文解釈: 論文タイトル

英文と訳
  • (en.0) ON THE ELECTRODYNAMICS OF MOVING BODIES
  • (de.0) Zur Elektrodynamik bewegter Körper
  • (fr.0) De l'électrodynamique des corps en mouvement
  • (ja.0) 運動物体の電気力学について
文構造・文法事項
タイトルに関わる一般的な事情

日本語でもよくあるように章や節のタイトルは完全な文ではないこともよくあります. ここでは「---について」で, 日本語でもよくあるタイプの句です.

上の英文では全て大文字になっています. ここでタイトル書きの大文字小文字のパターンをいくつか注意しておきます.

  • ふつうの文章と同じ先頭の単語だけ先頭の文字が大文字.
  • 全ての単語の先頭の文字が大文字.
  • 全ての単語の全ての文字が大文字.

他のパターンもあるかもしれません. 少なくとも私が見たことがあるのはたいてい上のどれかです. 論文雑誌の投稿規約で指定があります. 英文の文章作法もあると思いますが, 説明できるほど調べ尽くせていません.

英語の文構造

では実際の文構造を見てみましょう.

タイトルのうちメインフレーズは the electrodynamics で, 特に of moving bodies という限定の修飾がついています. Electrodynamics は学問名でふつう学問名は無冠詞です. ここでは電磁気学の対象はいろいろある中で, 特に moving bodies に対する電磁気学だ, という意味で定冠詞の限定がついています.

次に moving bodies に関して見てみましょう. ここでの moving は現在分詞です. 日本語文法の言葉で言えば, 現在分詞は形容詞であり, 動名詞は名詞です. 名詞 bodies を修飾している moving は形容詞なので, 現在分詞とみなすべきです.

ときどきこの 2 つの区別がきちんとできない人がいるようです. それを説明しておきます. 現在分詞は「進行感・ライブ感」を表しています. つまりいままさに何かしている状態を表します. moving body は「move している body」を表しているのです. もっと言えば a body moves と主語・動詞の文章に書き換えられると言っても構いません.

一方, 動名詞はまさにその動きです. 例えば動名詞としての running は「走ること」そのものです.

聞くところによると, そもそも現在分詞と動名詞自体, ラテン語などの時代には区別がなかったようで, そもそもそう簡単な話でもないようです. 格の話など古い時代の方が複雑な文法をしていることもあり, 文法の変遷や言語ごとの特徴理解は簡単ではありません.

単語レベル・訳の説明

個別の単語の解説は必要に応じて単語編を参照してください.

# 英語
  • on = about: ---について
  • electrodynamics: 電気力学
  • moving $\gets$ move: 運動する
  • body: 物体 (物理の専門用語)
# ドイツ語
  • zur: zu+der, zu = to
    • der: ドイツ語の定冠詞
  • die Electrodynamik = the electrodynamics
  • bewegter $\gets$ bewegen = move
  • der Körper = the body
# フランス語
  • de: 前置詞, of など
  • (f) l'électrodynamique = the electrodynamics
  • des: 不定冠詞の複数形
  • le corps = the bodies: 単複同形.
  • en: 前置詞
  • mouvement = movement

単語集

electricity

この語にはかなり複雑な経緯があります. Electricityはラテン語の electricus から来ています. これがさらに古代ギリシャ語の ἤλεκτρον から来ていて, 琥珀 (amber) を指しています. ギリシャ語の ἤλεκτρον も複雑で Wikipedia によると, 琥珀から次の 3 つに分化しました.

  • 物理での電子の意味. 琥珀をこすったときの摩擦電気から電磁気現象が発見されたことに由来.
  • 金と銀の合金である琥珀金. 古代ギリシアで琥珀と同じ名称で呼ばれていた.
  • マグネシウムを主体とした合金.

ちなみに磁石の magnet も語源の 1 つとされているのは「古代ギリシャのマグネジア地方で取れた変な石」なので, 電磁気に関わる語源にはギリシャ語が深く関わっています. さらに言えば amber はアラビア語由来です.

中世のヨーロッパでは古代ギリシャやローマの知見は散逸してしまい, アラビアから逆輸入の形で中世ヨーロッパに戻ってきた経緯があるため, その一環なのでしょう. ちなみにアルコール, alcohol もアラビア語起源で, アラビア語起源の科学用語もいろいろあります.

electrodynamics
  • 名詞
  • 電気力学
  • electro + dynamics
  • electro-: 電気-
  • dynamics: 力学, 動力学
  • Wiktionary
  • Etymonline

Electrodynamics は electro と dynamics でわけて考えることにし, 分解した語については対応する単語を調べてください. 特に electro- は electricity などから考えてます. Electro- のような形で他の語とつながって形容詞的に使うことがあるのも覚えておくといいでしょう. たくさん例を見ていると自然と体得できることでもあります.

Electrodynamic は直訳すると「電気力学的」です. 「電磁力学」という日本語も同じ意味です. また英語で使われるときに磁気の議論を含むときでも electrodynamic と書き, electromagnetodynamics のように書きません. 例えば磁気も理論も明らかに含む量子電気力学は英語で quantum electrodynamics (QED) です.

単に dynamics とだけ書くと動力学という意味です. 静力学という言葉もあり, これは statics と言います. 例えば気象静力学は meteorological statics です.

body

中学生どころか小学生でも「身体」という意味を知っているでしょう. 物理では「物体」の意味で使われます. このように専門用語として理解しなければいけない単語はたくさんあります. もちろん日本語でもエネルギーやポテンシャルのように専門用語としての意味を本歌に取りつつそれとはずれた意味で日常語として使われている言葉があります. まずはそういう概念・言葉があると知るのが大事です.

対応する印欧祖語は bʰewdʰ- でこれは "to be awake, observe" という意味があります. 観察対象のような意味から物体に派生していったのでしょう.

他の意味について少し触れておきます. Etymonline では 1660 年代から "main portion of a document" としての用例があると紹介されています. これは IT 系でもよく使われます. もしあなたが HTML を知っているなら, この中にも head と body というセクションがあるのを知っているでしょう. この body がまさに「ドキュメントの主要部」の意味です.

ちなみに上の portion はポーションと読みます. あなたは「ポーション」と聞くとゲームのファイナルファンタジーで出てくる回復アイテムとしてのポーションを想像するかもしれません. それは potion で別物です. 特に Wiktionary によると, ラテン語の potio (飲み物) に由来していて, ラテン語自体がさらにギリシャ語の poton に由来します.

bewegen

Bewegter は動詞 bewegen から来ています. 一見するとこれと move が対応する理由が全くわからないでしょう. Bewegen の接頭辞 be は自動詞から他動詞を作るはたらきを表していて, 接尾辞の en は動詞を表す接尾辞です. 動詞を表す接尾辞という概念については日本語でも次のような特徴があることからその存在は推察できるでしょう.

  • 動詞の最後は「う」行: 売る, 買う, 作る.
  • 形容詞の最後は「い」: 美しい, 面白い, 楽しい.

したがって問題は weg です. これは語源からの視点, そしてある意味物理・数学的に考えれば move との対応が見えます. いくつかのポイントがあるので順に見ていきます.

少なくとも英・独・仏語には g と y の交替現象があります. 例えば英語内部で garden と yard は同じ (ような) 意味ですし, フランス語では jardin が対応し, ドイツ語では der Garten が対応します. 英・独対応を見ると d と t の交替現象も見え, 音に注目すれば「ディー」と「ティー」で, 日本人の感覚からすれば文字のレベルで似ていることがわかりますし, 音の類似の重要性も見て取れます. 英・仏対応を見ると g と j の交替現象も見え, これまた音に注目すれば「ジー」と「ジェー」で似ています.

さて, g と y の交替に戻りましょう. ここで言えば weg から way (道) が想像できます. ドイツ語では「ヴェーグ・ヴェーク」で, 英語では「ウェイ」です. ここでも w に関する濁音かどうかの違いがあるものの, e と a は気分的に「ェイ」で音の対応があります.

音の観点からすると w と v, g と k, c の対応があります. つまり weg から vec・vek が連想できます. ここからさらに vector/vektor にまで話を持っていければ完璧です.

Vector はもちろん数学のベクトルに対応する英語で, vector の語源はラテン語の vehere で「運ぶ」といった意味があります. Wiktionary によればラテン語の vector は "carrier, transporter" で vehō ("I carry, I transport, I bear") に由来します. ラテン語・イタリア語は主語に応じて動詞の活用の形が全て違います. 主語を省略しても意味が通じることから, 日本語のように主語が省略する方が多いようで, vehō だけで I carry です.

他の英単語からすると vehicle などとも関係があります. そして etymonline を見ると from PIE root *wegh- "to go, move, transport in a vehicle" という記述があります. ここで PIE は Proto-Indo-European の略で, *wegh- は印欧祖語という仮想的な言語の語根という意味です. つまり weg (wegh) という綴りに vehere, vector などと同じ感覚が籠められています. 漢字でさんずいが水に関わる概念を表すのと同じ気分です. ドイツ語の bewegen と英語の move が対応するのは weg に込められた意味によります.

言い始めるときりがありません. 例えばドイツの自動車メーカーでフォルクスワーゲン (Volkswagen) があります. この Wagen は車の意味で, wag が上でコメントした「運ぶモノ」の意味です. 英語でも wagon が車を指すわけで, それと同じ気分の動詞が bewegen なのです.

他にもベルトコンベアのコンベアは conveyer で動詞 convey から来ています. この convey の vey に y と g の交替原則を使うとやはり veg で, 音の類似から weg または vec/vek をイメージすれば「運ぶモノ」です. こうして weg が描く世界が見えてきます.

der Körper / die Körper

特殊相対性理論の論文で対応する英語は body でした. Wiktionary で見ても語源は似ても似つきません. しかし同じく Wiktionary とフランス語で対応している corps を見るとここに対応する英語として corpse があるのがわかります. これは遺体という意味です. 少なくとも英語にも身体を表わす言葉として残っています. 直接 body との関係はないにせよ, 英・独・仏の間で語源が同じ言葉が似た意味を持っているのです.

また数学, 特に代数学の群・環・体の体もドイツ語では Körper です. 代数学の対象としての意味の体は英語だと field です. なぜこういうのか私は知りません. ちなみに電磁場は electromagnetic field で, 場は field です.

corps
  • 男性名詞
  • 物体 (専門用語), 身体, 体 (代数学)

Wiktionary によるとやはりドイツ語の Körper と同じくラテン語起源で「身体」の意味の corpus から来ています. 複数形では軍隊などの意味も持っていて, 英語でも複数形で同じ意味です. 派生語として corporation もあり, 会社の意味があります. ちなみに生協のコープは英語の協同組合 co-operative です.

さらに corpus二重語でもあります. これは日本語でも使われる言語学の「コーパス」, つまり「テキストや発話を大規模に集めてデータベース化した言語資料」です. 二重語が何かというと, 1 つの言語の中である 1 つの共通の語源に由来しながら, それぞれ違う語形を取り, 別の意味や機能を持たせて同時に使われている 2 つの語を指す言葉です. 姉妹語ともいいます.

ドイツ語と同じく, 代数学の群・環・体の体を表す言葉です.

第002回 分詞の解説, 第1文の訳と文法事項

まず確認

  • 録画はじめた?

これを読んでいる方への注意

これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください.

勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します.

適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

講義動画と関連リンク

はじめに

  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
  • 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.

今日の予定

  • 教えてもらった分詞の話
  • 第 1-2 文の 2 文やる
  • あまった時間で単語

進捗

  • 教えてもらった分詞の話
  • 第 1 文の文法解説

できなかった項目

  • 第 2 文
  • 単語の深掘り

次週予定

  • 各文型が持つ意味: 文法事項
  • 第 2 文
  • 単語の深掘り

今日のメモ

  • Google 画像検索による単語のニュアンス把握は使える
  • sp の意味の理解: splash, sparkle, 「輝く」に対応する語 で sparkle/shine の比較
  • 自動詞と他動詞を使った分詞の意味の理解
    • 概念に言葉をあてる意義
    • 概念を言語化してはじめて意味や現象を認識できる
      • 例: 「高校物理あるある」ドップラー効果を勉強したあと救急車の音ではしゃぐ
  • 論文の記述のわかりにくさ問題
    • 当時, 確立しておらず紛糾していた議論を慎重に慎重を重ねて議論している「論文」だから.
    • 内山訳は現在の理解・特殊相対性理論の立ち位置を知った上で「わかりやすい意訳」をしている部分がある.
      • 必ずしも「忠実な翻訳」ではない.
      • 悪いわけではない.
    • 当時の物理学事情を知らないとこのわかりにくさの源泉が理解できない.
    • 論文読解を通して人の営みとしての物理学を見る.
  • 型から意味を推測する.
    • 文型それ自体が意味を持つ
    • cf. 型が強いプログラミング言語での型の表現力

TODO 覚え書き

  • (en.1) の文法説明での第 1 文型の記述の整理
    • 気分: まず第一文型の存在の意味があり、そこに to を含む句があると、その存在が to が指し示す先に向かう意味がつく、向かい方は同士が決める
  • 文型が持つ意味の説明 (次回話してみる?)
  • appear to が助動詞事案
    • have to はどういう経緯で助動詞扱いになったのかを調べる
    • 継続審議・調査

内容: コンテンツ (案) からの転記

分詞の解説

分詞

分詞についてはまず次の大方針を持つといいでしょう.

  • 分詞は動詞を元に作られた形容詞で, 元の動詞の意味を引き継いでいる.
  • 分詞の意味上の主語は被修飾語の名詞である: 元の動詞に戻せば被修飾語の名詞を主語として文の形に書き換えられる.
  • 意味上の主語 (被修飾語の名詞) と元の動詞の関係や意味を正しくとらえる.
    • 特に文に直して確認すべし.
  • 現在分詞は動名詞と区別できるようになること.
    • 動名詞はあくまで名詞.
    • 文の中での働きがわかればどちらかわかるので文に直して確認すること.
  • 分詞構文は副詞句を作る.

文への直し方や事例については現在分詞・過去分詞の項も見てください. 先に 1 つ事例を紹介します.

  • terrifying look: 恐ろしい表情
  • terrified look: おびえた表情

この違いを独力で理解できるようになることが大事です. ちなみに, 意味がわからなくなったら Google で画像検索してみるのもいいでしょう. "terrifying look" で調べると見ていて怖い画像が出てきます. 一方 "terrified look" で調べると怯えている人の顔が出てきます. 検索して出てきた画像のイメージと自分の理解が違いそうな場合, 上の原則に基づいて考え直してみてください.

現在分詞

現在分詞は「進行感・ライブ感」, つまりいままさに何かしている状態を表しますという説明はよく見ますし, 間違いではありません. しかしこの手の説明に引きづられておかしな解釈をしてしまうこともあります. あなたは次の文・句の意味や修飾関係が理解できるでしょうか?

  • He is boring.
  • loving mother

まずは自分で考えてみてください. 説明は次の通りです.

  • He is boring.
    • 正: 彼は退屈な人だ $\gets$ 彼は人を退屈させている.
    • 誤: 彼は退屈している.
  • loving mother
    • 正: 愛情深い母 $\gets$ 人を愛している母.
    • 誤: (私の) 愛する母.

「進行感・ライブ感」とだけ覚えていくとこのような事故が起きかねません. 実際よく誤解している人が大人でもいます. 現在分詞の ing を単純に「---している」と思ってはいけないのです. また現在分詞は進行形で使われる場合は別として, 「今まさに---している」というより名詞の継続的な性質を表すことも多いです.

元の動詞が自動詞のときは次のイメージを持つといいでしょう.

  • 意味: ---する, ---している
  • 例: a moving body (= a body moves)
    • 「動く物体」または「動いている物体」

元の動詞が他動詞のときは次のイメージを持つといいでしょう.

  • 意味: (他を) ---する, ---している
  • 例 1: an exciting book (a book excites sb)
    • (他を) 面白がらせている本 $\to$ 面白い本
  • 例 2: a loving mother (a mother loves sb)
    • (他を) 愛している母 $\to$ 愛情深い母

他動詞の現在分詞はどちらも「今まさにしている」というより名詞の継続的な性質を表しています.

過去分詞

元の動詞が自動詞のときは次のイメージを持つといいでしょう.

  • 意味: 完了
  • 例: a married man (a man is married), 結婚している男性

元の動詞が他動詞のときは次のイメージを持つといいでしょう.

  • 意味: 受け身
  • 例: a broken car (a car is broken), (誰かに) 壊された車

第 1 文の解説

英文と訳
  • (en.1) It is known that Maxwell's electrodynamics ---as usually understood at the present time--- when applied to moving bodies, leads to asymmetries which do not appear to be inherent in the phenomena.
  • (de.1) Dass die Elektrodynamik Maxwells --- wie dieselbe gegenwärtig aufgefasst zu werden --- in ihrer Anwendung auf bewegte Körper zu Asymmetrien führt, welche den Phänomenen nicht anzuhaften scheien, ist bekannt.
  • (fr.1) Il est connu que si nous appliquons l'électrodynamique de Maxwell, telle que nous la concevons aujourd'hui, aux corps en mouvement, nous sommes conduits à une asymétrie qui ne s'accorde pas avec les phénomènes observés.
  • (ja.1) 現在の標準的な理解によれば, 運動する物体に適用されたとき, マクスウェルの電気力学は現象固有には見えない非対称性を導くことが知られている.

どの言語で読んだところで, この一文だけでは逐語訳はできても物理として何を言っているかはわからないでしょう. 実際には第 1 段落の主題で, 続く文章で具体例として磁石と導体の間の相互作用の説明が出てきます. 実際の文章の読解ではある 1 文を読解するために周囲の文との関係, もっと言えば文章全体の中でのその文の役割を考えて読まなければいけないこともよくあります.

ちなみに \cite{AlbertEinstein1} だと, この文メインパートは次のように訳されています.

  • マックスウェルの電気力学を用いて説明しようとする場合, たとえば, ある二つの現象が本質的には同じものと考えられるにもかかわらず, その電気力学的説明には大きな違いの生ずるという場合がある.

つまり私が「現象固有には見えない非対称性」と書いた部分は, 「本質的には同じはずの現象を同じように説明できない」という意味なのです. そしてこれが気に食わないことが当時の電磁気学の問題でした. 一文一文をきちんと訳すためにも物理学上の時代背景や前後の文章の流れも知っていなければなりません.

文構造・文法事項
英語
# 文構造

まずは文構造を確認します.

  • It is known that
    • that Maxwell's electrodynamics leads to asymmetries
      • asymmetries which do not appear to be inherent in the phenomena
    • as usually understood at the present time
    • when applied to moving bodies

まず It is known that で that 節が主語になる構文であることを見抜きましょう. この主語を表す that 節の本体は Maxwell's electrodynamics leads to asymmetries です. これに限らず挿入がやたらと多い文ばかりなので, 文構造を正確に捉えて本体を正確に見抜く訓練が必要です. 挿入が 2 つ入ってわかりにくいのですが, leads の主語が electrodynamics なのも注意です. 三単現の s があるので主語は単数です. 学問名としての electrodynamics は不可算名詞で扱いとしては単数なので, この文法事項を知らないと主語・動詞の対応が正確につけられません.

最後の which do not --- は asymmetries を修飾する関係代名詞節です. 動詞が do なので複数形に対する修飾であることに注意しましょう. 学問名としての electrodynamics は不可算名詞で扱いとしては単数なので, こちらの修飾とはみなせません.

そして as usually ---, when applied to --- が副詞句として文全体を修飾しています.

次に注意すべき点をさらに細かく見ます.

# It is known that ---

It is known that --- からはじめましょう. 英語は長い主語を嫌がります. 英語は動詞を早めに見せたい言語と言ってもいいですし, もっと強く文構造を早めに見せたい言語と言っていいでしょう. いわゆる SVOC の第 5 文型では find it C to do といった構文がよく出てきます. 例えば次のような例文があります.

  • I found it difficult to finish all this work.

英語は文の型が文の意味を決める部分があります. その型をきちんと見抜くのが重要で, そこに文法学習が生きてきます.

もとの文の解析に戻りましょう. 主語が長くなるとそれだけ文構造を把握するまで時間がかかります. それを避けるために仮主語として it を置いてすぐに動詞を出し, 主語の本体は that 節で受けます. この構文を見抜く必要があります.

さらに be known で受動態も使われています. By による真の主語の明示はありません. 強いて言うなら「全物理学者」が真の主語です. 受動態は主語を明示したくなかったり書きにくい場合に使われます.

真の主語である that 節は Maxwell's electrodynamics leads to asymmetries でした. ここの動詞 lead は目的語がないので自動詞であり, 文型は第 1 文型 SV です. 細かい訳語のニュアンスはあるものの, to A という副詞句がある第 1 文型の文の本質的な意味は「A に向かう」です. いまの場合「内包している」といった訳語を当ててもいいでしょう. どんな asymmetries を持っているのかが気になります. それが which による関係代名詞節で補足説明されます.

# asymmetries which do not appear to be ---

次に asymmetries which do not appear --- を考えます.

単に asymmetries と言われてもよくわかりません. こういう場合は修飾語・修飾節を使って補足説明をつけます. ここでは関係代名詞を使って修飾しています. Appear は自動詞であり, 第 1 文型の文です. There is/exist 構文が典型的なように, 第 1 文型は文自体に「存在する」「そういう存在である」という意味を持ちます. Which 節は主語がないので asymmetries が主語であり, とにかくまずは asymmetries が存在するのです. 動詞 appear を使ったのは存在の意味を柔らげるためだと思ってください. 単に「存在する」のではなく「そういう存在であるかのように見える」と主張するために 動詞 appear を使っています. どういう存在であるように見えるのかが to be の不定詞句で説明されています.

この文にはもう 1 つの見方があります. それは appear to を助動詞のようにみなして SVC の第 2 文型 asymmetries are inherent in the phenomena を基礎に据える見方です. 型として第 2 文型が持つ意味は「S と C は等しい」です. 特に動詞が be 動詞で C が名詞の場合は直接的に等号だとみなせます.

  • I am a teacher.
  • He is my brother.

これらはまさに be 動詞が等号だとみなせる例です. 動詞 become も第 2 文型を作れます. Be 動詞ではない以上, 「S はこれから C になる (C と等しくなろうとする)」といった意味に変わりますが, 等号を基礎にした意味を持つことは同じです.

ここで appear to を助動詞とみなすのは, 完全な等号とみなすと意味が強くなりすぎるので弱くするためです. 可能性を表す意味での助動詞 may や can の用法と同じです. 動詞 appear には「---に見える」という意味があるので, その意味を使って等号の意味を拡張・変更しています.

なぜこうした話をしたかというと, 同じような構造・用例がよく出てくるからです. 有名なのは動詞 seem でしょうか. 動詞それぞれが持つ固有の細かいニュアンスを除けば次の文はだいたい同じ意味です.

  • It appears to be difficult.
  • It seems to be difficult.
  • It seems difficult.

念のため appear と seem の違いについて Weblio の seem の項 からニュアンスに関する説明を引用します.

(seem は) 通例話し手の推量をこめた見方・判断を示す語で,文法上の主語と判断の主体は一致しないことが多く,時に判断の主体を示すのに to a person を従えることがある.

【類語】 seem は通例話し手の主観的判断を表わす; appear は外観がそのように見えるということを意味するが,「実際はそうではないかもしれない」という含みをもつことがある; look も appear と同じように外面的なことを表わすが,「実際もそうである」ということが多い.

# ---as usually understood at the present time---

まず --- で囲まれた部分は挿入句・挿入節として理解してください. 特にここでは分詞構文で副詞句になっています. 分詞構文にはいくつかの用法があります. 今回は as で用法を指示しています. As は as でいろいろな意味があってややこしいものの, 理由を表していると思えばいいでしょう.

動詞 understood の意味上の主語をどう考えるかは少し悩む部分です. ただ副詞句として全体を修飾している以上, 主節の主語である that 節が主語であるとみなしても問題ないでしょう.

# when applied to ---

これも分詞構文で, when を使って時間的な条件句であることを表しています. As 句の挿入を無視して考えれば, applied の意味上の主語は Maxwell's electrodynamics でいいでしょう.

ここでは動詞 apply to について補足します. 前提として前置詞 to には「何かを何かに向ける」意味があります. 例えば I go to my house. は「私を自分の家に向ける」「私は自分の家に向けられている」という意味で, 動詞 go の意味によって向け方が「行く」になっていると読みます. ここでは Maxwell's electrodynamics が moving bodies に向けられていて, 意味が apply で指定されています. 理論がその適用対象に向けられることを日本語では「適用する」と言うので, そういう訳語を当てればいいでしょう. 実際 apply を英和辞典で調べるとそのものずばりで出てきますし, Weblio では次のような説明があります.

3〈規則・原理などを〉〔…に〕適用する,応用する 〔to〕.

Apply this rule to the case. その事例にはこの規則を適用しなさい.

ここでは規則が物理法則または理論に変わっているだけです.

ポイントは apply の意味を知らなくても前置詞 to の意味・イメージから動詞の意味が決まってしまうことです. 具体的にどんな単語を選ぶかは to の漠然としたイメージをどう具体化するかによって決まるのです.

こう考えるようになるともし知らない単語が出てきても状況証拠から意味が推定できます. 犯罪捜査の推理のように思っていいですし, 考古学などでの推定を想像してもいいでしょう. こうした推論力を鍛えるのは数学や物理でも非常に大事で, そのためには 1 語 1 語の理解を徹底的に深める必要があります. 数学や物理でも同じように 1 つ 1 つの原理原則を徹底的に理解して深めることが大事だと言われます. 語学学習にも数学・物理学習の原理原則が直接適用できます.

第003回 第2文を詳しく読む

まず確認

  • 録画はじめた?
  • 音は大丈夫?
    • 一度音声が入っていなくてひどい目に遭ったことを忘れないように.

注意

  • 2020-09-18 にも勉強会をやったが, 録画できていなかったので 2020-09-25 にもう一度やり直す.

これを読んでいる方への注意・言い訳

これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください.

勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します.

適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

講義動画と関連リンク

はじめに

  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
  • 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.

今日の予定

  • 前回の訂正: as は様態の方がよさそう, understood の主語
  • 第 2 文の解説

進捗

  • 第 2 文の解説

TODO

  • コメントもらった項目 (今日のメモのところに書いてある) を本体に統合

次週予定

  • 追加した文法の説明
  • 第 1-2 文の単語の深掘り

今日のメモ

2020-09-25

  • 録音失敗したときの記録

  • (en.2) Take, for example, the reciprocal electrodynamic action of a magnet and a conductor.

  • (de.2) Man denke z. B. an die elektrodynamische Wechselwirkung zwischen einem Magneten und einem Leiter.
  • (fr.2) Analysons par exemple l'influence mutuelle d'un aimant et d'un conducteur.
  • (jp.2) 例えば, ある 1 つの磁石とある 1 つの導体の間の電気力学的な相互作用を考えよう.

Man: 男性名詞, 単数, 3 人称, 「人はみな」 One can say that ---. Mann: ドイツ語の男性. On: フランス語. homme 人.

z. B. = zum Beispile = for example zum = zu + dem. zu = 「ツー」と発音 (ドイツ語): zu 不定詞 = to 不定詞. to と zu は音として似ている. 英語とドイツ語で用法も似ている.

(fr) par exemple = for example f = フ, p = プ. (en) garden, yard (fr) jardin

私が知っている範囲の欧米語. 単語の意味は子音が決める. s_ng: song, sing, sang, sung.

denke -> denken = think

analyser = analyze = 分析する

mutuelle = mutual.

古典論ではいわゆる磁石がない. ファンリューエンの定理.

van = von of von Neumann.

内容: コンテンツ (案) からの転記

英文と訳

  • (en.2) Take, for example, the reciprocal electrodynamic action of a magnet and a conductor.
  • (de.2) Man denke z. B. an die elektrodynamische Wechselwirkung zwischen einem Magneten und einem Leiter.
  • (fr.2) Analysons par exemple l'influence mutuelle d'un aimant et d'un conducteur.
  • (jp.2) 例えば, ある 1 つの磁石とある 1 つの導体の間の電気力学的な相互作用を考えよう.

中高生にとって国語の読解でも大事なことがあります. それは「例えば」を含む文, そしてそこからつながる文の理解です.

まず日常的な書く・話すで考えましょう. ふつう一般的・抽象的な話はわかりにくいので例が必要です. あなたも日常生活の中で何かわかってもらえないことがあったとき, 「例えばこんなことがあるだろう」と説明する機会があるはずです. もちろんわかりにくい何かを説明するための工夫です. 書く・話すときには自然にやることです. この感覚をきちんと読解にも活かしましょう. これは受験・問題解答の点から「読解テクニック」などと言われることもあるようですが, そんな大層な話ではありません.

さて, 読解として大事なことは次の点です.

  • 「例えば」が出てくるということは, この前後で何かわかりにくい面倒な話をしているはずだ.

こう思ってください. 第 1 文の訳の説明で「この 1 文だけを読んでも逐語訳こそできても物理としての意味を捉えるのは難しい」と書きました. アインシュタインもそれをわかっていて例を挙げて説明しています.

数学や物理を勉強するときにも何かわからないことがあったら例を作るのは決定的に大事です. 結城浩さんの『数学ガール』では「例示は理解の試金石」という印象的な言葉で表現されています. そのくらい大事なことです. この 1 文には英文解釈としてはそう難しい要素はありません. しかし学習上の配慮など総合的な視点からは非常に重要な示唆を含んでいます. ここまできちんと読み取り, 自分の学習・実践に活かせるようになってください.

メモ: a は any と使われることもある. a の理工系的使い方として文法で説明しておくとよさそう.

文構造・文法事項

英語
文構造
  • Take the reciprocal electrodynamic action
    • (action) of a magnet and a conductor
    • for example

本文では take と the reciprocal action に for example が挟まれて出てきます. 「例えば」と言っているだけの独立した挿入句です. 慣れていないと読みにくいかもしれません. 文構造としては添え物なので上の分解では最後に添える形にしました.

この文を単純化すると take A (of B) という形で命令文であり, of B は名詞句 A を修飾しています. 細かく見ていきましょう.

動詞ではじまっていて主語がないので命令文であることを読み取ります. Take の目的語が the (reciprocal electrodynamic) action で, reciprocal action (相互作用) が何と何の間の相互作用かを表すのが of 以下で補足されています.

ここで面白いのは冠詞です. A magnet と a conductor の相互作用には冠詞 the が使われています. A magnet と a conductor という一般の対象間であっても, その (reciprocal) action は物理法則で特定されるという感覚なのでしょう.

  • メモ: the は all のような気分もある.
  • 総称用法: the lion is ---. みたいな感じ.

For example は副詞句として文全体を修飾します. 英語ではここで出てくるような形での挿入がよくあります. 補足も参考にしてください.

補足

日本語からすると不思議な挿入

日本語でも口語ではいろいろな挿入表現があります. しかしこの文での for example のような挿入の仕方・場所に関して, 私は日本語の硬い文章, 特に理工系の文章で見かけた記憶はありません. 強いて言えば記憶にあるのは大学受験のときに読んだ人文系の評論・随筆です. ちなみにドイツ語原文でもフランス語でも同じ位置に挿入しているので, 英独仏ではふつうの語順・感覚なのでしょう.

私がこの手の英語の文章のような日本語での挿入表現を見かけた機会として強く覚えているのは, 漫画の「ジョジョの奇妙な冒険」です. 例えば第 5 部後半でブチャラティによる次のセリフがあります.

  • あとは, ジョルノ, 頼んだぞ

ふつうの日本語で見かけるのは次の 2 通りだと思います.

  • ジョルノ, あとは頼んだぞ
  • あとは頼んだぞ, ジョルノ

著者の荒木飛呂彦は洋画・洋楽が好きなようで, いろいろな形で海外の事情を取り込んでいます. 上の呼びかけに見える「ジョルノ」の挿入は英語で良く見られます. そもそも作中ではイタリア人の発言ですし, それを織り込んだ表現なのかもしれません.

何にせよここで出てくる「不思議な挿入」は英語の英語らしさを司る部分でもあります. 楽しんで鑑賞してください.

単語の意味を深く知る

ここでは語源を中心に深掘りしています. しかし他には英英辞典を使うという手もあります. 基本的な語彙力がない中高生には厳しいので, まずは基本的な語彙力を鍛えるために語源に遡ろうという手法を提案しているのです.

ここで 1 つコメントしておきたいのは第 2 文の主要な動詞 take です. Take はふつう訳語として「取る」を挙げることが多いでしょうが, 今回は take the action という形で出てきた上で「考えよう」という訳語を当てています. これは「取り上げよう」と訳せば「取る」に近い表現ではあります. しかしドイツ語では denken = think でもあり, 「考えよう」を採用しました. ちなみにフランス語では analysons = analyze でまた違う単語を当てています.

ここで英語としての意味を深く知りたいと思ったら英英辞典を調べてみましょう. 例えばオンラインの英英辞典で take を調べると次のような説明があります.

  • 8 STUDY [transitive] to study a particular subject in school or college for an examination

これがここでの take の意味でしょう. 日本語でも「授業を取る」という表現があり, それと対応する「取る」です.

英英辞典の使い方についても 1 つコメントしておきます. ある程度の語彙力, できれば大学受験突破程度の語彙力をつけた上で, 難しい単語よりも take のような中学生でも知っている基本単語を英英辞典で調べてみましょう. 基本単語は多くの場所で使われていて多種多彩な意味があります. 実際 LONGMAN では意味が 33 個列挙されています.

よく使われる基本単語に対する認識の深さがその人の理解の深さを決めます. そしてもっと大事なのは「よく知っていると思った単語であっても, 実はいくら汲んでも尽きないほど深く広い」のだと知ること・体感することです.

命令形の意味

命令形・命令文は日本語の言葉通りの命令の意味を持つとは限りません. もし第 2 文を文字通り命令だとすると「何で論文を読んでいて命令されないといけないのか」という話になります. 実は命令文には提案としての意味・用法があり, ここでは実際に提案の意味です.

  • もし第 1 文の意味がよくわからないなら, こういう例を考えてみてはどうだろう.

命令文のニュアンスを取り違えると「こちらは命令しているのに何でやらないのか」という話にもなるでしょう.

ちなみに, 実際の会話では命令の意図が強くなるほど丁寧な言葉になることがあるようです. 日本語でも「やりなさい!」と言われるより, にっこり笑いつつ有無を言わさない様子で「申し訳ないのですが, これをやって頂けると, 私, とっても嬉しいのですけれど?」などと言われた方が怖いでしょう. 英語にも同じ気分があるのです.

例を作る難しさ

訳のところで説明したように例を作るのは大事です. どのくらい大事でかつ難しいかというと数学では具体例を作るだけで論文になるほどです. 永田雅宜という数学者はヒルベルト第 14 問題を反例による否定的解決が世界的に有名で, Mr. counterexample と呼ばれています.

物理では例を作るのは現象の発見があたるように思います. この視点で言うと, 理論的に知られていること・予言されていたことを実験的に実現するのはこれまた非常に重要な業績です. どのくらい評価されているかと言えば, 分子の存在を実験的に証明したことで有名なペランは 1926 年にまさにこの業績でノーベル賞を受賞しています. ちなみにペランの実験のもとになったのは, 特殊相対性理論と同じく 1905 年にアインシュタインが書いたブラウン運動に関する論文です. 次のページの記述を引用しておきます.

ブラウン運動の理論 [2] 論文の原題は『熱の分子論から要求される静止液体中の懸濁粒子の運動について』 この論文の目的は,「ブラウン運動をする粒子の運動を測定することによって,原子(または分子)の存在が結論づけられる」ことを示すことだった.当時,物理学者の間でもコンセンサスが得られていなかった原子論が,実験によって決着できることを述べたのである.論文中では,Newton力学の現象論(物理的考察)とランダムに動く粒子に対する確率過程論(数学的考察)を併用し,理論の検証として「粒子の平均2乗変位」が観測可能な量であると結論した.この予言は,フランスの物理化学者ペラン J. Perrinによって,1908年に実験確認され,原子の概念がゆるぎなく確立することになった.ちなみに,博士論文は,このブラウン運動に関するものであり,アインシュタインの論文のなかで最も引用度が高いのは,博士論文であるという. この成果は,その後の物理学で,より小さな粒子の発見への足がかりとなったばかりではなく,確率過程という数学理論への発展を促した.(米沢富美子,「原子の実在を証明 ブラウン運動の理論」,数理科学 2003年10月号 p.31-37)

ここで数学への貢献が謳われていますが, 実際に数学ではそのものずばり「ブラウン運動」と呼ばれる数学的対象があります. 数学科の大学 4 年から大学院程度で議論するレベルの対象です.

これも有名な話ではありますが念のために書いておくと, アインシュタインのノーベル賞の業績は同じく 1905 年に出した光電効果の理論の論文が発端です. そしてもう 1 つ, 光電効果の実験的検証と高校物理でも有名な電気素量の測定によって, アインシュタインがノーベル賞を受賞したのと同じ年にロバート・ミリカンがノーベル賞を受賞しています.

アインシュタインがなぜ偉いか (すごいか) というと, 1 つあるだけでもすごいノーベル賞級の仕事を連発しているからです. 現在固体物理学と呼ばれる巨大な分野がありますが, 固体の物理・物性物理にはじめて量子論を適用して分野を切り開いたのもアインシュタインですし, 2001 年にボース-アインシュタイン凝縮の実験的実現に関わる仕事でノーベル賞が出ていて, 名前の通りアインシュタインが貢献しています.

ボース-アインシュタイン凝縮ですごいのは, はじめボースが光の量子統計に関して論文を書き, それが周囲で認められないからといってアインシュタインに論文を送ったところ, アインシュタインは即座にその価値を認め, さらに光以外の現在ボース粒子と呼ばれる系にまで一般化した理論を組み上げたという逸話です. 私が知る限りでさえ少なくとも 4 つのノーベル賞に関して本質的な貢献があります.

固体物理は半導体物理などの基礎であり, 半導体でもノーベル賞は出ています. 半導体の基礎理論を支える分野を開拓したことを貢献とみなすなら, これもノーベル賞級の貢献とみなしてもいいでしょう.

第004回 コンテンツ制作の方針と文法へのスタンス

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    • 一度音声が入っていなくてひどい目に遭ったことを忘れないように.

記事公開手順

  • 動画が変換でき次第, YouTube にアップしておく
  • md を整理しつつオリジナルのコンテンツに追記する
  • ブログに記事を上げる
    • URL スラッグは「studygroup-for-relativity」
    • Twitter で共有
  • md の「講義動画と関連リンク」を書き換える
    • YouTube へのリンクのタイトル・URL
    • 自サイト記事へのリンク URL
  • YouTube のタイトルと説明欄
    • タイトルは md・ブログ のタイトル
    • 説明欄は次の通り
1
2
3
4
5
6
7
この動画に特化したリンク先は次の通りです。

(講義動画と関連リンクの内容)

以下いつもの関連コンテンツ群です。

(YouTube 動画の説明欄にいつも張るリンク集)
  • 動画を公開して Twitter・Slack で共有
  • md を GitHub にアップロード

これを読んでいる方への注意・言い訳

これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください.

勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します.

適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

講義動画と関連リンク

はじめに

  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
  • 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.

今日の予定

  • 追加した文法の説明
  • 第 1-2 文の単語の深掘り

進捗

  • コンテンツ制作方針とそれに関わる文法の話
  • 「一般化助動詞についての注意」まで
  • 5 文型の話: こんなのも書きました, と軽く触れた程度
  • 文法の話はまた折に触れて議論する

TODO

  • 日本語・簡体字・繁体字の比較例
  • プログラミング言語の変化・進化に関する話

次週予定

  • 第 1-2 文の単語で面白そうなもの (いまの知見・能力で面白く掘り下げられた単語) を議論

今日のメモ

日本語・簡体字・繁体字の比較例

  • 日本語での「体」
    • 繁体字: 體
    • 簡体字: 体
  • 日本語での「電」
    • 繁体字: 電
    • 簡体字: 电
  • 日本語: 「体」
    • 繁体字: 對
    • 簡体字: 对

プログラミング言語の変化・進化に関する話

勉強会でプログラミング言語の変化・進化は必然かという質問があったので, それに対するコメントです.

プログラミング言語の研究成果や実践の中でいろいろな要望が挙がってくることを受けて変わるので, そうした経緯・意味で一般には必然的な変化です. もちろん後方互換性の問題があり, 引き起こしたい変化が後方互換性を破壞するような変更 (破壊的変更) に対する態度が各言語・文化圏で大きく変わります.

Java のような広く産業利用される言語では破壊的変更の影響が極めて大きく, 変化があるにしても破壊的な影響がないように慎重に進められます. 破壊的変更が入る言語のバージョンアップに対して, 産業の現場で古いバージョンを使い続けるようなこともあります.

伝え聞く話だと留保をつけますが, Java の場合は文化という観点からは面白い話がいろいろあります. 一時期は本当に言語の進化が遅々として進まなかったようですが, 最近の IT 界隈の状況に合わせてここ数年は言語そのものにかなり積極的なバージョンアップが入っています. 言語の変化・進化には言語が持つ文化圏という視点の他, IT 界隈の雰囲気という文化・社会の要素も含まれます. 自然言語でも日本では国語審議会があり, 「当用漢字表」、「現代かなづかい」、「常用漢字表」、改訂「現代仮名遣い」などを決めてはいますが, すぐに浸透するわけではありません. フランスでもアカデミー・フランセーズによる言語介入があります. こうした自然言語と似た事情は人工言語にもあるのです.

言語をよくするために破壊的な変更を含む変化をどんどん取り入れる言語もあります. 例えば少なくとも私が知る限りでは, バージョン 2.9-2.12 での Scala はかなり激しい変化を取り込んでいたと思います. これは Scala を好む人々が先進的な機能をどんどん使いたいという人々で, まさにそういう文化だったのです.

JavaScript は言語自体の変化もさることながら, 言語を取り巻く環境としてのライブラリなどに激しい変化・進化があった言語としての文化的な面白さがあります. ここ 2-3 年は React・Vue でかなり安定してきたようですが, 4-5 年はライブラリの群雄割拠という状態で, 毎月新しいライブラリが出てきて話題になるといった状況が続いていました.

変化の激しさは書籍などにも表われます. たいていのプログラミング言語に関わる書籍は, 数年前の本はほとんど使い物になりません. 中に書いてあるプログラムが動かず, 本を読んでいていちいちはまるのでかえって勉強を阻害します.

その一方で強い後方互換性があること, 根本的な変更が入らないこと, または柔軟に変更に応えられることを特徴にする言語や, それを大事にする文化がある言語もあります. その 1 つは Lisp です. Lisp はいまも現役の言語の中では, 数値計算でよく使われる Fortran につぐ寿命を誇っています. そしてプログラミング言語の書籍としては本当に珍しく, 30 年前の本でもその内容が十分に通用すると言われていて, 参考文献として紹介され続けています.

自然言語にも言語ごとの文化があるように, 人工言語であるプログラミング言語にも言語ごとの文化があります.

内容: コンテンツ (案) からの転記

文法や単語に関するコメント

だいぶ前に書いた分も整理する必要があるが後回し. コンテンツをある程度作ってみて全体をどう組むべきか見えてからの方がよさそうだから. せっかくなのでいくつかは紹介する.

単語
多言語対照記憶法

これは中高生にはお勧めできないというか, 実行不可能な方法です.

もしあなたがある程度の語彙を既に持っているのなら. ドイツ・フランス・イタリア・スペイン語などから類推した方が覚えやすいことがあります.

例えば parliament という単語があり, これは議会という意味です. かなり古い表現はいまはあまり使われないようですが, これの類語として客間・お店と言った意味の parlor という単語もあります. 英語だけ見ているとこれがなぜ類語で, このような意味を持つのかわかりません.

これは実はフランス語に起源があります. 実はフランス語の「話す」 (talk, speak) は parler という単語であり, parliament にしろ parlor にしろ, 「話す場所」から議会や客間という意味が来ています. このように英語以外の言語を介して意味を見抜けることがあります.

英語の 7-8 割はフランス語から来ていると言われています. ノルマンコンクエストに由来する歴史的な事情によります. フランス語はラテン語の系統で, 一方, 英語はゲルマン語の系統なのです. そして英語のもう 1 つの親はドイツ語です. つまり英語の深いところを探ろうと思うと, どうしてもドイツ語とフランス語が出てくるのです. 日本語は漢字を使って書かれていますし, どうしても中国語の影響があるというのと同じことです.

相対性理論の原論文がドイツ語なので, このドイツ語ならまだしもこの講座でフランス語を扱うのはどう考えても無理です. ただ, こうしたアプローチがあることは覚えておいてください. 特に大学で第 2 外国語としてフランス語を勉強した人は, それを思い出すといろいろないいことがあるでしょう.

英語には品詞がない?

ここまでとは少し違った視点から考えます. ある単語が複数の品詞を持つという現象, そして同綴異義語 (どうてついぎご) という視点です.

世界中で使われているという事情もあってか, 英語は単語の使い方がかなり簡単に・頻繁に変わる言語です. その 1 つとして, 単語の品詞が簡単に変わる (追加される) という現象です.

例えば Google という会社はいまや日本人の誰もが知る会社でしょう. もちろん元は社名なので名詞です. しかしかなり前から先頭を小文字化した google がそのまま「検索する」という意味になっています. 杓子定規に言えば, 別の意味を与えられた上で別の品詞として使われるのです.

他の事例も見てみましょう. move のように同じ意味で名詞と動詞が同形の単語, book のように名詞では「本」という意味, 動詞では「予約する」という意味で少し意味が変わることもあります: 「本に記録する $\to$ 予約する」という推測はできるので, 全く違う意味というわけでもありません. もちろん google もこの手の形です.

(beech: ブナの木)

形容詞と動詞が同形のパターンも見てみましょう. free は形容詞で「自由な」, 動詞で「開放する」といった意味です. loose は形容詞で「緩い」, 動詞で「ゆるめる」です.

意味によって発音が変わる単語もあります. 例えば live はリブと読めば動詞で「生きる」, ライブと読めば形容詞で「生の」という意味です. 音楽などのライブを想像すればいいでしょう. 他に close はクローズなら動詞で「閉じる」, クロースなら形容詞で「近い」という意味です.

名詞・形容詞・動詞が同じ形の単語もあります. リストでまとめておきます.

  • water:「水」「水の」「水をやる」
  • ice:「氷」「氷上の」「凍らす」
  • mail:「郵便」「郵便の」「郵送する」
  • 同綴異義語パターン
  • light:「明かり」「灯す」/ 「軽い」
  • fine:「素晴らしい」/ 「罰金」「罰金を科する」
  • subject:「主題」/ 「従属の」「従属させる」

挙げていくときりがありません. 次のもっと複雑なパターンもあることを紹介して終わりにします.

  • sweet: 形容詞・名詞, 「甘い」「甘いもの」.
  • right: 名詞・形容詞・副詞・動詞, 「右」「右の」「右に」/ 「権利, 正当」「正しい」「正しく」「正しくする」
  • round: 名詞・形容詞・副詞・動詞, 「丸いもの, 一回り」「丸い」「丸く」「丸くする」
  • well: 副詞・形容詞・名詞・動詞・間投詞, 「よく」「よい」「井戸」「湧き出る」「おや, まあ, えっと」
  • down: 副詞・形容詞・名詞・動詞・前置詞, 「下に」「下の」「下位」「打ち負かす」「~を下って」
  • May: 名詞・助動詞「五月」「~してよい」
  • can: 名詞・助動詞, 「缶」「~できる, ~してよい」
  • spoke: 動詞 (過去形)・名詞, 「(speak の過去形) 話した」「 (車輪の) スポーク」

これらもある意味では多義語と言えるでしょう. 相対性理論の単語集に品詞をつけておいたのは, こういう事例がたくさんあるからです. いきなり品詞情報まで覚えようとしても大変なので, 少しずつ覚えていってください.

意味は子音で取る

次のような穴埋め問題を考えます.

  • s-ng

ここでハイフン - を入れたところに何が入れられるでしょうか? 例えば次のような穴埋めができます.

  • song, sing, sang, sung

これは「歌」を表す名詞・動詞とその活用です. 母音は「歌」の意味はそのままにして品詞や活用を表すのに使われています. 実際, この動詞の活用は変則的だと言われてはいますが, 同じ変則的な活用をする動詞はたくさんあります. これも少なくとも英語では子音が単語の意味を決めていることがわかります.

これが有効活用されている事例として, 少なくとも数学の現場で使われている略語を紹介します.

  • bdd = bounded
  • mfd = manifold
  • iff = if and only if
  • sqrt = square root
  • eq = equal

完全に全てとは言えないものの, 見事なまでに主な省略対象は母音です. そしてこれできちんと意味が通じますし想像もできます.

また省略という概念に対する基本も確認します. 省略は枝葉を取り除いてエッセンスを残す作業です. そしてそこで残る要素が実際に子音なのです. 英語圏の人々にとって間違いなく単語のエッセンスは子音にあることがわかります.

少し話がずれますが, 何がエッセンスかを判断する上では漢字の省略を眺めるのも面白いでしょう. 例えば台湾でいまも使われる繁体字はいわゆる「昔の面倒な漢字の書き方」で, 現代の日本語はそれをアレンジして簡単にしたバージョンを使っています. 一方, 中国大陸側では簡体字と呼ばれる日本語とはまた違う省略形を使っています.

いくつか眺めるとわかるように簡体字の省略はすさまじいです. 時々「中国人は省略のセンスがない. 省略しすぎていて元が何だかが全然わからない」という日本人がいるようです. これはそもそも漢字を眺めるセンスが中国大陸の人々と日本人とで全く違うと見るべきでしょう.

いくつか例を挙げておきます.

  • 日本語での「体」
    • 繁体字: 體
    • 簡体字: 体
  • 日本語での「電」
    • 繁体字: 電
    • 簡体字: 电
  • 日本語: 「体」
    • 繁体字: 對
    • 簡体字: 对

何をどう省略するか見るだけでも言語に対する感覚が現れます. 他の言語を勉強することは自分の中に他の文化圏を受け入れることでもあります. 自分の中に多元的な文化・世界を育むと言ってもいいですし, 文化的な侵略だと捉えたくなることもあるでしょう. 何にせよ言語にはその言語圏の文化が色濃く反映されているので, 深く言語を理解するには対応する文化の理解も不可欠です.

文法
この講座での文法の役割

この講座は理系のための語学・リベラルアーツというスタンスが基礎にあります. 物理・数学になぞらえると, ガリレイの「自然という書物は数学の言語で書かれている」という有名な言葉があるように, 言語・文章という自然を, 文法という人間が見出した法則で読み解くというイメージで, 数学・物理学習にも活きる形で構成するのが目的です.

物理に対する数学のように, 文章に対する文法は人類の知見がフルに叩き込まれた最も重要な道具というスタンスを取ります. そして中学・高校で勉強する文法はほぼそのままの形で理系向け語学・文章読解に使えます. 世の中にはすでにいろいろなレベルに合わせた文法の本があり, 学校で買った参考書をきちんと勉強してもらえればそれで十分です. ここでは同じようなコンテンツを作るのに労力を割くよりも, それらを下地にしてより深く文法を勉強し理解するための内容を議論していきます.

プログラミングと文法

この講座は理系のための語学・リベラルアーツというスタンスが基礎にあり, 理工系科目として基礎に据えているのは数学・物理・プログラミングです. 特にプログラミングの側面から文法を捉えてみましょう. 実際にいろいろな問題があるからです. 私の文法に対する感覚はよくも悪くもプログラミング学習・実践による部分が大きくあります.

まずプログラミング言語からすると文法はある種の絶対性があります. 人間相手に自然言語でコミュニケーションするときは文法的に正しく話さなくても相手に通じます. しかしプログラミング言語で機械とコミュニケーションするときは, 文法的に正しくないと全く相手に通じません. 大文字・小文字を間違えたり 1 文字スペルミスしただけで「何を言っているかわからない」と突き返されます. 本当に何一つ意思が通じなくなるので, 文法の意義を学ぶには英語を勉強するよりもかえってプログラミング言語という人工言語を勉強した方が早いくらいです.

一方でプログラミング言語のもう 1 つの問題は自然言語より遥かに短い期間で文法が変わりうることです. プログラミング言語には明確なバージョンがあります. あるバージョンではこう書かなければならない一方, 別のバージョンでは違うように書かなければならない, そんな事態がよく起こります. 後方互換性の問題と呼ばれます.

文法学習という観点からは後方互換性も重要です. バージョンごとに絶対性 (文法にしたがわないと本当に話が通じない) がある一方, バージョンごとにそのルールそれ自体が変わるのです. もちろんある言語を固定すればその言語内でルールが根源的に大きく変わることはそうありません. しかし, 微妙な違いであったとしても, そのルールは絶対的で強制されるため, 影響範囲・被害が甚大になることもよくあるのです. 自然言語のようにゆるく漸進的に変わっていくとは限りません. 必ずしも両立しない自然言語に対する文法感覚と, 人工言語であるプログラミング言語に対する文法感覚を両方育てることこそが, この講座でのリベラルアーツの 1 つの要点とさえ言えるかもしれません.

ちなみにバージョン変更で根源的に文法ルールが変わることはありえます. 例えば Egison と呼ばれる言語ははじめ Lisp 型の括弧による構文の言語だったのですが, あるバージョンからは Haskell 型の構文に変わっています.

文法分析の注意

人間が間違って理解・適用しない限り, 自然は自然法則にしたがって動くと理解するのが物理です. 「人間が間違って理解・適用しない限り」例外はないと仮定しています. うるさいことを言えばきりがありませんが, ここではこの仮定を全面的に受け入れましょう.

例えば「飛び出すな 車は急に止まれない」というとき, ニュートンの運動方程式が成り立つ範囲の古典力学が支配する世界にいる限り, 急に止まれる車は本当にありません. ここで「適用範囲を間違えない限り」という注意が決定的に大事です.

文法はお行儀よく書かれた文章を読むときに役に立つ概念です. 極端に言えばそれ以外の場合に使える保証はありません. 人は常に文法通りに言葉を紡ぐわけではないのです.

文法は何とかして言語の中にルールを見出したいという人の心の結晶で, もちろんできる限り例外事項を補足しようという動きもあります. しかし実際の発話ではいくらでも無茶ができます. 例えば外国に行ったときに片言の単語だけで何かを話して伝えようとしたとき, 「お前の言葉は文法的におかしいので何も意味がわからない」と言われても困るでしょう. 言語はコミュニケーションを円滑にするための道具にすぎず, その目的の方が重視されるときに「文法的におかしい」と言われても「おかしいのはお前の方だ」としか言い様がありません.

ときどき文法を神聖不可侵の金科玉条のように扱う人がいます. 私達は英文をよりよく理解するため, それが役に立つ場面で文法をうまく使おうとしているだけであり, 具体的な文を文法で裁判したいわけではありません.

文法は時代によっても変わります. 学校でも勉強するように, 日本でも平安時代の貴族による日本語文法と現代文法は必ずしも一致しません. そもそも字面が同じでも単語の意味さえ一致しないことがあります. 言葉は生き物であり, 変化・成長します. 本来, 杓子定規に文法が適用できる対象ではありません. それでもできる限りのルールを見出してみたいという特定の人々の欲求から生まれたのが文法理論です. 現実の言葉が先, 文法が後です. それを間違えてはいけません.

一方, 文法的に整った文は物事を伝えやすくなるときがあります. 特に難しいこと・面倒なことを伝えるときにはできる限り文法的に整った文を書くモチベーションが出ます. その極致が論文をはじめとした学術的な文献です. 特に論文に出てくる文章は内容がとにかく難しいですし, 微妙な表現の違いで意味やニュアンスが決定的に変わる文章も出てきます. だから文法面で非常に繊細な注意を払って読み書きする必要があります. 逆に言えば文法がこれほど使える場面はありません. そこで実際に文法的な正確さが強く担保された文章を読み書きすることで文法を実戦的に勉強しようというのがこの講座の意図・目的です.

臨機応変に取り組む

まず目的をはっきりさせましょう. 私達がしたいのは次の 2 点です.

  • 文章のスタイルで書かれた相手の主張を素早く的確に理解したい.
  • 自分の主張を文章で的確に表現したい.

この 2 点を効率よく効果的に実現するために文法を使います.

実際の文章読解で各文を文法的に考えるとき, 大事なことは上の 2 点を達成することです. 具体的に言えば文法的にきちんと考えるときでさえその考え方は 1 通りではありません. 内容に関する解釈の幅があるように, 文法的に見てもその文の文法事項の解釈にも幅があるのです.

もっと言えばあなたが中学・高校で勉強した文法だけが全てではありません. 中学・高校の文法は言語学的にはもっと細かく分類されているかもしれませんし, 逆に実は同じものだとして複数の概念が統合されて理解されるようになっているかもしれません. 日本語の古文と現代文を見てもわかるように, ゆっくりではあっても文法は少しずつ変わっていきます. 現在の物理学の理解では, 物理的な自然法則は過去現在未来, 全時空で同じ物理法則が成り立つとされていますが, 言語の法則である文法はそうではないのです.

この講座では次の 2 点を意識しながら文法を活用します.

  • よりよい文法理解を目指す.
  • 1 つの文を文法的にいろいろな視点から眺めて英語に対する感覚を磨く.

この意味は読解編を読み進めながら体得してください.

法助動詞と一般化助動詞

ここでいう一般化助動詞はこの講座だけの独自用語なので注意してください. 適切な文法用語を見つけられたらそれに差し替えます.

まず法助動詞はいわゆる助動詞, つまり can, will, may, must, should などです. 一般化助動詞は be able to, be going to, have to が代表例です. 他にも appear to, seem to などのように助動詞とみなした方が理解しやすい表現があります.

イントロダクションでも注意したように日本の中学・高校で勉強する文法だけが英文法ではありません. 研究者達が考える言語学の水準から見たもっと詳しい文法もあります. Appear to や seem to が助動詞だなんて聞いたことがないと思うかもしれませんが, そう考えた方が理解しやすいことがあるならそうした概念を新たに定義してもいいのです.

一般化助動詞についての注意
# TODO メモ

これ, 単語の意味の方に置くか文法に置くかどうするか?

# have to
  • https://eikaiwa.weblio.jp/column/study/english_study_skills/uses-of-have-to
  • https://note.com/tkiyoto/n/nf33a1739c078

have to は一般化助動詞だと書きました. 中学・高校の教科書では (一般化) 助動詞と書いてありますが, そもそもなぜ have to が助動詞なのかという話もあります. それについて考えてみましょう.

話を固定するために次の文を考えてみましょう.

  • I have to study English.

まず動詞の have は「持っている」という意味があります. そして何にせよ have to のあとには動詞の原形が来ます. これは have + to 不定詞とも考えられ, 上の文は「私は英語を勉強することを持っている」と日本語に直訳できます. ここからこの文章の解釈の問題が出ます. 「持っている」のが他者から持たされているなら「英語を勉強しなければならない (その義務がある)」と訳すべきかもしれません. 「好き好んで持っている」なら「英語を勉強したい」と訳すべきですし, もう少し価値中立的に「英語を勉強する必要がある」と訳すべきときもあるでしょう.

この解釈の幅は否定形の意味を考えるときに強く出てきます. 肯定形は must と同じで「しなければならない」と訳すのに, 否定形で I don't have to study English. は「勉強する必要がない」と訳すのは不自然だと思ったことはないでしょうか? これは上の肯定文の解釈とも関係があります. 本来 have to は「---することを持っている」ことを意味するだけで本来は中立的な意味しかありません. 否定形ではそれに忠実な日本語訳をつけているわけです.

こう思うとそもそも日本の中高英語文法で have to は must と同じような意味とするのは正しいか? という疑問が出てきます. あくまでも have to を助動詞とみなす視点を堅持した上で, have to に否定形と揃えた意味を持たせたいなら have to は「---する必要がある」と訳すべきでしょう. 一般化助動詞について考えるときは最低限この程度の思考・思索は必要です.

念のため補足しておきます. どうやら英語の教員がその手の杓子定規な解釈を重視しているようなので, 下手な訳をつけると逆にバツにされるという問題はあります. しかしそれは個別の教員の資質やら現在の日本の学校教育の問題です. 私達の立場で英文を正しく理解という欲求, 私達の英文法に対する認識とはまた別の話です.

# be able to

ときどき be able to は can の意味だと言われることがあります. これも本当か? という話があります. 例えば can には may の意味を強めた推量の意味があると言われます. これは can の「できる」は可能性に関する意味があり, その可能性の意味からの転用として推量の意味を持つようになったと考えられます. しかし私は be able to に推量の意味があると聞いたことがありません.

一方, 一般化助動詞 be able to をいつ使うかと言えば, 例えば "I may not be able to do it." のように本助動詞と組み合わせて使います. これは助動詞が重ねられない (遥か昔そういうルールで運用しはじめて今も方針変更されていない) 英語の事情があり, そのときに be able to で回避・代用したのが一般化助動詞として定着したのでしょう.

# be going to

これは未来表現としての will の代わりに使うことになっています. そして will と be going to は例えばこのページで説明されているように次のような使い分けがあるとされています.

  • 未来のことが前もって考えられていたことかどうかで使い分ける.
    • be going to: 発言する前から決まっていたこと, 既に予定されていたことに使う.
    • will: その場で思いついたこと, 決まっていなかったことに使う.

しかしこれも本来的に will の単純な言い換えではありません. Will は名詞として「意志」などの意味を持ちます. つまり未来表現に使う will はもともとそうする意志を持っているという意味があり, その意志を持って行動するなら未来はきっとそうなるだろうという意味で未来表現に転用されています.

一方 be going to は必ずしもそういう意志を持たない意味にも使えます. つまり他の人に予定を入れられたからそれに合わせて向かっていく (go to) のであり, 自分の意志とは必ずしも関係ないはずで, その辺の微妙なニュアンスの違いが上に書いた使い分けに響くのでしょう.

TODO will の話はあとで適当な場所に移す.

5 文型: 文型それ自体が意味を持つ

次に説明するように, 各文型はそれ自体が意味を持っています. うるさく言えば文型の分類自体も諸説あるようですし, 何がどの文型に属するのか, 完全分類できるかも明らかではありません. ここではあくまで英文理解の役に立てることを目的に, 金科玉条にはせずに進めましょう.

大西泰斗氏は各文型に次のような名前をつけています.

  • S+V $\to$ 自動型
  • S+V+C $\to$ 説明型
  • S+V+O $\to$ 他動型
  • S+V+O+O $\to$ 授与型
  • S+V+O+C $\to$ 目的語説明型

名前をつけるとそれで意味が固定されてしまいがちですし, その名前に引っ張られて利用者が柔軟性を失ってしまうこともあります. 適切な命名が大事な理由でもあります. 上の命名は 1 つの適切な入口を与えてくれはするので, まずはこれで大まかに特徴を掴むのもいいでしょう.

5 文型: 各文型が持つ意味
# 第 1 文型 SV

第 1 文型 SV は there is/are 構文が典型的なように, 「S が存在する」という意味を持ちます. 存在のあり方を強調するために be 動詞から他の適切な動詞に変えることがあります. 例えば数学では存在性を強く主張するために there is をわざわざ there exist と書くことがよくあります. むしろ exist の方を良く見かけるほどです.

他には特殊相対性理論の論文では実際に次の文があります.

  • Asymmetries do not appear to be inherent in the phenomena.

これは asymmetries の存在の様子が to be inherent in the phenomena だと言っています. 存在の様子を断定するのではなく, 「---なように見える」と訳せば動詞 appear の意味を持たせています.

# 第 2 文型 SVC

第 2 文型は SVC で, この型は次の 2 つの意味を持ちます.

  • S は C の特性を持つ.
  • S と C は等しい.

大雑把に「S = C」とまとめてもいいでしょう.

  • I am a teacher.
  • He is my brother.

これらはまさに be 動詞が等号だとみなせる例です. もちろん第 1 文の I は先生であるだけではなく, 誰かの親だったり, 生徒だったり, 娘だったりするかもしれません. こう思うと単純な等号ではなく包含を表すような「特性を持つ」というニュアンスが出てきます.

補語が形容詞でも同じです. 次のような文を考えてみましょう.

  • She is smart.
  • He is nervous.

前者はまさに she = smart ですし, 後者も he = nervous です. うるさいことを言えば, もちろんこれも「そういう側面がある」だけで完全な等号ではありません.

他には動詞 become も第 2 文型を作れます. Be 動詞ではない以上, 「S はこれから C になる (C と等しくなろうとする)」といった意味に変わりますが, 等号を基礎にした意味を持つことは同じです.

# 第 3 文型 SVO

第 3 文型 SVO は型が次のような意味を持っています.

  • S が V を通して O に影響を与える.

むしろ第 1, 2, 4, 5 文型以外の意味を全て担うとイメージした方が適切かもしれません. この文型は英語表現の格で, 第 3 文型を使うと英語らしい表現がたくさん作れますし, 英語表現の面白さを実感できる文型でもあります. 日本人が第 2 文型で書きがちな文を第 3 文型で書くと英語らしくなりますし, 表現が豊かになります. 例えば次の文を見て比較するといいでしょう.

  • It's easy!
    • I can do it!
    • I have no problem.
  • This book is good for students.
    • I recommend this book to students.
    • This book helps students.
    • Students should read this book.
    • This book grows students.
  • My favorite food is sushi.
    • I like sushi.
    • I love sushi.
  • There is an ATM in the hotel.
    • The hotel has an ATM.
  • My job is an English teacher.
    • I teach English.
  • I'm busy.
    • I have many things to do.
    • I have no time.

一般に第 3 文型にすると意味が明確になります. 場合によっては文が短くなって意味が取りやすくなることもあります.

主語や目的後を自由に変えられるようになることで, 話の主体がどこにあるのか明示しやすくなる利点もあります. 例えば This book is good for students. では, 私が勧めることに主眼があるのか (私のお勧めが何か聞かれている), 本の良し悪しが問題なのか (この本がお勧めなのか聞かれている), 生徒が主体にあるのか (教師にとっていいのか生徒にとっていいのか) などいくつかの論点があり, それに応じて主語・目的語を柔軟に切り替えるべきときがあるからです.

この講座は読解中心なので英作文は強調して勉強しませんが, 英作文について強いていうならいろいろなことを第 3 文型で表現するようにしてみましょう. 英語の表現の幅があがります.

# 第 4 文型 SVOO

2 つの目的語を区別するために第 4 文型は SV O1 O2 と書くこともあります. こう書くと第 4 文型は次のような意味を持ちます.

  • 01 に 02 を与える.

「与える」というよりも「奪う」というニュアンスを持つこともありますが, 数学的に捉えてプラスを与えるかマイナスを与えるかと思えば「与える」で統一できます. いくつか例を見てみましょう.

  • I'll show you some pictures. (私はあなたに写真を見せるつもりです.)
  • My mother bought me a new bike. (母は私に新しい自転車を買いました.)
  • My girlfriend cooked me a nice meal. (彼女は私においしい料理を作ってくれました.)

「奪う」系の例も紹介します.

  • This big mistake may lose you your job. (この大きな失敗であなたは仕事を失うかもしれない.)
  • Computers save us a lot of time and trouble. (コンピューターのおかげで多くの時間と手間が省ける.)

前者の文は次のように第 3 文型で書いた方がシンプルではあります.

  • Computers save our time and trouble.

ここで a lot of を省略しています. この省略で意味が変わるかどうかは何が主張のメインかによります. もし「たくさん」であることを強調したい場合は省略すると意味が変わります. しかし時間と手間が省けることに重きがあって量にはそれほど関心がない場合, この省略で意味は大きく変わりません.

TOOD 後者の文, 第 3 文型ですっきり言えない?

後者に関してはいろいろな書き換え方があります. 第 4 文型を使うと形式的には短く表現できる一方で第 4 文型は扱いにくい面もあります. 例えばある動詞が第 4 文型を取れるのかどうかという文法上の問題があるからです. そう思うと次のような書き換えがあります.

  • I may be fired because I make a big mistake in my work.
# 第 5 文型 SVOC

第 5 文型は他よりも複雑な構造を持っています. 特に後半の OC はよく O = C と説明されることもありますが, これだと少し不都合なこともあります. 次のように整理すると SVOC が持つ意味を統一的に考えられます.

  • OC は本質的に文の構造を持った形が来る.
    • 特に第 2 文型か第 3 文型が来る.
  • 特に OC の O とは必ずしも一致しない存在として S があり, S は V の視点で OC が指す内容を捉えている.
    • OC の意味を S が V の視点で変えるとも言える.

詳しく見ていきます.

  • I find this book difficult, but he finds it easy.
    • 私はこの本は難しいと思うが, 彼は簡単だと思っている.
  • I make him read the book.
    • 私は彼に本を読ませる.

前者の OC は第 2 文型のイメージです. そして O = C というわけではなく, 「私」から見ると本は難しく見える一方で「彼」から見ると本は簡単です. これが「S は V の視点で OC を捉える」という意味で, O と C の関係が S によって変わっています. 第 2 文型での単独の文 this book is difficult. は客観的な意味を持つ一方で, 第 5 文型の OC におさまると主観的な意味に変わると言ってもいいでしょう.

後者の OC は第 3 文型で, 動詞は使役動詞です. そもそも等号を意味する第 2 文型ではありませんが強いて等号で説明するなら, 「彼」が主体的に本を読むのではなく, 「私」が読ませることで強制的に O=C の状態に持っていくとみなせます. これも S によって O と C の関係が変えられています.

このように第 5 文型は OC の関係性と SV の関係性の 2 つを含む複雑な構造になっています.

TODO 前者の例は I find that this book is difficult. とどういうニュアンスの違いがあるか?

# SVO と SVOO の書き換え

中学・高校で SVO と SVOO は言い換え・書き換えできると勉強したはずです. 表面的には書き換えできますが, 違う文には違う意味, もっと言えば違うニュアンスになることがあります. 日本語でも「相手の感情を傷付けないように言い方を考えよう」ということがあるのと同じです. ここではその問題を考えてみましょう.

よくある次の 2 文を考えます.

  • (SVO) Mary gave a present to Bob
  • (SVOO) Mary gave Bob a present.

どちらも大雑把には「メアリーはボブにプレゼントをあげた」と訳します. 英語の語感としてどうもこの 2 文は違うようです. その感覚が何に由来するのはを考えるのも言語学の役目です. 言語学として多くの議論があるそうで, 専門ではない私はその全てを追い切れていません. ここでは他の文章読解にも役立つ形で 1 つの見方を紹介します.

結論から言うと上の 2 文は「ボブがプレゼントを受け取ったかどうか」にニュアンスの違いがあります. これを前置詞 to の有無という視点から見てみましょう. SVO の文には SVOO にはない前置詞 to があります. ここで前置詞 to は方向性を指し示していることに注意します. 「I go to school.」は「私は学校へ行く」という日本語にするのが普通ですが, to を杓子定規に理解すると「私は学校の方に向かっていく」とも受け取れます.

第 4 文型では明確にボブにプレゼントを渡している一方, 第 3 文型ではプレゼントを渡そうとしただけでボブが受け取ったかまではわかりません. 渡そうとしたが実は拒絶されたという結末もありえます.

日本人の感覚からすると「to が付くか付かないか程度でそんなことがあるのか?」とも思います. しかし日本語でも「私はそうします」というか「私がそうします」で微妙なニュアンスの違いがあるように, この書き換えでそうした微妙なニュアンスの違いは出るようなのです. もっと言えば to はそのくらい微妙な塩梅を表現できる装置です. こうした to のはたらきについては他のところでもいろいろな形で説明します.

# 文型を柔軟に捉える

イントロダクションで大事なことは文章の内容を正確に理解することであり, 文法はそのための道具でしかないので金科玉条として杓子定規に考えては逆にその力を失ってしまうと書きました. 文型理解でも同じです. どう考えるとその文を的確に理解できるかが大事なのです.

例えば形式的に見れば第 1 文型であっても第 2 文型として捉える方が適切な場合もあるのです. 論文の英訳第 1 文でまさにそうした例が出ています. 実際に原論文を確認してみてください. 読解編を読んでもらえればそこでも解説しています. もちろんいろいろなところで出てくる例です.

# 文型を柔軟に捉える具体例: be in motion

特殊相対性理論の論文で次の文があります.

  • (en.3) either the one or the other of these bodies is in motion.

この be in motion を be moving と思って問題ないか考えてみましょう.

まずここでの move は自動詞なので, 現在進行形にしても S+V の第 1 文型と捉えて問題ありません. しかし一般論として現在進行形は S+V+C の第 2 文型に分類されることがあります. 例えば大西泰斗氏の著書では, 存在を意味するタイプの文を除いて be 動詞が構成する文は S+V+C の「説明型」 (主語の状態を C で説明する文) と書かれています. つまり be moving は「動いている (moving) 状態である」ことを説明している内容です. そう考えると中学でよくある第 3 文型と第 4 文型の書き換えのように, 微妙にニュアンスが変わることはなく be in motion と同じ意味と考えていいでしょう.

一方の in motion については, 例えば江川泰一郎の「英文法解説」の「前置詞 + 抽象名詞」の項に「英語らしい表現で, 文語調」という説明があります. この手の表現は論文のような硬い英語ではよくあり, of importance = important などと同じです.

# TODO 文型を柔軟に捉える: 受動態の文型

受動態の文型は考えない (無理にあてはめない) という話.

  • 参考: https://spice-of-englishgrammar.com/sentence-pattern-passive-voice/

たしかにS・V・Oを振り分けていますが、通常の最も身近な五文型とは少し異なっていることが感じられるかと思います。

TODO 少し違うという意味の確認. 次のように考えているが適切か?

「型が意味を持つ」という文型論の大原則からすると型自体に受身という意味を持たせたいが, 5 文型の議論で受身の議論はない. つまり第 5 文型は受身を無視した整理の仕方なのだと言える.

冠詞 a の使い方: any の意味

特に理工系・数学で重要な使い方に関して説明します.

  • (en.2) Take, for example, the reciprocal electrodynamic action of a magnet and a conductor.

上の例文で a magnet, a conductor とあります. ここの冠詞の a は any のような意味も持っています. 日本語, 特に「数学用語」で言えば「任意の」という言葉があてられます. つまり次のような意味です.

  • 任意の磁石と任意の導体の電気的相互作用を例に挙げよう.

もちろん次のように訳すのがふつうでしょうし, それで全く問題ありません.

  • ある 1 つの磁石とある 1 つの導体の間の電気力学的な相互作用を例に挙げよう.

もう少しイメージしやすい例をいくつか挙げておきます.

  • A cube has six surfaces.
  • 立方体は 6 面ある.
  • 任意の立方体は面を 6 つ持つ.

どんな立方体であったとしても立方体である限り定義によって 6 面あります.

  • A cloud is a mass of vapor in the sky.
  • 雲は空中での大量の蒸気の集まりである.

同じくどんな雲であれ雲は定義によって水蒸気の集まりです.

  • An elastic substance returns to its original shape.
  • 弾力性のある物質はもとの形に戻る.

弾力性のある物質は弾性体と呼ばれます. 同じく弾性体はその定義によって弾性限界を超えるまで必ずもとの形に戻ります.

冠詞 the の使い方: all の意味

The には次のように総称的な用法があります.

  • The electron is a fundamental particle with negative electric charge that is found in atoms.
  • 電子は負の電荷を持った基本粒子であり, 原子の中に見られる.

ここでの the electron は「全ての電子」「電子というものは」という意味で, 形式的には単数ですが総称的に使われています.

本文単語

★がついた単語を眺める. いま面白いと思っている (それだけのコメントができる) 単語としてリストアップしている.

第005回 第1-2文の単語の掘り下げ

まず確認

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これを読んでいる方への注意・言い訳

これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください.

勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します.

適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

講義動画と関連リンク

はじめに

  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
  • 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.

今日の予定

  • 第 1-2 文の単語の深掘り

進捗

  • know, Maxwell, electrodynamics, electric, electricity, dynamic, dynamics, understand の紹介

TODO

  • 名詞の単数形・複数形の議論を詳しくやっていく

次週予定

  • 第 3 文突入

今日のメモ

  • 名詞の単数形・複数形の議論は大事

内容: コンテンツ (案) からの転記

単語の素因数分解

少し複雑な単語になると, その中にいくつかの要素が見えます. 部首やつくりがある漢字を考えるとわかりやすいでしょう. 見たことがない漢字が出てきても, 漢字を自然にいくつかのパーツにわけた上で, さんずいがあれば水に関わる意味だろうと推測できるでしょうし, パーツを組み合わせて意味を推測するのはよくやるはずです.

英語にも同じ要素があります. 典型的には語幹・接頭辞・接尾辞です. これらの概念を使って単語を因数分解していくと, 難しい単語がよく知っている簡単な要素にわかれることはよくあります. こうした視点を含め, 単語解説ではいろいろな視点から単語を眺めます.

Gould による Russian for the Mathematician という本にもこうした解説があります. ロシア語はスラブ系の言語である一方, ゲルマン系のドイツ語とロマンス系のフランス語の影響を強く受けていて, ラテン語の影響もあります. これにも単語理解のために単語を因数分解して理解しようという注意がいくつもの例を挙げて詳しく議論されています.

理解を深める

英語または他の言語を通じて日本語の理解をも深め, さらには学習全般への理解を深めることも理工系のリベラルアーツを目指すこの講座の目的です.

例えば understand の項を読んでもらうとわかるように, 理解といってもいろいろあります. 実際 understand の項では類語として apprehend/comprehend を挙げています. Understand は混乱していたものをすっきりさせるという意味での理解, apprehend は何か 1 つをがっちり掴むという意味での理解, comprehend は全体をがっち掴むという意味での理解を表しています. ここで英語を通じて「理解」という日本語自体への理解も深まりますし, 他の国の言葉を深く理解する中で国語の理解も深められます.

そして理解という言葉への認識が深まると, いまの自分の状態をさらに深く理解・分析できます. 例えば「いろいろな知識は入ってきたがすっきりとした理解ができない」状態なら, それらを統合してくれる一般論や抽象論を勉強するといいでしょう. 一方で「曖昧模糊としていてはっきり見えない」状態なら具体例をいじり倒してみるのが適切です. 何を勉強するべきか, どう勉強するべきか方向性を自分で見つけるためにも役立つのです.

今回紹介した単語

know

Wiktionary によると対応する印欧祖語は *ǵneh₃- です. Etymonline にはなかなか面倒なことが書いてあります. 特に第 2 段落を見てください. 翻訳して紹介しましょう.

いったんゲルマン語で広まったが, この動詞はいま英語でだけ保持されている. 英語では広く応用されていて, 他の言語での 2 つ以上の動詞の意味をカバーしている. 例えばドイツ語では wissen, kennen, erkennen, そして特に können, フランス語では connaître (英語では perceive, understand, recognize に対応する), savoir (「その知識を持っている」という意味での「知っている」), ラテン語では scire (understand, perceive) や cognoscere (get to know, recognize), 古代教会スラブ語では znaja, vemi が対応する. アングソサクソンではこれに対して 2 つの言葉が使われていて, もう一方は witan である.

上の日本語訳は単に「知る」とだけ書きはしました. しかし他の言語では複数動詞に分けた内容を 1 つにまとめた単語なので, それだけ多彩な意味と用法があります. 英英辞書で調べると面白いだろうと思います.

Maxwell

電磁気学を支配するマクスウェルの方程式で有名なマクスウェルです. Wiktionary には次のような記述があります.

  • A Scottish habitational surname from Mackeswell near Melrose.
  • メルローズに近い Mackeswell からつけられたスコットランドの地名に根差した名字

実際マクスウェルはスコットランドの物理学者です. 日本でも地名由来の名字はよくあり, 英語にも同じ言語現象があるのです. 例えば日本でも島袋や新垣と言われると沖縄にルーツがあるような印象があるでしょうし, 実際そういう調査もあります.

他にも例えば日本でも山川のように自然物から名字を取ることがあります. そしてユダヤ人はこの手の名字がよくあり, 何を隠そうアインシュタイン Einstein は「1 つの石」という意味です. Ein はドイツ語の 1 の意味で, stein は英語の stone, rock といった意味です. 名前を見るとそれだけでその人の来歴や人種がわかることがあるのです. アインシュタインについて言うなら, そこにはユダヤ人差別の歴史も刻まれています. 例えばこの記事を引用します.

ユダヤ人の姓の売買については、『人名の世界地図』では、「すぐにユダヤ人とわかるように、その名を植物名と金属名に限ったりもした」とあります。ローゼンタールRosental(薔薇の谷)、リリエンタールLiliental(百合の谷)、ブルーメンガルテンBlumengarten(花園)、ゴールドシュタインGoldstein(金の石)、シルバーシュタインSilverstein(銀の石)、ルビンシュタインRubinsteinなど、よく聞くユダヤ系の名前に花や宝石名が多いのはそういうわけだったのです。なお、"stein"というのは、タールtal(谷)、ハイムheim(家)、バウムbaum(木)といった単語と同様、アインシュタインEinstein(1つの石=石ころ)、エイゼンシュタインEizenshtein(鉄の石)などユダヤ人の姓の語尾によく使われます。

ちなみにドイツには Karl Stein という著名な数学者がいます. スタイン多様体という彼の名前を関した数学用語・概念もあります. 日本人で一石賢という人もいます.

Wikipedia を見ると次のような注意もあります.

  • This name was first recorded in 1144, as Mackeswell, meaning "Mack's spring (or stream)" (from the Old English well[a]).

英単語の well には井戸の意味があり, spring にも春・ばねの他に泉の意味があります. Weblio には「コア」として次のような解説があります.

突然出てくるもの 季節でまっ先にやってくるものとして「春」,突然飛び出すものとして「ばね」,「泉」などの意味が展開

人名 1 つを少し掘るだけでも歴史・文化がそこに色濃く反映されていること, 文化・言語を超えた世界が広がっています.

electrodynamics
  • 名詞: - 電気力学
    • electro + dynamics
      • electro-: 電気-
      • dynamics: 力学, 動力学
  • Wiktionary
  • Etymonline

Electrodynamics は electro と dynamics でわけて考えることにし, 分解した語については対応する単語を調べてください. 特に electro- は electricity などから考えてます. Electro- のような形で他の語とつながって形容詞的に使うことがあるのも覚えておくといいでしょう. たくさん例を見ていると自然と体得できることでもあります.

Electrodynamic は直訳すると「電気力学的」です. 「電磁力学」という日本語も同じ意味です. また英語で使われるときに磁気の議論を含むときでも electrodynamic と書き, electromagnetodynamics のように書きません. 例えば磁気も理論も明らかに含む量子電気力学は英語で quantum electrodynamics (QED) です.

単に dynamics とだけ書くと動力学という意味です. 静力学という言葉もあり, これは statics と言います. 例えば気象静力学は meteorological statics です.

electric

詳しくは electricity を見てください.

Wiktionary によると 1640 年代に Thomas Browne が新ラテン語 ēlectricus (electrical; of amber), ēlectrum (amber) +‎ -icus (形容詞の接尾辞), 古ギリシャ語の ḗlektron (amber), ēléktōr (shining sun) に由来します.

electricity

この語にはかなり複雑な経緯があります. Electricityはラテン語の electricus から来ています. これがさらに古代ギリシャ語の ἤλεκτρον から来ていて, 琥珀 (amber) を指しています. ギリシャ語の ἤλεκτρον も複雑で Wikipedia によると, 琥珀から次の 3 つに分化しました.

  • 物理での電子の意味. 琥珀をこすったときの摩擦電気から電磁気現象が発見されたことに由来.
  • 金と銀の合金である琥珀金. 古代ギリシアで琥珀と同じ名称で呼ばれていた.
  • マグネシウムを主体とした合金.

古代ギリシャ語としての ἤλεκτρον はサンスクリットの उल्का (ulka, meteor) や ἠλέκτωρ (ēléktōr, shining sun), ἥλιος (helios, sun) に由来するとも言われます.

さらに言えば amber はアラビア語由来です. 中世のヨーロッパでは古代ギリシャやローマの知見は散逸してしまい, アラビアから逆輸入の形で中世ヨーロッパに戻ってきた経緯があるため, その一環なのでしょう. ちなみにアルコール, alcohol もアラビア語起源で, アラビア語起源の科学用語もいろいろあります.

dynamic

Wiktionaryによると, 元を辿れば古代ギリシャ語の dunamikós から来ていて, これは powerful の意味です. これの類語として dúnamis や dúnamai も起源で, それぞれ power, "I am able" の意味です.

日本語で「デュナミス」はいろいろなところで顔を出します. 私が思いつくところだと機動戦士ガンダム00のガンダムデュナメスです. 現代日本でもアニメや漫画やゲームの中に (古代) ギリシャ語が根付いています. 何気ない横文字を調べることで物理や数学につながることもぜひ覚えておいてください. 日常に物理・数学を組み込んでいきましょう.

私は単数形の用例を見かけたことはありませんが, dynamic は名詞として使われることもあります. これについては dynamics を参照してください.

dynamics
  • 不可算名詞: 力学, 動力学
  • 名詞 (複数扱い)
    • (物理的・精神的な) 原動力,活動力,エネルギー,迫力
    • 変遷, 変動, 過程.
  • Wiktionary
  • Etymonline

物理では力学, 特に動力学の意味で使われます. 動力学というからには静力学もあり, statics と言います. 高校物理で言うと物体が動かない状況で力の釣り合いを考えるのが静力学, 実際に運動方程式にしたがって運動する様子を追いかけるのが動力学です.

学問名・分野名として使うときは不可算名詞として扱います. つまり次のように形式的に単数形のように処理する必要があります.

  • Informally, dynamics is the study of forces and motion.

一方, 複数形として捉えると単数扱いの名詞 dynamic の複数形として捉える必要が出てきて意味が変わります.

TODO 形容詞に s がつくと名詞化する現象, 他にもあった気がするので例. どういう気分なのだろう. semantics

understand

もちろん under+stand からなる単語です. 理解を深めるにはやはり WiktionaryEtymonline が役に立ちます. 後者を眺めてみると stand in the midst of と書いてあります. 英語にとって, 何かを理解することは「世界を見通しよく眺める中心に立てている・その中心に立って制圧する」といった気分があるのでしょう. そして実際にはここでの under の意味についてはもっと深く切り込んでいくべき事情があります. ここでの under は下にある (beneath) の意味ではなく, 古英語, そして印欧祖語の *nter- が指す between, among と言った意味で捉えるべきなのです. サンスクリットでは同じ意味が antar, ラテン語では inter, ギリシャ語では entera で表現されていて, こちらの意味を継いでいるとみなす方が適切です.

同じく Etymonline ではさらに強く究極的な意味は「---に近い」という意味で見立てるべきとあります. ギリシャ語の epistamai は科学・知識という意味の名詞で, 英語で言えば stand upon という形の語の成り立ちです. 対応は epi = upon, stamai = stand です.

ここの epi は数学的な応用があるのでそれも少し書いておきます. 圏論ではエピ射という概念があります. 気分としては集合論での全射を圏論的に定式化した概念です. ここで大事なのは全射の英語表現です. 名詞としては surjective map ですが, this map is onto と言うこともあります. これに対応する日本語は「上への写像」です. もちろん upon と onto で少し変わりはしますが, on を含む重要な共通点があります. このような形で回り回って数学にも影響する語彙なのです.

Wiktionary には類義語として apprehend, comprehend, grasp, know, perceive, pick up what someone is putting down, realise, grok, believe が挙がっています. これらの言葉と比較しつつ語源なども調べていくとまた理解が深まります.

比較のとき, 語源を調べるのと同じくらい画像検索も役に立ちます. 1 つ例を出しておきます.

私の画像検索結果とあなたの画像検索結果が一致する保証がないので, 1 つずつ印象的な画像が張られたページへのリンクをつけてあります. 注目してほしいのは特に後者の apprehend です. 具体的な画像参照の方では後ろ手に手錠をかけられた画像がトップに来ています. つまり同じ「理解する」という日本語をあててはいるものの, apprehend が表す「理解」は「手錠をかけてがっちり掴まえる」といった意味なのです. Wiktionary で語源を調べると, ラテン語の apprehendere からの借用語であることがわかります. さらに apprehendere を Wiktionary で調べると語源としては ad- + prehendō であり, ad- は "to, towards, at" を意味し, prehendō は "lay hold of, seize" を意味しています. Seize は「掴む」という意味です.

掴むというと, apprehend の中に hend があり, これが hand に近いので何か関係があるのではないかという気分も出てきます. Wiktionary で hand を調べてみると, 次のような記述があります.

  • 古スウェーデン語の hinna (to gain), ゴート語の fra-hinþan (to take captive, capture), 古ギリシャ語の kentéō (prick) などとの比較も参考になるだろう.

hand 自体が理解するという言葉を語源に持っていることがわかります.

もう 1 つ prehend つながりで apprehend と comprehend の違いも気になります. これは apprehend の Wiktionary に次の記述があります.

  • These words come into comparison as describing acts of the mind. Apprehend denotes the laying hold of a thing mentally, so as to understand it clearly, at least in part. Comprehend denotes the embracing or understanding it in all its compass and extent. We may apprehend many truths which we do not comprehend.
  • これらの語は精神への作用を説明する点で比較できる. Apprehend は少なくともその一部を明確に理解するために精神的に掴まえることを意味する. Comprehend はその範囲や大きさの全てを掴み, 理解することを意味する. 私達は comprehend していない多くの真実を apprehend できる.

特に注目すべきは最後の例文, "We may apprehend many truths which we do not comprehend." です. この 2 つにはこのような明確な違いがあるのです. Wiktionary, Etymonline はもちろん, Google 画像検索を駆使するとこうした意味の違いを一段深く, そして視覚的にも印象的に理解できます.

Wiktionary で comprehend も調べてみると, ラテン語の comprehendere (to grasp) 由来で接頭辞の com- + prehendere ((to seize) からなっています. 接頭辞の com- は次の文字が b, m, p の場合の con- の変形であり, Wiktionary によると con- は次の 2 つの意味があります.

  • ある語に with, together, joint と言った意味を追加するために使われる
    • 例: congenial, congregation, console, consonant, construct, converge
  • その語の意味を強めるために使われる
    • 例: confirm

当然ではありますが comprehend の 1 まとめ感は com で表現されています. Converge は高校数学の極限・微分積分で出てくる「収束する」の意味です. もう 1 つ数学的に大事な例を挙げておくと complete があります. Etymonline によるとこれも com + plere で, plere は「満たす」 (to fill) の意味です. Complete には数学の距離空間論で「完備」という日本語を表すのに使います. 完備性は例えば相対性理論と並ぶ現代物理学の柱である量子力学の数学, ヒルベルト空間論で出てきます.

接頭辞 mis をつけた misunderstand という単語があります. Under+stand に miss しているので「誤解」といった意味です. ここから接頭辞の概念, 特に mis の語感を知るのにも役立つでしょう.

第 1 文の単語

英語
  • ★ known $\gets$ know: 知る
  • ★ Maxwell: マクスウェル (人名, 方程式名)
  • ★ electrodynamics: 電気力学
  • ★ understood $\gets$ understand: 理解する
  • ★ present: 現在
  • ★ when: ---なとき
  • ★ applied $\gets$ apply: 適用する
    • apply to: ---に適用する
  • ★ asymmetries $\gets$ asymmetry: 非対称, 非対称性
    • a+symmetry: ここで "a" は「反対」の意味の接頭辞
  • ★ which: (関係代名詞)
  • ★ appear: 現われる
  • ★ inherent: 固有
  • ★ phenomena $\gets$ phenomenon: 現象
ドイツ語
  • ★ bewegte $\gets$ TOOD bewegen のどんな活用形かあとで埋める
  • ★ Körper = body
フランス語
  • ★ connu $\gets$ connaître = know
  • ★ si = if
    • cf. si et seulment si = if and only if
  • ★ corps = body
  • ★ conduits $\gets$ conduit = 導体 (物理), 導管, 水道

第 2 文の単語

英語
  • ★ reciprocal: 相互の
  • ★ electrodynamic: 電気力学的な, 電磁気的な
  • ★ magnet: 磁石
  • ★ conductor: 導体 (物理の専門用語)
ドイツ語
  • ★ Man: man, human, people
  • ★ denke $\gets$ denken = think
  • ★ zwischen: between
  • ★ Leiter = conductor
フランス語
  • ★ aimant = magnet

第006回 第3文の読解

まず確認

  • 録画はじめた?
  • 音は大丈夫?
    • 一度音声が入っていなくてひどい目に遭ったことを忘れないように.

記事公開手順

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(講義動画と関連リンクの内容)

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これを読んでいる方への注意・言い訳

これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください.

勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します.

適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

講義動画と関連リンク

はじめに

  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
  • 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.

今日の予定

  • 第 3 文の読解

進捗

  • 第 3 文の単語以外完了

TODO

  • 今日のメモの内容を適切に取り込む

次週予定

今日のメモ

  • either A or B の of these bodies がはまりどころ
    • くり返しを嫌うこととセットで説明.
    • is in motion で単数であること, 文法上の注意が必要.
  • 訳の説明と文法の説明の順序を考えよう.
  • Slack のメモをうまく取り込む: 以下参照.
  • 黒体輻射と工学
    • いい感じのが見つかりませんが、黒体輻射と工業の関係があったという話、冒頭の「19世紀後半のドイツでは工業の発展とともにまた分光学の確立とともに、この輻射のメカニズムと、その正確な分布の解明が着目されていた。」がありました。もうちょっと具体的なのが欲しいですが、工業的な問題があったことは何となく伝わるだろうと思うのでとりあえず。

Slack メモ

内容: コンテンツ (案) からの転記

第 3 文

英文と訳
# en.3

The observable phenomenon here depends only on the relative motion of the conductor and the magnet, whereas the customary view draws a sharp distinction between the two cases in which either the one or the other of these bodies is in motion.

# de.3

Das beobachtbare Phänomen hängt hier nur ab von der Relativbewegung von Leiter und Magnet, während nach der üblichen Auffassung die beiden Fälle, dass der eine oder der andere dieser Körper der bewegte sei, streng voneinander zu trennen sind.

# fr.3

Le phénomène observé dans ce cas dépend uniquement du mouvement relatif du conducteur et de l'aimant, alors que selon les conceptions habituelles, une distinction doit être établie entre les cas où l'un ou l'autre des corps est en mouvement.

typhon pharmacy

# jp.3

ここで観測される現象は導体と磁石の相対的な運動にだけ依存する. これに反して慣習的な観点からすると, これらの物体のどちらが動いているかによって 2 つの場合の間に著しい区別がある.

解説
# 英語

英文解釈上, 注目すべきはもちろん逆接の whereas です. 前半では「現象は導体と磁石の相対的な運動にしか依存しない」と言っているのに, 後半では「1905 年当時の人類の電磁気学の理解度では, どちらが動いているかによって説明の仕方を変えないといけない (のが気に食わない)」と言っています. しかも "a sharp distinction" とまで言って強調しています. 単なる違いなのではなく, 鮮烈な印象を与える単語の選び方です. The customary view という表現で既存の知見への批判であることも表現しています.

主節の名詞に全て the がついていることに注意してください. 既に言及したモノばかりで議論が続いていることがはっきりわかります.

The observe phenomenon here の here の使い方が面白いです. 冠詞 the を使っている時点で指示内容は明確と思いますが, さらに here を使って強調しています.

動詞の depend only on の only のかかり方の理解も重要です. 形容詞にしろ副詞にしろ挿入句・挿入節にしろ, 何がどこにどうかかるのかをきちんと理解するのは重要です.

Whereas による従属節の主語の the customary view は重要です. 直訳すると「慣用的な見方」くらいの意味で, 文法的にはいわゆる無生物主語として使われています. こういう場合は「慣用的な見方によれば」と訳すと日本語として取りやすい文章に直せます. 逆に日本語でこう言いたい場合, 無生物主語を使うと英語らしい簡潔な表現になって便利です.

文を理解する上で大事なのは the customary view の the です. 冠詞を理解する上でも大事です. これは「この当時の物理の慣用的な見方」を表しているからです. 当然現代 (2020 年現在) の物理の慣用的な見方ではありません. The には「あなたもご存知の通り」といった意味の指定・限定を示唆しています. 歴史的な文献を読むとき何がどう the なのか解釈上大きな問題になり得ます. 当時の人の感覚で読む工夫が必要で, 古典文献講読に特別な訓練が必要になる理由の 1 つです.

Draw は絵を描く方の「描く」です. View が見方なので customary view がある描像を描き出すという意味で view が使われているのでしょう. 無生物主語とあいまって英語らしい, 面白い表現です.

Sharp distinction は直訳すれば「鋭い違い」です. 違いに対して鋭いという形容詞をあてられるのは日本語にはない感覚でしょう. もちろん日本語訳するときは「大きな違い」としてしまって構いません.

Either the one or the other of these bodies は導体と磁石を指しています. ここでの, というか物理の力学で出てくる body はたいてい「物体」の意味です. ちなみに「物質」は material です. 「物質科学」material science で覚えるといいでしょう.

ここで either A or B の変形版が使われているのを注意しておきます. まず either A or B は必ず覚えておかないといけないこと, そして A or B にそれぞれ名詞が来るところを of these bodies につなげるために the one or the other としています. くどく両方に the をつけているのも冠詞を理解する上でのポイントでしょう. もしかしたらドイツ語の der eine oder der andere に合わせたのかもしれません. フランス語も l'un ou l'autre で揃っています.

Is in motion は「運動状態にある」という意味です. ここで is moving と書かずに be in motion と少し持って回った言い方をしています. 論文のような硬い文章ではよく見かける表現でもあります.

違う表現を使うのは意味やニュアンスが違うからだという話もあります. しかしここでは単に文語調の表現だと理解すればいいでしょう. 論文などの硬い英語の文章では単に important と書けばいいものを of importance と書くことがあり, be in motion も be moving と同じ意味・ニュアンスを持ちます.

ちなみに be in motion のような名詞を使った書き方にすると, motion を適切な形容詞で修飾できるようになります. どんな動きなのかを細かく指定できるようになり, 細かいニュアンスまで表現しきりたい書き言葉では重宝します.

文構造・文法事項
多言語比較

文が長いので少し大変ではあるものの, 文構造・単語の対応が比較的見やすい文です. ぜひ比較して眺めてみて下さい.

英語
# 文構造
  • (主節 1) The observable phenomenon depends only on the relative motion
    • of the conductor and the magnet
  • (接続詞) whereas
  • (主節 2) the customary view draws a sharp distinction
    • between the two cases
    • in which either the one or the other of these bodies is in motion.

主節 1 の名詞はことごとく the がついていることに注意してください. 特に the conductor と the magnet は前文で冠詞は a でした. 出てきたのは 2 回目なので the で指定しているのです.

英文解釈でも注意したように whereas は逆接の接続詞です. 文構造を捉える上でも重要です.

主節 2 の a (sharp) distinction の a からはまだ説明していない distinction であることが読み取れます. それなら補足説明が続くはずで, between the two cases 以下に続きます.

この the two cases はもちろん「2 つの場合」です. 何故取り上げたかというと the がついているのが面白いからです. 少なくとも私はここで the をつけて書ける自信がありません. The relative motion of the conductor and the magnet の 2 パターンで限定されているという認識なのでしょう.

In which に関しては in と case の結びつきを知ることが大事です. 前置詞と名詞には相性のいいペアがあり, 語のコロケーションと呼ばれます. 関係代名詞節が修飾する相手を探すときにも使える概念です.

Either A or B は熟語として覚えましょう. これもやはりよく使います. もともとこれ自体が二者択一の意味であるところに the one と the other を使っていて, よほど強く強調したい意図が見えます.

文法上 either A or B は A, B が単数なら単数扱いであることにも注意してください. 実際 which 節の動詞が is になっています.

単語
英語
  • ★ observable: 観測可能な
  • ★ phenomenon: 現象 (単数形)
    • 複数形: phenomena
  • here: ここで
  • ★ depend on ---: ---に依存する
  • only: ---だけ
  • ★ relative: 相対的な
    • relative motion: 相対運動
  • motion: 運動 ($gets$ move)
  • conductor: 導体 (物理の専門用語)
  • magnet: 磁石
  • whereas: 一方, ---に反して
  • ★ customary: 慣習的な
  • ★ view: 見方
  • ★ draw: 描く
  • sharp: 鋭い
  • distinction: 区別
  • ★ between: ---の間
  • ★ case: 場合
  • either A or B: A または B
  • other: (the other で) 他方
  • ★ bodies $\gets$ body: 物体
ドイツ語
  • das: 中性名詞に対する定冠詞の 1 格
  • ★ beobachtbare $\gets$ beobachtbar = observable
  • Phänomen = phenomenon
  • hängt $\gets$ hängen = depend on
  • hier = here, there
  • nur = only
  • ab: 前置詞
  • von: 前置詞
  • der: 男性名詞に対する定冠詞の 1 格
  • ★ Relativbewegung: 相対運動
    • relativ + die Bewegung
  • Leiter = conductor: 導体
  • und = and
  • Magnet = magnet
  • ★ während = while
  • nach:
  • ★ üblichen $\gets$ üblich = usual, customary
  • ★ Auffassung = understanding
  • die: 女性名詞に対する定冠詞の 1 格
  • ★ beiden $\gets$ beide = both
  • Fälle $\gets$ Fäll = case
  • dass = that, so that
  • ★ eine $\gets$ eine = a, one
  • oder = or
  • ★ andere $\gets$ anderer = other, different
  • dieser: この, あの, その
  • Körper = body
  • ★ bewegte $\gets$ bewegt = moving
  • ★ sei $\gets$ sein = be
  • streng = severe
  • ★ voneinander = each other
  • ★ zu: 前置詞
  • trennen: 切り離す
  • sind = sein の直説法現在第 1 人称複数形
フランス語
  • le: 男性名詞に対する定冠詞
  • phénomène: 現象
  • observé $\gets$ observer = observe
  • dans: 前置詞 (in, into)
  • ce: it, this
  • cas: case
  • ★ dépend $\gets$ dépendre = depend
  • ★ uniquement = uniquely
  • du = de + le
  • mouvement = movement, move
  • relatif = relative
  • conducteur = condutor
  • et = and
  • aimant = magnet
  • alors = then
  • ★ que = that (関係代名詞)
  • selon = according to
  • les: 複数形に対する定冠詞
  • ★ conceptions $\gets$ conception = idea
  • habituelles $\gets$ habituel = customary
  • une $\gets$ un = one
  • distinction = distinction
  • ★ doit $\gets$ devoir = must
  • être = be
  • ★ établie $\gets$ établir = draw
  • entre = between
  • ★ où = where
  • l'un ou l'autre = each other
    • l'un l'autre とも
  • des: 不定冠詞の複数形
  • corps = bodies
  • est $\gets$ être
  • en = one
  • mouvement = movement
補足
a sharp distinction の印象的な例文

単純に面白い例文があったのでそれを紹介します.

  • There is a sharp distinction between what is remembered what is told and what is true.
文献講読の難しさ

The customary view に関してコメントしたように, 古い文献を読むときはその当時の常識を前提にしないと深く理解できないことがあります.

これに関して私が覚えているのは蜻蛉日記の次の記述です.

かくはあれど、ただ今のごとくにてはゆくすゑさへ心ぼそきに、 ただ一人をとこにてあれば、年ごろもここかしこにまうでなどする所には、 このことを申しつくしつれば、今はましてかたかるべき年齢(としよはひ)になりゆくを、 いかでいやしからざらん人のをんなご一人とりて、うしろみもせん、 一人ある人をもうちかたらひて、わがいのちのはてにもあらせんと、 この月ごろおもひたちてこれかれにもいひあはすれば、

先生に頼んで特別に友人と放課後に古文の指導を受けていたときにこの文・作品に出会いました. ここの「かたかるべき」の理解です. これは「難しいだろう」という意味ですが, さて, 何が難しいのかと先生から聞かれたのです. 前後の文章を知らないとわかりませんが, 結論から言うと「出産が難しい年齢になった」という意味です.

日記ということもあり何が難しいのか書いていません. 作者が藤原道綱母であり何歳頃に書いた本なのか, どういう境遇にある人なのかといった情報がないと正しく読めません. 物理や数学の教科書ならともかく, 論文となると同じような事情があることを示す文でもあります.

相対性理論に関わる物理学史

少し物理の歴史的な事情に関しておきましょう.

19 世紀後半, 「もう基本的な原理はわかりきっていて, 物理学者に残された仕事は未知の現象に原理を適用していくだけだ」と言われていたようです. そんな中, 電磁気学と力学の交点, そして電磁気学と熱力学の交点で出てきた問題が相対論と量子力学への契機になりました. 前者の 1 つはもちろん相対性理論に関わる諸問題であり, 他にはクーロン場中の荷電粒子の運動による電磁波の放射とそれによる荷電粒子の落ち込みの問題です. 後者は物質の安定性とも関わっていて量子力学の問題です. 物質の安定性はいまだに未解決の問題があり, 精力的に研究されています. もしあなたがこの問題に興味があるなら, 例えば \cite{JanPhilipSolovej1} を読んでみるといいでしょう. 次の URL からレビューの論文をダウンロードできます.

この問題に関する教科書は \cite{LiebSeiringer1} があります. 非常に難しく, これが読めれば最先端の論文が読みこなせるレベルです.

電磁気学と熱力学に関わる問題は黒体輻射で, これも量子力学, 特に量子統計力学・場の量子論につながります. 熱力学的な予測をもとに古典統計力学で考えたら, その結果が現象とまるで合わない問題があり, これを克服するためにプランクがいろいろ考えてエネルギーの量子仮説を提出しました. ここからさらにアインシュタインが光電効果・光量子仮説にまで議論を深め, 有名な 1905 年の奇蹟の年の論文の 1 本として提出しています.

この 1 文の解説としては風呂敷を広げすぎかもしれません. しかしこのくらいの大きな世界観を背景にした 1 文なのです. 実際, 現代の物理学者はこの 1 文にこのくらいの世界を見るでしょうし, もっと言えばアインシュタインがまさにこの論文を書きながら対峙していた世界です. せっかくの原論文読解です. 1 文 1 文味わいながら読んでいきましょう.

第007回 第3文の単語

まず確認

  • 録画はじめた?
  • 音は大丈夫?
    • 一度音声が入っていなくてひどい目に遭ったことを忘れないように.

記事公開手順

  • 動画が変換でき次第, YouTube にアップしておく
  • md を整理しつつオリジナルのコンテンツに追記する
  • md の「講義動画と関連リンク」を書き換える
    • YouTube へのリンクのタイトル・URL
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この動画に特化したリンク先は次の通りです。

(講義動画と関連リンクの内容)

以下いつもの関連コンテンツ群です。

(YouTube 動画の説明欄にいつも張るリンク集)
  • 動画を公開して Twitter・Slack で共有
  • md を GitHub にアップロード

YouTube 公開用: これを読んでいる方への注意・言い訳

これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください.

勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します.

適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

講義動画と関連リンク

はじめに

  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
  • 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.

今日の予定

  • 第 3 文の単語

進捗

  • 第 3 文の単語 (英語) 終了

TODO

  • なし

今日のメモ

内容: コンテンツ (案) からの転記

いまの気分メモ

  • 単語をやっていると終わらない
    • さらには多言語でやっていると楽しいが終わらない
  • いったん文章読解メインで進めて読解だけでもけりをつけたい
  • 読解も解説をきちんと書くとなると本当に面倒
    • ふだんどれだけさぼって読んでいるかもよくわかって厳しい気分になる

最初に紹介: 大事な参考文献の紹介

中高生には少し難しいと思いますが 1 つ大事な視点を提供してくれる次の本を勧めておきます.

もとが大学生向けの講義資料なので, 数学をある程度知っている前提がありつつ, 基本的な文法を一度勉強した上で一定の語彙を持っている必要があります. しかし豊富な数学の例文があり, 数学で使う文法に絞って解説されているため, 特に力を入れて学習するべき項目がわかります. 数学で必要な文法と物理で必要な文法には重なりも多く, もしあなたが物理にしか興味がないとしても参考になるはずです.

この本から 1 つ面白い説明を抜き出しておきます. P.20 からの引用です.

C) の場合を日常の文と比べてみよう. 例えば犬好きの人が "A dog is a friendly animal" といった場合, 現実には例外があって吠えかかる犬もいる. しかし, 数学の文の場合は例外なしに成り立つと解釈する.

当たり前と言えば当たり前ですが, 数学で使う英語と日常で使う英語に微妙な食い違いがあるのも間違いありません. 他に日常の英語・口語英語・会話の英語ではあまり使わないとされる表現, 文章の英語だからといって説明がなおざりにされる表現がまさに使われるのが数学の文章英語であることもよくあります. そうした「実用的な」視点から数学の英語を解説してくれている本です.

他には「英作文は英借文」とも言われていて暗記も勉強する上で大事な要素です. しかしふつうの例文暗記では飽きてしまうことも多いでしょう. そんなとき, 数学の例文暗記という形で対応するのも一手です. そしてそうした例文がたくさん載っています. そういう使い方をするのもお勧めです.

単語

物理の専門用語
  • observable, motion, conductor, magnet, body
  • motion: move の名詞, ve を除いて -tion をつけるという異様な変形.

observe -> observ -tion

observable
  • 形容詞: 観測可能な
    • 名詞: (量子力学) 観測可能量, 物理量
    • observe +‎ -able
  • Wiktionary
  • Etymonline

動詞 observe も参照してください.

この論文では observable は形容詞です. 実は observable は量子力学で「観測可能量」という名詞として使われることがあります. 専門用語・術語としての用法です.

observe
  • 動詞: 観測する
    • observes, observed, observing
    • observable
    • observer: 観測者
  • Wiktionary
  • Etymonline

Wiktionary によると中期フランス語の observer, ラテン語の observare (to watch, note, mark, heed, guard, keep, pay attention to, regard, comply with, etc.) に由来します. Etymonline によると単語として ob (in front of, before) + servare (to watch, keep safe) と分解できます. 印欧祖語からの語幹 *ser- は to protect の意味を持ちます.

see -> sehen go -> gehen take -> nehmen

英語だと名詞と動詞が同形のものが多い. start も名詞と動詞が同形.

日本語は動詞の語尾が「う」の列であるというのと同じく, フランス語は動詞の語尾が -er, -or, -ir になるルールを持つので, observer はこれで動詞です. 英語の「--- する人」の意味の -er ではありません.

ラテン語の observare は ob (before) + servare (to keep) と分解でき, さらに印欧祖語の *serw- (to guard) に由来します.

phenomenon

フェノメノンとして日本語化されている言葉でもあります. Phenomena と特殊な複数形を取るのはギリシャ語の形をそのまま使っているからです. 後期ラテン語 (Late Latin) の phaenomenon (appearance), 古代ギリシャ語の phainómenon (thing appearing to view) に由来します. つまりギリシャ語由来の単語です. 英語には見られない複数形を持つのはギリシャ語由来の単語だからです. また印欧祖語の語根 *bha- は to shine の意味を持ちます.

また, 一般に ph がつく単語はギリシャ語に由来していることがよくあります. 薬学や薬局を意味する pharmacy は古代ギリシャ語の pharmakeía (the use of drugs) に由来しますし, ゲームでよく出てくるテュポーンは typhon で, ギリシャ神話に出てくる神とも怪物ともいわれる巨人です.

時々ゲームにも出てきていて, 2020 年時点ではグラブルのテュポーンが有名でしょうか. ある程度の年齢の人にはファイナルファンタジー VI のテュポーン先生が印象深いかもしれません. 台風 (Typhoon) の語源とも言われているそうですが, 私はあまりよくわかっていません.

学術用語には ph がつく単語はよく出てきますし, それらはたいていギリシャ語由来です. そもそもラテン系の語彙に ph を含む単語はほとんどないそうで, 上で紹介しているように ph を含んでいるのはギリシャ語由来のことが多いのです. Phenomenon で典型的なように変な活用をすることも多く, 見抜きやすいでしょう.

depend
  • 動詞: (depend on で) ---に頼る, 依存する
    • depends, depended, depending
  • Wiktionary
  • Etymonline

ラテン語の dependeō に由来していて, これは dē- + pendeō (to hang) に分解できます. この dē- は of, from の意味で, pendeō はペンダント (pendant) の pend です. 何かにぶらさがることはその何かへの依存を表すと考えたのでしょう. また de はフランス語にもあり, 英語でいう of の意味を持つことも注意しておきます.

使うときはたいてい depend on の形です. 対応する前置詞が on であることも覚えておく必要があります.

relative

Wiktionary によると後期ラテン語の relātīvus, ラテン語の referō (to carry back, to ascribe) の完了受動分詞 relātus に由来します. これは re- (again) + ferō (to bear or carry) に分解できます. この ferō は ferry (フェリー) の語源です.

  • TODO transfer, offer

この fer に関して, 例えば堕天使のルシファー (Lucifer) の fer も同じです. ちなみに Lucifer の luci は lux, luminus など光の意味です. 光を奪う存在が堕天使という意味なのです.

相対性理論がまさに theory of relativity であり, 相対性理論の名前の由来になる基本的な語彙なので何度も出てきます.

Etymonline によると後期ラテン語 relativus (having reference or relation) があり, これはラテン語の relatus から来ていて, さらに referre (to refer) の過去分詞という由来があります. 特に "person in the same family" という意味があります.

whereas

もちろん where +‎ as (that) のように分解できます.

TODO なぜこれが逆接のように使われるようになったのか?

customary

名詞 custom から派生した形容詞です. 詳しくは custom を参照してください.

custom

Wiktionary によると, 俗ラテン語 (Vulgar Latin) の cōnsuētūmen or costūmen, そしてラテン語の cōnsuētūdō の対格単数の cōnsuētūdinem (custom, habit), 同じくラテン語の cōnsuēscō (accustom, habituate) に由来します. 単語 cōnsuēscō は con- (with) + suēscō (become used or accustomed) に分解でき, これは sueō (I am accustomed) の起動形 (inchoative form) や suus (one's own, his own) に由来します.

またコスチュームとしてほぼ日本語化されている costume の二重語でもあります. Costume はフランス語の costume の借用語で, フランス語はイタリア語の costuma, そして究極的にはラテン語の consuetudo, consuetudinem (custom) に由来します.

view

古フランス語の veue やイタリア語の vedere に由来します. 古フランス語の veue は現代フランス語 voir の過去分詞の女性単数形 vue にあたります. イタリア語の vedere はラテン語 vidēre (videō の現在能動形の原形, present active infinitive) で印欧祖語の語根 *weyd- に由来します. Videō の見た目の通りビデオと関係があります.

draw

draw tragen d - t

Wiktionary によるとゲルマン祖語 draganą や印欧祖語 dʰregʰ- (to draw, pull) に由来します. ドイツ語の tragen (to carry), サンスクリットの ध्रजस् (dhrájas, gliding course or motion) と同根です. Drag の二重語でもあります.

between

Wiktionary によると be- +‎ twain に対応するゲルマン祖語の bi- (be-) + twihnaz (two each) に由来します.

case

まず場合の方から語源を確認しましょう. Wiktionary によると古フランス語の cas (an event), ラテン語の cado (to fall, to drop) の完了受動分詞 (perfect passive participle) にあたる casus (a falling, a fall; accident, event, occurrence; occasion, opportunity; noun case) に由来します.

日本語のケースにはカードケースのように「収納箱」のような意味もあり, もちろん英語にもその意味があります. Wiktionary によるとこちらの語源はラテン語の capsa (box, bookcase) で これはさらに capiō (to take, seize, hold) に由来します. また cash の二重語でもあります.

cf. school 学校, 魚の群れ

body

中学生どころか小学生でも「身体」という意味を知っているでしょう. 物理では「物体」の意味で使われます. このように専門用語として理解しなければいけない単語はたくさんあります. もちろん日本語でもエネルギーやポテンシャルのように専門用語としての意味を本歌に取りつつそれとはずれた意味で日常語として使われている言葉があります. まずはそういう概念・言葉があると知るのが大事です.

対応する印欧祖語は bʰewdʰ- でこれは "to be awake, observe" という意味があります. 観察対象のような意味から物体に派生していったのでしょう.

他の意味について少し触れておきます. Etymonline では 1660 年代から "main portion of a document" としての用例があると紹介されています. これは IT 系でもよく使われます. もしあなたが HTML を知っているなら, この中にも head と body というセクションがあるのを知っているでしょう. この body がまさに「ドキュメントの主要部」の意味です.

ちなみに上の portion はポーションと読みます. あなたは「ポーション」と聞くとゲームのファイナルファンタジーで出てくる回復アイテムとしてのポーションを想像するかもしれません. それは potion で別物です. 特に Wiktionary によると, ラテン語の potio (飲み物) に由来していて, ラテン語自体がさらにギリシャ語の poton に由来します.

以降第 4 文の単語: 第 3 文と間違った
物理の専門用語
  • magnet, motion, conductor, rest, electric, field
  • motion: move の名詞, ve を除いて -tion をつけるという異様な変形.
neighbourhood

これは neighbour +‎ -hood に分解できます. Neighbour はゲルマン祖語の nēhwagabūrô (neighbour) に由来し, nigh +‎ bower に分解できます. Nigh は near と同根であり, bower はゲルマン祖語の būraz (room, abode) に由来し, ドイツ語の Bauer (birdcage) と同根です.

一方 -hood はゲルマン祖語の *haiduz に由来し, ドイツ語の -heit と同根です.

certain: 一定の
  • 形容詞: 確実な, 一定の
  • Wiktionary
  • Etymonline
  • Collins
    • being sure
    • If you are certain about something, you firmly believe it is true and have no doubt about it.
    • If you say that something is certain to happen, you mean that it will definitely happen.
    • If you say that something is certain, you firmly believe that it is true, or have definite knowledge about it.

Wiktionary によると古フランス語の certain の借用語であり, 俗ラテン語の unattested form である *certānus, ラテン語の extended form である certus ("fixed, resolved, certain"), 同じ語源で cernere ("to separate, perceive, decide") の過去分詞 cretus に由来します.

読解編で見るように第 4 文で with a certain definite energy という形で出てきます. ここで問題なのは certain と definite の使い分けです. この 2 語は実際に同じような意味でどう使い分けているかが問題になります. いくつか調べてみた結果を引用しておきます.

certain: of a specific but unspecified character, quantity, or degree. "The house has a certain charm." Using "definite charm" in this case simply doesn't fit.

definite: free of all ambiguity, uncertainty, or obscurity. "We need a definite answer." Using "certain answer" in this case wouldn't mean the same thing.

上の with a certain definite energy については次のように使い分けているのでしょう.

  • certain: どのくらいかはわからないがエネルギーが発生することは確実である.
  • definite: 物理的な条件によって発生するエネルギーの量は確定している.

Definite の意味については definite, 特に動詞の define の項も参考にしてください. Define の意味は「定義する」であり, 曖昧さなく範囲を明確にするイメージがあります. 特に制限をかけるというニュアンスもあります. これを前提にすると語のイメージがもう少しはっきりするでしょう.

definite: 決まった
  • 形容詞: 確かな, 疑いのない
  • Wiktionary
  • Etymonline
  • Collins
    • If something such as a decision or an arrangement is definite, it is firm and clear, and unlikely to be changed.
    • Definite evidence or information is true, rather than being someone's opinion or guess.
    • You use definite to emphasize the strength of your opinion or belief.
    • Someone who is definite behaves or talks in a firm, confident way.
    • A definite shape or colour is clear and noticeable.

Wiktionary によるとラテン語の dēfīniō の過去分詞 dēfīnītus に由来し, 英語の define とも関係があります. 単語 define の記述も参考にしてください.

読解編 (論文) の第 4 文には with a certain definite energy という句が出てきます. ここで certain と definite の使い分けが問題になります. Certain の項に解説をつけておいたのでそちらも参考にしてください.

energy: エネルギー

中フランス語の énergie, 後期ラテン語の energia, 古ギリシャ語の enérgeia (activity), energós (active) に由来します. この energós は en (in) + érgon (work) と分解できます. 物理での意味はトーマス-ヤングの 1802 年の講義に由来します.

ギリシャ語 érgon はヘレニック祖語 wérgon, 印欧祖語 wérǵom に由来します. これは古英語 weorc (English work) と同根です. ここまで来ると energy が work と同根であるとわかります. 物理の専門用語としても仕事 (work) とエネルギー (energy) の関係は重要ですが, 語源の上でもきちんと関連しているのです.

producing $\gets$ produce: 生み出す

ラテン語 prōdūcō ("to lead forth") の借用語です. これは prō- ("forth, forward") + dūcō ("to lead, bring") と分解できます.

current: 電流 (物理の専門用語)
  • 名詞: (物理) 電流, (数学: 超関数係数の微分形式) カレント, 流れ, 傾向, 風潮
    • currents
  • 形容詞: 今の, 現在の
  • Wiktionary
  • Etymonline

Wiktionary によると古フランス語 courre (to run) の現在分詞 curant (courant) の借用語であり, ラテン語 currō (I run) の現在能動原形 currere (to run, move quickly) に由来します. Courant の二重語でもあります.

意味としては「いままさに流れているもの (走っているもの)」です. ここから貨幣 (currency: 金は世の回りもの) と言った意味も出てきます. 語源, そして語のコアミーミングには常に注意を払うようにすると, 急がば回れで語彙力と言語直観が磨かれます.

流れを表す英単語では flow も物理・数学でよく出てきます. こちらはゲルマン祖語の flōaną (to flow), 印欧祖語の plōw- や plew- (to fly, flow, run) に由来します. Wiktionary には float と比較するよう指示があり, そちらを眺めてみると float はゲルマン祖語の flutōną (to float), 印欧祖語の plewd-, plew- (to float, swim, fly) に由来します. 古ギリシャ語の pléō, ラテン語の plaustrum (wagon, cart) とも同根です.

places $\gets$ place: 場所

Wiktionary によるとラテン語の platea (plaza, wide street), 古ギリシャ語の plateîa に由来し, ギリシャ語については plateîa hodós (broad way) の略語です. 他には印欧祖語では plat- (to spread) に由来し, これは pleh₂- (flat) の extended form です.

単語 plazapiazza の二重語でもあります. 前者の plaza はスペイン語の plaza (town-square or central place of gathering) にも由来を持ちます. 後者の piazza はイタリア語の piazza に由来します.

スペルを見ると pizza, つまりピザとの関係もありそうですが, Wiktionary によると pizza の語源はまだ確かなことがわかっていないようです. 一応中世ギリシャ語 (Byzantine Greek) の pítta (cake, pie), 古ギリシャ語 píssa (pitch), ラテン語の pinsō (I beat, pound) に由来するのではないかとは書いてあります.

where: 関係代名詞

Wiktionary によるとゲルマン祖語 hwar (where), 印欧祖語の疑問代名詞 kʷo- に由来します. ドイツ語の wo (where) と同根です. フランス語では で, これはラテン語の ubi (where) に由来します.

この ubi は ubiquitous の ubi で, 一昔前にユビキタス社会と言っていたその ubiquitous です. ユビキタス社会は次のような意味です.

  • インターネットなどの情報ネットワークにいつでもどこからでもアクセスできる環境を指し, ユビキタスが普及すると場所にとらわれない働き方や娯楽が実現出来るようになる.

疑問詞はフランス語・ラテン語由来ではなくゲルマン語由来であり, 疑問詞のような基本的なゲルマン語由来であることは英語がゲルマン系の語彙である事情を反映しています.

parts $\gets$ part: 部分

Wiktionary によるとラテン語の pars (piece, portion, share, side, party, faction, role, character, lot, fate, task, lesson, part, member) の対格である partem, 印欧祖語の par-, per- (to cut, bore) に由来します. ラテン語の portio (a portion, part), parare (to make ready, prepare) にも似ています.

situate: 位置する

Wiktionary によると後期ラテン語の situātus に由来します. これは中世ラテン語の situō (to locate, place) の過去分詞であり, 同じくラテン語の situs (a site) に由来します.

数学で現在トポロジー (位相幾何) と呼ばれる分野は, フランス人数学者のポアンカレの論文 Analysis Situs に由来して実際にこのように呼ばれていました. 数学史では有名な話です.

第008回 第4文の読解

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これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください.

勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します.

適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

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今日の予定

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進捗

  • 第 4 文の解説が終わり.
  • 次回: 第 4 文の文法の記述, 単語.

TODO

in motion, at rest の前置詞を大事に. For の使い分け: 前置詞のときは後ろに名詞が来る, 接続詞なら文みたいな話も書いておく. in the neighbourhood の the が面白い. a energy などの冠詞はもっときちんと注目. the parts とならない理由を追記.

今日のメモ

内容: コンテンツ (案) からの転記

備忘録

  • 各文の読解と文法解説をもっと綺麗にわける.
    • いまの「文法解説」は完全に読解に回してよさそう.
    • 文法は本当に「文法」にしたい.
  • どうわけるといいかを検討しつつ進める.

第 4 文

en.4

For if the magnet is in motion and the conductor at rest, there arises in the neighbourhood of the magnet an electric field with a certain definite energy, producing a current at the places where parts of the conductor are situated.

de.4

Bewegt sich nämlich der Magnet und ruht der Leiter, so entsteht in der Umgebung des Magneten ein elektrisches Feld von gewissem Energiewerte, welches an den Orten, wo sich Teile des Leiters befinden, einen Strom erzeugt.

fr.4

(if and only if = si et seulement si)

Si par exemple l'aimant se déplace et que le conducteur est au repos, alors un champ électrique d'une certaine énergie apparaît à proximité de l'aimant, ce qui engendre un courant dans les parties du champ où se trouve un conducteur.

courant courir trouver = find

jp.4

というのも, もし磁石が運動状態にあって導体が静止しているとすると, 磁石の近傍にはある決まったエネルギーを持った電場が発生し, 導体の各点で電流が生じる.

解説

英語
For if the magnet is in motion and the conductor at rest,

訳文では文頭の for を「---というのも」という形で訳しています. ここの for は接続詞です. For とみたら前置詞と安易に判断してはいけません. こういう基本的な単語こそ英英辞典でじっくり調べてみましょう. 前置詞はコアミーニングをもとに多彩な意味を持つので, 前置詞の意味・用法を調べるだけでも勉強になります. ここの for は文章解釈上, 第 3 文の内容を詳しく説明していて, for を文頭に置いてそれを明示しています.

引き続き magnet は磁石, conductor は導体で, やはり冠詞は the です. 磁石が動いている (in motion) で, 導体が止まっている (at rest) 状態を仮定しています. 第 3 文で相対的な運動状態に依存すると言っているので, 実際に磁石を動かした状況を考えています.

Motion に対して前置詞 in, rest に対して前置詞 at を使っています. ふつう rest は休憩といった意味で使われます. 物理で静止 (状態) を表すのはこのふだんの意味と同じです. ここは語と語の相性 (コロケーション) と思っても構いませんし, 熟語と思ってもいいでしょう.

there arises in the neighbourhood of the magnet an electric field with a certain definite energy,

there is a room Is there you are --- Are you ---?

There arises はいわゆる there is 構文です. このように be 動詞の代わりに違う動詞を使うことがあります. 特に数学では is の代わりに there exists をよく使います. There is の is は存在するという意味で使われているので, それを適切な言葉で明確にしているのです. つまり, ここでは単に存在するだけではなく, 生み出された結果として存在するという意味で arise が使われています. 特に arise を「発生する」などと訳せばいいでしょう.

Neighbourhood はふつうの意味では「近所」のような意味で, そこから「周囲」くらいの感覚で訳すといいでしょう. ここでは数学的な言葉遣いである「近傍」と訳してみました. In the neighbourhood of the magnet で「磁石のまわり」で, there is に対応して存在する場所を指定しています.

An electric field with a certain definite energy は全体として「ある一定のエネルギーを持つ電場」と訳します. Electric は「電気の」という形容詞で, field は物理の専門用語として「場」と訳し, 2 つでまとめて「電場」です. 高校の教科書だと電界と呼ばれているかもしれません. 実はこれは工学で使われる呼び方で, 物理では電場と呼びます. そして with 以下は電場がどんな状態にあるかを説明しています.

Certain と definite は辞書を見ると同じような意味が出てきます. 実際英語で考えても意味の重なりがあります. ここではあえて 2 語使われているので, 意味を重ねずに使い分けているはずです. 例えばそれぞれの意味を次のように考えればいいでしょう.

  • certain: どのくらいかはわからないがエネルギーが発生する (with) ことは確実である.
  • definite: 物理的な条件によって発生するエネルギーの量は確定している.

Definite は certain で存在が示唆された量の具体的な値について言及しているのです. Definite は define と関係あることに注意すれば, 「状況を限定・制限すれば決まる」という意味で捉えるべきです. 単語編の certain と definite/define も確認してみてください.

Energy はいわゆるエネルギーです. エネルギーはドイツ語読みで英語読みはエナジーです. 2019 年現在エナジードリンクという飲み物がありますが, そのエナジーです.

producing a current at the places

Producing ではじまる副詞句の説明に入ります. もちろん現在分詞による分詞構文です.

Current は電流で produce a current で「電流を発生させる」です. Places は「場所」で, at the places で電流が発生する場所を説明していて, 特にどんな場所なのか where による関係副詞で詳しく説明されています.

where parts of the conductor are situated

Parts are situated が本体で, 「部分が置かれている場所に電流が発生している」と訳します.

(TODO parts に the がつかないのは何故?) the parts にしてしまうと導体の特定部位という意味になってしまう.

Situate は日本語化したシチュエーション (situation) のもとになった動詞です. Situation は状況くらいの意味と思えば「置かれた状態 = 状況」と理解すればよく, Be situated は「置かれている = ---な状況にある」とでも訳せばいいでしょう.

また Parts が意味不明なので of the conductor という説明が入っています. 全体として「導体の各部位」とでも訳せます.

文構造・文法事項

英語
全体の文構造

全体の構造は次のようになっています.

  • (接続詞) For
  • there arises an electric field
    • with a certain definite energy
    • in the neighbourhood of the magnet
    • producing a current at the places
      • where parts of the conductor are situated
    • if the magnet is in motion and the conductor at rest

文頭の For は接続詞で, 前文を受けて「さきほどこう書いた理由は---」という意味で使われています. If の条件節があった上で there arise (there is) 構文があり, ある条件下で何かが出てくると言っています. ", producing ---" は分詞構文で状況を補足的に説明しています. その分詞構文の中にさらに where ではじまる関係代名詞があり, places を修飾しています.

初出なので electric field と energy には冠詞 a がついています. Current も可算名詞で冠詞がつくのは面白い感覚のように思います. 実際 weblio には電流の意味だと一般には不可算名詞であり, a direct current (直流) のように種類を表すときには可算名詞として扱うとあるので, 名詞の可算・非可算, そして冠詞の有無には英語の独特の感覚があります.

(TODO energy はふつう不可算名詞なのに冠詞があるのはどういう意図か?)

さらに副詞句として文全体に in the neighbourhood of the magnet がかかります. 何の neighbourhood (どこに電場ができるのか) かを示すために of the magnet が使われています.

口語英語でこんな複雑な文章はまず出てきません. 理解できないからです. 文章の英語特有の複雑な構文です. 中身を詳しく見ていきましょう.

主節: For there arises an electric field with a certain definite energy

There arises --- が主節です. 動詞はもちろん arises で主語は electric field です. この field を with a certain definite energy が修飾しています. タイトルでは省略していますが, electric field が存在する場所を指定するために in the neighbourhood of the magnet があります.

念のためフルの文章も載せておきましょう.

  • For there arises in the neighbourhood of the magnet an electric field with a certain definite energy

Field は可算名詞なので冠詞 a がつきます. 電場の強さを測定することはあっても電場を数えるという感覚は日本語にないと思うので, 面白い感覚ではないでしょうか. ただ, 電場の強さは電気力線の密度であり, 単位面積あたりで規格化しているとはいえ, 電場の強さの測定は電気力線の本数を数えることにあたります. こう思うと可算名詞で電場を捉える気分もわからないでもありません.

producing a current at the places

この副詞句は分詞構文で意味上の主語は electric field です. 主語が何か判定する方法はいくつかありますが, 物理法則として電場の変化が電流 (いわゆる変位電流) を生むので, そこからも主語が判断できることをコメントしておきましょう.

(TODO 文法的に主語を判断するにはどうすればいいか?)

初出の current は冠詞 a がついています. At the places の the は where 節の内部の情報によって既知情報であるとわかっています.

(TODO the places で places がなぜ複数か?)

where parts of the conductor are situated

Where 節は関係副詞節として places を修飾していて, 中身は受動態です. Where なので先行詞は場所であり, ここでは素直に直前の places が先行詞だと思えばいいでしょう.

(TODO parts になぜ冠詞がつかない?)

if the magnet is in motion and the conductor at rest
  • if the magnet is in motion and the conductor at rest

If 節の中身は単純な SV の第 1 文型が and で 2 つ並んでいます. 読解のポイントを 1 つ挙げるとすると, the conductor at rest では動詞 is が省略されていて, 正確には and the conductor is at rest です.

くどくはなりますが, magnet と conductor には冠詞 the がついていることも注意しておきます.

第009回 第4文の文法・単語

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今日の予定

  • 第 4 文の文法・単語
  • 文法解説は本文にまとめたので

進捗

TODO

今日のメモ

内容: コンテンツ (案) からの転記

rest

Wiktionary によるとゲルマン祖語の rastijō (rest), 印欧祖語の ros-, res-, erH- (rest) に由来します.

neighbourhood

これは neighbour +‎ -hood に分解できます. Neighbour はゲルマン祖語の nēhwagabūrô (neighbour) に由来し, nigh +‎ bower に分解できます. Nigh は near と同根であり, bower はゲルマン祖語の būraz (room, abode) に由来し, ドイツ語の Bauer (birdcage) と同根です.

一方 -hood はゲルマン祖語の *haiduz に由来し, ドイツ語の -heit と同根です.

certain

  • 形容詞: 確実な, 一定の
  • Wiktionary
  • Etymonline
  • Collins
  • being sure
  • If you are certain about something, you firmly believe it is true and have no doubt about it.
  • If you say that something is certain to happen, you mean that it will definitely happen.
  • If you say that something is certain, you firmly believe that it is true, or have definite knowledge about it.

Wiktionary によると古フランス語の certain の借用語であり, 俗ラテン語の unattested form である *certānus, ラテン語の extended form である certus ("fixed, resolved, certain"), 同じ語源で cernere ("to separate, perceive, decide") の過去分詞 cretus に由来します.

読解編で見るように第 4 文で with a certain definite energy という形で出てきます. ここで問題なのは certain と definite の使い分けです. この 2 語は実際に同じような意味でどう使い分けているかが問題になります. いくつか調べてみた結果を引用しておきます.

certain: of a specific but unspecified character, quantity, or degree. "The house has a certain charm." Using "definite charm" in this case simply doesn't fit.

definite: free of all ambiguity, uncertainty, or obscurity. "We need a definite answer." Using "certain answer" in this case wouldn't mean the same thing.

上の with a certain definite energy については次のように使い分けているのでしょう.

  • certain: どのくらいかはわからないがエネルギーが発生することは確実である.
  • definite: 物理的な条件によって発生するエネルギーの量は確定している.

Definite の意味については definite, 特に動詞の define の項も参考にしてください. Define の意味は「定義する」であり, 曖昧さなく範囲を明確にするイメージがあります. 特に制限をかけるというニュアンスもあります. これを前提にすると語のイメージがもう少しはっきりするでしょう.

definite

  • 形容詞: 確かな, 疑いのない
  • Wiktionary
  • Etymonline
  • Collins
  • If something such as a decision or an arrangement is definite, it is firm and clear, and unlikely to be changed.
  • Definite evidence or information is true, rather than being someone's opinion or guess.
  • You use definite to emphasize the strength of your opinion or belief.
  • Someone who is definite behaves or talks in a firm, confident way.
  • A definite shape or colour is clear and noticeable.

Wiktionary によるとラテン語の dēfīniō の過去分詞 dēfīnītus に由来し, 英語の define とも関係があります. 単語 define の記述も参考にしてください.

読解編 (論文) の第 4 文には with a certain definite energy という句が出てきます. ここで certain と definite の使い分けが問題になります. Certain の項に解説をつけておいたのでそちらも参考にしてください.

energy

中フランス語の énergie, 後期ラテン語の energia, 古ギリシャ語の enérgeia (activity), energós (active) に由来します. この energós は en (in) + érgon (work) と分解できます. 物理での意味はトーマス-ヤングの 1802 年の講義に由来します.

ギリシャ語 érgon はヘレニック祖語 wérgon, 印欧祖語 wérǵom に由来します. これは古英語 weorc (English work) と同根です. ここまで来ると energy が work と同根であるとわかります. 物理の専門用語としても仕事 (work) とエネルギー (energy) の関係は重要ですが, 語源の上でもきちんと関連しているのです.

produce

ラテン語 prōdūcō ("to lead forth") の借用語です. これは prō- ("forth, forward") + dūcō ("to lead, bring") と分解できます.

current

  • 名詞: (物理) 電流, (数学: 超関数係数の微分形式) カレント, 流れ, 傾向, 風潮
  • currents
  • 形容詞: 今の, 現在の
  • Wiktionary
  • Etymonline

Wiktionary によると古フランス語 courre (to run) の現在分詞 curant (courant) の借用語であり, ラテン語 currō (I run) の現在能動原形 currere (to run, move quickly) に由来します. Courant の二重語でもあります.

意味としては「いままさに流れているもの (走っているもの)」です. ここから貨幣 (currency: 金は世の回りもの) と言った意味も出てきます. 語源, そして語のコアミーミングには常に注意を払うようにすると, 急がば回れで語彙力と言語直観が磨かれます.

流れを表す英単語では flow も物理・数学でよく出てきます. こちらはゲルマン祖語の flōaną (to flow), 印欧祖語の plōw- や plew- (to fly, flow, run) に由来します. Wiktionary には float と比較するよう指示があり, そちらを眺めてみると float はゲルマン祖語の flutōną (to float), 印欧祖語の plewd-, plew- (to float, swim, fly) に由来します. 古ギリシャ語の pléō, ラテン語の plaustrum (wagon, cart) とも同根です.

昔アーマードコアというゲームがあり, これにフロートという脚部パーツがありました. まさに常に地面から浮遊した状態で移動するパーツです. これはラテン語の wagon, cart との語感を持った言葉です.

流れと言えば物理では流体力学という分野があり, これは英語で fluid dynamics と言います. この fluid は見ての通り flow と形が似ています.

place

Wiktionary によるとラテン語の platea (plaza, wide street), 古ギリシャ語の plateîa に由来し, ギリシャ語については plateîa hodós (broad way) の略語です. 他には印欧祖語では plat- (to spread) に由来し, これは pleh₂- (flat) の extended form です.

単語 plazapiazza の二重語でもあります. 前者の plaza はスペイン語の plaza (town-square or central place of gathering) にも由来を持ちます. 後者の piazza はイタリア語の piazza に由来します. ここで見るとわかるように, 英語での pl はイタリア語では pi に変わる一般的な法則があります. 英語の plate はイタリア語で piatte です.

スペルを見ると pizza, つまりピザとの関係もありそうですが, Wiktionary によると pizza の語源はまだ確かなことがわかっていないようです. 一応中世ギリシャ語 (Byzantine Greek) の pítta (cake, pie), 古ギリシャ語 píssa (pitch), ラテン語の pinsō (I beat, pound) に由来するのではないかとは書いてあります.

situate

Wiktionary によると後期ラテン語の situātus に由来します. これは中世ラテン語の situō (to locate, place) の過去分詞であり, 同じくラテン語の situs (a site) に由来します.

数学で現在トポロジー (位相幾何) と呼ばれる分野は, フランス人数学者のポアンカレの論文 Analysis Situs に由来して実際にこのように呼ばれていました. 数学史では有名な話です.

第010回 第5文読解

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  • 第 5 文の読解

進捗

  • 第 5-2 文の "In the conductor, however, we find an electromotive force" まで

TODO

  • stationary の類語の記録

今日のメモ

内容: コンテンツ (案) からの転記

英文と訳

ドイツ語原文 (de.5) がこの英訳では 2 つの文にわかれています. 原文に合わせて 1 つにまとめました. 一般に和訳するときも難しければ無理に 1 文で訳さず, 2 文・3 文にわけましょう.

en.5

But if the magnet is stationary and the conductor in motion, no electric field arises in the neighbourhood of the magnet. In the conductor, however, we find an electromotive force, to which in itself there is no corresponding energy, but which gives rise ---assuming equality of relative motion in the two cases discussed--- to electric currents of the same path and intensity as those produced by the electric forces in the former case.

de.5

Ruht aber der Magnet und bewegt sich der Leiter, so entsteht in der Umgebung des Magneten kein elektrisches Feld, dagegen im Leiter eine elektromotorische Kraft, welcher an sich keine Energie entspricht, die aber --- Gleichheit der Relativbewegung bei den beiden ins Auge gefassen Fällen vorausgesetzt --- zu elektrischen Strömen von derselben Größe und demselben Verlaufe Veranlassung gibt, wie im ersten Falle die elektrischen Kräfte.

fr.5

Mais si l'aimant est au repos et le conducteur mis en mouvement, aucun champ électrique n'apparaît à proximité de l'aimant, mais une force électromotrice qui ne correspond à aucune énergie en soi est produite dans le conducteur. Elle provoque cependant --- dans l'hypothèse que le mouvement relatif dans les deux cas est le même --- l'apparition d'un courant électrique de même intensité et de même direction que la force électrique, comme la force électrique dans le premier cas.

jp.5

しかし, もし磁石が静止していて導体が運動状態にあるなら, 磁石の近傍に電場は発生しない. 一方, 導体中では起電力が発生する. この起電力にはそれ自身対応するエネルギーが存在しないが, いま議論されている 2 つの場合の相対的な運動の等価性を仮定すると, この起電力は先のケースでの電気力によって発生する強さ・経路と同じ強さ・経路の電流を発生させる.

解説
英語
# 第 1 文
## 構文

まずは構文を調べます.

  • no electric field arises
  • in the neighbourhood of the magnet
  • (But) if the magnet is stationary
  • and (if) the conductor (is) in motion

英文解釈上, まず文頭の but に注目しましょう. 前の文と反対のことを言っているサインです. 文と文のつながりを表す接続詞は丁寧に見てください. 先程は磁石が動いていて導体が静止していました. 逆接なので今度はこれが反転しているはずです. そう思って読解を進めます.

構文としては if の条件節がカンマまで続いてから主節がはじまります. この大きな構造を見てから細部にうつります.

## But no electric field arises in the neighbourhood of the magnet

最初に言った通り文の解釈上 but にまず意識を向けましょう.

主節は第 1 文型 (SV) です. どこで arise しているか, つまり存在している場所を表すために in --- the magnet の句があります. 最初の時点で field が可算扱いなのか不可算扱いなのかは判断が難しいものの, どちらにせよ動詞 arises に三単現の s がついていて単数扱いなこと, no field の no は冠詞のように働くことにも注意してください. No one can say that --- のような表現も合わせておさえるとイメージしやすいはずです.

No electric field arises は杓子定規に訳すと「ない電場が発生する」です. 対応する日本語・日本語訳が不自然であったとしても英語としては自然な表現です. Arise は rise を含むので「立ち上がる」といった意味で, 「電場が立ち上がる」のは「電場が発生する」と訳せばいいでしょう. まとめると日本語としては「電場が発生しない」と訳します. No+名詞は否定的な内容をすっきり簡潔に書けるとても便利な英語表現なので, ぜひ覚えて使いこなしてください.

もちろんどこで電場が発生しないのかが気になるので, 補足情報として in 以下で電場がどこで発生しないのかを説明しています. Magnet はともかく, neighbourhood は「周囲」です. 訳では数学用語を使って近傍をあてています.

## if the magnet is stationary and the conductor in motion,

冒頭の if は条件を表す副詞節を導きます. If の副詞節の中を見てみましょう. 第 4 文と違い「磁石が静止していて導体が動いている」状況であると言っています.

If の中に第 2 文型 (SVC) が and で並んで 2 つあります. 日本語でもよくあるように並列構造があると単語や表現が省略されることがあります. この and の範囲は if の中に 2 つある, つまり if (A and B) と思っても構いませんし, if 文自体が 2 つ並んでいる, つまり (if A) and (if B) と思っても構いません. さらに the conductor in motion は本来 the conductor is in motion で, be 動詞が省略されています.

単語としては stationary が初めて出て来ました. これは相対性理論の中でも重要で覚えるべき単語です. しかし知らなくても意味が推測できなければいけません. 何故かというと but で前の文と比較されているからです. 文章の流れとして現象は相対的な運動に依存するべきだと言っていて, 前の文では磁石が運動状態にあったのだから, 今度は磁石が静止しているはずです. だから stationary は「静止状態にある」と訳すべきです. 第 4 文では at rest が対応します.

他に理工系頻出語として出てくる stationary の訳は「定常的な」です. Stationary state で「定常状態」と訳します. 特に空間的な変化があっても時間的な変化がない状態を定常状態と呼びます. 適当な意味で時空間的に変化がない系は平衡状態 (equilibrium state) と呼びます.

static の話, station. statue. stay.

# 第 2 文
## 構文

まずは全体の構造を掴みます.

  • we find an electromotive force
  • , to which in itself there is no corresponding energy
  • , but which gives rise to electric currents
    • of the same path and intensity
    • as those produced by the electric forces in the former case
    • ---assuming equality of relative motion in the two cases discussed---
  • In the conductor
  • however

主節は we find an electromotive force であとは全て修飾です. ダッシュで囲まれた挿入もあれば関係代名詞の非制限用法もあり, 単なる長さに留まらない難しさがあります.

この文に限らず, 大きな構造を掴む上では接続詞, または意味上接続詞の働きをする単語には注意しましょう. ここでは冒頭の however と but which の but です. 逆接の接続詞なので前の話と何かが反転しています. 論文や教科書のような説得的な文章を読むときは接続詞を正しく読み取ることが大事です.

そして修飾構造の本丸も ", to which" と ", but which" です.

TODO ここの but which は非制限用法で問題ない?

どちらも関係代名詞の非制限用法です. But は等位接続詞で同じ概念を並べていて, いまは非制限用法の関係代名詞を意味としては逆接で並べています. この 2 つの関係代名詞の先行詞は共通していると見ていいでしょう. 前者の ", to which" は in itself という修飾があり, 後者の ", but which" は gives で入っているので, それぞれ単数の名詞に対する修飾だと判断します. つまり we ではなく an electromotive force を修飾しています. 単複の情報から文法的に機械的に決まっていることを見抜けるかが大事です. あなたが物理をわかっているなら文脈からもわかります.

さらに electromotive force には an と不定冠詞がついていることからよくわかっていない, つまりまだきちんと説明していない言葉であり, 補足説明がなければならないと思えるかどうかも大事なポイントです.

全体的な構造の分析はこのくらいでいいでしょう. 以下, 細かく文を見ます.

## In the conductor, however, we find an electromotive force

However は逆接の意味の副詞です. 接続詞ではないことを念のため注意しておきます.

The conductor は導体でずっと言及されている対象であることを表す定冠詞がついています. An electromotive force は起電力で, 不定冠詞がついていることに注意しましょう. ここでは抽象的な意味を持つ不可算名詞ではなく, 物理として具体的な起電力を指しているのです. 概念として初めて出てくるのであとに補足説明があるはずです. ちなみに後半の the electric forces は電気力と訳すべきでしょうが, この文ではこの冒頭の語と合わせて起電力と訳した方が適切です.

主語として we を使っていることにも注意します. 人文・社会学系だと解釈がわかれることも多く, we を使うと「we というのは誰だ」「私はそんなふうに思っていない」と突っ込まれると聞いたことがあります. 理工系でも議論がある部分に we を使うと同じことが起きることはあります. しかし自然の振る舞いを見ている物理では誰が見ても・考えてもそうなるべき見解を出す必要があるとされていて, we がよく出てくる傾向があります.

royal we

動詞 find は英作文でも役に立つ単語です. 読解から話がずれるので補足でコメントしてあります.

## , to which in itself there is no corresponding energy

第 4 文の「磁石の周囲にある量のエネルギーを持つ電場が発生する」と対応する表現で, 先行詞は素直に an force と思えばいいでしょう. 文法としては前にカンマがあるので関係代名詞の非制限用法です. 先行詞と主節までセットで訳せば「対応するエネルギーが存在しない起電力を見つける」です.

ここで in itself は修飾の副詞句で, メインの構造は there is no corresponding energy で第 1 文型 SV です. To which は corresponding force to something の something が関係代名詞が修飾する名詞として抜かれて, to が which と結びついた形になっています. 物理的にエネルギーに対応する概念と結びつけるたいので, やはり an electromotive force を修飾していると見るべきです.

To which の to とセットにした correspond to something という熟語を覚えておきましょう. 「something に対応する」という意味です.

## , but which gives rise to electric currents of the same path and intensity

全体としては長い節です. 挿入の "--- assuming ... discussed---" を無視して構造を見ます. 訳は「同じ経路と強さを持つ電流を与える」でいいでしょう. 英語として詳しく見ていきます.

逆接の接続詞 but がある上に再び関係代名詞の非制限用法です. どれだけ複雑な構文なのかと途方に暮れますが仕方ありません.

ここでは (an electromotive force) gives rise to electric currents がメインの構造です. 続く要素は electric currents を修飾しています. 続く構造を見抜く上で大事なのは same --- as の部分です. As 以降の分析は後回しにして, 表題部分の文を見ましょう.

まず electric currents of the same path and intensity でいったん切れます. ここで何が same なのか? という疑問が湧いてきます. 実はこれを as those が受けて説明しているのです. 熟語表現として same A as B があり, これを使っています.

動詞の gives rise to something は熟語で, 「発生させる, 生み出す」といった意味で produce と同じです. 三単現の s があるので主語は単数のはずです. 接続詞 but は関係代名詞の並列を指していると見るべきでしょうから, ここは素直に a force が先行詞だと見ていいはずです. 物理としてもエネルギーが電流を生むというより, 起電力が電流を生むと言った方が自然です.

目的語にあたる electric currents は電流です. 定冠詞が the がつかず無冠詞の複数形になっていることに注意しましょう. 単に current だけでも電流を表します. Current はラテン語で to run, move quickly を意味する currere を語源にしていて, 動くモノという意味があります. 深掘りすると面白い単語なので単語編で詳しく眺めると楽しいでしょう.

Path は物理だと「経路」という訳を覚えておくと便利です. 例えばファインマンの経路積分が path integral です: もちろんファインマンはノーベル賞を取った人です. Intensity は「強さ」です. これも理工系ではよく出てくる単語で覚えておくべきでしょう.

最後に the same と言われても何とどう同じなのかが気になります. 本来は same A as B という熟語で理解すべき部分なので, この部分を次に調べてみましょう.

## as those produced by the electric forces in the former case

The same path and intensity as those で, the same A as B の as B 部分です. この部分は「前の場合の起電力によって生み出される (のと同じ)」と訳せばいいでしょう.

ここで those が何を意味しているかで悩むかもしれません. いま those の前には electric currents と same path and intensity があるからです. ここでは electric currents of the same A as B であり, ここは一種の並列構造なので those は electric currents produced by と読むべきでしょう. 物理としても produced by the electric forces な those は path and intensity ではなく electric currents でないと意味が通りません.

([TODO: those の説明] these ではなく those にする気分をどう説明するか? Path and intensity より遠い electric currents を指しているから, という説明は正しいか? 意味としては問題ないように思うが.)

ここで the electric forces と冠詞が the になっていることにも注意しましょう. 冒頭で an electromotive force と不定冠詞だったのが変わっているのです.

([TODO: 単複の変更] 何で単複が変わっているのか. どう説明をつければいいのか.)

最後の in the former case は former が問題かもしれません. これは前者・後者という場合の「前者」です. 単語編の former も参考にしてください. ちなみに後者は latter です.

## ---assuming equality of relative motion in the two cases discussed---

最後に assuming からはじまる分詞構文を確認します. 英語での節・句の挿入は日本語とだいぶ違う趣があり, どこにどうかかっているかを把握するのは重要です.

文法的な判断は必ずしも簡単ではないと思いますが, assume の意味から言って意味上の主語は we で問題ないでしょう. つまり we assume equality of relative motion in the two cases discussed が対応する完全な文であり, 第 3 文型で we assume equality が主な構造です. 無冠詞 の equality が何かと言えば of relative motion で修飾されていて, さらに in the two cases の補足があり, two cases を discussed でさらに詳しく修飾しています.

(TODO: 文法的に主語をどう判定すればいいか?)

動詞 assume の意味は「仮定する」で理工系最重要・最頻出単語の 1 つです. これと suppose は数学の定理や言明の仮定で「---と仮定する」というときの「仮定する」に使う単語です. Assume と suppose にも微妙なニュアンスの違いがあります. 詳しくは英英辞典で調べましょう.

目的語の equality は相対性理論の文脈では「等価性」などと訳すといいでしょう. Relative motion は「相対的な運動」で, この relative は相対性理論の相対性です.

Equality は何かと何かが等しいと言わなければならないので, その 2 つは in the two cases で表されています. どの the two cases かを示すのが discussed で, 「いままさに議論されている 2 つの場合」と訳します. この「2 つの場合」はもちろん導体と磁石のどちらが動くかによる場合分けです.

最後にここでの equality が無冠詞なことに注目してください. 「いままさに議論されている 2 つのケース」と言う具体的な equality のようにも思います, しかし一般に equality 自体は抽象的な不可算名詞 「等価性」は抽象的な等価性であり, 無冠詞扱いでいいのでしょう. これについては数学・物理で独特の語感があるため補足パートで説明します.

補足
英作文で便利な find

第 2 文で出てくる動詞の find は「---なことを見つけた」ことを表したいときに使いやすい単語です. 日本人が思うよりも便利に使える単語で英作文でも役に立ちます. 例えば次のように「わかる」「気づく」といった意味も表せます.

  • I found that the car was stuck in the mud.
  • 車が泥の中に入って動けなくなったのに気づいた.

他にもいくつか英作文で便利な単語があります. 例えば have は異様に便利です. 「体重が 70 kg である」というのを "I have 70kg weight." と言えます. せっかく詳しく文章を読むので, 「自分でもこれを使えると便利だ」という英作文・英語表現もためてください.

数学・物理では equalities/inequalities がありうる

タイトルが結論です. 日常的なふつうの英語では equality はまさに抽象的な単語で, 不可算名詞と理解するのが自然なのでしょう. しかし数学や物理では等式・不等式という意味で equalities/inequalities を使います. 等式や不等式はまさに具体的な式が星の数ほどあり可算名詞として使う機会が多いのです. もっといえば Inequalities というタイトルの世界的に有名な数学の教科書があるほどです.

実を言えば本文での equality に関して, はじめて見たとき私は数学・物理として「具体的な項の等価性・等号・等式」をイメージしたので, 可算名詞にするべきではないかと思ったのです. しかし翻訳した人にとっては「議論しているケースの等価性」という抽象的な等価性をイメージしたから不可算名詞をあてたのでしょう. 実際, 不可算名詞をあてた方が適切と思います.

名詞の可算・不可算は数学・物理での感覚と日常言語の感覚に微妙な齟齬があります. 気になったらきちんと調べるようにしてください.

第011回 第5文読解の残り・単語

まず確認

  • 録画はじめた?
  • 音は大丈夫?
  • 一度音声が入っていなくてひどい目に遭ったことを忘れないように.

記事公開手順

  • 動画が変換でき次第, YouTube にアップしておく
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YouTube 公開用: これを読んでいる方への注意・言い訳

これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください.

勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します.

適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

講義動画と関連リンク

はじめに

  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
  • 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.

今日の予定

  • 第 5 文の読解の残り
  • 第 5 文の単語

進捗

  • 第 5 文の読解の残り
  • ドイツ語単語を何となく眺めた

TODO

  • 頂いたコメントや, コメントへの回答をコンテンツ本体に盛り込む

今日のメモ

以下の内容のところにいろいろメモしてある.

内容: コンテンツ (案) からの転記

en.5 第 2 文

構文

まずは全体の構造を掴みます.

  • we find an electromotive force
  • , to which in itself there is no corresponding energy
  • , but which gives rise to electric currents
    • of the same path and intensity
    • as those produced by the electric forces in the former case
    • ---assuming equality of relative motion in the two cases discussed---
  • In the conductor
  • however

物理での電場: 高校でいうと空間に電荷を置いて, 電荷が受ける力と「定義」する. (正確には単位電荷に対する力 = 電場) ベクトル. 電荷: 観測対象

電場それ自体: 電場というモノ自体が空間に分布している. 空間にたくさんのベクトルが分布している. (物理的には空間に沿ってふつう連続的に変化する) ベクトル場.

TODO 上のコメントを補足に入れる.

主節は we find an electromotive force であとは全て修飾です. ダッシュで囲まれた挿入もあれば関係代名詞の非制限用法もあり, 単なる長さに留まらない難しさがあります.

この文に限らず, 大きな構造を掴む上では接続詞, または意味上接続詞の働きをする単語には注意しましょう. ここでは冒頭の however と but which の but です. 逆接の接続詞なので前の話と何かが反転しています. 論文や教科書のような説得的な文章を読むときは接続詞を正しく読み取ることが大事です.

そして修飾構造の本丸も ", to which" と ", but which" です.

TODO ここの but which は非制限用法で問題ない?

どちらも関係代名詞の非制限用法です. But は等位接続詞で同じ概念を並べていて, いまは非制限用法の関係代名詞を意味としては逆接で並べています. この 2 つの関係代名詞の先行詞は共通していると見ていいでしょう. 前者の ", to which" は in itself という修飾があり, 後者の ", but which" は gives で入っているので, それぞれ単数の名詞に対する修飾だと判断します. つまり we ではなく an electromotive force を修飾しています. 単複の情報から文法的に機械的に決まっていることを見抜けるかが大事です. あなたが物理をわかっているなら文脈からもわかります.

さらに electromotive force には an と不定詞がついていることからよくわかっていない, つまりまだきちんと説明していない言葉であり, 補足説明がなければならないと思えるかどうかも大事なポイントです.

全体的な構造の分析はこのくらいでいいでしょう. 以下, 細かく文を見ます.

, to which in itself there is no corresponding energy

TODO 構文の注意

第 4 文の「磁石の周囲にある量のエネルギーを持つ電場が発生する」と対応する表現で, 先行詞は素直に an force と思えばいいでしょう. 文法としては前にカンマがあるので関係代名詞の非制限用法です. 先行詞と主節までセットで訳せば「対応するエネルギーが存在しない起電力を見つける」です.

ここで in itself は修飾の副詞句で, メインの構造は there is no corresponding energy で第 1 文型 SV です. To which は corresponding force to something の something が関係代名詞が修飾する名詞として抜かれて, to が which と結びついた形になっています. 物理的にエネルギーに対応する概念と結びつけるたいので, やはり an electromotive force を修飾していると見るべきです.

To which の to とセットにした correspond to something という熟語を覚えておきましょう. 「something に対応する」という意味です.

, but which gives rise to electric currents of the same path and intensity

全体としては長い節です. 挿入の "--- assuming ... discussed---" を無視して構造を見ます. 訳は「同じ経路と強さを持つ電流を与える」でいいでしょう. 英語として詳しく見ていきます.

逆接の接続詞 but がある上に再び関係代名詞の非制限用法です. どれだけ複雑な構文なのかと途方に暮れますが仕方ありません.

ここでは (an electromotive force) gives rise to electric currents がメインの構造です. 続く要素は electric currents を修飾しています. 続く構造を見抜く上で大事なのは same --- as の部分です. As 以降の分析は後回しにして, 表題部分の文を見ましょう.

まず electric currents of the same path and intensity でいったん切れます. ここで何が same なのか? という疑問が湧いてきます. 実はこれを as those が受けて説明しているのです. 熟語表現として same A as B があり, これを使っています.

動詞の gives rise to something は熟語で, 「発生させる, 生み出す」といった意味で produce と同じです. 三単現の s があるので主語は単数のはずです. 接続詞 but は関係代名詞の並列を指していると見るべきでしょうから, ここは素直に a force が先行詞だと見ていいはずです. 物理としてもエネルギーが電流を生むというより, 起電力が電流を生むと言った方が自然です.

目的語にあたる electric currents は電流です. 定冠詞が the がつかず無冠詞の複数形になっていることに注意しましょう. 単に current だけでも電流を表します. Current はラテン語で to run, move quickly を意味する currere を語源にしていて, 動くモノという意味があります. 深掘りすると面白い単語なので単語編で詳しく眺めると楽しいでしょう.

(fr) courir = run

pass

順番がよくないので記述を整理する

Path は物理だと「経路」という訳を覚えておくと便利です. 例えばファインマンの経路積分が path integral です: もちろんファインマンはノーベル賞を取った人です. Intensity は「強さ」です. これも理工系ではよく出てくる単語で覚えておくべきでしょう.

最後に the same と言われても何とどう同じなのかが気になります. 本来は same A as B という熟語で理解すべき部分なので, この部分を次に調べてみましょう.

as those produced by the electric forces in the former case

The same path and intensity as those で, the same A as B の as B 部分です. この部分は「前の場合の起電力によって生み出される (のと同じ)」と訳せばいいでしょう.

ここで those が何を意味しているかで悩むかもしれません. いま those の前には electric currents と same path and intensity があるからです. ここでは electric currents of the same A as B であり, ここは一種の並列構造なので those は electric currents produced by と読むべきでしょう. 物理としても produced by the electric forces な those は path and intensity ではなく electric currents でないと意味が通りません. この those は文法で前方照応的と呼ばれています. 文法的に文法編で説明しています.

ここで the electric forces と冠詞が the になっていることにも注意しましょう. 冒頭で an electromotive force と不定冠詞だったのが変わっているのです.

([TODO: 単複の変更] 何で単複が変わっているのか. どう説明をつければいいのか.)

最後の in the former case は former が問題かもしれません. これは前者・後者という場合の「前者」です. 単語編の former も参考にしてください. ちなみに後者は latter です.

TODO 記述の追加, the に対するコメント

---assuming equality of relative motion in the two cases discussed---

最後に assuming からはじまる分詞構文を確認します. 英語での節・句の挿入は日本語とだいぶ違う趣があり, どこにどうかかっているかを把握するのは重要です.

文法的な判断は必ずしも簡単ではないものの, Assume の意味から言って意味上の主語は we で問題ないでしょう. Assume の意味上の主語を文法的に考えるなら, 文法編の分詞構文の主語の節, 慣用的独立分詞構文のところを見てください.

もしこれを慣用的独立分詞構文とみなさずルールに則って分析するなら, 次の 2 点がポイントになるでしょう.

  • but which の前がカンマで大きく区切られているので, 挿入句はカンマより前の部分にはかからない.
  • 分詞構文の主語が明示されていないときは, 文 (ここでは but which 以下の節) の主語と同じ.

こう思うと assume の主語は which = an electromotive force とみなす必要があります. しかしやはりこれは不自然です. 素直に we が主語と考えるべきですし, 基本的なルールを踏まえた上で慣用として許されている表現とみなしましょう.

主語は we でいいとすれば, we assume equality of relative motion in the two cases discussed が対応する完全な文であり, 第 3 文型で we assume equality が主な構造です. 無冠詞 の equality が何かと言えば of relative motion で修飾されていて, さらに in the two cases の補足があり, two cases を discussed でさらに詳しく修飾しています.

動詞 assume の意味は「仮定する」で理工系最重要・最頻出単語の 1 つです. これと suppose は数学の定理や言明の仮定で「---と仮定する」というときの「仮定する」に使う単語です. Assume と suppose にも微妙なニュアンスの違いがあります. 詳しくは英英辞典で調べましょう.

目的語の equality は相対性理論の文脈では「等価性」などと訳すといいでしょう. Relative motion は「相対的な運動」で, この relative は相対性理論の相対性です.

Equality は何かと何かが等しいと言わなければならないので, その 2 つは in the two cases で表されています. どの the two cases かを示すのが discussed で, 「いままさに議論されている 2 つの場合」と訳します. この「2 つの場合」はもちろん導体と磁石のどちらが動くかによる場合分けです.

最後にここでの equality が無冠詞なことに注目してください. 「いままさに議論されている 2 つのケース」と言う具体的な equality のようにも思います, しかし一般に equality 自体は抽象的な不可算名詞 「等価性」は抽象的な等価性であり, 無冠詞扱いでいいのでしょう. これについては数学・物理で独特の語感があるため補足パートで説明します.

単語

  • あとで記録
  • 何に対してコメントしたか記録する

manifold = mfd

第012回 第5文の単語

まず確認

  • 録画はじめた?
  • 音は大丈夫?
    • 一度音声が入っていなくてひどい目に遭ったことを忘れないように.

記事公開手順

  • 動画が変換でき次第, YouTube にアップしておく
  • md を整理しつつオリジナルのコンテンツに追記する
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この動画に特化したリンク先は次の通りです。

(講義動画と関連リンクの内容)

以下いつもの関連コンテンツ群です。

(YouTube 動画の説明欄にいつも張るリンク集)
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YouTube 公開用: これを読んでいる方への注意・言い訳

これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください.

勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します.

適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

講義動画と関連リンク

はじめに

  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
  • 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.

今日の予定

  • 前回の訂正・再説明
  • 第 5 文の単語

進捗・TODO・今日のメモ

内容: コンテンツ (案) からの転記

前回の訂正: en.4 と en.5 第 2 文の比較

次のような形になっています.

  • 第 4 文: an electric field produces a current at the places
  • 第 5 文その 1: an electromotive force gives rise to electric currents

さらに言えば第 5 文には次の記述もあります.

  • 第 5 文その 2: electric currents of the same path and intensity as those produced by the electric forces in the former case

直訳調では次のようになるでしょうか.

  • 第 4 文: 空間の各点ごとに 1 つの電場が 1 つの電流を生み出す
  • 第 5 文その 1: 1 つの起電力がたくさんの電流を生み出す
  • 第 5 文その 2: 多くの電気力が生み出したたくさんの電流

一見すると主語と目的語の単複がうまく噛み合っていないように見えます. もっと言えば「電場」と「電気力」のずれもあります. これは起電力と電場・電気力の意味・定義の違いです. 同じ力とついていて紛らわしいだけで, 実際には起電力は (力学的な) 力ではないのです. 歴史的・分野的な事情も含めていくつかの事情があります.

電圧とは何か 気にすると、なかなか難しいのだ。」の説明を参考にしましょう. 電気回路の理論を中心にして電圧と曖昧に呼ばれる概念があり, これの内実は電位差と起電力です. ここで電位は純粋な電磁気学的な概念で, ベクトル場である電場に対するポテンシャル (スカラー, 関数) を意味しています.

E = - \grad \phi F = - -G Mm / r^2 = - m \grad U, U = -GM/r

そしてこの電位の差が電位差でこれは文字通り静電ポテンシャルである電位の差です. 一方, 起電力が何かといえば「電気回路内で電圧を生み出す概念」です. もう少し正確に言えば「回路中にあって電子をよりエネルギーの高い状態へと押し上げようとする働き」が起電力です. そして電気回路の理論で電圧が何を表すかと言えば電流を生み出すモノ (「物質」の意味ではない) です.

私が知る限り起電力は電気回路と強く紐づく概念で, 一般の電磁気学の概念ではありません. 論文が書かれた 1905 年当時の物理学界での用語法まで調べられてはいないものの, いま電気回路の議論をしていないこともあり, ここでいう起電力は電流を生み出すモノくらいの意味でしょう.

もう 1 つ物理学史として大事なポイントがあります. ここで electric force として言及された電気力と電場の違いです. 結論から言うとここではこの 2 つをあえて区別せずに使っています: 以下の電磁気学的な解説はいったん飛ばしても構いません.

では飛ばしてもいい解説を書きます. 高校物理で電場は空間の各点に置かれた単位電荷が受ける力として定義されます. 一方, 現代物理で電場は第一義的にはマクスウェル方程式が定義するベクトル場で, 特にクーロンの法則だけを取り出すなら電荷分布が生み出すベクトル場です. いったん力とは切り離した概念として独自に定義される概念なのです.

f = q E + qv \times B: ローレンツ力

マクスウェル方程式で出てくるのはあくまで後者の意味での電場であり, 電荷が受ける力ではありません. そしてここでは (単位電荷あたりの) 力としての電場と, マクスウェル方程式 (特にアンペール・マクスウェルの法則?) 由来の電場が混同されています.

この整理のもとで先の文章を見直すと次のように整理できるでしょう.

  • 第 4 文: an electric field produces a current at the places
    • 空間の各点ごとに 1 つの電場が 1 つの電流を生み出す
    • 空間の各点で定義された電場のベクトルが, その点での電流のベクトルを生み出す
    • ベクトル場 (ベクトル値関数) である電場がベクトル場としての電流を生み出していて, その関係を空間の各点ごとのベクトルレベルで考えている
  • 第 5 文その 1: an electromotive force gives rise to electric currents
    • 1 つの起電力がたくさんの電流を生み出す
    • 時空の実数値関数 (スカラー場) として定義された 1 つの起電力が, 時空の各点でベクトル場としての電流を生み出す
    • (その扱いが物理的にどこまで正当かはともかく) 空間上の実数値関数として, ある 1 つの起電力が空間全体の電流の分布を決めていて, 電流の分布を「多数の電流を生み出している」と表現している
  • 第 5 文その 2: electric currents of the same path and intensity as those produced by the electric forces in the former case
    • 多くの電気力が生み出したたくさんの電流
    • (起電力が純粋に空間の各点での電位差を生んでいると仮定して) 空間の各点での電位差 (電位の勾配, ベクトル解析でのグラディエント) が, 空間の各点で電気力のベクトル (正確には電場) を生み出し, それがさらに電流ベクトルを生み出していて, その関係を空間の各点ごとのベクトルレベルで考えている

最後に念のため物理的な整理も込めて補足しておくと, 電場・電気力・起電力が直接電流を生み出すわけではありません. 力学的に言えば, 電気力によって電荷が運動し, その電荷の運動が電流として出てきます. そして起電力を電位差と思えば, 電位差 (電位の勾配, ベクトル解析のグラディエント) によって電場が生まれ, 空間の各点での電場が電気力の源になっています.

単語

stationary

物理・数学では単に「止まった」といってもいくつか意味と対応する訳語があります. 例えば stationary process と言えば「定常過程」と訳します. 他には熱力学で時間的な変化はないものの空間的には非一様な状態を stationary state と言い, 日本語では「定常状態」です. 時間変化がなく空間的に一様な状態は equilibrium state と言い, 「平衡状態」と訳します.

Wiktionary によるとラテン語の stationarius, statio, 究極的には stō (to stand) に由来します. 二重語として stationer があります. Stationery の語源は「常設の場所 (station) で売られる品物」です. 昔の商人は教会の近くに常設の売店 (station) を開くことを許され, そこで聖職者用の品物を売っていました. 時代が下って筆記具類を専門に扱うようになり, 「文房具店」の意味に変わります.

Etymonline によると, 14 世紀後半に中フランス語の "motionless" を意味する stationnaire に由来します. 古典ラテン語の stationarius は "of a military station" の意味でした. Statarius は "stationary, steady" の意味です.

ここで stand にも注目してみましょう. Wiktionary によるとゲルマン祖語の standaną (to stand), 印欧祖語 steh₂- に由来します. この stand はよく「立つ」と訳されますが, 「(立ったまま) 動かないでいる」という意味もあります. 例えば書見台をブックスタンドというとき, 本とそのページを動かないようにおさえておく装置の意味です. 駅を station と言うのも電車にとって動かないしるべという意味からです.

また static にも似た意味があります. 例えば静電ポテンシャルを electro static potential と書くときに使います. Wiktionary によると近代ラテン語の staticus, 古ギリシャ語 statikós に由来していて, やはり stō の持つ st という共通項があります.

他にも語源が同じ言葉として state (状態), status (地位), statue (像), stay (とどまる) などがあります. 例えば station は「(人などが) 立つ所」で, 16 世紀に「宿場」「駅」などの意味に変わりました.

field

電磁場, 重力場というときの「場」を表す単語です.

Wiktionary によると西ゲルマン祖語の felþu ゲルマン祖語の felþuz, felþaz, felþą ("field"), 究極的には印欧祖語の pleh₂- ("field, plain") or pleth₂- ("flat") に由来します. ドイツ語の Feld と同根です. 古英語の folde ("earth, land, territory"), folm ("palm of the hand") とも関係があります.

Wiktionary には fold も参照するよう指示があるのでそれも見てみましょう. これは中英語の folden, 古英語の fealdan, ゲルマン祖語 falþaną ("to fold"), 印欧祖語 pel- ("to fold") に由来します.

ドイツ語の動詞: 最後に en がつく. 品詞ごとに「語尾」が決まっている. フランス語だと動詞の語尾が -are, -ire, -ere. イタリア語だと同じような語尾. イタリア語は現代ラテン語: ラテン語でも同じような動詞語尾. 日本語だと動詞は「う」行, 形容詞は「い」で終わる.

英語は語順が重要: 意味が変わる. イタリア語は動詞の活用が 1 人称の単複, 2 人称の単複, 3 人称の単複で 6 つ.

arise

Wiktionary によるとゲルマン祖語の *uzrīsaną (to rise up, arise) に由来し, これは a- + rise に分解できます. 特にこの a- は away, up, on, out のような意味を付加したり意味を強調する接頭語と思えばいいでしょう. 詳しくは接頭辞の項を見てください.

however

How + ever に分解できます.

何故 however で「しかし」の意味になるのだろう? 要調査.

force

Wiktionary によると古フランス語 force の借用語で, 後期ラテン語または俗ラテン語 fortis (strong) の中性複数形 *fortia に由来します.

correspond

Wiktionary によると中フランス語 correspondre, ラテン語 com- (with) + respondeo (to match, to answer to) に由来します. 英語でそのまま con/com + respond とみなしてもいいでしょう.

give

Wikipedia によるとゲルマン祖語の *gebaną (to give) に由来します. 同じゲルマン祖語に由来するネイティブの中英語 yiven, ȝeven が英語内部での由来です.

中英語の yiven と give を比較すると y と g が入れ替わっていることに気付きます. 実はこれはある程度一般的な現象です. 有名なのは「庭」を意味する garden と yard です. 語尾の en を抜かせば完全に一致します. 古い形を見るとこうした入れ替わりにも気付けるようになるので, 深く記憶に刻み込むためにはこういう単語の掘り方も大事です.

intensity

Wiktionary によるとラテン語の intensitas に由来します. Intense +‎ -ity と分解できます. Intense は中フランス語 intense, ラテン語 intendere (to stretch out) の過去分詞 intensus (stretched tight) の借用語です. これは in (in, upon, to) + tendere (to stretch) と分解できます. 後者の tenderetendō の活用で, tendō はイタリア祖語 tendō, 印欧祖語の ten- (to stretch, draw) の extension である *tend- に由来します.

Stretch などから考えれば *ten- は tend の語源のように思えます. 実際 Wiktionary によると tend は古フランス語の tendre (to stretch, stretch out, hold forth, offer, tender), ラテン語の tendere (to stretch, stretch out, extend, spread out) に由来します. この名詞形 tension は中フランス語 tension, ラテン語の tensiō, tensiōnem に由来します. 物理・数学ではテンソルという量は張力 (tension) に由来する概念です.

せっかくなので stretch も 見てみると, これは西ゲルマン祖語 strakkjan (to stretch, make taut or tight), 印欧祖語 (s)treg-, streg-, treg- (stiff, rigid) に由来します. ドイツ語 strecken (to stretch, straighten, elongate) も同根です. STARK を参照するようにと書いてあるので見てみると, これはゲルマン祖語 starkaz, starkuz (stiff, strong), 印欧祖語 (s)terg- (rigid, stiff) に由来し, ドイツ語の stark (strong) と同根です. これはデンプンを意味する starch と関係があるそうで, 中英語の stark, sterk (strong; stiff) の歯擦音化 starche (名詞), starche, sterch (stiff, 形容詞) に由来します.

第013回 言語学小ネタ紹介, 第6文の英独仏単語比較

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今日の予定

  • (報告) 単語系コンテンツを独立して作ることにした
    • こちらはしばらく本文読みに集中する
  • 最近勉強して面白かった単語ネタ紹介
  • 第 6 文の読解

進捗・TODO・今日のメモ

  • 単語ネタ紹介が前半 35 分
  • 残りの 30 分で第 6 文の英・独・仏の多言語単語比較
  • 次回予定: 第 6 文の和訳・文法解析・補足

内容: コンテンツ (案) からの転記

言語学ネタ: 音韻法則

はじめに

はじめに少し単語の話. 他で所属している語学学習コミュニティで流れてきた話を紹介する. いまここの人達にも少し相談しつつ, 単語学習に特化したコンテンツを作っている. 今月中には作り終える予定. こちらにもシェアする.

単語の話は楽しいが本文読解が進まなくなる. 本文を読みたいという私の気分もあるのでしばらく本文読解に集中したい. 今日は (せっかく勉強会用に資料を整備したこともあって) 本文集中前の当面最後の単語回にする.

基本
  • 音韻法則は音の話で物理で自然科学領域
  • 人体 (口) の構造とも関わる
  • 言語・文化の世界の制約を超える
  • focus
    • 英語の「焦点」
    • ラテン語では「かまど」
  • 火 (hi): 韓国語ではプル
    • H と P は親戚: フとプ
    • H と F も親戚
    • F と P も親戚: フとプ
  • 例: 英語の fish はフランス語の poisson, イタリア語の pesche (星座の魚座はピスケス)
    • cf. スパゲティーのペスカトーレは「漁師」
    • プルコギのプル (Pul = Hi 火), 火 + 肉 = 焼き肉
  • 火についてもう少し
    • en. fire
    • de. das Feuer
    • fr. le feu
    • it. il fuoco
    • sp. el fuego
    • ru. ogon (アゴン)
    • サンスクリット: agni- (ロシア語と近い)
    • lat. ignis
  • ロシア語 ogon, サンスクリット agni, ラテン ignis は全て「母音+G+N」
印欧語比較文法
  • 母音の音色 (何でもいい) + 同じ子音のキープ
    • 母音の音色の変化を階梯と呼ぶ. 英語だとグレード
    • 母音のグレードは何でもいい
  • これが一番大事
  • 一つの単語が必ず別な言語の何かの現象と交差する: 単語も自動的に付随して記憶できる
  • 日頃から耳学問で構わないので浴び続けることが必要
アニメ・漫画・ゲーム・社会で見る単語の連関
agni についてもう少し
  • ゲームの真女神転生の悪魔のアグニ
    • イメージの絵も火の化身そのもの
  • 昔, 漫画のサザンアイズでアグニマーヤーというのがあったはず (検索でいい感じに出てこない)
    • マーヤー: パーリ語なりサンスクリットなりでいろいろある
  • これまた遥か昔のゲーム, 飛龍の拳 II あたりでもインド神話やサンスクリット周辺の言葉がたくさんある
  • 小説・アニメの天空戦記シュラトも古代インド関連ネタ: 仏教とも深く関わる
  • アグニで調べて出てきたニュース: インド、ICBM「アグニ5」の発射実験に成功と発表
  • サンスクリットは現代社会にも生きている
ignis
  • アニメ・漫画・ゲームキャラでよく聞く名前で一定の語感が (私には) ある
  • 検索するとすぐ出てくる
  • 英語の ignite: プログラミング関係で CodeIgniter
  • 直接にはウェディングピーチのイグニス
    • 「悪魔界の女王レインデビラに仕える火魔ピュール族の悪魔」
  • pyro はギリシャ語
    • p と f の転換でそのまま
    • pyromania = 放火癖
  • 少女漫画にさえ言語の世界が百花繚乱
  • 先のページを見ると水魔ポタモスというリンクがある
  • リンクを辿ると「水魔アクア」
  • ラテン語: aqua, 水和物など NaOH + aq: aq は水溶液または大量の水
  • イタリア語: acqua
ポタモスに見る水の語感
  • 何か謎に水の語感を感じた
  • 検索してみたら一発で
  • メソポタミアというそのものずばりの存在がある
メソの物理
  • 湯川秀樹のノーベル賞, 中間子は meson
  • メゾスコピック系 = mesoscopic: microscopic (微視的), macroscopic (巨視的)
身近なサンスクリット

マハラジャ. 実は maha は mega と語源が同じ. これも母音のずれと h と g の入れ替え現象が見える.

ついでにいえば摩訶不思議の maka も同じ: これは maha の音写. さらについでに, マハラジャの「ラジャ」は何か?

実はラジャは rēgem 「王」で, これはラテン語の rēx, rēgālis と同根かつ英語では royal が同根.

さらに garden と yard で g と y が入れ替わるのと同じで, ここでも g と y の転換がある.

第 6 文

英文と訳
# en.6

Examples of this sort, together with the unsuccessful attempts to discover any motion of the earth relatively to the light medium, suggest that the phenomena of electrodynamics as well as of mechanics possess no properties corresponding to the idea of absolute rest. They suggest rather that, as has already been shown to the first order of small quantities, the same laws of electrodynamics and optics will be valid for all frames of reference for which the equations of mechanics hold good.

# de.6

Beispiele ähnlicher Art, sowie die misslungenen Versuche, eine Bewegung der Erde relativ zum "Lichtmedium" zu konstatieren, führen zu der Vermutung, dass dem Begriffe der absoluten Ruhe nicht nur in der Mechanik, sondern auch in der Elektrodynamik keine Eigenschaften der Erscheinungen entsprechen, sondern dass vielmehr für alle Koordinatensysteme, für welche die mechanischen Gleichungen gelten, auch die gleichen elektrodynamischen und optischen Gesetze gelten, wie dies für die Grössen erster Ordnung bereits erwiesen ist.

# fr.6

Des exemples similaires, tout comme l'essai infructueux de confirmer le mouvement de la Terre relativement au «médium de la lumière», nous amène à la supposition que non seulement en mécanique, mais aussi en électrodynamique, aucune propriété des faits observés ne correspond au concept de repos absolu; et que dans tous les systèmes de coordonnées où les équations de la mécanique sont vraies, les équations électrodynamiques et optiques équivalentes sont également vraies, comme il a été déjà montré par l'approximation au premier ordre des grandeurs.

  • (NdT 1) (médium de la lumière) médium de la lumière: En jargon moderne, il s'agit de l'éther luminifère.
# jp.6

光の媒質に対して相対的な地球のどんな運動を見つけられなかったことと合わせて, この種の例は示唆するのは, 電磁気現象と力学現象は絶対静止の概念に対応するどんな性質も持たないことである. それらはむしろ次の内容を示唆する: つまり既に 1 次の微少量までは示されているように, 力学の方程式がよく成り立つ全ての座標系に対して, 電気力学と光学の物理法則は正しい.

  • [TODO] この訳, 内山訳と the same laws の取り方が違う. 上の訳で正しいか要確認. 英訳自体がドイツ語訳からずれている? 該当箇所だけ見るとそんなことはなさそうだが.
  • cf. 内山訳: そのような座標系のどれから眺めても, 電気力学の法則および光学の法則は全く同じであるという推論である.
  • cf. 唐木田訳: 電気力学や光学の法則が同じ形で成立する.

第014回 第6文の読解

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今日の予定

  • 第 6 文の読解

進捗・TODO・今日のメモ

  • 第6文内の第2文の主節の構造を確認
  • 次回: 第 6 文内第 2 文の復習から
  • TODO: 頂いたコメントを転記
  • TODO: 修正した部分を本体に反映

内容: コンテンツ (案) からの転記

第 6 文

en.6

Examples of this sort, together with the unsuccessful attempts to discover any motion of the earth relatively to the light medium, suggest that the phenomena of electrodynamics as well as of mechanics possess no properties corresponding to the idea of absolute rest. They suggest rather that, as has already been shown to the first order of small quantities, the same laws of electrodynamics and optics will be valid for all frames of reference for which the equations of mechanics hold good.

de.6

Beispiele ähnlicher Art, sowie die misslungenen Versuche, eine Bewegung der Erde relativ zum "Lichtmedium" zu konstatieren, führen zu der Vermutung, dass dem Begriffe der absoluten Ruhe nicht nur in der Mechanik, sondern auch in der Elektrodynamik keine Eigenschaften der Erscheinungen entsprechen, sondern dass vielmehr für alle Koordinatensysteme, für welche die mechanischen Gleichungen gelten, auch die gleichen elektrodynamischen und optischen Gesetze gelten, wie dies für die Grössen erster Ordnung bereits erwiesen ist.

fr.6

Des exemples similaires, tout comme l'essai infructueux de confirmer le mouvement de la Terre relativement au «médium de la lumière», nous amène à la supposition que non seulement en mécanique, mais aussi en électrodynamique, aucune propriété des faits observés ne correspond au concept de repos absolu; et que dans tous les systèmes de coordonnées où les équations de la mécanique sont vraies, les équations électrodynamiques et optiques équivalentes sont également vraies, comme il a été déjà montré par l'approximation au premier ordre des grandeurs.

  • (NdT 1) (médium de la lumière) médium de la lumière: En jargon moderne, il s'agit de l'éther luminifère.
jp.6

光の媒質に対して相対的な地球のどんな運動を見つけられなかったことと合わせて, この種の例が示唆するのは, 電磁気現象と力学現象は絶対静止の概念に対応するどんな性質も持たないことである. それらはむしろ次の内容を示唆する: つまり既に 1 次の微少量までは示されているように, 力学の方程式がよく成り立つ全ての座標系に対して, 電気力学と光学の物理法則は正しい.

  • [TODO] この訳, 内山訳と the same laws の取り方が違う. 上の訳で正しいか要確認. 英訳自体がドイツ語訳からずれている? 該当箇所だけ見るとそんなことはなさそうだが.
  • cf. 内山訳: そのような座標系のどれから眺めても, 電気力学の法則および光学の法則は全く同じであるという推論である.
  • cf. 唐木田訳: 電気力学や光学の法則が同じ形で成立する.

解説

英語第 1 文
構文

文構造を確認しましょう.

  • Examples of this sort suggest
    • that the phenomena of electrodynamics as well as of mechanics possess no properties
      • corresponding to the idea of absolute rest
    • together with the unsuccessful attempts
      • to discover any motion of the earth
        • relatively to the light medium

まず主節は A suggest that の構造で that 節があり, カンマに挟まれた, together with からなる副詞句が長い挿入があります.

Examples of this sort suggest that

これが主節です. 主語はもちろん Examples of this sort です. 間の長い挿入を無視して動詞 suggest を見つけられうかがまず勝負です.

Examples of this sort は「この種の例」と訳し, suggest that --- は「---を示唆する」と訳せばいいでしょう. 何を示唆するかが that 節の中身です. Examples は無冠詞の複数で, sort は単数で this の限定がついていることに注意してください.

よく suggest は suggest that のかたまりで出てきますし, 提案の内容までセットで骨格を掴みたいと思うのも人情です. 先に補足説明を除いた骨格を示しておくと次の通りです.

  • Examples suggest that the phenomena possess no properties.

何故これが骨格なのか調べてみましょう.

(that) the phenomena of electrodynamics as well as of mechanics possess no properties corresponding to the idea of absolute rest

Suggest の目的語である that 節は主語が長いものの, 主な構造は the phenomena possess no properties です. The phenomena と possess の間にある of A as well as of B が phenomena の補足説明で as well as は and と思ってください. No properties の補足説明が corresponding to からなる形容詞句です. ついでに動詞が possess になっているので the phenomena は複数形であることもわかります.

ここで examples は何なのか, phenomena は何なのか, no properties は何なのかを説明する句がたくさんある構造がわかります. 先にこの骨組を見抜いておき, 修飾がある単語に対して「確かに補足してもらわないとわからないな」と感じるのも大事です. それぞれ複数形であることも大事です. 冠詞の有無にも注意しましょう.

では深掘りしていきましょう. まずは基本構造の the phenomena possess no properties からはじめます. 名詞 phenomena は phenomenon の複数形で「現象」という意味です. 動詞 possess は have と思ってください. 目的語の no properties は直接日本語では表現しづらいので多少意訳して, この全体は「その現象は (以下で説明する) 性質を何も持たない」と訳せます. 目的語の no properties は英語らしい表現で, 多くの場合「そのような性質はない」などと訳せば問題ありません. 次の例文がイメージしやすいでしょう.

  • There is no room for compromise.
  • 妥協の余地はない. $¥gets$ 妥協に対する余地が 0 個ある.

次に主語を詳しく見てみます.

  • the phenomena of electrodynamics as well as of mechanics

これは単に the phenomena of electrodynamics and mechanics と思えばよく, 「電気力学的な現象と力学的な現象」とシンプルに訳せば十分です. 電気力学と力学という専門用語, ギリシャ語由来の phenomena が複数形であることがポイントです.

次は動詞を詳しく見てみます. 動詞 possess は単純に「持つ」と思いましょう. もしあなたがサッカーが好きなら「ボールのポゼッション」という言葉を聞いたことがあるでしょう. 「ボールをどれだけ持っているか」という意味で, サッカーで言えばチームのボール所有支配率という意味です. スポーツなり何なり, 身近に英語を含めた多言語は溢れています. 自分なりの言語, ひいては情報収集ルートを整備してみてください.

次は目的語です.

  • no properties corresponding to the idea of absolute rest

TODO the idea の定冠詞に関して言及

No properties は冠詞のない複数形で正体不明です. 何かしら補足説明があるべきで, それが corresponding to からなる形容詞句です.

Absolute は「絶対」という意味で relative 「相対」に対応する単語です. Relative に対応する単語である以上, この論文のキーワードです. そしてここでの rest は「静止」という意味で, absolute rest で「絶対静止」です. 静止状態 (概念) は座標系の取り方による概念であり, 静止状態は相対的にしか定義できず, 絶対的な静止状態が存在しないという特殊相対性理論の重要な主張につながります. この論文の内容として本質的な部分です. 冒頭でテーマをすっきり論じるのは欧米系の文章作法であり, それに即して議論が進んでいることがわかります.

together with the unsuccessful attempts to discover any motion of the earth relatively to the light medium

挿入句で examples of this sort を補足しています. 第 5 文までは理論上の話であり, いわば人間の頭の中の話です. この挿入句が何を言っているかというと実験に関する話です. ここでの attempts は実験の話なのです.

物理は実験科学である以上, どれだけ理論的に優れて見えたとしても実験と合わないならその理論は捨てるしかありません. その重要な話を補足説明しているのです. これは理論の論文で理論に重点がある以上, 話の筋は理論的な問題です. しかし実験的にもきちんと支持されている話だという補足なのです. Together with attempts でここまで読み取る必要があります. 物理学者はそういう思考習慣があると言っても構いません.

ここで大事なのは attempts は単に attempts なのではなく, the (unsuccessful) attempts と定冠詞がついています. つまり「物理学者であるあなたなら先刻承知の試み」だと言っています. 高校物理でも出てくるマイケルソン-モーリーの実験があり, 当時でもこれらの実験を自然と結びつけられたのでしょう. この特殊相対性理論の論文には他の論文の引用がなく, これらの実験に関する論文をきちんと引用するべきだったという批判があることもコメントしておきましょう. 何にせよこの 1 文で実験に関する諸々を一気に説明していて, いわゆる大きな行間がある挿入句なのです.

読解上のコメントが先行しました. 文法的に解析しながら読み進めてみましょう. まず together with the attempts が基本構造です. どんな unsuccessful attempts なのかが気になるので 即 to discover の形容詞句での説明があります. Discover の目的語は any motion で, any motion をさらに of the earth が修飾しています. 最後の relatively to the light medium はまず to the light medium が any motion of the earth を修飾していて, relatively は to the light medium を修飾しています.

まずは to discover any motion から見てみましょう. ここの any は unsuccessful の un (not) と結びついています. 「いろいろがんばって見たがどんな運動も見つけられなかった」のです. どんな運動なのかが気になるので, それを of からの形容詞句で説明されています.

ここの discover の目的語は次の文 (節) であると思った方がわかりやすいかもしれません.

  • the earth moves relative to the light medium

こうした節で表現すると any motion の any はこの構文ですっきりと表現するのが難しく, discover any motion と名詞で表現するとすっきり書けることもわかります. 念のため move relative to に関する例文を 1 つ紹介しておきます.

  • Two objects move relative to each other.

さて, 元の文章に戻りましょう. まずは of the earth で地球の運動なのだと説明されています. Earth は普通名詞で定冠詞がつくという教科書にも書いてある話が出てきて, 教科書が役に立つことを教えてくれます.

特殊相対性理論は運動の相対性を問う理論なので, 何に対して相対的な運動なのかが気になります. それが relatively to the light medium です. つまり「光の媒質に対して相対的な運動」なのだとわかります.

ここでまた the light medium と定冠詞がついていることに注意します. 「あなたも先刻承知の光の媒質」でありいわゆるエーテルです.

TODO as well as = and でもいいときはある. 翻訳者泣かせ. 「B だけでなく A」, 「A と B」どちらがわかっていることか, 重きを置くかで文脈によって決まる.

英語第 2 文
構文
  • They suggest rather that
    • the same laws of electrodynamics and optics will be valid
      • for all frames of reference
        • (all frames) for which the equations of mechanics hold good.
    • as has already been shown to the first order of small quantities,

主節は They suggest that で suggest する内容が that 節の内容です. 最初の they は前文の主語である「この種の例」を指しています. 主節は前文と同じで they suggest that という形になっていることにも注意しましょう.

この that のあとに ", as ...," とカンマで区切られた as 節は that 節に対する副詞節です. あとで調べることにしましょう. Suggest に対する that 節のメインの構造は the same laws will be vaild です.

They suggest rather that

これが主節で基本的には英語第 1 文と同じ構造です. Suggest が「提案する」で提案内容は that 節の内容です. 文章理解の上では主語 they の理解が大事です. 前文 (第 1 文) の主語 examples of this sort, together with the unsuccessful attempts と思えばいいでしょう.

ここの rather が解釈上重要です. 日本語では「むしろ」とでも訳せばいいでしょう. これは次のように捉えます.

  • 電気力学にも力学にも絶対静止という概念を持たせられない.
  • これを否定的な材料と思わず肯定的に捉えて理解するべきだ.

つまり the customary view からの大きな転換を表しているのです.

目的語の that 節を見ると as has already からはじまる挿入節があります. この挿入節は後回しにして, that 節の本体を確認しましょう.

第015回 第6文の読解

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勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します.

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講義動画と関連リンク

今日の予定

  • 第 6 文の読解

進捗・TODO・今日のメモ

  • 今回は第6文が終わった
  • 補足に入って「the unsuccessful attempts」まで終わり
  • 次回は補足の残りを片付けてから第7文の読解
  • TODO コメントもらった部分を本体に追記

内容: コンテンツ (案) からの転記

第 6 文

英文と訳
# en.6

Examples of this sort, together with the unsuccessful attempts to discover any motion of the earth relatively to the light medium, suggest that the phenomena of electrodynamics as well as of mechanics possess no properties corresponding to the idea of absolute rest. They suggest rather that, as has already been shown to the first order of small quantities, the same laws of electrodynamics and optics will be valid for all frames of reference for which the equations of mechanics hold good.

# de.6

Beispiele ähnlicher Art, sowie die misslungenen Versuche, eine Bewegung der Erde relativ zum "Lichtmedium" zu konstatieren, führen zu der Vermutung, dass dem Begriffe der absoluten Ruhe nicht nur in der Mechanik, sondern auch in der Elektrodynamik keine Eigenschaften der Erscheinungen entsprechen, sondern dass vielmehr für alle Koordinatensysteme, für welche die mechanischen Gleichungen gelten, auch die gleichen elektrodynamischen und optischen Gesetze gelten, wie dies für die Grössen erster Ordnung bereits erwiesen ist.

# fr.6

Des exemples similaires, tout comme l'essai infructueux de confirmer le mouvement de la Terre relativement au «médium de la lumière», nous amène à la supposition que non seulement en mécanique, mais aussi en électrodynamique, aucune propriété des faits observés ne correspond au concept de repos absolu; et que dans tous les systèmes de coordonnées où les équations de la mécanique sont vraies, les équations électrodynamiques et optiques équivalentes sont également vraies, comme il a été déjà montré par l'approximation au premier ordre des grandeurs.

  • (NdT 1) (médium de la lumière) médium de la lumière: En jargon moderne, il s'agit de l'éther luminifère.
# jp.6

光の媒質に対して相対的な地球のどんな運動を見つけられなかったことと合わせて, この種の例が示唆するのは, 電磁気現象と力学現象は絶対静止の概念に対応するどんな性質も持たないことである. それらはむしろ次の内容を示唆する: つまり既に 1 次の微少量までは示されているように, 力学の方程式がよく成り立つ全ての座標系に対して, 電気力学と光学の物理法則は正しい.

  • [TODO] この訳, 内山訳と the same laws の取り方が違う. 上の訳で正しいか要確認. 英訳自体がドイツ語訳からずれている? 該当箇所だけ見るとそんなことはなさそうだが.
  • cf. 内山訳: そのような座標系のどれから眺めても, 電気力学の法則および光学の法則は全く同じであるという推論である.
  • cf. 唐木田訳: 電気力学や光学の法則が同じ形で成立する.
解説
# 英語
## 英語第 2 文
### 構文
  • They suggest rather that
    • the same laws of electrodynamics and optics will be valid
      • for all frames of reference
        • (all frames) for which the equations of mechanics hold good.
    • as has already been shown to the first order of small quantities,

主節は They suggest that で suggest する内容が that 節の内容です. 最初の they は前文の主語である「この種の例」を指しています. 主節は前文と同じで they suggest that という形になっていることにも注意しましょう.

この that のあとに ", as ...," とカンマで区切られた as 節は that 節に対する副詞節です. あとで調べることにしましょう. Suggest に対する that 節のメインの構造は the same laws will be vaild です.

### They suggest rather that

これが主節で基本的には英語第 1 文と同じ構造です. Suggest が「提案する」で提案内容は that 節の内容です. 文章理解の上では主語 they の理解が大事です. 前文 (第 1 文) の主語 examples of this sort, together with the unsuccessful attempts と思えばいいでしょう.

  • SV that
  • V = 「言う」という意味

ここの rather が解釈上重要です. 日本語では「むしろ」とでも訳せばいいでしょう. これは次のように捉えます.

  • 電気力学にも力学にも絶対静止という概念を持たせられない.
  • これを否定的な材料と思わず肯定的に捉えて理解するべきだ.

つまり the customary view からの大きな転換を表しているのです.

目的語の that 節を見ると as has already からはじまる挿入節があります. この挿入節は後回しにして, that 節の本体を確認しましょう.

### the same laws of electrodynamics and optics will be valid for all frames of reference

主な構造は次の通りです.

  • the same laws will be vaild

もちろん「同じ物理法則が成り立つであろう」と訳します. これは suggest の目的語の that 節であることに注意すれば ここでの will は未来形ではなく推量の助動詞と見るべきです.

The same laws で何の法則かが気になるわけで, それが electrodynamics and optics です. Electrodynamics は電気力学で optics は 光学です. 光は電磁波なので光学は電磁気学 electromagnegnetism です. ここでelectromagnegnetism ではなく electrodynamics が出ているので optics をわけているのかもしれません. 読み進めるとわかるように情報伝達のための信号として光を使っているので, それを強調するためにあえて optics を積極的に取り上げているのかもしれません.

Be valid はどういう状況で成り立つのかが問題になります. それが for all frames of reference で指示されています. All frames of reference の直訳は「全ての参照枠」でいいでしょう. 特に一般相対性理論を視野に入れて現代的に考えると, 数学的な言葉で言えば全ての局所座標系と訳せます. 局所座標系は多様体論の言葉・概念で一般相対性理論の数学でも出てくる大事な概念です. もちろん特殊相対性理論でも座標系の概念は大事です. あとで何度も出てくるので嫌でもわかります.

最後, frames は all がついているとはいえ定冠詞がありません. 「皆さんご承知の全ての座標系」とは言っていないので, 何かしらの決めきれない部分があります. それを指定するのが次の関係代名詞節の内容です.

### for which the equations of mechanics hold good

主節の suggest の目的語である that 節の内容をさらに補足する内容です. 特に all frames を修飾しています. ここで hold good は hold が be 動詞のようにはたらいていて, 文型は第 2 文型 SVC と見るといいでしょう.

主語は the equations of mechanics です. 定冠詞 the がついていることに注意してください. そしてここは明確に力学 mechanics と言っていて electrodynamics ではありません. 電磁気学と切り離した純粋な力学の話が影響すると言っているのです.

最後の hold good は「よく成り立つ」という意味で, 特に hold を「成り立つ」とみなすのが大事です. Hold の有名な訳「持つ・つかむ・抱える」の意味を発展させて「成り立つ」と訳してください. 数学や物理で重要な単語です. また equations に対する動詞 hold のコロケーションを覚えておいてください.

  • TODO コロケーションの話を単語コンテンツに盛り込んでおく.
  • we have もよくある. we get, we obtain, it follows that, it shows that
### as has already been shown to the first order of small quantities

さて, 挿入節です. 接続詞の as は様態で訳すと落ち着きます.

  • TODO as は関係代名詞で見た方がいい. 非制限用法.

まず as 節は主語がなく動詞が has と三単現になっていることに注意しましょう. これは前の文自体の内容を it で受け, さらにそれを省略した形とみなせます. 動詞は現在完了形をさらに already で修飾していて既存の確立した結果という気分が強く出ています. そして既存の結果としては to the first order of small quantities です. これは物理や理工学では典型的な表現で, 議論の精度・近似の精度に関する言及です. まだ近似レベルで留まっていて厳密に示されているわけではないという主張でもあります.

(TODO これの主語は何? 単数のどれ? 前文の内容全体を it/that などで示して受けていると思えばいい?)

ここでは動詞が現在完了で already まで入れて強調しているのがポイントです. ふつう「見せる, 示す」と訳す show は「証明する」の意味で理解するといいでしょう. つまり「既に証明されているように」と訳します. 物理・数学, 特に数学ではよく使われる用法です.

これに対して to が導く句で証明されている程度を表しています. 高校物理でもよく議論したように, 物理では適当な近似の範囲で成り立つというタイプの議論がよくあります. 物理で厳密な証明は難しく, 近似で仮定した範囲での限定的な「証明」なのです.

The first order of small quantities は「1 次の微少量」と訳します. これは物理でよく出てくる数学表現で, 微分, 特に 1 階の微分係数・導関数を使った近似を指します. そして実際に高校の物理でよく出てくる近似はこの「1 次の微少量による近似」です.

この文は数学と近似に関わる議論なので, 物理の議論に慣れていないと難しいでしょう. 念のため簡単に補足をつけておきました. 必要なら補足の節を確認してください.

補足
英語第 1 文
# 専門用語としての sort

Sort はプログラミングでは「データの集合を一定の規則に従って並べる」という意味でも使われ, 日本語でもそのまま「ソート」と言います. データ構造とアルゴリズムの話題で必ず出てくる計算機科学の基本です.

# 絶対性に関わる議論

特殊相対性理論では静止という力学的な概念の絶対性を否定します. 一方で他の絶対的な概念を導入しています. それがまさに特殊相対性理論の 2 つの仮定 (原理) です.

  • 光速度不変の原理: 真空における光の速度$c$はどの慣性座標系でも同一である.
  • 相対性原理: 全ての慣性座標系は等価である.

どちらも謎と言えば謎の概念です. ここでは相対性原理に注目しましょう. 相対性原理は座標系に注目して定義されていますが, ここから座標系に付随する概念についても適当な等価性が要求されます. たいていの物理法則は微分方程式で記述されます. 特に偏微分方程式を記述するための微分概念である偏微分は座標系にべったり依存しています. そこで座標系に依存しない微分概念を導入する必要があり, そのための数学が実は幾何学です. この意味で一般相対性理論の記述言語は微分幾何だと言われています.

現代数学の話に突撃するので簡単ではありません. 2020 年のノーベル物理学賞でのペンローズの業績がまさに一般相対性理論で記述言語は幾何であり, 2016 年のノーベル物理学賞でのトポロジカル絶縁体ではトポロジーという分野名が幾何から来ています. 最近, 理論物理をはじめとして理工系では幾何が非常に重要な役割を担いつつあります.

# the unsuccessful attempts

本文で出てきたこの名詞句についてもう少し深掘りします. ポイントはもちろん the でいわゆるエーテルの検出問題です. The は「皆さんご存知の」という意味なので, 本当に当時の大テーマだったのでしょう.

光の媒質に対する運動はまさにエーテルの検出に関わる実験の問題です. 当時, 何であれ振動・波動が伝わるには媒質が必要だと思われていたようです. そして電磁気学のマクスウェル理論によって電磁波は波なので, 何かしらの媒質を想定しようとし, それを「エーテル」と呼んでいたわけです. エーテル検出失敗実験として有名なのがマイケルソン・モーリーの実験です. これは大学受験ネタとしてもよく出てくるので知っている人も多いでしょう. 実際に相対性理論の論文の中で, 高校物理で学んだことが生きています.

他に人間の営みとしての物理学にも触れておきます. 高校物理や通俗的な科学史では話が激烈に単純化されています. つまりマイケルソン-モーリーの実験でエーテルの存在は否定され, アインシュタインの特殊相対性理論で旧来の説は完全否定されたと思う人もよくいます.

しかし実際には他にも歴史的に多くの人達がいろいろがんばってやってきた末, 何をどうやっても無理そうだ・敗色濃厚だとなり, その中でも印象的な仕事の 1 つがマイケルソン-モーリーの仕事であり, アインシュタインの特殊相対性理論の論文なのです. 有名な話として, アインシュタインと同等の結論はローレンツが得ていたものの, 数学的な推論だけで物理的な洞察に乏しく, 物理の原理に踏み込んで導出したアインシュタインのこの論文はやはり偉い, そういう事情もあります.

アインシュタインのこの論文は引用がないことでも有名ですが, ローレンツの論文やマイケルソン-モーリーの実験論文をきちんと引用すべきだったという話もあります. 引用は必死の思いで先人が積み上げてきた営為への敬意を示す行為でもあり, そうした「礼儀」がなっていないのはどうか, という視点もあります. 科学者も人間なので自分がやった (決定的な) 仕事を無視されたら面白くないと感じる人も多いのです.

第016回 第6文の補足, 第7文の読解

まず確認

  • 録画はじめた?
  • 音は大丈夫?
    • 一度音声が入っていなくてひどい目に遭ったことを忘れないように.
  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
  • 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.

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講義動画と関連リンク

今日の予定

  • 第6文の補足
  • 第7文の読解

進捗・TODO・今日のメモ

  • 第7文の全体構造まで
  • 次回は第7文の本文から

内容: コンテンツ (案) からの転記

第6文

補足
英語第 1 文
# 実験科学としての物理, そして数学

この論文は理論の論文ですが, 上で補足したように大事なところに関してはきちんと実験にも言及があります. 理論だからといって実験を無視してはいけないのです.

物理を勉強するためには数学の勉強も必要です. そこで数学の勉強に役立つ話もしておきます. 数学にもいろいろな形で「実験」が必要で重要です. 電磁気学でも有名なガウスは現代では数学者として有名です. そのガウスは常人には対応しきれない膨大な計算を捌いた人間としても有名です. そのガウスを受けて日本人数学者の高木貞治は「数学は帰納の学問である」と言いました.

数学ではどうしても一般的な定理に注意が向きがちですが, 膨大な計算例をもとに一般的な規則を予測・推測することこそが数学の核だと主張したのです. ここでいう「数学」は学校で「勉強する」数学ではなく, 自ら切り開いてく学問・アートとしての数学です. 現代では手計算以外にコンピューターを使った計算もあり, 特に物理ではコンピューターを使った計算の重要度が上がってきていますし, そのためには「人工言語の語学」, つまりプログラミングが大事になってきています.

この英語の講座では数学・物理・プログラミングについては議論しきれませんが, 補完する講座・コンテンツを準備しています. ぜひそちらも勉強してみてください.

# エーテルの話

実験の話の中でエーテルが出てきたので本文の解説には盛り込みませんでしたが, 理論的にも重要なのでここで補足しておきます.

高校の波動の理論や振動・波動の理論では次のような話になっています.

  • 波はパターンが空間を伝播する現象である.
  • 波はそれ自体に実体があるわけではなく媒質の運動の伝播である.

波をこう定義して理解しようとしていて電場・磁場も波として伝わると見た以上, 電磁波の媒質が何かが当然大問題になります. 電磁波の媒質として想定されたのがエーテルなのです. エーテルがないとなると電磁波はどう伝わるのか, もっと言えば電磁波とは何なのか, 波をどう定式化し直すべきかという物理全体の問題に波及しさえします. 簡単に補足説明しかされていない挿入句は, 実は物理としてはこのくらい重要な転回です.

ちなみに高校の化学で有機化合物としてエーテルが出てきますが, 実はこのエーテルのこの語源は光の媒質としてのエーテルです. こちらも興味があればぜひ調べてみてください. 科学史, そして歴史を深掘りして楽しむ切り口になるでしょう.

イーサネット Ethernet, Aethernet

英語第 2 文
# 英文理解のポイント

ここでのポイントは 2 つあります.

  • 1 次の微少量までは示されていること.
  • 全ての座標系に対して成り立つこと.

前者は物理でよくある近似の話です. 高校の物理でも振動・波動, 光の議論ではよく近似を使ったはずです. ふつう高校物理で使うのは 1 次近似です. To the first order と言っているのはまさにこれです. いま見たい現象を見たい精度で確認できればいいので, 1 次でいいかどうかは何を考えているかによります.

大学の頃, 物理学科の光学の講義はレンズ開発の現場にいる人が講師で, その人が「この式は教科書には近似と書いてあるが, 現場でレンズを開発していると厳密に成り立つ式くらいの気分がある」と言っていました. 現場の開発者として持つべき感覚は工学のそれで物理ともまた違います. こうした背景がある表現なのです.

もう 1 つ, 全ての座標系について成り立つべしという要請は相対性理論の基礎基本であり, この論文のメインテーマです. 座標系は人間側の都合で使う概念でしかなく, そんなものに本質的に依存するようでは自然の記述として不十分だろうという程度のことで, 当たり前と言えば当たり前の主張です. 物理としては解析力学とも共通する発想で, 現代幾何学の母胎である多様体論の基礎でもあります.

歴史的には微分方程式を厳密に解くとき, (解の存在と一意性が言えているなら特に) 「解ければ正義」で, 実際に「何をどうすればそんな変換を思いつけるのか」としか思えない, めちゃくちゃな変数変換や式変形も考えます. 変数変換をした程度のことでもとの方程式の大事な部分が変わってほしくないわけで, こうした具体的な問題が背景にあります.

これはいわば「方程式の大事な部分」を物理と言っていて, それを突き詰めると方程式の不変性といった概念にも導かれます.

# 数学的補足: 「微少量の 1 次まで」について

高校物理でも波動の分野などで$\sqrt{1+x} \approx 1 + \frac{1}{2}x$という近似式が出てきます. 実は$\sqrt{1+x} = 1 + \frac{1}{2}x - \frac{1}{8}x^2 + \frac{1}{16} x^3 + \cdots$という展開があり, テイラー展開と呼ばれています.

ここで$x$が小さいとすると$n > 1$に対する $x^n$は急激に小さくなります. 表にしてみましょう.

$x$ 0.1 0.001
$x^2$ 0.01 0.00001
$x^3$ 0.001 0.0000001
$x^4$ 0.0001 0.000000001

変数$x$の値が小さいとき$1$次の量, つまり$x$に比べて$x^2$はまさに桁違いに小さいので無視できます. 状況にもよりますが「有効数字での検出限界以下になって無視せざるをえない」と思った方が適切かもしれません.

この手の近似計算は高校レベルでさえよくやりますし, 大学に入ってからはなおのことよく出てきます. これは適当な解説書で勉強してみてください. もちろん私が作っている別の講座やコンテンツも参考になるでしょう.

第7文

en.7

We will raise this conjecture (the purport of which will hereafter be called the Principle of Relativity) to the status of a postulate, and also introduce another postulate, which is only apparently irreconcilable with the former, namely, that light is always propagated in empty space with a definite velocity $c$ which is independent of the state of motion of the emitting body.

de.7

folgenden = following nahmen = name Raume = room bewegen = be+weg <- vector

Wir wollen diese Vermutung (deren Inhalt im folgenden "Prinzip der Relativität" genannt werden wird) zur Voraussetzung erheben und ausserdem die mit ihm nur scheinbar unerträglich Voraussetzung einführen, dass sich das Licht im leeren Raume stets mit einer bestimmten, vom Bewegungszustande des emittierenden Körpers unabhängigen Geschwindigkeit $V$ fortpflanze.

fr.7

suit = following de = of of: 分離のof de = 分離の意味を持つ接頭辞, e.g. depart autre = other 光量 lumen like, alike = gleich peut = pouvoir = can (possible)

Dans le texte qui suit, nous élevons cette conjecture au rang de postulat (que nous appellerons dorénavant «principe de relativité») et introduisons un autre postulat --- qui au premier regard est incompatible avec le premier --- que la lumière se propage dans l'espace vide, à une vitesse $V$ indépendante de l'état de mouvement du corps émetteur.

  • (NdT 2) (l'espace vide) Par «espace vide», il faut comprendre «vide parfait», que l'on peut presque assimiler à l'espace intersidéral dénué de toute matière.
jp.7

私達はこの予想を公準の地位にまで持ち上げよう: 以下ではこれを相対性原理と呼ぶことにする. そしてもうひとつ, 光はそれを放射する物体の運動状態によらず, 常に真空中を一定の速度$c$で伝播するという公準を導入する. 一見するとこれは前者と調和しない.

第017回 第7文の読解

まず確認

  • 録画はじめた?
  • 音は大丈夫?
    • 一度音声が入っていなくてひどい目に遭ったことを忘れないように.
  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
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今日の予定

  • イタリア語を比較して眺めてみる
  • 第7文の読解

進捗・TODO・今日のメモ

  • イタリア語単語・文法の簡単な比較
  • 主節1のWe will raise this conjectureまで
  • 次回は(the purport of ---)から

内容: コンテンツ (案) からの転記

はじめに

  • 少しイタリア語を眺めてみる
  • ロマンス語系でフランス語とよく似ている
  • 今日は見ないがスペイン語もよく似ている
    • スペイン語は歴史的経緯からアラビア語の影響がある
    • be動詞が二種類あるとかいろいろな特徴がある
メモ
  • Assumeremo
    • first-person plural future of assumere
    • ラテン語由来の単語
    • ここではassumeを使っている
    • 主語のweがない:
      • assumere の活用
      • 人称・単複で全て形が違うので主語がなくてもわかる
      • 省略というより動詞に人称の情報が書き込まれている
      • 英語・ドイツ語・フランス語にはない現象
  • questa $\gets$ questo
    • ラテン語由来
    • this, these
  • congettura
    • conjecture
    • jとgの入れ替え
    • 参考: イタリア語のジェラート(gelato)
  • contenuto
    • content
    • Mario, Maria
  • nel: in the の縮約
    • nello = in lo (=in the)
  • sarà: essere
  • chiamato
    • ラテン語の clamare
    • 英語のcallとはまた少し違う模様
  • come
    • ラテン語のquomo+et
    • フランス語のcommeと同じでhow, as, like
    • COMME des GARCONS
  • e
    • 英語のand
    • フランス語だとet
  • oltre
    • alter, old?
    • further
    • ラテン語のultraから
  • con
    • ラテン語のcum=with
    • 英語でも接頭辞でよくある
    • cf. comprehend, apprehend
  • che
    • ラテン語quid,
    • what, which, who
    • 疑問詞・関係代名詞の系統が英語・ドイツ語と全然違う
    • フランス語とは同じ
  • solo
    • ラテン語のsolus, solum
    • alone, only
  • luce
    • ラテン語のlucem, lux
  • spazio: space
  • vuoto: empty, vacant
    • vacancy, vacuum: イタリア語, もっと言えばラテン語由来
  • propaghi: propagate
  • sempre: always, still
  • determinata
    • feminine singular of determinato
    • いろいろたぐるとdetermino
      • de-+termino (I limit), from terminus
      • このdeはof, from (分離)
    • definiteに対応
      • これもラテン語definio
      • de-+finio
      • finioは明らかにfinish
    • どちらにせよ分離のde (of)
  • indipendente: independent
  • dallo: da loの縮約
  • stato: state
  • moto: motion
    • モトローラ, モーター
  • dei: di iの縮約
    • フランス語 カフェオレ cafe aux lait
    • aux = a les
  • corpi: body, corps, Korper
  • emittenti: emit

英語の解説

全体構造

一文が長い上に構文が恐ろしく複雑です. Andでつながった主節がふたつあるので, それぞれの主節の意味を考えましょう.

  • (主節1) We will raise this conjecture
    • (the purport of which will hereafter be called the Principle of Relativity)
    • to the status of a postulate
  • and
  • (主節2) (we) also introduce another postulate
    • , which is only apparently irreconcilable with the former
    • that light is always propagated
      • in empty space
      • with a definite velocity $c$
        • which is independent of the state of motion of the emitting body

主節はふたつあり, ひとつはWe will raise this conjecture ---, もうひとつはand also introduce another postulateです. ふたつ目の主節は主語が省略されていることにも気付く必要があります. さらに第一文の目的語はthis conjecture, 第二文の目的語はanother postulateなので内容的にも強い関連があるはずです.

主節1
We will raise this conjecture to the status of a postulate

これが基本構造です. 挿入の(the purport ---)はthis conjectureの補足説明なので, いったん無視しましょう. さらにwe (will) raise A to Bの構造も見抜きましょう. 動詞raiseの正確な意味はともかく「A を B に向ける」という文型・文構造上の型を確認してください.

助動詞willはいわゆる未来形・未来表現のwillです. Willは名詞で「意思」の意味があり, その意思のもとに導かれる意味での未来です. つまり「以下, 我々はこのように動く」という意味でwillを理解してください.

どう動くのか考えましょう. まずwe raise A to Bという構造から意味を判定します. 構造から「A を B に向ける」という意味にならなければなりません. その向け方を指定するのがraiseなのです. そしてraiseの意味は「(持ち)上げる」です. ここでは次のように理解してください.

  • 予想 (conjecture) を公理 (postulate) の地位 (status) まで持ち上げる.

ここでthis conjectureは第6文の内容を受けています. いま公理と訳したpostulateはふつう公準と訳すようです. ある理論体系の基礎として成り立つことを認めて進める言明を指します. 要は証明抜きで正しいと認める言明のことで議論の前提です. 補足でもう少し詳しくコメントします.

第018回 第7文の読解

1
2
(face-remap-add-relative 'default :family "Yu Gothic")
(face-remap-add-relative 'default :family "Migu 1M")

まず確認

  • 録画はじめた?
  • 音は大丈夫?
    • 一度音声が入っていなくてひどい目に遭ったことを忘れないように.
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講義動画と関連リンク

今日の予定

  • 第7文の(the purport of ---)から

進捗・TODO・今日のメモ

  • 第7文本体完了
  • TODO をつけた部分を本体に反映

内容: コンテンツ (案) からの転記

en.7

We will raise this conjecture (the purport of which will hereafter be called the Principle of Relativity) to the status of a postulate, and also introduce another postulate, which is only apparently irreconcilable with the former, namely, that light is always propagated in empty space with a definite velocity $c$ which is independent of the state of motion of the emitting body.

jp.7

私達はこの予想を公準の地位にまで持ち上げよう: 以下ではこれを相対性原理と呼ぶことにする. そしてもうひとつ, 光はそれを放射する物体の運動状態によらず, 常に真空中を一定の速度$c$で伝播するという公準を導入する. 一見するとこれは前者と調和しない.

英語の解説

全体構造
  • (主節1) We will raise this conjecture
    • (the purport of which will hereafter be called the Principle of Relativity)
    • to the status of a postulate
  • and
  • (主節2) (we) also introduce another postulate
    • , which is only apparently irreconcilable with the former
    • that light is always propagated
      • in empty space
      • with a definite velocity $c$
        • which is independent of the state of motion of the emitting body
主節1
(the purport of which will hereafter be called the Principle of Relativity)

修飾はなるべく修飾したい語の近くに置く原則からすれば, これはthis conjectureの補足説明と思えばいいでしょう.

TODO まずは本質的には名詞がひとつ入っているだけ

構造を理解するためにまずwhich節の中身を単純化して考えると which is called Aが見えてきます. これを次のように置き換えれば元の文章です.

  • is $\to$ will be
  • 副詞hereafterを挿入
  • A $\to$ the Principle of Relativity

さてwhich節は明らかに主語がありません. 主語は何だと思えばいいでしょうか? 実は主語はthe purport of this conjectureです. この挿入句が難しいのは主語の判断です. 関係代名詞節として先行詞はthis conjectureであり, これはthe purport of this conjectureという形で入ります.

Purportは「趣旨」と言った意味で, 定冠詞がついていることに注意してください. Conjectureの内容を指しているだけなので, 上の訳では「これ」と軽く訳しています. Hereafterは「今後この論文の中では」と訳すといいでしょう.

The Principle of Relativityはもちろん「相対性原理」です. この時点で既に定冠詞theがついています. 原理や基本法則を追い求める物理でprincipleは最重要単語です. Relativityも相対性理論のrelativityなので当然大事です. 単語の先頭が大文字になっていることにも注意してください.

主節2
全体構造

まず等位接続詞の and でつながっていることに注意してください. 当然同じ系統の意味の文になっているはずです. その上で第二文を見ると主語がありません. この主語は第一文と同じweと判定すればいいでしょう.

改めて文構造を意識した形で主節2を再掲します.

TODO 厳密には助動詞willも補足すべき

  • (主節2) (we) also introduce another postulate
    • , which is only apparently irreconcilable with the former
    • , namely, that light is always propagated
      • in empty space
      • with a definite velocity $c$
        • which is independent of the state of motion of the emitting body
we also introduce another postulate

主節2の基本構造で, ごく単純な第三文型SVOです. Introduceは「導入する」という意味です. Alsoはtooと同じで, postulateにanother (an + other)という不定冠詞がついています. これが何かが気になるのでもちろん補足説明があります. ひとつはthat節の内容で, もうひとつは関係代名詞の非制限用法で説明が入っています.

, which is only apparently irreconcilable with the former

きちんと意味が取れることが大事なので文型の解釈には自由度があります. ここではis irreconcilable withを動詞句と見て第三文型SVOとして考えます.

TODO 主語の話を盛り込む

Only apparentlyは副詞がふたつついているだけで, 文法的な問題はありません. 目的語のthe formerは「前者」という意味です. 主節1のa postulateと対比させています. やはり定冠詞に注意してください. ちなみにformerの対義語はlatterで「後者」です.

Apparentlyは「一見」という意味の副詞で, irreconcilableは「調和しない, 矛盾する」と言った意味の形容詞です.

読解上面白いのは動詞・副詞のセットとその意味です. 動詞句中のirreconcilableのirは否定の接頭辞です. そしてonly apparentlyは「見かけだけ」と訳せるのでやや否定的な意味があります. 「見かけ上は第一の公理と矛盾しているように見えるかもしれないが実はそうではない」という挿入です. ちなみにapparentlyは「見かけ上」と「明白に」という相反するような意味があります. ここの訳語では「見かけ上」を取りました.

, namely, that light is always propagated in empty space with a definite velocity $c$

Another postulateの実質的な内容であるthat節を見てみましょう. 基本構造は次の通りでごく単純です.

TODO that節の中身は完全な文になっている

  • light is propagated

受身になっていて面倒ではあるもののpropagateの意味も一緒にして考えると, 形式的にはbe propagatedが動詞(句)の第一文型SVとみなせます. 受身系はふつうの第五文型の枠組みに入りません. 無理に五文型の枠には入れずに柔軟に考える必要があります. 物理学でのlightはふつう無冠詞扱いのようです.

TODO light は物理でいつも無冠詞というわけでもないので記述整理

さて, 第一文型と思うとその存在の様子が気になります. 存在する場所はin empty spaceで示されていて, どのような状態で存在するかがwith a definite velocity $c$で示されています. ここでspaceは無冠詞, velocityはaと不定冠詞がついていることに注意しましょう. つまりvelocityは正体不明なので補足説明がほしくなります. それが最後のwhichの関係代名詞節です.

意味を確認します. Namelyは「つまり」という意味の副詞で, lightはもちろん「光」です. Alwaysは「常に」という意味の副詞で, propagatedは「(光の波が) 伝わる, 伝播する」という意味のpropagateの過去分詞です.

TODO 補足に回す

Empty spaceは直訳すると「何もない空間」という意味で, 物理の文章の日本語訳としては「真空」(vacuum)と訳すべきでしょう. ここでは無冠詞で出てくることに注意してください. 物理・数学ではいろいろな空間が出てくるのでspaceはよく可算名詞として出てくる一方, ここでは抽象的な空間の意味で捉えています. 真空という概念自体も物理ではなかなか厄介で, 例えば場の量子論では理論としてもいろいろな真空があり, 具体的な可算名詞として捉えなければいけない場面もよくあります. 他にも例えば日本工業規格(JIS)では「大気圧よりも低い状態」を真空と定義しています.

A definite velocityは「一定の速度」です. Velocityは力学で出てくる速度でやはり重要単語です.

相対論: rapidity

イタリックの小文字の$c$は一定不変の光速を表す定数として物理の中で使われています. この英訳では現在の慣習に合わせて小文字の$c$を使っていますが, アインシュタインのドイツ語の原論文では大文字の$V$で書かれています. もちろん歴史的な事情によります.

which is independent of the state of motion of the emitting body

A definite velocity $c$の補足説明のwhich節です. 基本構造はwhich is independent of the state ---です. 動詞がisなので主語は単数であり, そこからもa velocityが先行詞が主語になっていることが推測できます.

ここもbe independent ofを動詞句とした第三文型SVOとみて考えましょう. 目的語はthe state of motionです. 名詞stateに定冠詞がついているのが重要です. 何のmotionなのかを明確にするため, さらにof the emitting bodyがあります. ここにもbodyに定冠詞がついていることに注意してください. このふたつのtheは日本人にはなかなかつけられない定冠詞ではないでしょうか.

意味を確認します. Independentは「独立した, 依存しない」という意味の形容詞です. Stateは「状態」でmotionは「運動」です. Emit (emitting)は「放出する」という意味の動詞で, ここでは光を放出しているという意味です. 光の放出にはemitを良く使うので覚えておきましょう. 似たような意味で輻射(放射)という言葉があり, ふつうradiationを使います. Bodyは「物体」です.

Light is propagatedのpropagatedは日本語では「光が進む」と訳して構いませんが, 英語では「伝播する」を意味するpropagateを使うことに注意してください. Empty spaceは「真空」です. ふつうはvacuumと書きます. ドイツ語で(im) leeren Raumeと書かれているの忠実に訳したのでしょう.

TODO 記述整理

A definite velocity $c$「一定の速度$c$」です.

TODO 補足

物理としての注意を入れておくと, 速度$c$で進むのは真空中だけであることも注意してください. 現代物理では定数であることを強調して光の速度にはconstantの$c$を使います. ドイツ語原文では真空中の光速を大文字の$V$で表しています.

読解上のポイント

「一見すると前者と調和しない」という部分です. 何故かというとこの文で説明がないからです. 人によってはこの部分の理解でつまずくでしょう. このあとの本文で追加説明があるかもしれませんし, 論文を読むレベルの人間なら何も言わなくてもわかるだろうと思われて省略されているのかもしれません. 何にせよ論文読解の上でひとつ問題が提起されたとも読めます. 文章に接するとき著者との対話をしているスタンスで臨むのが大事です.

念のため調和しない(ように見える)理由を簡単に説明しておきましょう. これは高校レベルの力学を知っていれば解決する問題です. 電車の中でボールを投げたとき, ニュートン力学ではそのボールの速度には電車の速度も加えるべきですが, 光に対してはそう考えないと言っています.

全体のまとめ

この文は副詞や挿入句でくどいくらいに細かい注意が出てきました. アインシュタインの原論文ではこれからもこの手の細かい注意がくどいくらいに出てきます. 当時の理論物理の混沌とした状況を少しでもクリアにしようという意識を感じます.

念のため書いておくとここでの「見かけ上の矛盾」は次のような意味です.

  • 第一公理は「絶対静止の概念の否定」である.
  • 第二公理は「光速は常に定数であるという絶対性」である.
  • ニュートン力学では相対速度を考える.
    • 光速は放射された物体の速度を考える必要がある.
    • 第二公理ではその事情を無視している.
    • 第一公理からすると光が出てくる物体は静止しているようにみなさなければいけないはず.
    • どう考えると整合的になるのか?

この「見かけだけの」矛盾をどう乗り越えるかが論文でも当面のテーマになるはずです. そう思って読解を進めてください.

第019回 第7文の補足・第8文の読解

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  • 次回: 第8文の補足と第9文

内容: コンテンツ (案) からの転記

第7文

en.7

We will raise this conjecture (the purport of which will hereafter be called the Principle of Relativity) to the status of a postulate, and also introduce another postulate, which is only apparently irreconcilable with the former, namely, that light is always propagated in empty space with a definite velocity $c$ which is independent of the state of motion of the emitting body.

補足
相対性原理

相対性原理が出てくる文なのでやはり決定的に大事な文です.

論文が書かれた時点では一次の微少量, つまり一次近似まででしか成り立つことがわかっていない言明がありました. 高次まで成り立つかわかりませんし, 厳密に成り立つかどうかはなおさらです. これを一気に厳密に成り立つとし, さらに原理のレベルにまで持ち上げるという非常に強い主張をしています.

公理・公準

名詞postulateはふつう公準と訳すようです. 数学だとふつう公理はaxiomをあてます. 以下で説明する理由によってpostulateを公理と訳しました.

そもそも公準・公理という日本語自体がわからないでしょうから, 補足しておきます. これはユークリッド幾何に由来する言葉です. 哲学などでは区別して使われているかもしれません. しかし数学や物理では必ずしもはっきりした区別はありません. とりあえずは同じ意味だと思ってもらって構いません.

公理は物理よりも数学や論理学でよく出てきます. ときどき特に公理は「自明な前提」のように言われることもあります. 少し凝った話をしようと思うと初学者にとっては何が・どこか自明かわかりません. 単に理論を進めるための仮定・議論の前提だと思ってください.

予想

Conjectureは「予想」と訳します. 数学でもよく使われる単語です. いくつかの傍証があって成り立つとは思われているものの, まだ完全解決にいたらない言明は予想と呼ばれます. 数論に関わるフェルマー予想やゴールドバッハ予想などが有名でしょう. この予想がconjectureです.

光速を表す文字$c$

ドイツ語原文とフランス語では大文字$V$を使っていて, 英語版では$c$を使っています. 現代物理では英語版のように光速には小文字の$c$をあてています. これは真空中での光速の値を定数として採用していて, 時空の単位の基準になっています.

もちろんドイツ語の原論文が書かれた頃はそうした認識がなかったので, 単に論文中で特殊な意味を持たせた大文字の$V$で書かれています.

黒体輻射

Radiation (輻射)はアインシュタインの他の仕事とも関係が深いので, 簡単に補足説明しておきます. 最近は放射と呼ぶ方がよくあるかもしれません.

黒体輻射(black body radiation)の議論があり, 同じ1905年にアインシュタインが革命的な論文を書いています. どのくらい革命的かと言えば, アインシュタインのノーベル賞の業績はこの黒体輻射に関する光電効果の説明に対してあてられたほどです. 正確にはこれ以外にもいくつか光電効果の論文を書いていてそれらも含むようですが, 1905年の論文の意義は薄れません.

第8文

対象文
en.8

These two postulates suffice for the attainment of a simple and consistent theory of the electrodynamics of moving bodies based on Maxwell's theory for stationary bodies.

de.8

vor = fore (before) aus = out voraus = ahead, before setzungen = setzen -> Setzung -> Setzungen Umgebung unter - under

Diese beiden Voraussetzungen genügen, um zu einer einfachen und widerspruchsfreien Elektrodynamik bewegter Körper zu gelangen unter Zugrundelegung der Maxwellschen Theorie für ruhende Körper.

fr.8

pour = for former = form

Ces deux postulats suffisent entièrement pour former une théorie simple et cohérente de l'électrodynamique des corps en mouvement à partir de la théorie maxwellienne des corps au repos.

it.8

Questi due postulati bastano a pervenire ad un'elettrodinamica dei corpi in movimento semplice ed esente da contraddizioni, costruita sulla base della teoria di Maxwell per i corpi in quiete.

sp.8

Basándonos en la teoría de Maxwell para cuerpos en reposo, estas dos hipótesis son suficientes para derivar una electrodinámica de cuerpos en movimiento que resulta ser sencilla y libre de contradicciones.

ru.8

Эти две предпосылки достаточны для того, чтобы, положив в основу теорию Максвелла для покоящихся тел, построить простую, свободную от противоречий электродинамику движущихся тел.

sch.8

由这两条公设, 根据静体的麦克斯韦理论, 就足以得到一个简单而又不自相矛盾的动体电动力学。

jp.8

静止物体に対するマクスウェル理論に基づいて単純で首尾一貫した運動物体の電気力学の理論を構築するには, これらふたつの仮定で十分である.

英語解説
文構造
  • These two postulates suffice
    • for the attainment of a simple and consistent theory
      • of the electrodynamics of moving bodies
      • based on Maxwell's theory for stationary bodies.

主な構造はごく単純な第一文型 SV です.

  • These two postulates suffice.

もちろん suffice for を動詞句とみなして次のような第 3 文型 SVO を基礎構造と見ても構いません.

  • These two postulates suffice for the attainment.

ここでは前者の解釈を取ります.

前文で公理をふたつ設定しているのでその存在の様子を議論する文です. 詳しく見ましょう.

These two postulates suffice

先程コメントした通り第一文型 SV で, とにかく these two postulates が存在していて, その存在の様子が suffice です. 端的な訳としては「これらふたつの公理 (公準) で十分である」でいいでしょう.

この論文全体の特徴がここにも現れています. 何かといえば these と two という修飾です. These だけでも十分なところを「ふたつの公理」だと強調しているのです. ふたつ大事な仮定をしていて, 両方それぞれ大事な意味があるからそれを絶対に忘れるな, というメッセージと思ってもいいでしょう.

さて, 存在の様子が suffice 「十分」なのはわかりました. もちろんどう十分なのかが気になります. それが次の for the ataignement で示されています.

for the attainment of a simple and consistent theory

主な構造を第 3 文型 SVO と思うなら目的語にあたります. 端的な訳としては「単純で首尾一貫した理論を得るためには」でいいでしょう.

まず attainment に定冠詞がつき, theory に不定冠詞 a がついていることに注意します. つまり theory は初出のよくわからない概念なので, あとに補足説明が来るはずです.

この the attainment の the は日本人にはなかなかつけられない定冠詞です.

TODO この the の気分をどう説明するか?

Attainment はもともと他動詞 attain なので, of a simple and consistent theory 「単純で首尾一貫した理論」は目的語です. 直接的な英文理解を超えた物理としての気分を補足で解説します. 興味があれば読んでみてください.

ここで a theory で不定冠詞がついているので補足説明が必要です.

of the electrodynamics of moving bodies

A theory の直接的な補足説明をしている句で「運動物体の電気力学」と訳せばいいでしょう. タイトルで提示された問題を解決するにはこのふたつが重要だという宣言です. 学問名・分野名を表す electrodynamics には定冠詞 the がついていて moving bodies は無冠詞の複数であることに注意しましょう. ずっと議論をしているから the electrodynamics であり, moving bodies については特定の運動物体ではなく一般的な運動物体を指しています.

based on Maxwell's theory for stationary bodies

最後の補足で「静止物体に対するマクスウェル理論に基づいて」と訳せばいいでしょう. ここでは based on 「---に基づいて」を動詞句とみなして目的語が Maxwell's theory と捉えてください. さらに何に対する理論なのかを for stationary bodies で表しています.

この句の based の意味上の主語は the electrodynamics でいいでしょう. 意味的にも「運動物体の電気力学は静止物体に対するマクスウェル理論に基づく」と綺麗におさまります.

定冠詞 the の限定がどうかかるかをここで補足説明しているともみなせます. TODO 何を言っていたのか忘れてしまった

Theory には冠詞の代わりに Maxwell's が定冠詞としてはたらいています. 一方で stationary bodies は複数で冠詞なしです. こちらも特定の静止物体ではなく一般の静止物体に言及しています.

単語
  • these = これら
  • two = 2
  • ★ postulates $\gets$ postulate = 公理
  • ★ suffice = 十分である
    • cf. it suffices to show that = 「that 以下を示せば十分である」
  • for: 前置詞
  • the: 定冠詞
  • ★ attainment = 到達, 達成, 得ること
    • cf. The function $f$ attains its maximum at $x$. = 「関数 $f$ は $x$ で最大値を取る」
  • of: 前置詞
  • a: 不定冠詞
  • simple: 単純な
  • and: 接続詞
  • ★ consistent: 首尾一貫した
  • theory: 理論
  • ★ electrodynamics: 電気力学
  • moving $\gets$ move = 動く
  • ★ bodies $\gets$ body = 物体
  • based $\gets$ base = 基づく
  • on: 前置詞
  • ★ Maxwell's = マクスウェルの
    • Maxwell's theory = マクスウェルの理論, 電磁気学
  • ★ stationary = 静止した
補足
エーテル

歴史的にエーテルの影響は甚大で定冠詞 the で「あなたもご存知の」と言われるほどです. くり返しを厭わずコメントしましょう. 次にコメントする「単純で首尾一貫した理論」ともつながる話です.

もともと振動・波動についてはフックやニュートンによる理論がありました. 波とは何なのかという話です. いまとなっては「悪い名前」であることがわかっている量子力学の「波動関数」, そして昔の混乱を表す「量子力学的粒子の粒子性・波動性」があるように, 全くもって簡単な話ではないのです.

エーテルに話を戻しましょう. 振動・波動, 略して波が何かといえば媒質の運動の様子なのです. 目に見えない音にしても, 高校物理で勉強するように媒質である空気の粗密の伝播の様子が音・音波として伝わります. 光についても同じように媒質の運動の様子だと思いたくなるのが物理学者の人情です. そこで想定された媒質がエーテルです.

単純で首尾一貫した理論

オッカムの剃刀と呼ばれる有名な議論があります. これは「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでない」とする指針です. これは一般的に理論を作るときの指針とされていて, ゴリゴリに理屈が大好きな西洋に限らず, 歴史上で世界中の人類が採用してきていると思います.

首尾一貫性はともかくなぜ単純性を求めるか, 簡単に説明しておきます. 一般に余計なことをいろいろ考えていると混乱するからです. たいていの人間は複雑なことを処理しきれないといっても構いません. まずはできる限り単純にし, 必要に応じて条件をつけて複雑にしていき, 複雑すぎて扱える限度を超えてきたらまた単純化できないか考える, このステップが基本的です.

物理での典型例が天動説と地動説です. 史実はともかく一般に流布していて私が把握しているのは次のような見解です. 大昔は観測精度が低く, 天動説でも地動説でも科学としての精度に問題はありませんでした. しかし時代が上がるにつれてもっと詳しく知りたい・知るべき流れが生まれ, 観測精度が上がると天動説を指示していては不都合な観測結果が出てきました. いわゆる周転円で天動説を修正できはしても, 理論がどんどん複雑になってしまったのです. そこで地動説を採用すると余計な周転円が一気に消えて理論が単純になりました. こうした歴史的な経緯もあって, 特に自然科学を考える上ではなるべく単純な理論を取ることが大事です.

念のため書いておくとここで問題になっているのは理論が採用する仮定の単純さです. そこからの議論が複雑になるのは問題になりません. 理論の単純さは採用する仮定の単純さと少なさです.

この文で問題になった単純さはエーテルの存在を仮定するかどうかです. 先ほど力学的な振動波動の伝播では媒質が必要と言いました. 光は電磁波なので光の伝播にも媒質が必要なのではないかというのです. しかしそれが何かはよくわからないのでエーテルという媒質を想定しました. 正体不明の存在を仮定する複雑さを削れるので嬉しいという理論の優越性を主張しているのです.

第020回 第8文の補足・第9文の多言語比較

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今日の予定

  • 第8文の補足と第9文

進捗・TODO・今日のメモ

  • 第8文の補足終了
  • 第9文の多言語比較
  • 次回: 第9文の英文詳細

内容: コンテンツ (案) からの転記

第8文

対象文
en.8

These two postulates suffice for the attainment of a simple and consistent theory of the electrodynamics of moving bodies based on Maxwell's theory for stationary bodies.

補足
エーテル

歴史的にエーテルの影響は甚大で定冠詞 the で「あなたもご存知の」と言われるほどです. くり返しを厭わずコメントしましょう. 次にコメントする「単純で首尾一貫した理論」ともつながる話です.

もともと振動・波動についてはフックやニュートンによる理論がありました. 波とは何なのかという話です. いまとなっては「悪い名前」であることがわかっている量子力学の「波動関数」, そして昔の混乱を表す「量子力学的粒子の粒子性・波動性」があるように, 全くもって簡単な話ではないのです.

エーテルに話を戻しましょう. 振動・波動, 略して波が何かといえば媒質の運動の様子なのです. 目に見えない音にしても, 高校物理で勉強するように媒質である空気の粗密の伝播の様子が音・音波として伝わります. 光についても同じように媒質の運動の様子だと思いたくなるのが物理学者の人情です. そこで想定された媒質がエーテルです.

単純で首尾一貫した理論

オッカムの剃刀と呼ばれる有名な議論があります. これは「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでない」とする指針です. これは一般的に理論を作るときの指針とされていて, ゴリゴリに理屈が大好きな西洋に限らず, 歴史上で世界中の人類が採用してきていると思います.

首尾一貫性はともかくなぜ単純性を求めるか, 簡単に説明しておきます. 一般に余計なことをいろいろ考えていると混乱するからです. たいていの人間は複雑なことを処理しきれないといっても構いません. まずはできる限り単純にし, 必要に応じて条件をつけて複雑にしていき, 複雑すぎて扱える限度を超えてきたらまた単純化できないか考える, このステップが基本的です.

物理での典型例が天動説と地動説です. 史実はともかく一般に流布していて私が把握しているのは次のような見解です. 大昔は観測精度が低く, 天動説でも地動説でも科学としての精度に問題はありませんでした. しかし時代が上がるにつれてもっと詳しく知りたい・知るべき流れが生まれ, 観測精度が上がると天動説を指示していては不都合な観測結果が出てきました. いわゆる周転円で天動説を修正できはしても, 理論がどんどん複雑になってしまったのです. そこで地動説を採用すると余計な周転円が一気に消えて理論が単純になりました. こうした歴史的な経緯もあって, 特に自然科学を考える上ではなるべく単純な理論を取ることが大事です.

念のため書いておくとここで問題になっているのは理論が採用する仮定の単純さです. そこからの議論が複雑になるのは問題になりません. 理論の単純さは採用する仮定の単純さと少なさです.

数学: ユークリッド幾何の第五公準. 平行線の話.

この文で問題になった単純さはエーテルの存在を仮定するかどうかです. 先ほど力学的な振動波動の伝播では媒質が必要と言いました. 光は電磁波なので光の伝播にも媒質が必要なのではないかというのです. しかしそれが何かはよくわからないのでエーテルという媒質を想定しました. 正体不明の存在を仮定する複雑さを削れるので嬉しいという理論の優越性を主張しているのです.

第9文

対象文
en.9

The introduction of a luminiferous ether will prove to be superfluous inasmuch as the view here to be developed will not require an "absolutely stationary space" provided with special properties, nor assign a velocity-vector to a point of the empty space in which electromagnetic processes take place.

de.9

格: 日本語でも格助詞. 1-4格. 1格: 主格, 「は」「が」. 2格: 「の」 3格: 「に」 4格: 「を」 Die: 女性名詞につく一格の定冠詞 die-der-der-die eines <- ein ドイツ語は(英語と比較したとき)語順がけっこう滅茶苦茶. (英語よりは自由.) 日本語: 格助詞で格を表せる. 格によって単語の役割がわかる. 順番がめちゃくちゃでも意味が通ります. ラテン語: 格が6格. 男性, 女性, 中性名詞. will = wollen, werden werden = become, will erweisen -> weisen <- wise fl = flood, fluent, influence, インフルエンザ Auffassung = auf + fassung = view, understanding fassung = ファスナー comprehend, apprehend hend <- hand, かっちり掴む=理解 aufheben 止揚 eigen = 固有の, schaft=接尾辞 ruhend = 静止 <- rest 分離動詞 zugeordnet <- zu+orden = order geordnet = 過去分詞

Die Einführung eines "Lichtäthers" wird sich insofern als überflüssig erweisen, als nach der zu entwickelnden Auffassung weder ein mit besonderen Eigenschaften ausgestatteter „absolut ruhender Raum" eingeführt, noch einem Punkte des leeren Raumes, in welchem elektromagnetische Prozesse stattfinden, ein Geschwindigkeitsvektor zugeordnet wird.

fr.9

sera = be動詞の未来形, etre <- raison de etre = 存在理由 il = it que = that espace = space specially = especially like alike vitesse = vital = いきている, 活動的 phenomenon: ギリシャ語 typhoon, phermacy phi

Il sera démontré que l'introduction d'un «éther luminifère» est superflu, puisque selon les conceptions que nous développerons, nous n'introduirons ni un «espace absolument au repos» muni de propriétés spéciales et ni n'associerons un vecteur vitesse à un point où des phénomènes électromagnétiques se déroulent.

it.9

comme = like quiete = quiet = 静止 = 靜か dotato = donate ad = to, adhere vuoto = vacuum (Vacuum = 真空)

L'introduzione di un "etere luminoso" si dimostra fin qui come superflua, in quanto secondo l'interpretazione sviluppata non si introduce uno "spazio assoluto in quiete" dotato di proprietà speciali, né si associa un vettore velocità ad un punto dello spazio vuoto nel quale abbiano luogo processi elettromagnetici.

sp.9

フランス語の定冠詞 le, la, les フランス語: -tion 女性名詞 de = of (フランス語)

La introducción de un "éter" resultará ser superflua puesto que de acuerdo a los conceptos a desarrollar no es necesario introducir un "espacio en reposo absoluto", ni tampoco se asocia un vector de velocidad a ninguno de los puntos del espacio vacío en los que se llevan a cabo procesos electromagnéticos.

ru.9

theory = ギリシャ語 they = 英語

Введение «светоносного эфира» окажется при этом излишним, поскольку в предлагаемой теории не вводится «абсолютно покоящееся пространство», наделенное особыми свойствами, а также ни одной точке пустого пространства, в котором протекают электромагнитные процессы, не приписывается какой-нибудь вектор скорости.

sch.9

"光以太"的引用将被证明是多余的, 因为按照这里所要阐明的见解, 既不需要引进一个共有特殊性质的"绝对静止的空间", 也不需要给发生电磁过程的空虚实间中的每个点规定一个速度矢量。

jp.9

この論文で展開される議論は特別な性質を与えられた絶対静止空間を必要とせず, 電磁過程が起こる真空の点に速度ベクトルを割り当てもしないことから, エーテルの導入は不要であることが示されるだろう.

第021回 第9文の読解

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内容: コンテンツ (案) からの転記

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  • 参考: 第11回なぜ英語はSVOの語順なのか?(前編)
  • 音が大事というのを別の視点から話したい
  • 英語で語順が大事な理由: 格がないから
    • 参考: 日本語の格助詞, ラテン語やドイツ語の格変化
  • 昔の英語(古英語)には格があった
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    • 発音の問題
    • 英語は単語の後ろを弱く読むことが多い
    • (格)変化は語尾にある: cf. 三単現のs, 過去分詞の ed, 進行形の ing, 複数系の s
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    • 語尾に大事な情報を載せにくい
    • 格という文法上の重要な情報を語尾に載せにくい
    • 格を消して語順でしばることにした
  • 文章の読解がメインの理工系には(多分)忘れがちな視点: 文章よりも音が先
  • 単語の類似などを追う上でも音は大事
  • 音(発音)が文法に大きな影響を与えることがある

第9文

対象文
en.9

The introduction of a luminiferous ether will prove to be superfluous inasmuch as the view here to be developed will not require an "absolutely stationary space" provided with special properties, nor assign a velocity-vector to a point of the empty space in which electromagnetic processes take place.

英語解説
構造
  • The introduction of a luminiferous ether will prove to be superfluous
    • inasmuch as the view here to be developed will not require an "absolutely stationary space"
      • provided with special properties,
    • nor assign a velocity-vector to a point of the empty space
      • in which electromagnetic processes take place.

これも長い文なので文構造に注意して読みましょう. Inasmuch as は「...だから」「...である限りは」という意味の接続詞で, まずここで文が切れることに注意します. 同じく接続詞の nor にも注意してください.

接続詞に注意しながら各文の骨格を抜き出します.

  • The introduction will prove something.
  • (inasmuch as) the view will not require a space.
  • (nor) the view will assign a velocity-vector.

Nor がつなぐ文がどこと並置されているかは判断が必要です. ここでは inasmuch as と並べた上で省略された主語を the view としています.

The introduction of a luminiferous ether will prove to be superfluous

各文をさらに詳しく見ます. 文型は第 3 文型 SVO と見るのが素直です. 一方で prove to be の be に注目して第二文型 SVC とみなす手もあります. このとき will be able to と同じように will と prove to が助動詞・一般化助動詞としてはたらいているとみなします. ここでは後者の味方で進めましょう. つまりメインの構造は次の通りです.

TODO どちらでもいいが, きちんと書く.

  • The introduction is superfluous.

まず the introduction「導入」が superfluous「余分」です. 余分な様子を補足するのが will と prove to であり prove は「証明する」なので, この論文で展開される議論が余分であることを示すこと, これからこの論文で展開するという未来または予告を表しています.

ここで introduction には唐突に定冠詞 the がついています. 何の introduction かというと of 以下で示されていて, luminiferous ether 「発光性のエーテル」, いわゆる光の媒質として想定されたエーテルです. この the はこの論文が書かれた時代, もしくは物理学史的な常識として「あなたもご存知, エーテルの導入」という気分を表しているのでしょう. 物理学史やこの論文が書かれた時代背景を知らないと, なぜこれが the なのかは理解できません.

TODO: ether の冠詞は a? 何でだろう? 不思議な使い方ではある. luminiferous がついている ether だから a をつけているのはそれはそう.

inasmuch as the view here to be developed will not require an "absolutely stationary space" provided with special properties

先程書いたようにメインの構造は次の通りです.

  • the view will not require a space

第 3 文型 SVO です. 主語は the view 「視点」で定冠詞がついているため既知の概念です.

TODO: 既知というわけでもない.

引き続き未来表現の will が出て来ていて, この論文で明らかにされることを示唆しています. 目的語は a space 「空間」と不定冠詞がついているので, まだ説明していない空間概念であることが示唆されます. ふつう space は抽象的な意味を持つ不可算名詞ですが, ここでは不定冠詞がついていて可算化していることにも注意しましょう.

The view は既知なのはいいとして, 具体的にどんな視点なのかが気になります. これは here to be developed で補足されています. To 不定詞句 to be developed はよくある日本語訳で言えば「開発される (視点)」です. ここでは未来表現ともセットで「展開される視点」と思えばいいでしょう. Here は to be developed を補足する副詞と思えばよく, 特に「以下, この論文で」くらいの気分で理解します.

次に目的語の a space の修飾内容を詳しく確認します. これは an absolutely stationary space provided with special properties で, an absolutely stationary space と provided with special properties に分けられます.

まず an absolutely stationary space は「絶対静止空間」と訳せばいいでしょう. 特殊相対性理論では絶対静止という概念が否定されます. 相対性理論の相対性という言葉の由来なので決定的なキーワードです.

後半の provided with special properties は熟語として有名な provide A with B 「A に B を与える」に由来していて, 受身形として A = a space が前に出ていて, B は special properties があたります.

この熟語は with の意味に囚われず provide A (前置詞) B, 特に provide A to B のように考えましょう. この「動詞 A to B」は型として「A を B に向ける」という意味があり, 向け方が動詞の意味で決まります. ここでは provide なので「与える」方向で B に向けています. 前置詞 with を使うのはコロケーションの問題で, 究極的には暗記するしかありません.

nor assign a velocity-vector to a point of the empty space in which electromagnetic processes take place

まず接続詞 nor 「---もない」に注意してください. Inasmuch as でつながれた前の文は will not と否定形の表現であり, こちらの文でも同じように否定的な内容を伝えていることがわかります. 接続詞 nor は等位接続詞なので前の文と並列的な意味・構造を持つことも示しています. この上で主語がないことにも注意してください. Nor が等位接続詞であることを思えば主語は the view だと思えばいいでしょう. さらに the view が明らかに単数である一方, 動詞は assign と原形です. このギャップを埋めるには前の文の動詞が will not require で助動詞 will があることに注意し, will が省略されていると見抜く必要があります. 名詞の単複は常に意識しましょう.

ここまで来れば次の基本的な構造がわかります.

  • (nor) the view (will) assign A to B
    • A: a velocity-vector
    • B: a point of the empty space

構造としては assign A to B 「A を B に割り当てる」です. ここもやはり「動詞 A to B; A を B に向ける」の構造があり, 向け方が assign で指定されています.

文法上の直接的な目的語は a velocity-vector 「速度ベクトル」です. 速度・速さといえば speed をイメージするかもしれません. しかし物理で速度はここで出てくる velocity です. 高校物理でなぜ速度に v を使うかといえばこの velocity からです. 大学の物理では状況によって明確なので必ずしも厳密に使い分けないものの, 一般には速度はベクトルで速度の大きさである速さはスカラーで speed です.

TODO: 速さは本当にspeedか? あとで調べる.

不定冠詞 a がついていることも注意してください. この文全体の意味を考えると, a vector を a point に割り当てるという形になっていて, 不定冠詞の意味は「あるひとつのベクトルをある点に割り当てる」ことを意味しています. これは$v = v(x,y,z)$というベクトル値関数を考えるといっても構いません. 正確には nor assign なので「こういうベクトル値関数$v$を考えない」です.

TODO: 不定冠詞というより単数であることが大事.

Assign A to B の B にあたる a point を考えましょう. 不定冠詞 a の意味は上で説明しました. A point では一般的すぎてよくわからないので of the empty space と補足があります. The empty space は字義通りには「何もない空間」であり, 物理としては「真空 vacuum」と言うこともあります. ここで真空に the がついていることに注意してください. 例えば第 7 文では無冠詞で empty space が出てきます. 既に言及した empty space であることも示唆しています.

TODO: 説明が変な気がする. 真空は一つしかない? 場の量子論ではいろいろな真空がある.

最後に in which での関係代名詞があります.

  • in which electromagnetic processes take place

動詞 (句) が take place 「起きる・起こる」で三単現の s がなく, electromagnetic processes という複数形の名詞があるので, これがこの関係代名詞節の主語・動詞とみなして問題ないでしょう. いま take place で自動詞扱いなので第一文型 SV です. どこで起きるのかが気になるわけで, それが in which の in で示されています. 当然先行詞が何かが気になります. 何らかの意味で場所であるべきで, 関係代名詞はふつう直前の名詞にかかるので素直に the empty space が先行詞と思えばいいでしょう.

TODO: エーテル: 電磁波としての光が伝播する媒質.

ここで注意してほしいことがあります. 前置詞 in は意味として「広がりの中にある」ことを表し, in space のような使い方をするのがふつうで in a point は不自然です. さらに point にはふつう at a point と 1 点を指す at が出てくるのがふつうなので, in which の先行詞としてはやはり a point ではなく space を選ぶべきです. また electromagnetic processes と複数の process が起こる場所としても, 1 点よりは広がりのある空間が適切です.

TODO: 一点の部分は説明微妙なので削るか書き換えるかする.

まとめると, in which の先行詞は文法的・機械的に直前の名詞と思って問題はありません. 一方で in との対応や意味的な対応からも直前の名詞 space を先行詞にするべきことが示唆されます. たくさんの「当たり前」が重なりあっていると言っても構いません. この当たり前をきちんと積み重ねていくと英語に対する感覚が養われていき, 文章を正確に読み書きできるようになります.

補足
電磁過程が起こる真空の点に速度ベクトルを割り当てもしない

これは絶対静止空間が存在しないのだから, それに対する速度ベクトルが何かを考える必要もないという意味です.

TODO: 何を言おうとしたか? マイケルソン-モーリー: 媒質(エーテル)の相対的速度を測ろうとして相対速度が検出できなかった実験.

このあたりは相対性理論にとって本質的な物理の内容に踏み込んだ議論なので, 物理の話をせずに済ませることはできません. そして英語の解説を中心とするこの講座では説明しきれない部分です. ぜひ物理として相対性理論をきちんと勉強してみてください.

第022回 第10文の読解

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内容: コンテンツ (案) からの転記

第10文

対象文
en.10

The theory to be developed is based ---like all electrodynamics--- on the kinematics of the rigid body, since the assertions of any such theory have to do with the relationships between rigid bodies (systems of co-ordinates), clocks, and electromagnetic processes.

de.10

der: 男性名詞につく die: 女性名詞または複数形 das: 中性につく. der, die, das は名詞の格に合わせて変わる. der des dem den (1-4格) die der der die das dem des das (怪しい) die der den die

ドイツ語の名詞は必ず先頭が大文字.

jede = each, any andere = other auf = over da = then aus = out Aussagen = out say = 外に出して言う Beziehungen <- Beziehung zwei = two Uhr = clock <- hour = fr. horloge = it. orolog

Die zu entwickelnde Theorie stützt sich --- wie jede andere Elektrodynamik --- auf die Kinematik des starren Körpers, da die Aussagen einer jeden Theorie Beziehungen zwischen starren Körpern (Koordinatensystemen), Uhren und electromagnetischen Prozessen betreffen.

be + treffen

fr.10

Comme = like pour = for toute <- tout = total autre = other

le = 男性名詞につく定冠詞 la = 女性名詞 les = 複数形 sur <- surface, surrealism = 超現実的 cinématique = cinema 映画 poor man = 貧しい男, 貧相な男 man poor, poor man dans = Then -tion = 名詞化, 女性名詞 de = of nous = we devons = (直説法の)現在形 avec = with

Comme pour toute autre théorie électrodynamique, la théorie proposée s'appuie sur la cinématique des corps rigides. Dans la formulation de toute théorie, nous devons composer avec les relations entre les corps rigides (système de coordonnées), les horloges et les phénomènes électromagnétiques.

it.10

altra = alter = other una = uno = one, a (tra <- traverse <- sur?)

La teoria da svilupparsi si fonda - come ogni altra elettrodinamica - sulla cinematica dei corpi rigidi, poiché le affermazioni di una tale teoria riguardano relazioni tra corpi rigidi (sistemi di coordinate), orologi e processi elettromagnetici.

Maria, Mario

ある言語では連続できない文字がある. flower = フィレンツェ fi

sp.10

La teoría a desarrollar se basa - como cualquier otra electrodinámica - en la cinemática del cuerpo rígido porque las afirmaciones de cualquier teoría involucran relaciones entre cuerpos rígidos (sistemas de coordenadas), relojes y procesos electromagnéticos.

rigid body = star Körpern

ru.10

Развиваемая теория основывается, как и всякая другая электродинамика, на кинематике твердого тела, так как суждения всякой теории касаются соотношений между твердыми телами (координатными системами), часами и электромагнитными процессами.

sch.10

这里所要闸明的理论 ------象其他各种电动力学一样------ 是以刚体的运动学为根据的, 因为任何这种理论所讲的, 都是关于刚体(坐标系)、 时钟和电磁过程之间的关系。

jp.10

全ての電気力学と同じように, これから議論する理論は剛体の運動学に基づく. そのような理論に関する主張は何であれ, 剛体 (座標系), 時計, 電磁過程の間の関係を扱うからである.

第023回 第10文の読解

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進捗・TODO・今日のメモ

  • 第10文終了
  • TODO, memoの部分を本編に反映させること!
  • 次回予定: 第11文の多言語比較

内容: コンテンツ (案) からの転記

第10文

対象文
en.10

The theory to be developed is based ---like all electrodynamics--- on the kinematics of the rigid body, since the assertions of any such theory have to do with the relationships between rigid bodies (systems of co-ordinates), clocks, and electromagnetic processes.

de.10

der: 男性名詞につく die: 女性名詞または複数形 das: 中性につく. der, die, das は名詞の格に合わせて変わる. der des dem den (1-4格) die der der die das dem des das (怪しい) die der den die

ドイツ語の名詞は必ず先頭が大文字.

jede = each, any andere = other auf = over da = then aus = out Aussagen = out say = 外に出して言う Beziehungen <- Beziehung = relation zwei = two Uhr = clock <- hour = fr. horloge = it. orolog

zwischen = between

Die zu entwickelnde Theorie stützt sich --- wie jede andere Elektrodynamik --- auf die Kinematik des starren Körpers, da die Aussagen einer jeden Theorie Beziehungen zwischen starren Körpern (Koordinatensystemen), Uhren und electromagnetischen Prozessen betreffen.

be + treffen

jp.10

全ての電気力学と同じように, これから議論する理論は剛体の運動学に基づく. そのような理論に関する主張は何であれ, 剛体 (座標系), 時計, 電磁過程の間の関係を扱うからである.

イオンの電気力学, 電子の電気力学 何とかさんの提唱する理論 相対論的粒子の上で適当な仮定がくっつく プラズマ

英語解説
文構造

基本の文構造は次の通りです.

  • The theory to be developed is based on the kinematics
    • of the rigid body
    • ---like all electrodynamics---
  • since the assertions of any such theory have to do with the relationships
    • between rigid bodies (systems of co-ordinates), clocks, and electromagnetic processes.

まず接続詞の since に注目しましょう. 中学高校ではあまり見かけないものの, 専門的な文章では as, because のように理由を説明する従属節を導きます. 前文からの流れを重視して先に結論を書き, そのあとに理由を補足している構造を見抜いてください.

TODO since, asのニュアンスの話 because > since > as

The theory to be developed is based on the kinematics of the rigid body

形式的には受動態で書かれていて第一文型の趣があります. しかしここでは is based on を熟語または 1 かたまりの動詞句とみなして第三文型SVOとみなした方が素直です. 主語は The theory, 動詞は is based on, 目的語は the kinematics of the rigid body です.

memo: isを動詞でSVCの方がよくある? (趣味の話もある?) based onで形容詞句と取る.

先程書いたように動詞は is based on で熟語「---に基づく」という意味です. Base は名詞で基地といった意味も持ち, 前置詞 on の「上にいる」という意味から字義通りには「拠点の上に置かれた」という意味で, 転じて「---に基づく」になります.

主語は the theory to be developed で定冠詞が入っています. ここでのポイントは定冠詞 + to be developed です. まず定冠詞がついているので「あなたもご存知の理論」であり, ここまで紹介してきた理論です. いまは論文の前文でありここまで紹介してきたのはあくまで理論の概要なので, 正式には論文の続く記述で詳しく議論する理論です. それが to be developed で表されています. もちろん形式的には単なる to 不定詞句の形容詞的用法です. しかし前置詞 to には行き先指定の役割があり, そこから目的に向かっていく動的なイメージもあります. つまり「これまで概要しか語っていなかったが, 詳しい話はこれから発展させる」という意味も込められています. 前文でも出てきた the view here to be developed と同じです.

目的語は the kinematics of the rigid body で名詞は両方定冠詞つきです. この kinematics は学問名「運動学」で s がついていても単数です. 単純な学問名には冠詞がつかないので何か特定の運動学のはずです. それが of the rigid body 「剛体」で示されています. この定冠詞は特定の剛体を意識しているというより, 他の何かの運動学ではなく総称的・一般的な剛体の運動学という意味です.

特定の対象を指す定冠詞と総称的な定冠詞の用法については文法編, 冠詞の「定冠詞 the の使い方: all の意味, 総称的な用法」を参考にしてください.

  • The electron is a fundamental particle with negative electric charge that is found in atoms.
    • 電子は負の電荷を持った基本粒子であり, 原子の中に見られる.
  • The tiger is an endangered species.
    • 一般に虎は絶滅危惧種です.
  • The tiger suddenly jumped up.
    • その虎は突然飛び上がりました.
---like all electrodynamics---

単純な挿入です. 基本的には修飾したい語の近くに置きます. ここでは動詞の近くにあることもふまえ, 素直に like は副詞句を導いていると見ます. 訳としては「全ての電磁気学のように」でいいでしょう.

TODO electrodynamicsはallがかかるので複数

補足で物理として注意するべき点を説明しています. 興味があれば眺めてみてください.

since the assertions of any such theory have to do with the relationships

Since は理由に関する従属節を導く接続詞です. 主な構造は次のようになっていて第三文型SVOです.

  • the assertions have to do with the relationships

もちろん主語は the assertions, 動詞句は have to do with, 目的語は the relationships です. Of any such theory は主語を補足説明する形容詞句です.

主語の assertions 「主張」に the がついていることに注意しましょう. どんな主張かといえば of any such theory 「そのような理論のどれも」です. ここでの such はここまでの議論の流れを受けていて, 主節の主語の the theory と同じ類の理論という意味です.

TODO any --- と every --- でどんな感覚の違いがあるだろうか? anyだと例外がないとかいう感じのニュアンス入る.

動詞に関しては熟語 have to do with A 「A を扱う」を覚えてください. これは to do with A を to 不定詞の名詞用法と思い, 「A と一緒にするべきことを持つ = A に対処する, A を扱う」と翻訳できれば覚えていなくても理解・対処はできます. しかし語学に限らず, 何をするにしても一定量の暗記は絶対に必要です. 覚えるべきはきちんと覚えましょう.

TODO haveはいろいろな用法があるので, それ自体を深く覚えつつ応用できると便利だし, その必要がある. cf. I have a headache.

最後の the relations 「特定の複数の関係」は定冠詞がついて複数であることに注意しましょう. 関係である以上, 何かと何かを結びつける必要があり, その補足説明が必要で, それがまさに between 以下で説明されています.

memo: of the relations はネイティブでもtheを入れるかわかれる.

between rigid bodies (systems of co-ordinates), clocks, and electromagnetic processes

The relations が何の間の関係なのかを示す形容詞句です. 全て冠詞なしの複数形で, 一般的な剛体 (座標系, systems of co-ordinates), 時計, 電磁過程です. 座標系は単に coordinate system と書く方が多いでしょう. ここで Co-ordinates と複数なのは座標の成分が空間部分で x, y, z の 3 つに時間部分を加えた 4 つあるのと対応しています.

(TODO co-ordinates の複数の説明は上の説明で大丈夫?) 一次元の場合は単数になる用例が多い. 高次元だとふつう複数を取る. coordinate systemだとcoordinateが形容詞扱いで形式的に単数で書く.

剛体 (座標系) も電磁過程も, この時点で何を意図しているかまだわかりません. そしてこの関係を追いかけることこそまさに運動学の部の内容で, 特殊相対性理論の力学の核です.

単語
  • the = 定冠詞
  • theory = 理論
  • to: 前置詞
  • be: be 動詞の原形
  • developed $\gets$ develop = 発展させる
  • is $\gets$ be
  • based $\gets$ base
    • be based on A: A に基づく
  • on: 前置詞
  • like = ---のように
  • all = 全て
  • electrodynamics = 電気力学
  • on: 前置詞
  • kinematics = 運動学, 動力学
  • of: 前置詞
  • rigid = 堅くて曲がらない
  • body = 物体
    • rigid body = 剛体
  • since = ---だから (接続詞)
  • assertions $\gets$ assertion = 主張
  • any = どんな---でも
  • such = そのような
  • theory = 理論
  • have = 持つ
    • have to do with A = A を扱う
  • do = する
  • with: 前置詞
  • relationships $\gets$ relationship = 関係
  • between = ---の間の
  • bodies $\gets$ body
  • systems $\gets$ system = 系
  • co-ordinates = 座標
    • system of co-ordinates = 座標系
  • clocks $\gets$ clock = 時計
  • and = ---と---
  • electromagnetic = 電磁気的な
  • processes $\gets$ process = 過程
補足
力学と電磁気学の齟齬

挿入句の ---like all electrodynamics--- に対する補足です. ここを物理としてどう読めばいいかが問題です. ここで細かい議論はしきれません. 興味があればぜひ物理としてきちんと勉強してみてください.

さて, この当時の問題を現代的に整理すると, 力学の基礎方程式であるニュートンの運動方程式を不変にする座標変換がガリレイ変換である一方, このガリレイ変換が電磁気学の基礎方程式であるマクスウェル方程式を不変にしない問題がありました. 説明しきれないところなのでなぜ座標変換が大事かには触れません.

高校でも大学でも物理は力学からはじめます. 直観的であり, 必要な数学的知識も少なく済み, 計算練習のテーマもたくさんあれば物理の歴史上重要な問題も揃っているといった勉強のしやすさもあります. そしてそれ以上に物理で重要な概念がたくさん出てくるのです. 自然のモデル化, モデルの階層性や近似計算などの都合もあります. ある意味で一番物理らしい理論が力学なのだと言っても過言ではありません.

一方でマクスウェル方程式は電磁気学の基本中の基本です. これらを理論的・数学的に考える上で方程式を不変にする座標変換はやはり基本的な概念で, 力学と電磁気学で齟齬があるというのは物理の理論としては気分がよくないのです.

ここでマクスウェル方程式を不変にする変換はローレンツ変換と呼ばれ, まさに特殊相対性理論の誕生前夜の 19 世紀後半から 20 世紀冒頭に重要性がはっきりしました. 名前がついている通り, ローレンツが発見・整理した概念・議論です. ただローレンツは数学的にそうなると主張しただけで, これの物理的な意義を深めるにいたらなかったと言われています. そしてこれらの齟齬やローレンツ変換の物理を明らかにしたのがアインシュタインで, この論文なのです.

物理の問題意識や視点, もっと言えば論文執筆当時の問題意識, 物理学の研究動向がわからないと正確には読めない部分です.

第024回 第11文の多言語比較

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  • 第11文の多言語比較完了
  • 次回: 第11文の英文読解

内容: コンテンツ (案) からの転記

第11文

対象文
en.11
  • circum (lat?) = circle

Insufficient consideration of this circumstance lies at the root of the difficulties which the electrodynamics of moving bodies at present encounters.

de.11
  • ung -> (pl) -ungen
  • Umstand, um = around
  • sein = ich bin, du bist, er ist
  • Wurzel = root
  • Schwierigkeit - (pl) Schwierigkeiten = difficulties
  • mit = with
  • die - der - den - die
  • bewegter <-- bewegen, be- 他動詞を作る接頭辞,
  • wegen <- vehere, vector
  • hat = haben = (en) have
  • zu kämpfen hat = have to struggle

Die nicht genügende Berücksichtigung dieses Umstandes ist die Wurzel der Schwierigkeiten, mit denen die Elektrodynamik bewegter Körper gegenwätig zu kämpfen hat.

fr.11
  • une (女性名詞につく不定冠詞)= a, an
  • 女性語尾 e = Marie
  • de = of
  • ces <-- ce = this
  • être: je suis, tu es, il/elle est, nous sommes, vous êtes, ils sont
  • la: 定冠詞の (単数の) 女性形
  • le, la, les
  • des = de + les, (a + les = aux)
  • quel = 疑問詞, 関係代名詞
  • heurter = 衝突する = encounter

Une appréciation insuffisante de ces conditions est la cause des problèmes auxquels se heurte présentement l'électrodynamique des corps en mouvement.

it.11
  • (fr) de = (en) of = (it) di
  • (it) essere --> è
  • (it) con = (en) with = (de) mit. この con は英語の接頭辞にも生きている.
  • deve <- (fr) devoir = (en) must

La non sufficiente considerazione di queste circostanze è la radice delle difficoltà, con le quali l'elettrodinamica dei corpi in movimento attualmente deve lottare.

sp.11
  • (sp) el = (en) the = (アラビア語) al, algebra = al-gabr
  • (fr) que = (en) that, what
  • que estas circunstancias

El que estas circunstancias no hayan sido consideradas en forma apropiada es la raíz de las dificultades con las que actualmente debe luchar la electrodinámica de cuerpos en movimiento.

ru.11
  • (ru) понимание = (en) consideration, (en) ponder(?)

Недостаточное понимание этого обстоятельства является корнем тех трудностей, преодолевать которые приходится теперь электродинамике движущихся тел.

sch.11

对这种情况考虑不足, 就是动体电动力学目前所必须克服的那些困难的根源.

ja.11

この状況に対する考察の不十分さが, 運動物体に関する電気力学がいま出会っている困難の原因にある.

単語比較
  • Insufficient = (de) nicht genügende = (fr) insuffisante = (it) non sufficiente = (sp) (no) en forma apropiada (= appropriately) = (ru) Недостаточное
  • consideration = (de) die Berücksichtigung = (fr) Une appréciation = (it) La considerazione = (sp) no hayan sido consideradas (= have not been considered) = (ru) понимание
  • of this circumstance = (de) dieses Umstandes = (fr) de ces conditions = (it) di queste circostanze = (sp) El que estas circunstancias = (ru) этого обстоятельства
  • lies at = (de) ist = (fr) est = (it) è = (sp) es = (ru) является (= is an)
  • the root = (de) die Wurzel = (fr) la cause = (it) la radice = (sp) la raíz = (ru) корнем
  • of the difficulties = (de) der Schwierigkeiten = (fr) de des problèmes = (it) delle difficoltà = (sp) de las dificultades = (ru) тех трудностей (= those difficulties)
  • which = (de) mit denen = (fr) auxquels = (it) con le quali = (sp) con las que = (ru) которые
  • the electrodynamics = (de) die Elektrodynamik = (fr) l'électrodynamique = (it) l'elettrodinamica = (sp) la electrodinámica = (ru) электродинамике
  • of moving bodies = (de) bewegter Körper = (fr) des corps en mouvement = (it) in movimento dei corpi = (sp) de cuerpos en movimiento = (ru) движущихся тел
  • at present = (de) gegenwätig = (fr) présentement = (it) attualmente = (sp) actualmente = (ru) теперь
  • encounters = (de) hat zu kämpfen = (fr) se heurte = (it) deve lottare = (sp) debe luchar = (ru) приходится преодолевать (= has to overcome)

第025回 第11-12文の英文読解

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今日の予定

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進捗・TODO・今日のメモ

  • 第12文の読解
  • 第13文
  • TODO の反映

内容: コンテンツ (案) からの転記

第11文

対象文
en.11

Insufficient consideration of this circumstance lies at the root of the difficulties which the electrodynamics of moving bodies at present encounters.

ja.11

この状況に対する考察の不十分さが, 運動物体に関する電気力学がいま出会っている困難の原因にある.

英語解説
文構造

基本的な文構造は次の通りです.

  • Insufficient consideration of this circumstance lies
    • at the root of the difficulties
      • which the electrodynamics of moving bodies at present encounters.

第一文型 SV で consideration lies が基本構造です.

Insufficient consideration of this circumstance lies

まず consideration と言われてもどんな consideration 「考察」なのか気になるので, それに対して Insufficient consideration と補足されていることに注意します. ここで consideration は無冠詞単数なので不可算名詞だと判断すればいいでしょう. さらに何を consider 「考える」しているかと言えば, of this circumstance です. 他動詞を名詞化したとき, もとの動詞の目的語は of で補足することがよくあります.

TODO 動詞の名詞化と名詞の動詞化で英語として表現をすっきりさせることがよくある. 英作文の技術として大事にするという話をどこかに書く.

動詞 lies については「どこに」あるのかという問題があります. それを次に見てみましょう.

at the root of the difficulties

単純に第一文型 SV の動詞 lies の「どこにいるか」を補足する副詞句です. まず at the root 「根本のところで」で指定され, 何の根本なのかを補足するために of the difficulties があります. ここで root は定冠詞がついていて, difficulty も複数形にした上で定冠詞がついていることに注意しましょう. もちろん difficulties も具体的に何なのかと思うわけで, それに対して which で関係代名詞による修飾がつきます.

which the electrodynamics of moving bodies at present encounters

動詞が encounters で三単現の s がついているため, 学問名で単数扱いの the electrodynamics が主語で, 目的語が先行詞になっている関係代名詞節と見ればいいでしょう. 学問名なので s がついていても単数扱いであることも注意点です. 修飾を考える上でもうひとつ大事なのは, 意味からして先行詞が the difficulties であることです. これは複数形なので encounters の主語であるとすると, 三単現の s と複数形であることが噛み合わないからです.

主語の the electrodynamics に定冠詞がついているのは, 特に moving bodies に対する電気力学を考えていることによる特定化です. Of moving bodies が定冠詞抜きの単純な複数形なのは, 特定複数の the moving bodies なのではなく, 一般的な運動物体全体を指しています.

最後, at present は副詞で関係代名詞節全体に時間的な限定もつけています.

節タイトル: 第12文

対象文
en.12

I. KINEMATICAL PART \S1. Definition of Simultaneity

de.12
  • 男性定冠詞 der-des-dem-den
  • 女性定冠詞 die-der-der-die
  • -keit = -heit = (en) -hood, -ty, -ty
  • gleich = like, alike, equal
  • die Gleichung = equation
  • zeitig = zeit + -ig,
  • zeit = (en) time

I. Kinematischer Teil. \S1. Definition der Gleichzeitigkeit.

fr.12
  • フランス語は形容詞は基本はうしろから修飾.
  • 参考: 冠詞も言語によっては後ろにつく.
  • CINÉMATIQUE = Kinematic
  • kinema = cinema シネマ 映画 = 動画
  • -ité = -ity
  • SVO, SOV

I. PARTIE CINÉMATIQUE \S1. Définition de la simultanéité

it.12
  • zu + dem = zum
  • zu + der = zur
  • (de) zu = (en) to
  • (fr) -tion = ション = (en) = (it) -zione

I. Parte cinematica \S1. Definizione della simultaneità

sp.12

I. Cinemática \S1. Definición de simultaneidad

ru.12

I. КИНЕМАТИЧЕСКАЯ ЧАСТЬ \S1. Определение одновременности

sch.12

一 运动学部分 \S1, 同时性的定义

ja.12

I. 運動学の部 \S1. 同時性の定義

英語解説
全体的な注意

英語では部タイトルは全て大文字, 章タイトルは of は先頭が小文字, それ以外が大文字であることに注意してください. よくある表記です. ドイツ語のように部タイトルと節タイトルの形式が一致しているケースもよくあります. この形式は論文誌ごとの投稿規定などにも依存します.

日本語とも同じくタイトルは必ずしも完全な文の形ではなく, 名詞メインのこともよくあります.

構文
  • I. KINEMATICAL PART
  • \S1. Definition of Simultaneity

部タイトルは単純な名詞 part に補足で kinematical がついた形, 章タイトルも単純な名詞 definition に補足で of simultaneity がついています. 強いて注意すれば definition はもとが他動詞の define であり, 動詞の目的語を of simultaneity で添えています.

単語
  • kinematical: 運動学の
  • part: (文献の段落構造としての) 部
  • definition: 定義
  • simultaneity: 同時性
ドイツ語解説
単語
  • kinematischer $\gets$ kinematisch = kinematical
  • Teil = part
  • Definition = definition
  • der: 定冠詞
  • Gleichzeitigkeit = simultaneity
節終了

第026回 第12文の英文読解・第13文の多言語比較・補足

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今日の予定

  • 第12文の読解
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進捗・TODO・今日のメモ

  • 第 12 文終了
  • 第 13 文の多言語比較と補足終了
  • 次回は第 13 文の読解.

内容: コンテンツ (案) からの転記

節タイトル: 第12文

対象文
en.12

I. KINEMATICAL PART \S1. Definition of Simultaneity

ja.12

I. 運動学の部 \S1. 同時性の定義

英語解説
全体的な注意

英語では部タイトルは全て大文字, 章タイトルは of は先頭が小文字, それ以外が大文字であることに注意してください. よくある表記です. ドイツ語のように部タイトルと節タイトルの形式が一致しているケースもよくあります. この形式は論文誌ごとの投稿規定などにも依存します.

日本語とも同じくタイトルは必ずしも完全な文の形ではなく, 名詞メインのこともよくあります.

構文
  • I. KINEMATICAL PART
  • \S1. Definition of Simultaneity

部タイトルは無冠詞 part に補足で kinematical がついた形, 章タイトルも無冠詞の definition に補足で of simultaneity がついています. 強いて注意すれば definition はもとが他動詞の define であり, 動詞の目的語を of simultaneity で添えています.

単語
  • kinematical: 運動学の
  • part: (文献の段落構造としての) 部
  • definition: 定義
  • simultaneity: 同時性
節終了

第13文

対象文
en.13

Let us take a system of co-ordinates in which the equations of Newtonian mechanics hold good(footnote).

(footnote: i.e. to the first approximation.)

de.13
  • liege --- vor = vorliegen
    • liege <-- liegen = lie, exist
    • 分離動詞, vor: 分離前綴り
    • cf. grow up
  • vorliegen: 自動詞 (目的語 (4 格) を取らない
  • das Koordinatensystem, das-des-dem-das
  • welche: 定冠詞類の変化
  • 弱変化: 定冠詞+形容詞+名詞が来るとき
  • Gleichungen <-- die Gleichung (gleich + ung)
  • グリムの法則: 「グリム」はグリム童話のグリム
  • deutsch
  • in: 3 格と 4 格
    • 3 格: 場所, (en) in
    • 4 格: 移動, (en) into

Es liege ein Koordinatensystem vor, in welchem die Newtonschen mechanischen Gleichungen gelten.

fr.13
  • dans = in
  • lequel = le + quel
  • le, la, les
  • sons = etre (be), je suis - tu es - il est - nous somme - vous êtes - ils sont

Supposons un système de coordonnées dans lequel les équations newtoniennes sont vraies.

it.13
  • nel = in + 定冠詞
  • Si (?), (fr) si = (en) if
  • seulement = seule + ment, seule = solo

Si assuma un sistema di coordinate, nel quale valgano le equazioni meccaniche di Newton.

sp.13

valen =? (en) valid

Supongamos un sistema de coordenadas en el cual se valen las ecuaciones mecánicas de Newton.

ru.13

Пусть имеется координатная система, в которойill справедливы уравнения механики Ньютона.

sch.13

设有一个牛顿力学方程在其中有效的坐标系.

ja.13

ニュートン力学の方程式がよく成り立つ座標系を取ろう. (すなわち一次近似の精度で考える.)

補足
「ニュートン力学がよく成り立つ」

物理は数学で自然をモデル化し, その数学モデルを解析する分野です. 2020 年時点でいわゆるニュートン力学が成り立つのはそこそこの大きさを持ち, 物体の速度もそれほど大きくない領域, つまり量子力学の世界でもなければ相対性理論の世界でもない(光速より十分小さい速度)範囲でしか使えないことがわかっています. これがモデルの精度や適用限界であり, 「よく成り立つ」の意味です.

実際に電磁気学と連携させて力学を考えるとき, 電磁波が光の速度で伝わる以上, 光の速度の領域で議論する必要があり, 物体の運動学・力学に対してニュートン力学の適用限界を超えてしまっているのです. つまり以下の議論ではニュートン力学の制約下から外れる領域に踏み込まざるを得ないと主張しています.

一次近似

あなたが高校生で物理を勉強しているなら, 波動の分野で$\sqrt{1+x} \fallingdotseq 1 + \frac{1}{2} x$という近似式を使ったことがあるでしょう. これが一次近似です. 特に微分法を使った議論のことで, テイラー展開とも関係があるので, 興味があればぜひ調べてみてください.

  • ばね: ばねも一般には非線型.
  • $m \ddot{x} = - kx = f(x)$
  • 振り子: $m \ddot{\theta} = - \sin \theta = - \theta$.
  • 力学系 dynamical system = 連立 (非線型) 常微分方程式.
    • ポアンカレ, 三体問題.
節終了

第027回 第13文の英文読解・第14文の多言語比較

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今日の予定

  • 第 13 文の読解
  • 第 14 文の多言語比較

進捗・TODO・今日のメモ

  • 第 13 文の読解
  • 第 14 文の多言語比較
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内容: コンテンツ (案) からの転記

第13文

対象文
en.13

Let us take a system of co-ordinates in which the equations of Newtonian mechanics hold good(footnote).

(footnote: i.e. to the first approximation.)

de.13
  • liege --- vor = vorliegen
    • liege <-- liegen = lie, exist
    • 分離動詞, vor: 分離前綴り
    • cf. grow up
  • vorliegen: 自動詞 (目的語 (4 格) を取らない
  • das Koordinatensystem, das-des-dem-das
  • welche: 定冠詞類の変化
  • 弱変化: 定冠詞+形容詞+名詞が来るとき
  • Gleichungen <-- die Gleichung (gleich + ung)
  • グリムの法則: 「グリム」はグリム童話のグリム
  • deutsch
  • in: 3 格と 4 格
    • 3 格: 場所, (en) in
    • 4 格: 移動, (en) into
  • welchem: 3 格

Es liege ein Koordinatensystem vor, in welchem die Newtonschen mechanischen Gleichungen gelten.

ja.13

ニュートン力学の方程式がよく成り立つ座標系を取ろう. (すなわち一次近似の精度で考える.)

英語解説
文構造

基本の構造は次の通りです.

  • Let us take a system of co-ordinates
    • in which the equations of Newtonian mechanics hold good
      • i.e. to the first approximation

脚注も入れてあります. 文構造としてはいわゆる Let's go の Let's です.

Let us take a system of co-ordinates

強いていえば次のように書き換えられます.

TODO Let us の説明も入れる

  • we take a system of co-ordinates

まず目的語が a system で不定冠詞の単数, co-ordinates は複数です. 前文から本文に部が切り替わったので改めて仕切り直すという意味で, とにかく何か系 a system を取ったという符丁です.

Co-ordinates 「座標」は coordinates とハイフンなしで書くこともあります. これが複数形なのは$x, y, z$の 3 つまたは$x, y, z, t$の 4 つあることから来ているのでしょう. 数学でも一般相対性理論で重要な微分幾何でうんざりするほど出てくる言葉です. どんな座標系なのかが気になるわけで, それが in which の関係副詞節で説明されています.

TODO 上の関係副詞を関係代名詞・形容詞節なので修正する.

in which the equations of Newtonian mechanics hold good

先行詞は文法上では判定できません. 何を言いたいのかというと, 直前の名詞を修飾すると思えば co-ordinates になりそうなところ, 実際には a system を修飾していると見るべきだという話です. 意味がわからないのはこちらの方なので先行詞は a system です.

中身は第二文型SVCです. The equations が good であり, そのありようが hold で指定されています. 主語から順に見ましょう.

主語は the equations で定冠詞がついた複数形です. 「あなたもご存知の」と言われてもこれだけではよくわからないので, of Newtonian mechanics 「ニュートン力学」という補足が入っています. ニュートン力学の方程式は高校でも出てくる運動方程式で, $x, y, z$座標それぞれの成分に対する方程式で 3 本あるのを複数だと捉えているのでしょう.

ここでの動詞 hold は「成り立つ」という意味で, 物理や数学ではよく使われる用法です. 補語 good は素直に「よく」と思えばよく, hold good は「よく成り立つ」と訳します.

TODO ここの「よく」は「精度がいい」の意味.

単純な翻訳はこれで十分ですが意味がよくわからないでしょう. 実際脚注がつく程度には意味が捉えにくいとは言えます. 物理の議論が必要になるので補足でコメントします.

i.e. to the first approximation

これは hold good についた脚注です. I.e. は「アイイー」とそのまま読むこともあれば, that is と読むこともあります. 実はラテン語 id est の略で「すなわち」の意味です. (it is.) 英語 that is も「すなわち」の意味です.

est = (be 動詞の活用) (fr) être = je suis, tu es, il est.

To the first approximation は「一次近似で」という意味で, 「よく成り立つ」という精度に関わる注意で, これまた物理ではよく出てくる議論です. 定冠詞 the がついているのは英語の感覚という意味で注目するところでしょう. ここでの to は「---の範囲まで」という意味を表しています.

節終了

第14文

対象文
en.14

In order to render our presentation more precise and to distinguish this system of co-ordinates verbally from others which will be introduced hereafter, we call it the stationary system.

de.14
  • nennen = name
  • dies: 定冠詞類
  • zur = zu + der (<- die)
  • sprachlichen <- sprachlich <- sprechen = (en) speak
  • Unterscheidung = distinction
  • einzuführenden <- ein + zu + führenden <- zu einführenden
    • führen
    • führend
      • ge-
    • führenden
  • -ung: 女性名詞, die-der-der-die
  • von später einführenden Koordinatensystemen: 弱変化

Wir nennen dies Koordinatensystem zur sprachlichen Unterscheidung von später einzuführenden Koordinatensystemen und zur Präzisierung der Vorstellung das „ruhende System".

fr.14
  • Pour = for
  • d'un = de + un <- de = of
  • autre = other
  • qui = that
  • sera = will be
  • et = and
  • nous = (en) we = (it) nos = (de) wir
  • cafe au lait
  • il est

Pour distinguer ce système d'un autre qui sera introduit plus tard, et pour rendre cette notion plus claire, nous l'appellerons le «système stationnaire».

it.14
  • Chiamiamo = call
    • mi chiamo
  • riposo = (en) rest
  • per = for
  • nel = in + 定冠詞
  • discorso = discourse = presentation
  • descrizione = description
  • sistemi (複数形 (記憶が正しければ))

Chiamiamo questo sistema di coordinate il "sistema a riposo", per distinguerlo nel discorso dai sistemi di coordinate che si introdurranno in seguito e per precisare la descrizione.

sp.14
  • estar
  • en = (fr) en = in
  • adelante = hereafter
  • y = and
  • para = pour

A este sistema de coordenadas lo llamaremos "sistema en reposo" a fin de distinguirlo de otros sistemas que se introducirán más adelante y para precisar la presentación.

ru.14

ロシア語も格変化と活用があり, その原形がわからない. さらに名詞は辞書の見出し語は単数の主格らしく, その形が判定できないので辞書で満足に調べることもできていない.

  • Для = for
  • отличия = distinction
  • от = of, from, against
  • вводимых = imposed
  • позже = hereafter
  • координатных систем = coordinate systems
  • и = and
  • уточнения = clarify
  • терминологии = terminology
  • назовем - we'll call
  • эту = this
  • покоящейся = at rest

Для отличия от вводимых позже координатных систем и для уточнения терминологии назовем эту координатную систему «покоящейся системой».

sch.14
  • 以后 = hereafter = 以後
  • 叫 = (x) (ex)claim = (o) call
  • 严谨 = rigorous
  • 为 = for
  • 并且 - and
  • 便 = convenient
  • 将 = will
  • 这 = this
  • 要引进 = to introduce
  • 加以 = add
  • 它 = it

为丁使我们的陈述比较严谨, 并且便于将这坐标系同以后要引进来的别的坐标系在字面上加以区别, 我们叫它"静系".

ja.14

我々の議論をより厳密にするため, そしてこの座標系と後で導入する座標系を言葉の上で区別するために, それを静止系と呼ぶことにする.

英語解説
文構造

基本は次の通りです.

  • we call it the stationary system
    • In order to render our presentation more precise
    • and to distinguish this system of co-ordinates verbally from others
      • which will be introduced hereafter

To 不定詞による長い副詞句があり, 最後に主節が来ています. 主節の構造は第五文型 SVOC です.

we call it the stationary system

第五文型は「S は V の視点で O = C であると思っている」という意味を持っています. ここでは it = the stationary system であると call する, つまり「そうみなす・定義する」という意味です. 実際 call は「この概念をこう呼ぶ」という形で定義のときに使われる単語です.

主語 we はいわゆる論文の we で, 目的語の it は前文の「ニュートン力学がよく成り立つ座標系」です. 補語の the stationary system には定冠詞がついていることに注意してください. 「あなたもご存知の」というよりも前文で性質を特定した系という意味での特定が入っています.

In order to render our presentation more precise

ここでは and で to 不定詞句がふたつ並んでいるひとつ目です. In order to は to 不定詞句が特に副詞用法であることを表す符丁です. 文型としては第五文型の VOC で, our presentation 「我々の議論」を more precise 「より厳密に」するためと訳せばいいでしょう. 動詞 render は「与える, 描く」といった意味で, ここでは第五文型の型の意味で訳せば十分です.

and to distinguish this system of co-ordinates verbally from others

先程書いたように in order to のもうひとつです. 動詞 distinguish は「区別する」という意味で, this system of co-ordinates 「この座標系」を区別するため, というのが基本的な意味・構造です. ここでは system で冠詞代わりに this が使われています.

区別するためには比較対象が必要でそれは from others で示されています. 複数系で無冠詞なことに注意しましょう. ここでの others は other systems で, 日本語でもこの手の省略はよくあります. ただ others がいまひとつ曖昧なままです. それが次の関係代名詞で補足されています.

which will be introduced hereafter

明らかに主語が欠けた節なので先行詞は主語にあたるはずです. 文法上特別な事情がなければ直前の語を修飾するので, others が先行詞でこの節の主語と判断していいでしょう. 動詞が will になっているので三単現の s があるかないかといった文法上の判断基準は使えないことに注意してください. もっと難しい文章をきちんと読むためにも, 当たり前の判断基準を常に気にかけるのが大事です.

ここでのもうひとつのポイントは未来表現を表す will と, 未来を表す副詞 hereafter です. Others はこれから議論する systems だとして, 文章を読み進めるモチベーションを与えています.

節終了

第028回 第14文の英文読解・第15文の多言語比較

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これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください. 勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します. 適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

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  • ロシア語はドイツ語と同じで格があり, ロシア語は 6 つ.
  • これまたドイツ語と同じく, 格のおかげで語順をかなり自由に取れる.
  • 発音の重要性
    • 思いついた: たぶん「発音抜きの語学は式抜きの数学・物理と同じ」
    • プロソディ: 英語の文の強弱のリズム・ストレス・メロディ.
    • 発音しないとわからない部分がある.
    • 語呂の良さ: 俳句の五七五 (中国語の五言絶句, 四六駢儷文など)
    • 言語ごとの特色もある
    • どこまで本当か知らないが, ラマヌジャンを育んだインド, ヒンディー語は音のリズムがよいらしい.
    • クルアーンも韻律を重視した文章だとか.

前回の補足: 一次近似について

(ニュートン力学がよく成り立つ範囲で)

もう一つ, 次の補足とは別に, 後知恵的になぜこれが一次近似にあたるのかコメントします. 英語にだけこの脚注があるのはまさにこの後知恵にあたるからでしょう. ここでは単に「そうはいっても状況を限定すればよく成り立つのはわかっているのだから, ニュートン力学にも一定の信頼は置こう」と言っているだけです.

純粋にこの論文が書かれた時代の知識だけから, 「ニュートン力学がよく成り立つ」が一次近似とは言えません. 次の議論によって相対性理論に対してニュートン力学が一次近似として得られることはわかります.

実はローレンツ因子を $\gamma = 1 / \sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}}$ とすると, 相対論的運動エネルギーは $E = \gamma mc^2$ と書けます. ここで $\gamma$ を $\frac{v^2}{c^2}$ に関してテイラー展開して一次まで取ると, $\gamma = 1 + \frac{1}{2} \frac{v^2}{c^2}$ と書けるので, もとの運動エネルギーに代入すると $E = mc^2 + \frac{1}{2} mv^2$ と書けます. 第一項はいわゆる静止エネルギーで有名な式です. これに対して一次近似の項として非相対論的な運動エネルギーが出てきます. つまり一次近似としてニュートン力学が復元できました. いわばこれを先取りした表現が英語版の脚注です.

第14文

対象文
en.14

In order to render our presentation more precise and to distinguish this system of co-ordinates verbally from others which will be introduced hereafter, we call it the stationary system.

de.14
  • nennen = name
  • dies: 定冠詞類
  • zur = zu + der (<- die)
  • sprachlichen <- sprachlich <- sprechen = (en) speak
  • Unterscheidung = distinction
  • einzuführenden <- ein + zu + führenden <- zu einführenden
    • führen
    • führend
      • ge-
    • führenden
  • -ung: 女性名詞, die-der-der-die
  • von später einführenden Koordinatensystemen: 弱変化

Wir nennen dies Koordinatensystem zur sprachlichen Unterscheidung von später einzuführenden Koordinatensystemen und zur Präzisierung der Vorstellung das „ruhende System".

ja.14

我々の議論をより厳密にするため, そしてこの座標系と後で導入する座標系を言葉の上で区別するために, それを静止系と呼ぶことにする.

英語解説
文構造

基本は次の通りです.

  • we call it the stationary system
    • In order to render our presentation more precise
    • and
    • to distinguish this system of co-ordinates verbally from others
      • which will be introduced hereafter

To 不定詞による長い副詞句があり, 最後に主節が来ています. 主節の構造は第五文型 SVOC です.

we call it the stationary system

第五文型は「S は V の視点で O = C であると思っている」という意味を持っています. ここでは it = the stationary system であると call する, つまり「そうみなす・定義する」という意味です. 実際 call は「この概念をこう呼ぶ」という形で定義のときに使われる単語です.

  • TODO 数学・物理の call の用法. 「呼ぶ」と書いたら「そう定義する」の意味.

主語 we はいわゆる論文の we で, 目的語の it は前文の「ニュートン力学がよく成り立つ座標系」です. 補語の the stationary system には定冠詞がついていることに注意してください. 「あなたもご存知の」というよりも前文で性質を特定した系という意味での特定が入っています.

  • TODO 補語に the がつく理由は再考. the earth に the がつくのと同じような感じ? 総称に近い感じ? 「そういうもの」という感じ.
In order to render our presentation more precise

ここでは and で to 不定詞句がふたつ並んでいるひとつ目です. In order to は to 不定詞句が特に副詞用法であることを表す符丁です. 文型としては第五文型の VOC で, our presentation 「我々の議論」を more precise 「より厳密に」するためと訳せばいいでしょう. 動詞 render は「与える, 描く」といった意味で, ここでは第五文型の型の意味で訳せば十分です.

  • TODO presentation は数学・物理用法? 少なくとも「議論」と訳すべきではある.
  • TODO render: 3DCG とかでレンダリング.
and to distinguish this system of co-ordinates verbally from others

先程書いたように in order to のもうひとつです. 動詞 distinguish は「区別する」という意味で, this system of co-ordinates 「この座標系」を区別するため, というのが基本的な意味・構造です. ここでは system で冠詞代わりに this が使われています.

区別するためには比較対象が必要でそれは from others で示されています. 複数系で無冠詞なことに注意しましょう. ここでの others は other systems で, 日本語でもこの手の省略はよくあります. ただ others がいまひとつ曖昧なままです. それが次の関係代名詞で補足されています.

  • TODO 副詞 verbally に関する説明.
which will be introduced hereafter

明らかに主語が欠けた節なので先行詞は主語にあたるはずです. 文法上特別な事情がなければ直前の語を修飾するので, others が先行詞でこの節の主語と判断していいでしょう. 動詞が will になっているので三単現の s があるかないかといった文法上の判断基準は使えないことに注意してください. もっと難しい文章をきちんと読むためにも, 当たり前の判断基準を常に気にかけるのが大事です.

ここでのもうひとつのポイントは未来表現を表す will と, 未来を表す副詞 hereafter です. Others はこれから議論する systems だとして, 文章を読み進めるモチベーションを与えています.

節終了

第15文

対象文
en.15

If a material point is at rest relatively to this system of co-ordinates, its position can be defined relatively thereto by the employment of rigid standards of measurement and the methods of Euclidean geometry, and can be expressed in Cartesian co-ordinates.

de.15
  • das-des-dem-das
  • 定型第二の法則
  • letzterem <- last
  • durch = through
  • starre <- star = strength
  • Maßstäbe = standards = 物差し
  • stab = stuff
  • -ung = 女性名詞を作る接尾辞
  • die Methode -> Methoden (pl)
  • ausgedrückt (分離動詞 ausdrucken) aus + drucken
    • 過去分詞 aus + gedrückt
    • aus = out
    • express
  • unter = under

Ruht ein materieller Punkt relativ zu diesem Koordinatensystem, so kann seine Lage relativ zu letzterem durch starre Maßstäbe unter Benutzung der Methoden der euklidischen Geometrie bestimmt und in kartesischen Koordinaten ausgedrückt werden.

fr.15

Si un point matériel est au repos dans ce système de coordonnées, alors sa position dans ce système peut être trouvée grâce à une règle à mesurer en utilisant des méthodes en géométrie euclidienne, et exprimée en coordonnées cartésiennes.

  • en = in
  • peut = pouvoir = possible
  • trouvée = found <- find
  • règle = regular = rigid

  • (NdT3) (une règle à mesurer) L'inexactitude, inhérente au concept de simultanéité de deux évènements (presque) au même endroit, et qui doit également être résolue par une abstraction, n'est pas discutée ici.

it.15

Se un punto materiale è a riposo rispetto a questo sistema di coordinate, la sua posizione rispetto a quest'ultimo può essere determinata mediante regoli rigidi utilizzando i metodi della geometria euclidea, e può essere espressa in coordinate cartesiane.

  • (it) e = (en) and = (fr) et = (sp) y = (ru) и = (de) und
sp.15

Si un punto material se encuentra en reposo con respecto a este sistema de coordenadas, su posición se puede determinar y expresar en coordenadas cartesianas mediante escalas rígidas, utilizando la geometría euclidiana.

ru.15

Если некоторая материальная точка находится в покое относительно этой координатной системы, то ее положение относительно последней может быть определено методами эвклидовой геометрии с помощью твердых масштабов и выражено в декартовых координатах.

sch.15

如果一个质点相对于这个坐标系是静止的, 那么它相对于后者的位置就能够用刚性的量杆按照欧儿里得几何的方法来定出, 并且能用笛卡儿坐标来表示.

ja.15

もしある質点がこの座標系に対して相対的に静止しているなら, その位置は剛体の物差しによる測定とユークリッド幾何の方法で定義でき, デカルト座標で表現できる.

第029回 第15文の英文読解・第16文の多言語比較

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多言語学習: 日本語の力を上げるために

このサイトは理系のためのリベラルアーツ・総合語学という大きな方向性があります. その中で語学, 特に英語は重要な核の一つです. 英語一つだけでも大変なのになぜたくさんの (自然) 言語を扱うのかと思っている方がいます. あなたもそうかもしれません. 結論から言えば総合的な言語への認識を上げるため, とりわけ自然言語の運用力を上げるためです. もっと強く言えば, 母語 (である日本語) の運用精度を上げるためです. 以下, 母語の代わりに日本語と書くことにします.

よく言語に関する能力は母語 (日本語) の能力で決まると言われます. 実際, 日本語で言われてさえわからないことが英語や他の言語ではまず理解できません. かといってなかなか日本語それ自体を勉強するのは大変です. いちいち日本語学・日本語の言語学の専門書の適切な記述にあたれるわけでもありません. そんなときは比較対象として他の国の言語を勉強することで, 逆説的に日本語に焦点を当ててみよう, それが多言語に触れる理由です.

例えば実際にロシア語の本を読んでいて出会った例を挙げましょう. 日本語で「医者の兄」というとき, 「ある医者の兄」と「医者である兄」の意味があります. しかしロシア語ではこれらをはっきり区別します. 特に брат доктора (brat doktora) は「ある医者の兄」の意味です.

特に自然科学は日常に潜む何気ない現象を詳しく調べることが全てのはじまりです. 日々話す日本語・自然言語の何気ない現象に目を向け, 一歩立ち止まって考えるのは自然科学を考える上でも大事な営みです. 英語だけでは見えない世界もたくさんありますし, 言語にも好き嫌いがあります. だからこそいくつかの言語の世界に触れてみよう・触れてみてほしい, そんな思いを込めて私自身日々勉強しています.

第15文

対象文
en.15

If a material point is at rest relatively to this system of co-ordinates, its position can be defined relatively thereto by the employment of rigid standards of measurement and the methods of Euclidean geometry, and can be expressed in Cartesian co-ordinates.

de.15

Ruht ein materieller Punkt relativ zu diesem Koordinatensystem, so kann seine Lage relativ zu letzterem durch starre Maßstäbe unter Benutzung der Methoden der euklidischen Geometrie bestimmt und in kartesischen Koordinaten ausgedrückt werden.

ja.15

もしある質点がこの座標系に対して相対的に静止しているなら, その位置は剛体の物差しによる測定とユークリッド幾何の方法で定義でき, デカルト座標で表現できる.

英語解説
文構造
  • If a material point is at rest
    • relatively to this system of co-ordinates,
  • its position can be defined
    • relatively thereto
    • by
      • the employment of rigid standards of measurement
      • and
      • (by) the methods of Euclidean geometry,
  • and (its position) can be expressed in Cartesian co-ordinates.

明確にするために省略されている単語を括弧で追加してあります. 主節が and でつながってふたつあり, if 節はその両方にかかっているので上のような構造で書いています.

特にひとつ目の主節が長いのでまずは基本構造を抜き出してみましょう.

  • if a point is at rest
  • its position can be defined
  • and
  • its position can be expressed

ここでそれぞれよくわからない点があるので, 補足説明をぺたぺた張りつけると上の巨大で複雑な文ができます. 順に詳しく見ましょう.

If a material point is at rest relatively to this system of co-ordinates

上に書いた通り主な構造は a material point is (at rest) の第一文型 SV です. 主語は a material point で不定冠詞の a に注目しましょう. 部が切り替わったばかりなので新たな話がはじまっているのです. そして単に「粒子 (質点) が存在する」と言われてもよくわからないので, 存在の様子が知りたくなります. それが at rest 「静止している」です.

TODO 前置詞句自体で補語の役割をはたす. 文法の本にもきちんと書いてある. be 動詞は存在よりも状態.

そして静止の様子はさらに踏み込んで補足説明されています. 相対性理論で重要なのはまさにその相対性で, 何に対して静止しているように「見える」かが問題です. それが this system of co-ordinates 「この座標系」です. これは前文の「静止系」であり, 「ニュートン力学がよく成り立つ系」と定義されていました.

最後に if は単なる従属接続詞で, 意味上は明らかで文法上の役割も明らかです. 文法上で従属節は前に置いても後ろに置いてもいいところ, この条件節を前提として主節を読み込んでほしいというメッセージから, 先に条件節を出している意図もきちんと読み込みましょう. 読み手が読みやすいように要素を並べ替えるのも著者の大事な仕事です.

its position can be defined relatively thereto

受身形なので正確には対応する文型がありません. 強いていうなら第一文型 SV でしょう. つまり its position 「その位置」がとにかく存在し, その存在の様子が can be defined 「定義されうる」なのです.

位置と言われるとどこかが気になります. それはまず thereto 「そこへ, そこに」で指示され, さらに relatively 「相対的に」で補足されます. ここでも相対的というキーワードが出てきていますし, 実際大事です.

by the employment of rigid standards of measurement

さて, 定義されるのはいいとしてどう定義するのかという問題が出てきます. 構文として受身なので, 本来の能動態での主語が何なのかと言ってもいいでしょう. それがこの by が導く句です.

TODO 主語というより手段とした方がいいだろう. あえて能動態に書き直すなら we では?

The employment 「利用」は抽象的な不可算名詞と定冠詞, rigid standards 「剛体の物差し」は一般的な複数形, measurement 「測定」は抽象的な不可算名詞の冠詞なしで使われていることに注意してください. 物理としては特に気にせずさらっと流し読んでもそれほど困らない部分です. しかし英語としてきちんと向き合おうと思うと全てきちんと考える必要があります.

まず rigid standards は一般に剛体の物差しであれば何でも構わないことを主張しています. (TODO 物差しをいっぱい使うというメッセージもある?) 無冠詞単数の measurement はここでいう測定という行為は具体的な測定を意味しているのではなく, 抽象的・一般的で特定されているわけでもないことを意味しています. (TODO 量子力学で量子測定理論.) 最後の the employment は剛体の物差しによる特定の測定方法という意味で定冠詞がついているのでしょう. 冠詞や名詞の単複の厳格な運用は日本語にはない視点なので, いちいち細かく検討するようにしておくべきです. 数学・物理の文献の読み書きに限定すれば必ずしもどうにもならない概念ではありません. しかし日常の英語では, どれだけ勉強してもネイティブの感覚には永遠に追いつけない部分で, 眺めていて飽きることがないほど面白い概念です.

TODO 名詞の冠詞と単複は上の解釈で問題ない?

and (by) the methods of Euclidean geometry,

まず and が何と何と並列させているかが問題です.

TODO 説明が微妙

直後に名詞が来ているので対象は名詞のはずです. もちろん結論から言えば the employment であり, もっと言えば by the employment と by the methods を並列させています.

念のため余計な修飾を潰した主節を見てみましょう.

  • its position can be defined by the employment and the methods
  • S V by A and B

こう書けば by A and B の形になっていて何が並列されているか見やすくなるはずです.

次のポイントは the methods 「(特定の) 方法」です. 定冠詞がついた上で複数形です. どんな方法なのかよくわからないので補足として of Euclidean geometry 「ユークリッド幾何の」がついています. ここでの geometry は分野名「幾何」として使われていて, Euclidean は人名「ユークリッド」から来る形容詞で, 幾何といってもいろいろある中でユークリッド幾何に限定しています.

もっと言えば Euclidean は定冠詞のように使われています. これで the methods で複数形が来ている理由もわかります. ユークリッド幾何にはいろいろな概念・定理・応用があります. 具体的に何かはともかく, ユークリッド幾何に由来するたくさんの方法を使う必要があり, それを複数形で表現しているのです.

and can be expressed in Cartesian co-ordinates

要素としては前の and the methods から and が連続して登場するので, 何が並列されているのか, 再びきちんと考える必要があります.

  • a, b, c, and d
  • TODO カンマは文法上はなくてもいいのでなくても読めるような判断能力が大事.

ここでのポイントは前の要素で "and the methods of Euclidean geometry," と最後にカンマが入っていることです. これは「ここで意味的に切って理解してほしい」ことを表す文法上の符丁なので, 文法上ここでいったん切って考えるべきです. 特に and can be と動詞が来ていて, 名詞を並べている the employment and the methods とは違います.

TODO 説明が微妙.

この二つの点から and が何を結びつけているか見抜く必要があります.

明らかに主語がないので何が主語なのか考える必要があります. 文法上は次のように並列されています.

  • its position can be defined
  • and
  • (its position) can be expressed in Cartesian co-ordinates.

両方とも can be と受身になっているのもポイントです. 省略された主語は its position と思えばいいでしょう. 念のため助動詞があるせいで主語の単複の判定情報からの主語の絞り込みが使えないことも注意しておきます.

TODO can = können, ich kann - du kannst-er kann(?) -wir könenn

さて, 動詞は can be expressed 「表しうる」です. どうやって表すのかが気になるわけで, in が導く句 Cartesian co-ordinates 「デカルト座標」で表すと言っています. ここでは Cartesian が定冠詞のようにはたらく形容詞で定冠詞 + 複数形です. 複数なのはやはり空間変数として$x, y, z$で 3 つあるからです.

TODO de Cartes = デカルト. フランス語は基本的に語末の子音を読まない. Cartesian = カルテシアン.

単語
  • if = もし
  • material = 物質
  • point = 点
    • material point = 質点
  • at rest = 静止した
  • relatively = 相対的に
  • system = 系
  • of: 前置詞
  • co-ordinates $\gets$ co-ordinate = 座標
    • system of co-ordinates = 座標系
  • position = 位置
  • define = 定義する
  • can = できる
  • thereto = それに
  • employment = 利用
  • TODO rigid = 厳格な
  • TODO standard = 標準
  • measurement = 測定
  • method = 方法
  • Euclidean = ユークリッドの
  • geometry = 幾何
    • Euclidean geometry = ユークリッド幾何
  • express = 表現する
  • Cartesian = デカルトの
    • Cartesian co-ordinates = デカルト座標
補足
剛体の物差し

実は相対性理論としては剛体は存在しません. 定義によって光速を超えて瞬時に情報が伝わってしまうからです. ここではこれ以上詳しく説明しません. 興味があればぜひ物理を詳しく勉強してください.

ちなみに最近 (2017 年) にいわゆる 4 次元時空の他にもうひとつ, 情報という軸を追加してみてはどうかという論文が出ています.

読み込めていないので私には妥当性が判断できません. 今でもいろいろな議論があることだけお伝えしておきます.

節終了

第16文

対象文
en.16

If we wish to describe the motion of a material point, we give the values of its co-ordinates as functions of the time.

de.16

Wollen wir die Bewegung eines materiellen Punktes beschreiben, so geben wir die Werte seiner Koordinaten in Funktion der Zeit.

  • be: 他動詞を作る接頭辞
  • weg = vec <- veho (vehere) -> vector
  • describe <- scribe = こする
  • schreiben = シュライベン
  • (fr) île アイル = 島
    • i の山括弧が何か?
    • つぎに s が来ることを表す.
    • island <- ラテン語が s が入っている.
  • Werte = (en) value
    • 発音: ヴェルテ
    • ダブリュ = ダブルユー
    • u v (w) は同じようなもの
fr.16

Si nous voulons décrire le mouvement d'un point matériel, les valeurs de ses coordonnées doivent être exprimées en fonction du temps.

  • 重要なのは子音
  • function = fonction
  • 省略でよくわかる: ft, func
  • ヘブライ語: 書くのは子音しかない.
  • ヤハウェ = YWVH
  • あいまい母音
it.16

Se vogliamo descrivere il moto di un punto materiale, diamo i valori delle sue coordinate in funzione del tempo.

sp.16

Cuando queremos describir el movimiento de un punto material, especificamos los valores de sus coordenadas en función del tiempo.

ru.16

Желая описать движение какой-нибудь материальной точки, мы задаем значения ее координат как функций времени.

  • (超訳) Wanting to describe motion of some material point we set the sense of its coordinates as function of time.
sch.16

如果我们要描述一个质点的运动, 我们就以时间的函数来给出它的坐标值.

ja.16

もし質点の運動を記述したいと思うのなら, その座標の値を時間の関数として与える.

英語解説
文構造

これはシンプルな構造をしています.

  • we give the values of its co-ordinates as functions of the time
    • If we wish to describe the motion of a material point,

単純に見れば主節の基本構造は第三文型SVOで次の通りです.

  • we give the values

詳しく見ていきましょう.

If we wish to describe the motion of a material point

主節の説明で困るので if 節からはじめます. 基本構造は we describe the motion で第三文型SVOです. 杓子定規に言えば動詞は wish ですが, これは助動詞で意味としては want to または will くらいに思えばいいでしょう. 主語はいわゆる論文の we で, 動詞 describe は「記述する」です.

目的語は the motion 「(特定の) 運動」で定冠詞 + 単数形の名詞です. 何の運動かは of が導く形容詞句で示していて, of a material point 「ある質点の」と指定されています. これは不定冠詞 + 単数で, 「何でもいいからとにかくひとつ質点を取って, その質点の運動を考えよう」という意図を表しています.

we give the values of its co-ordinates as functions of the time

先程見た通りメインは we give the values です. 先程と同じく主語は we で論文の we です. 動詞はただの現在形で三単現の s はありません. 目的語は the values で定冠詞 + 複数形の形になっています.

もちろん the values と言われてもわけがわからないので, of の形容詞句で補足説明されています. まず of its co-ordinates で複数形の co-ordinates はこれまでと同じく$x,y,z$で複数なのでしょう. Its については既に言及されている単数の名詞を指しているわけで ここでは if の条件節で言及した質点と思えばいいでしょう. 既に言及したひとつの質点に関わる値なので the で限定できます.

最後に as が導く句があります. 意味としては文全体を give A as B で「A を B として与える」と見ます. これは we think that A is B と思えますし, as には be 動詞のような等価接続の意味があるので, 第五文型 SVOC 「OC の意味を S が V の視点で変える」の視点で見ても構いません. つまり we give A as B は「私達は A を B とみなす」とも訳せ, give の具体的な意味は文型の型に託しても構いません.

これで 文全体の意味が確定したので最後に as B の B を詳しく見ましょう. これは functions of the time で, functions 「関数」は無冠詞の複数, the time 「時間」は定冠詞 + 単数です. Functions が複数なのは the values に対応していて, 無冠詞なのは何か特定の関数を想定しているわけではないからです. The time は変数として時空の 4 変数$x,y,z,t$のうちのひとつ$t$を指定しているから time が単数で, the は「皆様ご存知の時間変数です」という意味と思えばいいでしょう.

節終了

第030回 第15文の補足・ドイツ語読解

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プチメモ

文法と分解能

スペイン語の be 動詞は ser と estar の二つがあり, 前者は本質的な性質や恒常的な性質を表す場合に使い, 後者は一時的な状態を表す場合に使います. いろいろな言語で他の言語では複雑な表現が必要なある種の意味やニュアンスを一語・一機能で表すモノがあります. フランス語だと直説法の時制は現在・複合過去・半過去・大過去・単純過去・前過去・単純未来・前未来の 8 種類があります. フランス文学の良さの一つとして, この微妙な時制の塩梅がその良さを表現していると言われていて, 特に星の王子様の冒頭が有名です.

日本語で一つ例を挙げると助詞の「は・が」です. 必ずしも主語にばかり使うわけではありません. ただここでは主語用の格助詞とみなして考えましょう.

次の文を考えます.

  • (他の誰も行かないかもしれないが) 私は行く.
  • (彼の代わりに) 私が行く.

TODO 昔話の「おじいさんとおばあさんがいました」, 「おじいさんは山に柴刈りに」で「は・が」を入れ替えたときの気持ち悪さ. TODO 自動翻訳でもいろいろ事情がある模様.

もちろん必ずしもここで書いた通りの用法だけではありません. (例えば「今日は」というときの「今日」は主語ではありません.) しかし少なくとも「は」と「が」は単に主語を表す機能だけではなく, 微妙なニュアンスも引き受けています. 言語学での知見をおさえきれていませんが, 日本語には主格が二つあると言えるのかもしれません.

最終的には言語学の膨大な知見と照らし合わせてきちんと判断する必要はあるものの, ごく基本的で日常的なところにも各言語・文法の特徴が出てきます. 丁寧に比較して世界への認識を深めていきましょう.

各言語ごとの自然に沿う

最近, ようやくドイツ語の読み方がわかってきました.

  • 動詞句をきちんと考える.
  • 格をきちんと考える.

この 2 つです. 英語の方がよくわかるから・英語のように考えられる部分があるからといって, それを無理やりあてはめてはいけません. 文法についていうならむしろ日本語の感覚の方が近いです. 日本語も原則として語順がなく, 助詞で要素の関係を把握するわけで, ドイツ人もそれと同じように処理していると見るべきらしいのです.

まだきちんと理解しきれていない上にそれほどたくさんの本を見たわけでもありませんが, ドイツ語の本の作文法はたいてい動詞句を基点にしているようです. もちろん読むときもこれを前提にします.

少しだけ例を挙げます. 英語で「バイオリンを弾く」と言いたければ play (the) violin と表現します. しかしドイツ語ではふつう Geige spielen と表現します. 大事なのは辞書で不定形で書くときにもこの語順で出てきます. 英語の熟語的な表現で keep in mind と書くとき, ドイツ語の対応する表現は ins Auge behalten などと書きます. Wiktionaryを見てみましょう.

ちなみに動詞句 (不定詞句) を考えるとき, よく「日本語の語順で考えるとドイツ語としても自然な語順になることが多い」と書かれています. ラテン語も同じと聞きます. ロシア語も格を持つ言語なので, ロシア語でどうなるかは注目しているところです.

ローマ字の歴史: BVLGARI の表記

古代ローマで用いられていたアルファベットには、"U"という文字はなく、母音はA,E,I,O,Vの5つで表されていました。さらにIとVはそれぞれ子音としての役割もあり、Iは今で言うYを、Vは今で言うWの音を表していました。

外来語を表記するために、YとZがギリシャ語から導入されます。 10世紀ごろには、日本語でいう「ウ」と「ワ行」の音に使われていた"V"が、「ウ」の音を"U"、「ワ行」の音を"V"とわけられ、ここでようやく"U"が登場します。

しかし、"V"を「ヴァ行」の音とする地域が増え、ヨーロッパの中で混乱が起きました。そうして11世紀ごろに"V"を「ヴァ行」とするため、「ワ行」を表す"W"が考案されます。

音の現象とそれがどうスペルに反映されるか, そして歴史とともにどう変わっていったか, 音とスペルにはいろいろなダイナミズムがあるのです.

言語と音: リズムの解釈の違い

マイケル・ジャクソンの歌を聞く前にコメントを. ふつう日本人はこの冒頭部を「チーチキ チーチキ」と聞くようです (私もそうです). しかしこれは「チー チキチー チキチー」と聞くべきだそうです. 上の記事にいろいろ書いてありますが, 要は冒頭部のラストで「チー チー」と連発する部分があり, 「チー」単独の音に意味を持たせるべきで, そう思うと「チー チキチー」と「チー」を単独で切り出せる聞き方をするべきだ, こうなるようです.

ドイツ語の 1 格と 4 格

むしろロシア語の文法書を読んでいて思ったことです. ロシア語では名詞の主格と対格の形が同じケースがいくつかあります. 一方, ドイツ語は男性単数は例外として, 他は冠詞・形容詞の活用で主格・対格が一致します.

男性単数 女性単数 中性単数 複数
1 格 der kleine Wecker die große Vase das neue Haus die kleinen Zimmer
2 格 des kleinen Weckers der großen Vase des neuen Hauses der kleinen Zimmer
3 格 dem kleinen Wecker der großen Vase dem neuen Haus den kleinen Zimmern
4 格 den kleinen Wecker die große Vase das neue Haus die kleinen Zimmer

それでふと思ったのは, 1 格と 4 格が同じになる(ことがある)のは, 4 格は受身を作るときに主語になる格なので, 同じような語形を取るのはこの事情を反映しているのではないかとふと思ったのです.

あくまできちんと調べたわけでもない思いつきで, 素人が二言語見ただけでしかないのでたぶん間違いでしょう. ただ, 気になるのはこういうのをそもそもどう調べたらいいのかという問題です.

第15文

対象文
en.15

If a material point is at rest relatively to this system of co-ordinates, its position can be defined relatively thereto by the employment of rigid standards of measurement and the methods of Euclidean geometry, and can be expressed in Cartesian co-ordinates.

ドイツ語解説

動詞の位置に関して.

  • 主文: 定型第二の法則
    • 枠構造
  • 副文: 文末
  • 条件文・命令文: 先頭

関係詞がつくときカンマが絶対つく.

my book = il mio libro (the my book)

  • kann (<- können) = can
  • 定動詞
  • 本動詞
  • can be
  • kann --- --- werden
  • werden: 助動詞
    • 受身の助動詞
    • 未来形
    • 本動詞: become
    • can be drawn
  • ge---: 過去分詞
  • gedrückt <- drücken
  • aus: 分離前綴り
  • ausdrücken -> aus + drücken -> aus + gedrückt
  • 非分離前綴り: be-emp-ent-er ge-ver-zer-miss
  • bestimmt -> be + stimmen -> be + gestimmt -> be + stimmt
  • ヴァレンツ理論: 動詞を中心にして考える.
  • ruhen -> ruht: ruhen の三人称単数の現在形, 自動詞
    • 主語は三人称単数: 主格でないといけない (1 格)
    • 自動詞: 4 格目的語を持つものが他動詞
    • ドイツ語: 名詞の先頭は大文字
  • durch = through
補足
剛体の物差し

実は相対性理論としては剛体は存在しません. 定義によって光速を超えて瞬時に情報が伝わってしまうからです. ここではこれ以上詳しく説明しません. 興味があればぜひ物理を詳しく勉強してください.

ちなみに最近 (2017 年) にいわゆる 4 次元時空の他にもうひとつ, 情報という軸を追加してみてはどうかという論文が出ています.

読み込めていないので私には妥当性が判断できません. 今でもいろいろな議論があることだけお伝えしておきます.

節終了

第16文

対象文
en.16

If we wish to describe the motion of a material point, we give the values of its co-ordinates as functions of the time.

de.16

Wollen wir die Bewegung eines materiellen Punktes beschreiben, so geben wir die Werte seiner Koordinaten in Funktion der Zeit.

fr.16

Si nous voulons décrire le mouvement d'un point matériel, les valeurs de ses coordonnées doivent être exprimées en fonction du temps.

it.16

Se vogliamo descrivere il moto di un punto materiale, diamo i valori delle sue coordinate in funzione del tempo.

sp.16

Cuando queremos describir el movimiento de un punto material, especificamos los valores de sus coordenadas en función del tiempo.

ru.16

Желая описать движение какой-нибудь материальной точки, мы задаем значения ее координат как функций времени.

  • (超訳) Wanting to describe motion of some material point we set the sense of its coordinates as function of time.
sch.16

如果我们要描述一个质点的运动, 我们就以时间的函数来给出它的坐标值.

ja.16

もし質点の運動を記述したいと思うのなら, その座標の値を時間の関数として与える.

ドイツ語解説
英語解説
文構造

これはシンプルな構造をしています.

  • we give the values of its co-ordinates as functions of the time
    • If we wish to describe the motion of a material point,

単純に見れば主節の基本構造は第三文型SVOで次の通りです.

  • we give the values

詳しく見ていきましょう.

If we wish to describe the motion of a material point

主節の説明で困るので if 節からはじめます. 基本構造は we describe the motion で第三文型SVOです. 杓子定規に言えば動詞は wish ですが, これは助動詞で意味としては want to または will くらいに思えばいいでしょう. 主語はいわゆる論文の we で, 動詞 describe は「記述する」です.

目的語は the motion 「(特定の) 運動」で定冠詞 + 単数形の名詞です. 何の運動かは of が導く形容詞句で示していて, of a material point 「ある質点の」と指定されています. これは不定冠詞 + 単数で, 「何でもいいからとにかくひとつ質点を取って, その質点の運動を考えよう」という意図を表しています.

we give the values of its co-ordinates as functions of the time

先程見た通りメインは we give the values です. 先程と同じく主語は we で論文の we です. 動詞はただの現在形で三単現の s はありません. 目的語は the values で定冠詞 + 複数形の形になっています.

もちろん the values と言われてもわけがわからないので, of の形容詞句で補足説明されています. まず of its co-ordinates で複数形の co-ordinates はこれまでと同じく$x,y,z$で複数なのでしょう. Its については既に言及されている単数の名詞を指しているわけで ここでは if の条件節で言及した質点と思えばいいでしょう. 既に言及したひとつの質点に関わる値なので the で限定できます.

最後に as が導く句があります. 意味としては文全体を give A as B で「A を B として与える」と見ます. これは we think that A is B と思えますし, as には be 動詞のような等価接続の意味があるので, 第五文型 SVOC 「OC の意味を S が V の視点で変える」の視点で見ても構いません. つまり we give A as B は「私達は A を B とみなす」とも訳せ, give の具体的な意味は文型の型に託しても構いません.

これで 文全体の意味が確定したので最後に as B の B を詳しく見ましょう. これは functions of the time で, functions 「関数」は無冠詞の複数, the time 「時間」は定冠詞 + 単数です. Functions が複数なのは the values に対応していて, 無冠詞なのは何か特定の関数を想定しているわけではないからです. The time は変数として時空の 4 変数$x,y,z,t$のうちのひとつ$t$を指定しているから time が単数で, the は「皆様ご存知の時間変数です」という意味と思えばいいでしょう.

節終了

第031回 第15文のドイツ語読解・第16文の多言語比較

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まず確認

  • 録画はじめた?
  • 音は大丈夫?
    • 一度音声が入っていなくてひどい目に遭ったことを忘れないように.
  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
  • 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.

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これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください. 勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します. 適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

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今日の予定

  • 第 15 文のドイツ語構文解析
  • 第 16 文の多言語比較

進捗・TODO・今日のメモ

  • 第16文の比較: ドイツ語まで終わった.

内容: コンテンツ (案) からの転記

第15文

対象文
en.15

If a material point is at rest relatively to this system of co-ordinates, its position can be defined relatively thereto by the employment of rigid standards of measurement and the methods of Euclidean geometry, and can be expressed in Cartesian co-ordinates.

ドイツ語解説

第16文

対象文
en.16

If we wish to describe the motion of a material point, we give the values of its co-ordinates as functions of the time.

  • x(t), y(t), z(t)
de.16
  • wollen = will
  • u = v = w

Wollen wir die Bewegung eines materiellen Punktes beschreiben, so geben wir die Werte seiner Koordinaten in Funktion der Zeit.

fr.16

Si nous voulons décrire le mouvement d'un point matériel, les valeurs de ses coordonnées doivent être exprimées en fonction du temps.

it.16

Se vogliamo descrivere il moto di un punto materiale, diamo i valori delle sue coordinate in funzione del tempo.

sp.16

Cuando queremos describir el movimiento de un punto material, especificamos los valores de sus coordenadas en función del tiempo.

ru.16

Желая описать движение какой-нибудь материальной точки, мы задаем значения ее координат как функций времени.

  • (超訳) Wanting to describe motion of some material point we set the sense of its coordinates as function of time.
sch.16

如果我们要描述一个质点的运动, 我们就以时间的函数来给出它的坐标值.

ja.16

もし質点の運動を記述したいと思うのなら, その座標の値を時間の関数として与える.

ドイツ語解説
英語解説
文構造

これはシンプルな構造をしています.

  • we give the values of its co-ordinates as functions of the time
    • If we wish to describe the motion of a material point,

単純に見れば主節の基本構造は第三文型SVOで次の通りです.

  • we give the values

詳しく見ていきましょう.

If we wish to describe the motion of a material point

主節の説明で困るので if 節からはじめます. 基本構造は we describe the motion で第三文型SVOです. 杓子定規に言えば動詞は wish ですが, これは助動詞で意味としては want to または will くらいに思えばいいでしょう. 主語はいわゆる論文の we で, 動詞 describe は「記述する」です.

目的語は the motion 「(特定の) 運動」で定冠詞 + 単数形の名詞です. 何の運動かは of が導く形容詞句で示していて, of a material point 「ある質点の」と指定されています. これは不定冠詞 + 単数で, 「何でもいいからとにかくひとつ質点を取って, その質点の運動を考えよう」という意図を表しています.

we give the values of its co-ordinates as functions of the time

先程見た通りメインは we give the values です. 先程と同じく主語は we で論文の we です. 動詞はただの現在形で三単現の s はありません. 目的語は the values で定冠詞 + 複数形の形になっています.

もちろん the values と言われてもわけがわからないので, of の形容詞句で補足説明されています. まず of its co-ordinates で複数形の co-ordinates はこれまでと同じく$x,y,z$で複数なのでしょう. Its については既に言及されている単数の名詞を指しているわけで ここでは if の条件節で言及した質点と思えばいいでしょう. 既に言及したひとつの質点に関わる値なので the で限定できます.

最後に as が導く句があります. 意味としては文全体を give A as B で「A を B として与える」と見ます. これは we think that A is B と思えますし, as には be 動詞のような等価接続の意味があるので, 第五文型 SVOC 「OC の意味を S が V の視点で変える」の視点で見ても構いません. つまり we give A as B は「私達は A を B とみなす」とも訳せ, give の具体的な意味は文型の型に託しても構いません.

これで 文全体の意味が確定したので最後に as B の B を詳しく見ましょう. これは functions of the time で, functions 「関数」は無冠詞の複数, the time 「時間」は定冠詞 + 単数です. Functions が複数なのは the values に対応していて, 無冠詞なのは何か特定の関数を想定しているわけではないからです. The time は変数として時空の 4 変数$x,y,z,t$のうちのひとつ$t$を指定しているから time が単数で, the は「皆様ご存知の時間変数です」という意味と思えばいいでしょう.

節終了

第032回 第16文の多言語比較・読解

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進捗・TODO・今日のメモ

内容: コンテンツ (案) からの転記

第16文

対象文
en.16

If we wish to describe the motion of a material point, we give the values of its co-ordinates as functions of the time.

  • $x(t), y(t), z(t)$
de.16
  • wollen = will: 意志・未来, ドイツ語では意志.
  • u = v = w
  • 女性名詞に対する定冠詞: die-der-der-die
  • 中性名詞に対する定冠詞: das-des-dem-das
  • der. Wert -> die Werte
  • 複数形に対する定冠詞: die-der-den-die

Wollen wir die Bewegung eines materiellen Punktes beschreiben, so geben wir die Werte seiner Koordinaten in Funktion der Zeit.

fr.16

Si nous voulons décrire le mouvement d'un point matériel, les valeurs de ses coordonnées doivent être exprimées en fonction du temps.

  • Si = if: cf. if and only if = si et seulement si
    • cf. seulement = solo
  • nous = we
  • le, la, les
  • voulons <- vouloir
  • d'un = de un
  • doivent <- devoir: ラテン語 dēbeō.
  • raison de être ドイツ語・英語とは違う系統. 基本的な語彙はその言語のオリジナルが残りやすい. 例: 疑問詞, 関係代名詞.
it.16

Se vogliamo descrivere il moto di un punto materiale, diamo i valori delle sue coordinate in funzione del tempo.

  • -amo: 一人称複数の現在形の活用語尾
  • funzione: マリア Maria 女性単数形, フランス語は語尾が e の名詞の多くは女性
sp.16

Cuando queremos describir el movimiento de un punto material, especificamos los valores de sus coordenadas en función del tiempo.

  • Cuando: (fr) quand = (en) when
  • especificamos = specify
ru.16

Желая описать движение какой-нибудь материальной точки, мы задаем значения ее координат как функций времени.

  • (超訳) Wanting to describe motion of some material point we set the sense of its coordinates as function of time.
sch.16

如果我们要描述一个质点的运动, 我们就以时间的函数来给出它的坐标值.

  • 一个の个: 助数詞. 日本語でも個・本・柱・丁・羽・頭などモノによって変わる. 言語ごとに区別したくなるモノが違う. いろいろな言語に触れることでいろいろな解像度・世界の見方が手に入る. この「言語」の中に数学・物理・プログラミングを盛り込みたい.
ja.16

もし質点の運動を記述したいと思うのなら, その座標の値を時間の関数として与える.

ドイツ語解説
英語解説
文構造

これはシンプルな構造をしています.

  • we give the values of its co-ordinates as functions of the time
    • If we wish to describe the motion of a material point,

単純に見れば主節の基本構造は第三文型SVOで次の通りです.

  • we give the values

詳しく見ていきましょう.

If we wish to describe the motion of a material point

主節の説明で困るので if 節からはじめます. 基本構造は we describe the motion で第三文型SVOです. 杓子定規に言えば動詞は wish ですが, これは助動詞で意味としては want to または will くらいに思えばいいでしょう. 主語はいわゆる論文の we で, 動詞 describe は「記述する」です.

目的語は the motion 「(特定の) 運動」で定冠詞 + 単数形の名詞です. 何の運動かは of が導く形容詞句で示していて, of a material point 「ある質点の」と指定されています. これは不定冠詞 + 単数で, 「何でもいいからとにかくひとつ質点を取って, その質点の運動を考えよう」という意図を表しています.

質点に対応する表現はいくつかあります. 例えばファインマン物理では a point mass と呼んでいます. 粒子 a particle と呼ぶこともあります. ついでにいうと素粒子 an elementary particle です.

we give the values of its co-ordinates as functions of the time

先程見た通りメインは we give the values です. 先程と同じく主語は we で論文の we です. 動詞はただの現在形で三単現の s はありません. 目的語は the values で定冠詞 + 複数形の形になっています.

もちろん the values と言われてもわけがわからないので, of の形容詞句で補足説明されています. まず of its co-ordinates で複数形の co-ordinates はこれまでと同じく$x,y,z$で複数なのでしょう. Its については既に言及されている単数の名詞を指しているわけで ここでは if の条件節で言及した質点と思えばいいでしょう. 既に言及したひとつの質点に関わる値なので its で限定できます.

最後に as が導く句があります. 意味としては文全体を give A as B で「A を B として与える」と見ます. これは we think that A is B と思えますし, as には be 動詞のような等価接続の意味があるので, 第五文型 SVOC 「OC の意味を S が V の視点で変える」の視点で見ても構いません. つまり we give A as B は「私達は A を B とみなす」とも訳せ, give の具体的な意味は文型の型に託しても構いません.

これで文全体の意味が確定したので最後に as B の B を詳しく見ましょう. これは functions of the time で, functions 「関数」は無冠詞の複数, the time 「時間」は定冠詞 + 単数です. Functions が複数なのは the values に対応していて, 無冠詞なのは何か特定の関数を想定しているわけではないからです. The time は変数として時空の 4 変数$x,y,z,t$のうちのひとつ$t$を指定しているから time が単数で, the は「皆様ご存知の時間変数です」という意味と思えばいいでしょう.

節終了

第033回 第17文の多言語比較

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  • 音は大丈夫?
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  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
  • 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.

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進捗・TODO・今日のメモ

  • 多言語比較でイタリア語まで.
  • 次回: スペイン語の比較から.

内容: コンテンツ (案) からの転記

第17文

対象文
en.17

Now we must bear carefully in mind that a mathematical description of this kind has no physical meaning unless we are quite clear as to what we understand by time.

de.17
  • hat <- haben
  • erst = first
  • dann = then
  • 男性の定冠詞: der-des-dem-den
  • wenn = when = if
  • geworden ist: 受身
  • klar = clear
  • was = what
  • hier = here
  • unter = under
  • Zeit = time
  • wird <- werden
  • comprehend <- com = (it) con = (en) with
  • über = over

Es ist nun wohl im Auge zu behalten, daß eine derartige mathematische Beschreibung erst dann einen physikalischen Sinn hat, wenn man sich vorher darüber klar geworden ist, was hier unter „Zeit" verstanden wird.

fr.17
  • garder = watch, see
  • en = in
  • tête = head
  • qu'une <- que une = that a
  • possède <- possess: cf サッカーでの「ボールのポゼッション」
  • seulement si = only if
    • seulement = solely <- solo
  • nous = we = (sp) nos
  • avons = avoir
  • qu'est <- que est, est = be 動詞の三人称単数現在形
    • je suis - tu es - il est - nous sommes - vous etes - ils sont
    • Je suis Charlie = ジュスイシャルリー
  • temps = time

Il faut toujours garder en tête qu'une telle définition mathématique possède un sens physique, seulement si nous avons au préalable une perception claire de ce qu'est le «temps».

it.17
  • deve = (fr) devoir = (en) must
  • tenere = (fr) tenir
    • (it) cantare = (fr) chanter: 聖歌 chant
  • che: ケ = that
  • ha: ア = (en) have
    • h はふつう読まない.
    • cf. l'Hopital ロピタル: H を読まない. le Hopital's theoreme -> l'Hospital
  • una descrizione matematica siffatta ha = such a mathematical description has
  • fisico = physical
  • quando = when = (fr) quand
  • chiaramente: 明るく、はっきりと <- chiamare = call
  • intende = (en) intension

Ora si deve tenere ben in mente che una descrizione matematica siffatta ha un significato fisico solo quando si sia detto chiaramente in precedenza che cosa si intende qui per "tempo".

ja.17

いま私達は次の点を注意深く考えなければならない: つまり時間という概念に対する理解が完全に明確になっていない限り, この種の数学的記述は物理的な意味を持たない.

節終了

第034回 第17文の多言語比較・読解

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  • 音は大丈夫?
    • 一度音声が入っていなくてひどい目に遭ったことを忘れないように.
  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
  • 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.

YouTube 公開用: これを読んでいる方への注意・言い訳

これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください. 勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します. 適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

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進捗・TODO・今日のメモ

  • スペイン語の比較から.

内容: コンテンツ (案) からの転記

メモ

イギリス英語の fibre

フランス語の単語本に書いてあったので備忘録を込めて. タイトルの fibre のように, 一般的にイギリス英語で -re, アメリカ英語で -er と書く単語があります. イギリス英語の -re はフランス語の記述をそのまま残している (ことがある) とのこと. これはフランス語由来の言葉で, さらに言えばラテン語由来の可能性があることも示唆しています. 単語遊びをする上で大事でしょう.

英語の関係代名詞 whom

目的格のときに who は whom にしてもいい. この whom の m は何か? ドイツ語の定冠詞で der-des-dem-den, das-des-dem-das と三格に m が出る.

I play {∅/a/the} guitar.

I'm Ringo, and I play the drums. I'm Paul, and I play the bass. I'm George, and I play a guitar. I'm John, and I too play guitar, sometimes I play the fool.

ここで、早速ですが樋口 (2009) で答え合わせをしましょう。ただし〔…〕は引用者注で、例文は省略しました。

3.1.5. 楽器名

play に続く楽器名もしばしば無冠詞で用いられます。 これは、このとき楽器名はジャズバンドなどにおけるパート、 つまり、「役割」を表すので、原理Ⅲ〔英語の名詞部は、 「働き」を表すときは a/an をとらず、 「個体」として認識されるときは a/an(あるいは他の限定詞)をとる〕により、 冠詞をとらないからです。 (以下の例文の多くで in a/the band(または類義語句)が共起しているのがその証拠です;"play the 楽器名" に関しては §8.6.2 参照。) 他方、楽器名が無冠詞で learn/study/teach などの目的語として用いられるときは「演奏法」(§2.4「技法」)を表します。 辞書では the がかっこに入っている例もありますが、 the がある場合とない場合とは同義ではありません。 the の有無は、典型的には、バンドでのパートを表すか否かによって決定されるからです。

イタリア語で「私の本」 il mio libro = the my book.

第17文

対象文
en.17

Now we must bear carefully in mind that a mathematical description of this kind has no physical meaning unless we are quite clear as to what we understand by time.

sp.17
  • cuando = (fr) quand = (en) when
  • solamente = seulement = (en) solo, only
  • esta = (en) this
  • de = (fr) de = (en) of
    • cf. 分離の of
    • 奪う: deprive

Será necesario tener en cuenta que una descripción matemática de esta índole tiene un sentido físico solamente cuando con anterioridad se ha aclarado lo que en este contexto se ha de entender bajo "tiempo".

ru.17

При этом следует иметь в виду, что подобное математическое описание имеет физический смысл только тогда, когда предварительно выяснено, что подразумевается здесь под «временем».

sch.17

现在我们必须记住, 这样的数学描述, 只有在我们十分清楚地懂得"时间"在这里指的是什么之后才有物理意义.

ja.17

いま私達は次の点を注意深く考えなければならない: つまり時間という概念に対する理解が完全に明確になっていない限り, この種の数学的記述は物理的な意味を持たない.

英語解説
文構造
  • Now we must bear carefully in mind
    • that a mathematical description of this kind has no physical meaning
    • unless we are quite clear as to what we understand by time.

基本的な構造は we bear (in mind) that であり, bear in mind 「心に留める, 考える」は we think that と思えばよく, あとは考えている内容を表す that 節が長く続くだけです.

Now we must bear carefully in mind

これは第三文型SVOと思えばいいでしょう. ここでは副詞 carefully を挿入だと思って無視して bear in mind を熟語動詞・動詞句とみなします. もちろん bear 本来の意味「持つ」を重視しつつ in mind で「心の中に持つ = 心に留める, 記憶する, 考える」とみなしても構いません.

これに対して must で強制した上, carefully で覚え方を注意させ, now で他のいつでもなくこのタイミングで, と詳しくしつこく強調しています. 内容を読めばまさに物理の本道をきちんとやりなさいというメッセージです.

that a mathematical description of this kind has no physical meaning

何を bear in mind しなければならないかを調べましょう. この that 節は第三文型SVOで基本構造は次の通りです.

  • a description has no meaning
  • ある記述は何の意味もない

これが unless まで含めた that 節の本質的な内容です. 文法的に見ると主語は不定冠詞 + 単数, 動詞は主語の単数を受けて三単現の形, 目的語は no + 名詞の単数形になっています.

TODO この a は any のような意味を持っている.

主語の a description 「あるひとつの記述」が何なのかと言えば, mathematical 「数学的な, 数学の」です. さらに of this kind 「この種の」という補足もついています. もちろん前文の内容「座標の値を時間の関数とみなす」を受けています.

目的語 no meaning は physical 「物理的な」という補足説明がついています. 翻訳の問題としては has no meaning と, 動詞は肯定形にして目的語を否定にして否定の意味を表現する英語の表現技法に注意してください. こう書くと英語としてもすっきり綺麗に表現できるので, 英作文上も重要な技術です.

物理の論文として重要なのは「数学的な記述」と「物理的な意味」の対比です. 主節でくどいほど「ここにポイントがある」と主張しているのです. 人類レベルの物理学者であるアインシュタインの言葉であることにも注意しましょう. 私達はよくこの自明な事実を忘れるのです.

unless we are quite clear as to what we understand by time

最後に that 節の思考内容の補足説明として条件の副詞節を追加しています. 全体としては unless が入っていて「こういう状態でない限り」という条件文で, その状態が何かと言えば第二文型SVCでごく単純には次のような構造です.

  • we are clear
  • 私達が邪魔ものがなく透き通った状態にある
  • 私達が明晰な理解に到達している

この内容を we are clear と表現できるのが英語です. もちろん後者の「明晰な理解」と書いたのは節全体の意味を判断した上で書いています. これに対して quite 「まったく, すっかり, 完全に」という副詞をつけて最上級の強調をしています.

「私達が邪魔ものがなく透き通った状態にある」を基点にして考えましょう. 「透き通った状態」というのは何に対する状態なのかが気になるので, as to で導かれています. 前置詞が導くので名詞または名詞句が来るはずで, それが what が導く名詞句です. その内容が what we understand by time 「時間という言葉によって私達が何を理解しているか」です. もっと強く言えば「時間という物理の概念を何を表したいのか」, そして「時間という概念を物理として真剣に考えているか?」という読者への問い掛けでもあります.

ドイツ語解説
節終了

第035回 第18文の多言語比較・読解 英独仏

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まず確認

  • 録画はじめた?
  • 音は大丈夫?
    • 一度音声が入っていなくてひどい目に遭ったことを忘れないように.
  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
  • 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.

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これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください. 勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します. 適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

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進捗・TODO・今日のメモ

  • 今回: フランス語まで
  • 次回: イタリア語から

内容: コンテンツ (案) からの転記

メモ

ventriloquist

意味は「腹話術師」で, Wiktionary によると ventriloquy +‎ -ist と分解できます. 前者の ventriloquy はラテン語 venter (stomach) + loqui (to speak) に由来します.

この分解の前者は医学用語か何かで他にも英語に痕跡があった気がしますが, すぐに思い出せないのでいいとして, ここで気になるのは後者です. これもやはり何かある気がしてふと思いついたのは dialogue などの -logue です. これも Wiktionary によると中英語 dialog, 古フランス語 dialoge (フランス語 dialogue), 後期ラテン語 dialogus, 古代ギリシャ語 διάλογος (diálogos, "conversation, discourse"), διά (diá, "through, inter") + λόγος (lógos, "speech, oration, discourse"), διαλέγομαι (dialégomai, "to converse"), διά (diá) + λέγειν (légein, "to speak") に由来します. 哲学でも出てくるギリシャ語のロゴスに由来する言葉のようで, 理性ある動物としての人間が持つ特性として言葉を話すといった意味の発展があるのでしょう. ラテン語の loqui (-> loquor) との関係までは調べきれなかったのですが, これが関係あるとするなら現代英語にも loqui は生きています.

第18文

対象文
en.18

We have to take into account that all our judgments in which time plays a part are always judgments of simultaneous events.

de.18

Wir haben zu berücksichtigen, daß alle unsere Urteile, in welchen die Zeit eine Rolle spielt, immer Urteile über gleichzeitige Ereignisse sind.

  • der-des-dem-den
  • über = (en) over
  • (en) simultaneous = (de) gleichzeitige
  • gleich = (en) like, alike
  • (de) Gleichung = equation
  • (de) zeitige = (en) time <- (en) tide 潮
  • be 動詞 = (de) sein, ich bin - du bist - er ist - wir sind - ihr seid (?) - sie sind
  • (fr) être: je suis - tu es - il/elle est - nous sommes - vous êtes - ils/elles sont
  • (fr) aller = go
  • go - went - gone
  • come - came - come
  • 言文一致: アラビア語は言文一致.
fr.18

Nous devons prendre en considération le fait que nos conceptions, où le temps joue un rôle, portent toujours sur des évènements simultanés.

  • (fr) devoir = (it) devere = (en) must = (de) mussen
  • prendre = (en) take
  • fait = (en) fact
  • où = (en) where
  • ou = (en) or
  • le temps = (en) tempo
  • joue <- jouer = play
  • portent = (?) porter = (en) port
  • toujours = always : TODO 何でs?
  • jour = (en) day
  • tou <- tout = (en) total = (en) all
  • sur = (en) over = surface
  • surrealisme = シュールレアリスム = 超現実主義
  • bon = good
  • nos conceptions portent toujours sur des évènements simultanés

第036回 第18文の多言語比較・読解

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まず確認

  • 録画はじめた?
  • 音は大丈夫?
    • 一度音声が入っていなくてひどい目に遭ったことを忘れないように.
  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
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進捗・TODO・今日のメモ

  • 18文全て終了

内容: コンテンツ (案) からの転記

メモ

scilang で小ネタを話す.

第18文

対象文
en.18

We have to take into account that all our judgments in which time plays a part are always judgments of simultaneous events.

it.18
  • dobbiamo: 一人称の複数 = debere = (fr) devoir
  • tener = (fr) tenir (prendre) = take = (lat) tenere
  • presente = (en) presentation
  • (it) che = (en) that = (fr) que = (lat) que/qui
  • tutte = (en) all, total
  • nostre = (en) our
  • my book - il mio libro
  • nelle quali = in which
  • (男性三人称単数) il = (en) it = (fr) il/elle = (lat) ille
    • ラテン語は冠詞ない, ille = this/that
    • il/le -> il: イタリア語の定冠詞の男性, le: フランス語の定冠詞の男性
  • tempo = テンポ, 「時間」系の意味
  • sono = be動詞 一人称複数 (?)
  • asserzioni = assertions
    • -i: 複数形の語尾
    • octopus - octopi
  • gioca <- (fr) jouer = (en) play

Dobbiamo tener presente che tutte le nostre asserzioni nelle quali il tempo gioca un ruolo sono sempre asserzioni su eventi simultanei.

sp.18

Debemos tener en cuenta que todas nuestras afirmaciones en las cuales el tiempo juega alg'un papel, siempre son afirmaciones sobre eventos simultáneos.

  • en = (en) in = (fr) in
  • el = (en) the
  • juega = gioca = (fr) jouer
  • (fr) je suis - nous sommes
  • (sp) papel = paper, 役割
    • part
  • (sp) sobre = (en) over = (lat) super = (greek) hyper
  • 佐藤の超関数 hyperfunction
    • 日本人 古代の日本語系に中華系みたいな感じ?
    • 閼伽棚 (仏教)
    • 閼伽棚の閼伽: サンスクリット語のargha(アルガ)の音写
    • (lat) aqua, 印欧祖語, (it) acqua
    • (en) water, (de) das Wasser
ru.18

Мы должны обратить внимание на то, что все наши суждения, в которых время играет какую-либо роль, всегда являются суждениями об одновременных событиях.

sch.18

我们应当考虑到: 凡是时间在里面起作用的我们的一切判断, 总是关于同时的事件的判断.

  • 应 = 応? (座?)
ja.18

私達は次の事情を考えなければならない. つまり時間が役割を担う考察は常に同時の事象に対する考察でなければならない.

英語解説
文構造
  • We have to take into account
    • that all our judgments are always judgments of simultaneous events
      • in which time plays a part

(SVA, コピュラ文, SVC) 主節は第三文型SVOで目的語 O が that 節です. That 節は judgments are judgments という形で, ふつう "judgments are ones" と書くでしょうから少し珍しい書き方です. これは in which 節が挿入されているので解釈の曖昧さを防ぐためにあえてこう書いたのでしょう. 主語の judgments を in which の関係代名詞が修飾し, 補語の judgments を of の句が修飾しています.

We have to take into account

これは take into account 「考慮に入れる」が動詞句または熟語, have to 「---しなければならない」が助動詞としてはたらいているだけです. 助動詞が助動詞句として 2 語, 動詞が動詞句として 3 語で動詞部分が 5 語もあります.

意味は「私達は---を考慮に入れなければならない」, もっと単純には「私達は---を考えなければならない」です. 何を考えなければいけないかは that 節の中身で示されています.

that all our judgments are always judgments of simultaneous events

冒頭の that は関係代名詞の that です. これは第二文型SVCで本体は judgments are judgments で, always 「常に」という副詞がついています. 主語・補語にどんな修飾語句がつくかが問題です.

補語は冠詞なしの複数形で of simultaneous events 「同時の事象について」がついています. ここでの events も冠詞なしの複数形で一般的な event について語っていること, 相対性理論特有の専門用語で「事象」と訳すことに注意してください.

主語については all our judgments で「私達の全ての判断」です. 冠詞なしの複数形で何かを限定しているわけではないにも関わらず all がついています. この all の範囲を制限しているのが次の in which が導く関係代名詞節です. 先に関係代名詞節まで含めた主語の訳を書いておくと「時間が役割を演じる私達の全ての判断」です.

in which time plays a part

ここは time plays a part in で in の後ろに来る名詞が先行詞の judgments です. 主語は冠詞なしで単数形の time であり, ここでは不可算で抽象的な意味での「時間」を指していると思えばいいでしょう. 動詞もきちんと三単現の s がついています.

動詞は plays a part in 全体で動詞句・熟語とみなすべきで, 「---という役割を果たす」という意味です. ここでは「時間が関わる」くらいで訳すといいでしょう.

ドイツ語解説
補足
物理としての注意

この文章を物理として理解する上でのポイントは, 「同時の事象」です. 相対性理論で有名な「速く動くと時間が遅れる」という話は, まさにこの同時性に関わる問題なのです.

第037回 第19文の多言語比較・読解

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進捗・TODO・今日のメモ

  • 次回: フランス語の脚注から

内容: コンテンツ (案) からの転記

対象文

en.19

If, for instance, I say, "That train arrives here at 7 o'clock," I mean something like this: "The pointing of the small hand of my watch to 7 and the arrival of the train are simultaneous events."

(footnote) We shall not here discuss the inexactitude which lurks in the concept of simultaneity of two events at approximately the same place, which can only be removed by an abstraction.

de.19
  • z. B. = zum Beispiele = for example
    • zum = zu + dem
  • Wenn = When = if
  • sage <- sagen = (en) say
    • 語尾 en
    • y と g: garden - yard
  • ankommt <- ankommen = come
  • um = around
  • Uhr = (en) hour = time
  • so = (en) so
  • 定型第二の法則: 主文では動詞が二番目
  • heißt <- heißen = mean = called
  • etwa = something
  • dies = this
  • kleine <- eine kleine Nacht musik
  • auf = up
  • und = and
  • gleichzeitige = gleich + zeitig(e)
    • gleich = like, alike; die Gleichung = the equation
  • ドイツ語の be 動詞:
    • ich bin - du bist - er ist - wir sind - ihr seid - sie sind
  • 中性名詞の定冠詞: das - des - dem - das
  • ß = ss
  • Begriff = concept
  • --heit = --keit = -tion
  • 女性名詞に対する定冠詞: die-der-der-die
  • zwei = two: スペルと音と両方見ないと同じだとわからない
  • durch = through
  • soll = sollen = (en) shall

Wenn ich z. B. sage: „Jener Zug kommt hier um 7 Uhr an", so heißt dies etwa: „Das Zeigen des kleinen Zeigers meiner Uhr auf 7 und das Ankommen des Zuges sind gleichzeitige Ereignisse."

(Fußnote) Die Ungenauigkeit, welche in dem Begriffe der Gleichzeitigkeit zweier Ereignisse an (annähernd) demselben Orte steckt und gleichfalls durch eine Abstraktion überbrückt werden muß, soll hier nicht erörtert werden.

fr.19
  • par = for
  • si = if
  • disons <- dire = say
    • dialogue, dictate
  • heure = die Uhr = (en) hour
  • cela = that, it
  • signifie = signify
  • petite = プチ = 小さい = kleine, small
  • et = and
  • du train = de + le train -> du train
  • a + le -> aux
  • sont = are (je suis-tu est-il est-nous sommes- vous etez-ils sont)

Par exemple, si nous disons «qu'un train arrive ici à 7 heures», cela signifie «que la petite aiguille de ma montre qui pointe exactement le 7 et que l'arrivée du train sont des évènements simultanés».

補足

内容の補足: 特に脚注

私は学生の頃に指導教員から「論文は注を読むのが一番難しい」と言われたことがあります. ここの脚注は物理に慣れている人ほど疑問に思わず「いちいちそこまで注意するのか」と思うでしょうし, 逆に物理に慣れていない人には何を言っているのかよくわからないかもしれません. 念のために補足しておきます.

まず近似的に同じ場所でのふたつの事象が何を指しているかというと, もちろん「時計の短針が7を指すこと」と「電車の到着」です. 自明な話として時計, もっと言えば時計の短針と電車の場所は同じではありません. 電車にしても電車のどの位置を取るかという問題がありますし, もっと言えば時計の短針を読んだ人間の目の位置とのずれなどもあります. 人間が時間を確認するには時計から出てくる光を目で捉え, その情報が神経回路を伝わって解釈するだけの時間のずれがあり, 厳密に同時刻ではないからです.

もちろん「適当に決めればいい」のですが, この「適当」のところに曖昧さが残っています. 例えば時計も電車も質点で近似した上で, 思考実験的に人間が時計を読む処理は省略すればいいでしょう. こうした説明をいちいち書くのは明らかに面倒ですし物理学者なら誰でもできます. だから本文ではsomething like thisで気分だけ説明して, あとは各自で適当に埋めておいて, と濁しているわけです.

実は次の文以降でこの事情にさらに深く切り込んでいます. 脚注まで含め無意味に書いているわけではないのです.

第038回 第19文の多言語比較・読解

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  • 今回: フランス語の脚注から, 全体比較まで終了
  • 次回: 英文読解

内容: コンテンツ (案) からの転記

対象文

en.19

If, for instance, I say, "That train arrives here at 7 o'clock," I mean something like this: "The pointing of the small hand of my watch to 7 and the arrival of the train are simultaneous events."

(footnote) We shall not here discuss the inexactitude which lurks in the concept of simultaneity of two events at approximately the same place, which can only be removed by an abstraction.

fr.19
  • évènements = ex + venir
    • venir = come
  • presque = almost
  • même = each
  • endroit = in law (= 物理法則)
  • et = and
  • doit <- devoir = must
  • également = equality
  • être = be動詞 (原形)
  • résolue = resolution
  • ici = here
  • n'est pas = not is
    • ne --- pas
    • pas = foot

(NdT) L'inexactitude, inhérente au concept de simultanéité de deux évènements (presque) au même endroit, et qui doit également être résolue par une abstraction, n'est pas discutée ici.

it.19
  • quando = (fr) quand = (en) when = (sp) cuando
  • per = (en) for
  • esempio = example
  • dico = (fr) disons = (fr) dire
  • ore = 時間 = (de) die Uhr = (fr) heure
  • significa = (en) signify
  • del mio orologio = of my watch
    • del = di + il
      • il, i, lo, gli, la, le
    • orologio = watch = (fr) montre
    • mio
    • the my book = il mio libro
  • piccola = 小さい, petite
  • considererà = (en) consider
  • imprecisione = imprecise
  • che = (fr) que
  • concetto = concept
  • approssimativamente = (fr) presque = almost

Quando per esempio dico: "Quel treno arriva qui alle ore 7," ciò significa: "Il porsi della lancetta piccola del mio orologio sulle 7 e l'arrivo del treno sono eventi simultanei".

footnote: Non si considererà qui l'imprecisione che si introduce nel concetto di simultaneità di due eventi (approssimativamente) nello stesso posto e che viene superata con l'astrazione.

sp.19
  • Por ejemplo = (fr) par exemple = (it) per esempio
  • digo = dico = dison
  • llega = llegar
  • (fr) je suis - tu es - il est
  • como = (fr) コムデギャルソン
  • El momento = 時間
  • pequeña =(?) piccola, petite
  • reloj = (it) orologio = (fr) heure = (de) Uhr
  • y = and
  • discutirá = discuss (未来形)

Por ejemplo, cuando digo "Ese tren llega aquí a las 7," esto significa algo así como: "El momento en que la manecilla pequeña de mi reloj marca las 7 y la llegada del tren son eventos simultáneos."(1)

(nota1) Aquí no se discutirá la imprecisión que se encuentra implícita en el concepto de simultaneidad de dos eventos en (aproximadamente) el mismo lugar y que de igual manera se debe conciliar mediante una abstracción.

ru.19

Если я, например, говорю: «Этот поезд прибывает сюда в 7 часов», ------то это означает примерно следующее: «Указание маленькой стрелки моих часов на 7 часов и прибытие поезда суть одновременные события».(сноска1)}

(сноска1) Здесь не будет обсуждаться неточность, содержащаяся в понятии одновременности двух событий, происходящих (приблизительно) в одной и том же месте, которая должна быть преодолена также с помощью некоторой абстракции.

sch.19

比如我说, 那列火车7点钟到达这里'', 这大概是说:我的表的短针指到7同火车的到达是同时的事件.''}

ja.19

もし, 例えば私が「あの電車が7時にここに到着する」と言うとき, 私は次のような内容を主張している: 「時計の短針が7を指し示すことと電車の到着は同時の事象である.」

(脚注) 近似的に同じ場所でのふたつの事象の同時性の概念に潜む不正確さがあり, これは抽象化によってだけ取り除ける可能性があるが, ここで私達はこの不正確さに関しては議論しない.

英語解説

文構造
  • I mean something like this:
    • A are simultaneous events
      • A = The pointing of the small hand of my watch to 7 and the arrival of the train
    • If I say "That train arrives here at 7 o'clock"
      • for instance
  • (脚注) We shall not here discuss the inexactitude
    • which lurks in the concept of simultaneity of two events at approximately the same place
      • , which can only be removed by an abstraction.

脚注込みで考えましょう. クオーテーションがあり, 文全体としてはここまでなかったタイプの面倒さがあります. しかし主節は次のようにごく単純な第3文型SVOです.

  • I mean something

これに対してsomethingがlike thisと補足され, その内容がコロンのあとにクオートつきで言及され, さらに脚注で補足されています. ついでにifの条件節もあります. この全体像を念頭に置きながら詳しく見ていきましょう.

I mean something like this:

主節です. 先程書いたように単純な第3文型SVOです. I mean somethingと目的語をぼかした言い方をしていてよくわからないので, like thisとコロン以下の文でさらに詳しく言及しています.

むしろ書きたいことを正確に書くのが難しい, または書けても理解してもらうのが難しいと思った場合, 論文でさえ曖昧さの残る例示文で説明することがあると言った方が適切かもしれません. 実際この曖昧さに関しては脚注でコメントがあります.

The pointing of the small hand of my watch to 7 and the arrival of the train are simultaneous events

物理としてどう捉えるべきかを説明した文でlike thisが指し示す内容です. 英語としては難しくないものの主語が長くて読みにくいため, まずはそれをうまく読み飛ばして次のように大きな構造を見抜くことからはじめましょう.

  • A and B are simultaneous events
  • A = The pointing of the small hand of my watch to 7
  • B = the arrival of the train

「AとBは同時の事象である」という文です. ここでsimultaneousとeventsは両方とも相対性理論で重要な専門用語です. まずsimultaneous「同時性」はよくある相対性理論での不思議な現象を生み出す原因で, 従来の力学とは違う概念です. 後者のeventは「事象」と訳し, これも専門用語として理解する必要があります. 主語がA and Bなのでeventsと複数形です.

次に主語を眺めましょう. 出てくる名詞全てに定冠詞theがついていることに注目してください. もちろんwatchについているのはmyで厳密にはtheではありませんが, 「私の」と強い限定がかかっているので事実上の定冠詞です. クォートがかかっていて誰かの発言のような形をしていて, 会話をしている目の前の人が話しているイメージなのでしょう. どこかの何かではなく「いままさにここにあるモノ」を指している状況を再現しています. 定冠詞はこの会話の情景描写を生き生きと描く目的で使われていると言ってもいいでしょう.

  • A = The pointing of the small hand of my watch to 7

これは「私の時計の小針(small hand)が7を指すこと(pointing)」です. 「7を指すこと」をthe pointing to 7でtoを使っているコロケーションに注意してください. 上のような形で日本語に訳すと消えてしまうtheの「まさにこれ」というニュアンスを忘れてはいけません.

  • B = the arrival of the train

これももちろん「電車の到着」です. こちらもやはりtheによるニュアンスをきちんと取るのが大事です.

If, for instance, I say "That train arrives here at 7 o'clock"

ここでのfor instance「例えば」は副詞句の挿入で, 意味としては最後に添えればいいでしょう.

基本構造はもちろんI say somethingでsomethingがクォートで括られた短文です. 本体と同じくsomething like thisの構造です.

この短文を眺めてみると, 単純な第1文型SVで主な構造はThat train arrivesです. ここのthatは関係代名詞などではなく単に「あの」という指示形容詞で, 主語は単数trainなので動詞もarrivesで三単現のsがついています. 動詞arrivesは「到着する」という意味で「いつ・どこに到着したのか」が気になるわけで, それをhereとat 7 o'clockで指示しています.

もちろんこのクォートされた文は単なる例で日常的な言い方です. 物理としてどう捉えるべきかが大事でそれが主節の内容です.

(脚注) We shall not here discuss the inexactitude

既にコメントしたように本来は厳密に言うべき部分をsomething like thisと言って曖昧にしていて, その釈明が脚注の内容です.

TODO このshallとwillの気分の違いをきちんと調べる.

メインの構造は単純な第三文型SVOで, 間にshall not hereが入っているだけです.

  • We (do not) discuss the inexactitude

目的語はthe inexactitudeと定冠詞がついています. 指している対象は明確である一方, どう釈明するかが気になります. 関係代名詞で補足説明しているので追いかけましょう.

which lurks in the concept of simultaneity of two events at approximately the same place

文としては長いものの, 先行詞the inexactitudeが主語で動詞がlurksの第一文型SVです. とにかく存在しているわけで, その存在の様子がlurksです. 念のためlurksの意味を調べると「潜む」です. もう少し言えばlurks in the conceptで「不正確性がある概念の中にいる」という意味なので, 自力で「潜む」を思い付くこともできるでしょう. 何にせよどこに不正確さが潜んでいるのかが問題で, それはin以下に示されているはずです. 詳しく見てみましょう.

前から順に「それは何?」と突っ込みながら読んでいく形で意味が取れます. まずthe concept「概念」があり定冠詞つきではあるものの何なのかよくわかりません. それがof simultaneityが補足され「同時性」であることがわかります. 無冠詞なのは特に強い限定がかからない不可算名詞だからです. 同じというには比較対象が必要で, それがtwo events「ふたつの事象」と指定されています. 無冠詞なしの複数系なので何でもいいからとにかくふたつの事象です. 最後にat approximately the same place「近似的に同じ位置」と補足されます. ここのplaceにはthe sameの形で定冠詞がついていることに注意してください.

ここでは会話調で内容を指示したことによる曖昧さの影響が出ています. 「数学的」には単にat a placeと書いていいのでしょう. しかしこう書くと厳密に同じ位置のふたつの事象の意味になってしまいます. 近似的にしか同じと言えず, 同じという部分でsameを使い, コロケーションとしてthe sameとしたためにapproximatelyとthe sameが並立する不思議な形になっています.

, which can only be removed by an abstraction.

ここで ", which" がどこにかかっているかがわかりにくいかもしれません. 何も考えないと直前のplaceにかかっていると思ってしまうからです. 動詞の三単元などの情報が使えると名詞の単複などで決められることはあるものの, ここではcanと助動詞が出てきてしまってうまく判定に使えません. 結論から言えば, これは意味から考えてinexactitudeにかかっていると思えばいいでしょう. 関係代名詞の非制限用法はいったん流れを切ってand it can only be ...などと書いていると思えばよく, こう考えれば単純な先行詞探しゲームからは抜けやすくなります.

先行詞がわかったので構文と意味を考えましょう. 構文は基本的に単純な受身です.

  • and it (= , which) is removed by an abstraction

これにcan onlyを入れてisを原形に変えればもとの文が得られます. ここでabstractionは不定冠詞つきで可算名詞として処理していることに注意しましょう. 「細かいことまで考えればいろいろ処理の方法はあるかもしれないが, とにかく何かしらの抽象化法をひとつ取る」という意味で不定冠詞が使われています.

単語

"The pointing of the small hand of my watch" は言われてみればすぐわかるものの, 慣れていないときちんと訳しづらい名詞句でしょう. ここで the small hand は時計の短針のことで, The pointing は時計の短針が指す先のことです.

  • if: もし
  • for instance: 例えば (for example)
  • say: 言う
  • train: 電車
  • arrive: 到着する
  • here: ここ
  • 7 o'clock: 7 時
  • mean: 意味する
  • something: 何か
  • like this: このような
  • pointing: 指し示す先
  • small hand: 短針
  • watch: 時計
  • arrival: 到着
  • simultaneous: 同時の
  • event: 事象 (物理の専門用語)
  • shall: 未来形 (意志を表す, will)
  • discuss: 議論する
  • inexactitude: 不正確
  • lurk: 潜む
  • concept: 概念
  • simultaneity: 同時性
  • approximately: 近似的に
  • same: 同じ
  • place: 場所
  • can: できる, しうる
  • only: だけ
  • remove: 取り除く
  • abstraction: 抽象, 抽象化

ドイツ語解説

第039回 第19文の読解

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まず確認

  • 録画はじめた?
  • 音は大丈夫?
    • 一度音声が入っていなくてひどい目に遭ったことを忘れないように.
  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
  • 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.

YouTube 公開用: これを読んでいる方への注意・言い訳

これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください. 勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します. 適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

講義動画と関連リンク

この記事・動画に特化したリンク先は次の通りです。

以下いつもの関連コンテンツ群です。

(YouTube 動画の説明欄にいつも張るリンク集)

進捗・TODO・今日のメモ

  • メモ: can only be called a miracle〔主語の事柄は〕奇跡としか言いようがない)

内容: コンテンツ (案) からの転記

対象文

en.19

If, for instance, I say, "That train arrives here at 7 o'clock," I mean something like this: "The pointing of the small hand of my watch to 7 and the arrival of the train are simultaneous events."

(footnote) We shall not here discuss the inexactitude which lurks in the concept of simultaneity of two events at approximately the same place, which can only be removed by an abstraction.

ja.19

もし, 例えば私が「あの電車が7時にここに到着する」と言うとき, 私は次のような内容を主張している: 「時計の短針が7を指し示すことと電車の到着は同時の事象である.」

(脚注) 近似的に同じ場所でのふたつの事象の同時性の概念に潜む不正確さがあり, これは抽象化によって取り除くしかないが, ここで私達はこの不正確さに関しては議論しない.

TODO 訳を修正.

英語解説

文構造
  • I mean something like this:
    • "A" are simultaneous events
      • "A" = The pointing of the small hand of my watch to 7 and the arrival of the train
    • If I say "That train arrives here at 7 o'clock"
      • for instance
  • (脚注) We shall not here discuss the inexactitude
    • which lurks in the concept of simultaneity of two events at approximately the same place
      • , which can only be removed by an abstraction.

脚注込みで考えましょう. クオーテーションがあり, 文全体としてはここまでなかったタイプの面倒さがあります. しかし主節は次のようにごく単純な第3文型SVOです.

  • I mean something

これに対してsomethingがlike thisと補足され, その内容がコロンのあとにクオートつきで言及され, さらに脚注で補足されています. ついでにifの条件節もあります. この全体像を念頭に置きながら詳しく見ていきましょう.

I mean something like this:

主節です. 先程書いたように単純な第3文型SVOです. I mean somethingと目的語をぼかした言い方をしていてよくわからないので, like thisとコロン以下の文でさらに詳しく言及しています.

むしろ書きたいことを正確に書くのが難しい, または書けても理解してもらうのが難しいと思った場合, 論文でさえ曖昧さの残る例示文で説明することがあると言った方が適切かもしれません. 実際この曖昧さに関しては脚注でコメントがあります.

The pointing of the small hand of my watch to 7 and the arrival of the train are simultaneous events

物理としてどう捉えるべきかを説明した文でlike thisが指し示す内容です. 英語としては難しくないものの主語が長くて読みにくいため, まずはそれをうまく読み飛ばして次のように大きな構造を見抜くことからはじめましょう.

  • "A" and "B" are simultaneous events
  • "A" = The pointing of the small hand of my watch to 7
  • "B" = the arrival of the train

「AとBは同時の事象である」という文です. ここでsimultaneousとeventsは両方とも相対性理論で重要な専門用語です. まずsimultaneous「同時性」はよくある相対性理論での不思議な現象を生み出す原因で, 従来のニュートン力学とは違う概念です. 後者のeventは「事象」と訳し, これも専門用語として理解する必要があります. 主語がA and Bなのでeventsと複数形です.

次に主語を眺めましょう. 出てくる名詞全てに定冠詞theがついていることに注目してください. もちろんwatchについているのはmyで厳密にはtheではありませんが, 「私の」と強い限定がかかっているので事実上の定冠詞です. クォートがかかっていて誰かの発言のような形をしていて, 会話をしている目の前の人が話しているイメージなのでしょう. どこかの何かではなく「いままさにここにあるモノ」を指している状況を再現しています. 定冠詞はこの会話の情景描写を活き活きと描く目的で使われていると言ってもいいでしょう.

  • A = The pointing of the small hand of my watch to 7

これは「私の時計の小針(small hand)が7を指すこと(pointing)」です. 「7を指すこと」をthe pointing to 7でtoを使っているコロケーションに注意してください. 上のような形で日本語に訳すと消えてしまうtheの「まさにこれ」というニュアンスを忘れてはいけません.

  • B = the arrival of the train

これももちろん「電車の到着」です. こちらもやはりtheによるニュアンスをきちんと取るのが大事です.

If, for instance, I say "That train arrives here at 7 o'clock"

ここでのfor instance「例えば」は副詞句の挿入で, 意味としては最後に添えればいいでしょう.

基本構造はもちろんI say somethingでsomethingがクォートで括られた短文です. 本体と同じくsomething like thisの構造です.

この短文を眺めてみると, 単純な第1文型SVで主な構造はThat train arrivesです. ここのthatは関係代名詞などではなく単に「あの」という指示形容詞で, 主語は単数trainなので動詞もarrivesで三単現のsがついています. 動詞arrivesは「到着する」という意味で「いつ・どこに到着したのか」が気になるわけで, それをhereとat 7 o'clockで指示しています.

物理として事象は時空点を指すので「いつ・どこ」をきちんと指定するのが重要です. さらっと書いてありますが実は非常に重要な副詞・副詞句です.

もちろんこのクォートされた文は単なる例で日常的な言い方です. 物理としてどう捉えるべきかが大事でそれが主節の内容です.

(脚注) We shall not here discuss the inexactitude

既にコメントしたように本来は厳密に言うべき部分をsomething like thisと言って曖昧にしていて, その釈明が脚注の内容です.

TODO このshallとwillの気分の違いをきちんと調べる. 固さ (文語調) なのが shall?

メインの構造は単純な第三文型SVOで, 間にshall not hereが入っているだけです.

  • We (do not) discuss the inexactitude

目的語はthe inexactitudeと定冠詞がついています. 指している対象は明確である一方, どう釈明するかが気になります. 関係代名詞で補足説明しているので追いかけましょう.

which lurks in the concept of simultaneity of two events at approximately the same place

文としては長いものの, 先行詞the inexactitudeが主語で動詞がlurksの第一文型SVです. とにかく存在しているわけで, その存在の様子がlurksです. 念のためlurksの意味を調べると「潜む」です. もう少し言えばlurks in the conceptで「不正確性がある概念の中にいる」という意味なので, 自力で「潜む」を思い付くこともできるでしょう. 何にせよどこに不正確さが潜んでいるのかが問題で, それはin以下に示されているはずです. 詳しく見てみましょう.

前から順に「それは何?」と突っ込みながら読んでいく形で意味が取れます. まずthe concept「概念」があり定冠詞つきではあるものの何なのかよくわかりません. それがof simultaneityが補足され「同時性」であることがわかります. 無冠詞なのは特に強い限定がかからない不可算名詞だからです. 同じというには比較対象が必要で, それがtwo events「ふたつの事象」と指定されています. 無冠詞の複数系なので何でもいいからとにかくふたつの事象です. 最後にat approximately the same place「近似的に同じ位置」と補足されます. ここのplaceにはthe sameの形で定冠詞がついていることに注意してください.

ここでは会話調で内容を指示したことによる曖昧さの影響が出ています. 「数学的」には単にat a placeと書いていいのでしょう. しかしこう書くと厳密に同じ位置のふたつの事象の意味になってしまいます. 近似的にしか同じと言えず, 同じという部分でsameを使い, コロケーションとしてthe sameとしたためにapproximatelyとthe sameが並立する不思議な形になっています.

, which can only be removed by an abstraction.

ここで ", which" がどこにかかっているかがわかりにくいかもしれません. 何も考えないと直前のplaceにかかっていると思ってしまうからです. 動詞の三単元などの情報が使えると名詞の単複などで決められることはあるものの, ここではcanと助動詞が出てきてしまってうまく判定に使えません. 結論から言えば, これは意味から考えてinexactitudeにかかっていると思えばいいでしょう. 関係代名詞の非制限用法はいったん流れを切ってand it can only be ...などと書いていると思えばよく, こう考えれば単純な先行詞探しゲームからは抜けやすくなります.

TODO can only が難しい.

先行詞がわかったので構文と意味を考えましょう. 構文は基本的に単純な受身です.

  • and it (= , which) is removed by an abstraction

これにcan onlyを入れてisを原形に変えればもとの文が得られます. ここでabstractionは不定冠詞つきで可算名詞として処理していることに注意しましょう. 「細かいことまで考えればいろいろ処理の方法はあるかもしれないが, とにかく何かしらの抽象化法をひとつ取る」という意味で不定冠詞が使われています.

TODO only のかかり方をきちんと書く. can only be でのまとまった意味もある模様.

単語

"The pointing of the small hand of my watch" は言われてみればすぐわかるものの, 慣れていないときちんと訳しづらい名詞句でしょう. ここで the small hand は時計の短針のことで, The pointing は時計の短針が指す先のことです.

  • if: もし
  • for instance: 例えば (for example)
  • say: 言う
  • train: 電車
  • arrive: 到着する
  • here: ここ
  • 7 o'clock: 7 時
  • mean: 意味する
  • something: 何か
  • like this: このような
  • pointing: 指し示す先
  • small hand: 短針
  • watch: 時計
  • arrival: 到着
  • simultaneous: 同時の
  • event: 事象 (物理の専門用語)
  • shall: 未来形 (意志を表す, will)
  • discuss: 議論する
  • inexactitude: 不正確
  • lurk: 潜む
  • concept: 概念
  • simultaneity: 同時性
  • approximately: 近似的に
  • same: 同じ
  • place: 場所
  • can: できる, しうる
  • only: だけ
  • remove: 取り除く
  • abstraction: 抽象, 抽象化

ドイツ語解説

第040回 第20文の多言語比較

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(face-remap-add-relative 'default :family "Migu 1M")
(face-remap-add-relative 'default :family "newspaper")
(face-remap-add-relative 'default :family "Noto Sans")

まず確認

  • 録画はじめた?
  • 音は大丈夫?
    • 一度音声が入っていなくてひどい目に遭ったことを忘れないように.
  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
  • 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.

YouTube 公開用: これを読んでいる方への注意・言い訳

これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください. 勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します. 適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

講義動画と関連リンク

この記事・動画に特化したリンク先は次の通りです。

以下いつもの関連コンテンツ群です。

進捗・TODO・今日のメモ

  • http://www.eigo-akahige.com/archives/1850514.html
    • seem と see
  • ドイツ語 komplett https://en.wiktionary.org/wiki/komplett#German
  • イタリア語まで完了
  • 次回: スペイン語から

内容: コンテンツ (案) からの転記

対象文

en.20

It might appear possible to overcome all the difficulties attending the definition of "time" by substituting "the position of the small hand of my watch" for "time".

de.20
  • es = (en) it
  • könnte <- können = (en) can = may, might
  • scheinen = (en) shine
  • daß = dass = (en) that
  • alle = (en) all
  • die Definition (女性名詞)
  • die Zeit
    • 女性定冠詞 die-der-der-die
  • betreffenden <- (en) to concern, to affect
  • Schwierigkeiten = (en) difficulties
    • -en: 複数形の語尾
    • 複数形の定冠詞: die-der-den-die
  • dadurch: through it
  • überwunden werden könnten = can be overcome
  • setze <- setzen = (en) set
    • lieben <- ich liebe
  • Stelle = (en) position
  • die „Stellung des kleinen Zeigers meiner Uhr"
    • the position of the small hand of my watch
    • Uhr = hour = watch
  • überwinden O1 O2
    • overcome O1 O2 -> S be overcome O1
    • we can overcome

Es könnte scheinen, daß alle die Definition der „Zeit" betreffenden Schwierigkeiten dadurch überwunden werden könnten, daß ich an Stelle der „Zeit" die „Stellung des kleinen Zeigers meiner Uhr" setze.

fr.20
  • il = (en) it
  • peut <- pouvoir = can = possible
  • sembler = (en) seem
  • que = that (関係代名詞)
  • toutes = total
  • provenant = prove, ジェロンディフ (?)
  • du temps = of "times"
    • « = guillemet
  • peuvent = pouvoir
  • être = be
  • supprimées = (?)
  • quand = when = (de) wenn
  • au «temps» = a + les + temps
  • nous = we = (de) wir
  • supprimées = deleted
    • supprimer = to suppress

Il peut sembler que toutes les difficultés provenant de la définition du «temps» peuvent être supprimées quand, au «temps», nous substituons «la position de la petite aiguille de ma montre».

it.20
  • イタリア語は主語が文法的に省略可能. 動詞の活用は性数で全て違うから. 音も違う. フランス語はスペルが違くても発音が同じ.
  • Potrebbe: 三人称?
    • = peut <- pouvoir
    • <- potere
  • sembrare = sembler = seem
    • seem = see?
  • che = que
  • tutte = toutes = total
  • le difficoltà = the difficulties
  • riguardano = regard
  • (fr) si = (en) if
  • superare = super
  • posto = (en) post = position
  • tempo = temps = テンポ
  • espressione = expression
  • piccola <- 楽器でピッコロ
  • mio orologio = my watch
  • sostituissi = substitute
    • first/second-person singular imperfect subjunctive of sostituire
    • From Latin substituo.

Potrebbe sembrare che tutte le difficoltà che riguardano la definizione del "tempo" si potrebbero superare se sostituissi al posto di "tempo" l'espressione "posizione della lancetta piccola del mio orologio".

sp.20

Podría parecer que todas las dificultades relacionadas con la definición del "tiempo" se superarían si en lugar de "tiempo" utilizara "la posición de la manecilla peque˜na de mi reloj."

ru.20

Может показаться, что все трудности, касающиеся определения «времени», могут быть преодолены тем, что вместо слова «время» я напишу «положение маленькой стрелки моих часов\guillemotleft.

sch.20

也许有人认为, 用我的表的短针的位置''来代替时间'', 也许就有可能克服由于定义``时间''而带来的一切困难.

ja.20

「時間」を「私の時計の短針の位置」に置き換えることで, 「時間」の定義に伴う全ての困難を克服できるように思えるかもしれない.

英語

文構造
  • It might appear possible to overcome all the difficulties
    • attending the definition of "time"
    • by substituting "the position of the small hand of my watch" for "time".

このitは仮主語でto overcome ---が真の主語です. どんなdifficultiesかがわからないので, attending --- timeで補足説明されています. さらに副詞節by substituting ---が文全体を修飾しています.

It might appear possible to overcome all the difficulties

文型は第二文型SVCです.

  • It appears possible.

Itが何かがto不定詞句で指示してあります. 真の主語であるto不定詞句はto overcome all the difficultiesで, 定冠詞がついています. 時間に関わる問題を議論していたので, それら全ての問題という限定です.

意味として難しいことはないものの, 動詞部分が非常に特徴的です. 単にpossibleというだけでも可能性の示唆で意味が弱いのに, appearで弱めた上にmightまで被せて意味を弱めに弱めています. ドイツ語原文を見ると接続法第2式を使っていて, それを反映させているのでしょう.

アカデミックライティングでは段落冒頭にはふつうその段落のトピックを書きます. 典型的な譲歩系の構文であることとも合わせると, そんな単純な話ではないと話が続くはずです.

attending the definition of "time"

現在分詞の形でall the difficultiesをもっと強く限定する形容詞句です.

ふつうattendは「出席する」という意味で覚えているでしょう. しかしここでは「伴う」という意味で取った方が適切です. これは辞書にも載っている意味です.

目的語はthe definitionと定冠詞がついています. ここではof timeまでセットで限定しているとみなすのが適切です.

by substituting "the position of the small hand of my watch" for "time"

メインメッセージは「---ができる」なので, それを実現する手段を表現しています. このsubstitutingが導く句を理解するにはいつもの五文型の知識が使えます. ここではクォートで括られているため構造が明確で, substitute A for B「AをBの代わりに使う」です. 熟語として覚えてもいい一方, SV A for B, 特にA for Bをforのコアミーニングに合わせて「AとBを交換する」と一般的に捉えることもできます.

構造が見えたのでAとBを詳しく見てみましょう. まずAのthe position of the small hand of my watchは各名詞に定冠詞がついています. ここでもmyは定冠詞相当のはたらきをしているので広義定冠詞として処理しています. 一方Bのtimeは無冠詞単数なので抽象的な概念としての時間を表しています. つまり英文の構造からは「抽象概念を具体物(時計の針の位置)で置き換える」形になっています. 日本語では曖昧になりがちな具体的な時刻・時間と, 抽象概念としての時間が, 冠詞と可算・非可算という名詞に対する概念ですっきり明確に表現しています.

補足

主語が人ではない理由

ここでは主語を人にせずぼかしています. 人にすると誰がそう思っているか書くのが難しいからでしょう. これは論文なので論文の"we"を使う手もあったかもしれませんが, それを避けてあるのです. そもそも論文の"we"は原則として実験事実のような誰もがそう思うことに対して使うので, 「そう思うかもしれない」のところには使いづらいのだと思います. ふつうの文章なら"you"でいいかもしれませんが, 論文で"you"は使いづらい事情もあるのでしょう.

attendの意味

ここでのattendは「出席する」ではなく「伴う」と紹介しました. 解説でも書いたように「伴う」は辞書にも載っている意味です.

実は私も最初はこの意味を知らず, 出席ではおかしいと思って「関わる」と訳出したのですが, 改めて辞書を調べたらここではぴったりの「伴う」があったので, これに変えました. 知っている単語だからと言ってその意味を無理にあてはめてもうまく行かないことがあります. そういう場合は一呼吸置いてきちんと辞書を調べてみましょう. 特に意外な意味に出会った場合は英英辞典を見たり語源を調べて, 何故その意味を持つにいたったか考えてみると言語に対する直観が磨けます.

substitute A for Bの意味

これについて念のため書いておきましょう. 一般的に「AとBを交換する」だとAとBが等価なように感じるかもしれません. しかし純粋に構造だけで見ると, まずsubstiture Aで意味が完結していて補足としてfor Bがあります. つまり「Aを使う」ことが前提で「Bの代わりに」が補足情報として添えられているため, 「AをBの代わりに使う」というAが前に出てくる訳語が選ばれています.

第041回 第20文の多言語比較・読解

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まず確認

  • 録画はじめた?
  • 音は大丈夫?
    • 一度音声が入っていなくてひどい目に遭ったことを忘れないように.
  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
  • 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.

YouTube 公開用: これを読んでいる方への注意・言い訳

これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください. 勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します. 適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

講義動画と関連リンク

この記事・動画に特化したリンク先は次の通りです。

以下いつもの関連コンテンツ群です。

進捗・TODO・今日のメモ

  • 今回: ドイツ語の復習・スペイン語から
  • 次回: 第21文

内容: コンテンツ (案) からの転記

対象文

en.20

It might appear possible to overcome all the difficulties attending the definition of "time" by substituting "the position of the small hand of my watch" for "time".

de.20
  • es = (en) it
  • könnte <- können = (en) can = may, might
  • scheinen = (en) shine
  • daß = dass = (en) that
  • alle = (en) all
  • die Definition (女性名詞)
  • die Zeit
    • 女性定冠詞 die-der-der-die
  • betreffenden <- (en) to concern, to affect
  • Schwierigkeiten = (en) difficulties
    • -en: 複数形の語尾
    • 複数形の定冠詞: die-der-den-die
  • dadurch: through it
  • überwunden werden könnten = can be overcome
  • setze <- setzen = (en) set
    • lieben <- ich liebe
  • Stelle = (en) position
  • die „Stellung des kleinen Zeigers meiner Uhr"
    • the position of the small hand of my watch
    • Uhr = hour = watch
  • überwinden O1 O2
    • overcome O1 O2 -> S be overcome O1
    • we can overcome
  • ドイツ語は動詞に関しては動詞句という固まりでいろいろなことを判定するとわかりやすい.
    • 動詞句 die Definition der „Zeit" betreffen
    • 主語が何? 主文か副文か?
    • ich + die Definition der „Zeit" betreffen + 主文
      • ich betreffe die Definition der „Zeit"
    • ich + --- + 副文
      • daß ich die Definition der „Zeit" betreffe

Es könnte scheinen, daß alle die Definition der „Zeit" betreffenden Schwierigkeiten dadurch überwunden werden könnten, daß ich an Stelle der „Zeit" die „Stellung des kleinen Zeigers meiner Uhr" setze.

fr.20
  • il = (en) it
  • peut <- pouvoir = can = possible = (lat) potere
  • sembler = (en) seem
  • que = that (関係代名詞)
  • toutes = total
  • provenant = prove, ジェロンディフ (?)
  • du temps = of "times"
    • « = guillemet
  • peuvent = pouvoir
  • être = be
  • supprimées = (?)
  • quand = when = (de) wenn
  • au «temps» = a + les + temps
  • nous = we = (de) wir
  • supprimées = deleted
    • supprimer = to suppress

Il peut sembler que toutes les difficultés provenant de la définition du «temps» peuvent être supprimées quand, au «temps», nous substituons «la position de la petite aiguille de ma montre».

it.20
  • イタリア語は主語が文法的に省略可能. 動詞の活用は性数で全て違うから. 音も違う. フランス語はスペルが違くても発音が同じ.
  • Potrebbe: 三人称?
    • = peut <- pouvoir
    • <- potere
  • sembrare = sembler = seem
    • seem = see?
  • che = que
  • tutte = toutes = total
  • le difficoltà = the difficulties
  • riguardano = regard
  • (fr) si = (en) if
  • superare = super
  • posto = (en) post = position
  • tempo = temps = テンポ
  • espressione = expression
  • piccola <- 楽器でピッコロ
  • mio orologio = my watch
  • sostituissi = substitute
    • first/second-person singular imperfect subjunctive of sostituire
    • From Latin substituo.

Potrebbe sembrare che tutte le difficoltà che riguardano la definizione del "tempo" si potrebbero superare se sostituissi al posto di "tempo" l'espressione "posizione della lancetta piccola del mio orologio".

sp.20
  • todas = total = all
  • las: 定冠詞
  • relacionadas = relation, relate
  • con la definición = with the definition
  • del "tiempo" = de+in, tiempo = tempo = time
    • cf. (fr) à + le = au
  • lugar
  • utilizara = utilize
  • de mi reloj = my watch
  • la manecilla pequeña = the small hand
  • si en lugar de "tiempo" = the place of "time"
    • lugar <- locus (location)

Podría parecer que todas las dificultades relacionadas con la definición del "tiempo" se superarían si en lugar de "tiempo" utilizara "la posición de la manecilla pequeña de mi reloj."

ru.20

Может показаться, что все трудности, касающиеся определения «времени», могут быть преодолены тем, что вместо слова «время» я напишу «положение маленькой стрелки моих часов».

sch.20
  • 定义 = 定義
  • 为 = 為

也许有人认为, 用我的表的短针的位置''来代替时间'', 也许就有可能克服由于定义``时间''而带来的一切困难.

ja.20

「時間」を「私の時計の短針の位置」に置き換えることで, 「時間」の定義に伴う全ての困難を克服できるように思えるかもしれない.

英語

文構造
  • It might appear possible to overcome all the difficulties
    • attending the definition of "time"
    • by substituting "the position of the small hand of my watch" for "time".

このitは仮主語でto overcome ---が真の主語です. どんなdifficultiesかがわからないので, attending --- timeで補足説明されています. さらに副詞句by substituting ---が文全体を修飾しています.

It might appear possible to overcome all the difficulties

文型は第二文型SVCです.

  • It appears possible.

Itが何かがto不定詞句で指示してあります. 真の主語であるto不定詞句はto overcome all the difficultiesで, 定冠詞がついています. 時間に関わる問題を議論していたので, それら全ての問題という限定です.

意味として難しいことはないものの, 動詞部分が非常に特徴的です. 単にpossibleというだけでも可能性の示唆で意味が弱いのに, appearで弱めた上にmightまで被せて意味を弱めに弱めています. ドイツ語原文を見ると接続法第2式を使っていて, それを反映させているのでしょう.

アカデミックライティングでは段落冒頭にはふつうその段落のトピックを書きます. 典型的な譲歩系の構文であることとも合わせると, そんな単純な話ではないと話が続くはずです.

attending the definition of "time"

現在分詞の形でall the difficultiesをもっと強く限定する形容詞句です.

ふつうattendは「出席する」という意味で覚えているでしょう. しかしここでは「伴う」という意味で取った方が適切です. これは辞書にも載っている意味です. 他動詞と自動詞の使い分け・意味の発展なども込めて, 読むのはよくても書くときに使いこなすのが大変な単語です.

目的語はthe definitionと定冠詞がついています. ここではof timeまでセットで限定しているとみなすのが適切です.

by substituting "the position of the small hand of my watch" for "time"

メインメッセージは「---ができる」なので, それを実現する手段を表現しています. このsubstitutingが導く句を理解するにはいつもの五文型の知識が使えます. ここではクォートで括られているため構造が明確で, substitute A for B「AをBの代わりに使う」です. 熟語として覚えてもいい一方, SV A for B, 特にA for Bをforのコアミーニングに合わせて「AとBを交換する」と一般的に捉えることもできます.

構造が見えたのでAとBを詳しく見てみましょう. まずAのthe position of the small hand of my watchは各名詞に定冠詞がついています. ここでもmyは定冠詞相当のはたらきをしているので広義定冠詞として処理しています. 一方Bのtimeは無冠詞単数なので抽象的な概念としての時間を表しています. つまり英文の構造からは「抽象概念を具体物(時計の針の位置)で置き換える」形になっています. 日本語では曖昧になりがちな具体的な時刻・時間と, 抽象概念としての時間が, 冠詞と可算・非可算という名詞に対する概念ですっきり明確に表現しています.

補足

主語が人ではない理由

ここでは主語を人にせずぼかしています. 人にすると誰がそう思っているか書くのが難しいからでしょう. これは論文なので論文の"we"を使う手もあったかもしれませんが, それを避けてあるのです. そもそも論文の"we"は原則として実験事実のような誰もがそう思うことに対して使うので, 「そう思うかもしれない」のところには使いづらいのだと思います. ふつうの文章または英会話なら"you"でいいかもしれませんが, 論文で"you"は使いづらい事情もあるのでしょう.

attendの意味

ここでのattendは「出席する」ではなく「伴う」と紹介しました. 解説でも書いたように「伴う」は辞書にも載っている意味です.

実は私も最初はこの意味を知らず, 出席ではおかしいと思って「関わる」と訳出したのですが, 改めて辞書を調べたらここではぴったりの「伴う」があったので, これに変えました.

知っている単語だからと言ってその意味を無理にあてはめてもうまく行かないことがあります. そういう場合は一呼吸置いてきちんと辞書を調べてみましょう. 特に意外な意味に出会った場合は英英辞典を見たり語源を調べて, 何故その意味を持つにいたったか考えてみると言語に対する直観が磨けます.

substitute A for Bの意味

これについて念のため書いておきましょう. 一般的に「AとBを交換する」だとAとBが等価なように感じるかもしれません. しかし純粋に構造だけで見ると, まずsubstitute Aで意味が完結していて補足としてfor Bがあります. つまり「Aを使う」ことが前提で「Bの代わりに」が補足情報として添えられているため, 「AをBの代わりに使う」というAが前に出てくる訳語が選ばれています.

sub <- subway 泳 substitute <- sub+statuo (cf. status)

第042回 第21文の多言語比較・読解

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(face-remap-add-relative 'default :family "Yu Gothic")
(face-remap-add-relative 'default :family "Migu 1M")
(face-remap-add-relative 'default :family "newspaper")
(face-remap-add-relative 'default :family "Noto Sans")

まず確認

  • 録画はじめた?
  • 音は大丈夫?
    • 一度音声が入っていなくてひどい目に遭ったことを忘れないように.
  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
  • 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.

YouTube 公開用: これを読んでいる方への注意・言い訳

これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください. 勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々のファイルに関して指摘された部分は修正します. 適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

講義動画と関連リンク

この記事・動画に特化したリンク先は次の通りです。

以下いつもの関連コンテンツ群です。

進捗・TODO・今日のメモ

  • 多言語比較のはじめから

内容: コンテンツ (案) からの転記

対象文

en.21

And in fact such a definition is satisfactory when we are concerned with defining a time exclusively for the place where the watch is located; but it is no longer satisfactory when we have to connect in time series of events occurring at different places, or---what comes to the same thing--- to evaluate the times of events occurring at places remote from the watch.

de.21

Eine solche Definition genügt in der Tat, wenn es sich darum handelt, eine Zeit zu definieren ausschließlich für den Ort, an welchem sich die Uhr eben befindet; die Definition genügt aber nicht mehr, sobald es sich darum handelt, an verschiedenen Orten stattfindende Ereignisreihen miteinander zeitlich zu verknüpfen, oder --- was auf dasselbe hinausläuft --- Ereignisse zeitlich zu werten, welche in von der Uhr entfernten.

fr.21

Une telle définition est dans les faits suffisante, quand il est requis de définir le temps exclusivement à l'endroit où l'horloge se trouve. Mais elle ne suffit plus lorsqu'il s'agit de relier chronologiquement des évènements qui ont lieu à des endroits différents --- ou ce qui revient au même ---, d'estimer chronologiquement l'occurrence d'évènements qui surviennent à des endroits éloignés de l'horloge.

it.21

Una definizione del genere basta infatti quando si tratta di definire un tempo indipendentemente dalla posizione nella quale si trova l'orologio; ma la definizione non basta più quando si tratta di collegare temporalmente serie di eventi che abbiano luogo in posti diversi, ovvero - il che è equivalente - valutare temporalmente eventi che abbiano luogo in posti lontani dall'orologio.

sp.21

De hecho, una definición de este tipo sería suficiente en caso de que se trate de definir un tiempo exclusivamente para el lugar en el cual se encuentra el reloj; no obstante, esta definición ya no sería suficiente en cuanto se trate de relacionar cronológicamente series de eventos que ocurren en lugares diferentes, o --- lo que implica lo mismo --- evaluar cronológicamente eventos que ocurren en lugares distantes del reloj.

ru.21

Такое определение, действительно, достаточно в случае, когда речь идет о том, чтобы определить время лишь для того самого места, в котором как раз находятся часы; однако это определение уже недостаточно, как только речь будет идти о том, чтобы связать друг с другом во времени ряды событий, протекающих в различных местах, или, что сводится к тому же, установить время для тех событий, которые происходят в местах, удаленных от часов. }

sch.21

事实上, 如果问题只是在于为这只表所在的地点来定义一种时间, 那么达样一种定义就已经足够了; 但是, 如果问题是要把发生在不同地点的一系列事件在时间上联系起来, 或者说------其结果依然一样------要定出那些在远离这只表的地点所发生的事件的时问, 那么这徉的定义就不够了.

ja.21

そして実は, 時計が置かれた場所に対する時間を定義することだけに関心がある場合, そのような定義で十分なのだ; しかし別の場所で起きた事象の時系列を繋がなければならないか, または---同じことに帰着するのだが---時計と離れた場所で起きた事象の時間を評価しなければならないとき, それはもはや満足のいく内容にはならない.

英語解説

文構造

まずは文法的に大きな構造を確認しましょう. 特に論文はその主題に沿って文章を組んでいるため, 文・単語など細部の構造も全体の構造から決まる部分が多くなります.

  • And in fact such a definition is satisfactory
    • when we are concerned with defining a time exclusively for the place
      • where the watch is located;
  • but it is no longer satisfactory
    • when we have to connect in time series of events occurring at different places,
      • or to evaluate the times of events occurring at places remote from the watch.
      • ---what comes to the same thing---

冒頭のAndは議論が直接的に続いていることを表し, 特にis satisfactoryと書かれています. そしてセミコロンのあとにbut it is no longer satisfactoryと来ていて, 前の内容を肯定的に受け取ったあと, 何かしらの意味でそれでは問題があると主張しているはずです. またor to evaluateはhave to connectの言い換えのorです. わかりにくい内容があってそれを補足している様子も見えます.

And in fact such a definition is satisfactory

主な構造は第二文型SVCで次の通りです.

  • a definition is satisfactory

主語は不定冠詞がついていて曖昧さがあります. もちろんsuchでその曖昧さを減らしています. ここでの曖昧さはここまでの「定義」が会話ベースの気分的な定義であることを受けています. 日本語で言えば「何にせよだいたい前の定義で示した気分」くらいの話を英語だと不定冠詞で表現できるとも言えます.

And in factは直接的に前の文を受けています. 「---できるように思うかもしれない」と言っているので, 「実際できることはできる」と言っているからです.

既に全体の構造を見ていて, 後半のbut以下でそれをひっくり返すことがわかっています. 次はwhenからはじまるので, 「状況を限定すれば正しいが一般的には正しくない」という話のはずです. 詳しく確認してみましょう.

when we are concerned with defining a time exclusively for the place

いつ正しいのかを示す副詞節です.

主な構造をどう思うかはひとつの焦点です. ここでは第三文型SVOで捉えます.

  • we are concerned with defining a time
  • V = are concerned with
  • O = defining a time

形式的には受身のように見えますが, ここはbe concerned with「---に関心がある」という熟語・動詞句とみなすべきです. 目的語は動名詞definingが導く名詞句です.

ここでのポイントはdefining a timeのa timeです. 前文でのtimeは無冠詞で抽象概念としての時間でした. ここでは不定冠詞がついているので何かしら具体化された存在です.

どういう意味で具体化されたのかと思うわけで, 続けて読むとexclusively for the place「特定の位置に対して」とあります. ここでexclusivelyをつけた上でthe placeとガチガチの限定が走っていて, ここに対して定義されたa timeであることがわかりました. こう思うとここでのtimeは日本語としては時間よりも時刻と訳した方が適切かもしれません.

さて, the placeと定冠詞つきのplaceが出てきました. ここのthe placeには多少の曖昧さがあるため, 曖昧さをなくすために関係副詞がつきます.

where the watch is located;

これはthe placeの曖昧さをなくすための補足です. どんな意味でthe placeなのかというと, 「時計がある位置」という意味でのtheだったのです.

もしあなたが何となくでも特殊相対性理論を知っているなら, 「知っている話がやってきた」と思うかもしれません. 実際にそうです. これはまさにその議論を提唱した論文であり, 慎重さに慎重さを重ねて論陣を展開しています. じっく見ていきましょう

but it is no longer satisfactory

文法的にも内容的にも特に言うことはありません. 強いていうなら単なるnotではなくno longerという表現を使っているのが内容的なポイントでしょうか. ここまでのちゃぶ台をひっくり返します. どうひっくり返すのか確認しましょう.

when we have to connect in time series of events occurring at different places,

あるときには問題なかったわけで, 内容的には問題がある状況が出てくるはずです.

大きな構造は第三文型SVOとして次のように取ってみます.

  • we connect in time series

動詞はconnect inを動詞句または熟語とみなします. 実際connect in seriesで「直列につなぐ」と訳すときがあり, まさにこれを使っていると思っても構いません. ここでのseriesは複数形とみなせばよく, time seriesはふつう「時系列」と訳します. そして単なる時系列ではなくof events以下でさらに補足が入ります. 単なる「事象の時系列」ではなく「異なる場所で起きた事象の時系列」です.

実際に前段では「時計を一つ取り上げ, その時計がある場所」の時間を議論していました. いろいろな場所での事象とその時系列を考えるときに問題があることが示唆されました.

最後に助動詞have toを考えましょう. これによって「こういう状況を考える必要があるので前段の議論・定義では不十分なのだ」と強く示唆しています. 一語一語を徹底的に選び抜いていて, まさにお手本のような論文です.

---what comes to the same thing---

これはor to evaluateでorとtoの間に入る挿入句で, 意味を確定する上で先に挿入句を見ておいた便利です. 実は慣用句で「結局同じことだが」という意味です. ここから直前の接続詞orは言い換えを表すorであることも見えます.

or to evaluate the times of events occurring at places remote from the watch.

間に挿入句も入っているため, ぱっと見ではto不定詞のように見えるかもしれません. 実際にはhave to connect or have to evaluateを表すorで, このorは言い換えを表すorです. 既に挿入句の解析からもわかっていることです. 実は言い換えであることは目的語句が次のように似ていることからもわかります.

  • connect in time series of events occurring at different places
  • evaluate the times of events occurring at places remote from the watch

文章を書く技術として,似た内容を並べるときはなるべく同じ単語を使うことで, 違う部分を際立たせて違いを読み取りやすく工夫しているのです.

意味としてはevaluate the times of eventsで「各事象の時刻を評価する」で, 対象が時系列から各事象の時刻に変わりました. ここでthe timesと定冠詞を使っていることはしつこく注意しましょう. 場所も問題だったわけでそれに対する補足はat places remote from the watchです.

事象が無冠詞複数であることと合わせてplacesは無冠詞複数です. ここでplacesに定冠詞がついていない以上, the timesに合わせているわけではないことに注意してください.

もうひとつ, from the watchと時計が定冠詞単数で指定されていることに注意してください. 特定のひとつの時計を使っていても時計から離れた場所の場所での事象を考えるとうまくいかないという主張です. 冠詞の有無・単複に本質的な情報が詰まっているので見落としてはいけません.

節終了