アインシュタインの原論文を多言語で読もうの会を運営して気付いた点を補足すべく, 2021-06 から 2 ヶ月の試験企画として立ち上げた. もともとは「Wikipedia の数学・物理系の英語記事を読んでみようの会」というタイトルにしていたが, もう少し広くした方がよさそうなので勉強会の暫定タイトルとしてつけてある.
もしあなたがこの企画にご興味があるなら, お問い合わせなどから連絡してほしい. Twitter (の DM) などでの他の手段でも構わない.
半年以上勉強会を続けてきて気付いたことがいくつかある.
アインシュタインの原論文を読む勉強会はこれはこれで非常に勉強になり, 続ける意義も十二分あるのはよくわかった. 何より私が楽しく, 自身の勉強のモチベーションにさえなる.
しかしその一方で問題・課題もある. 一つは原論文は 31 ページとかなりボリュームがある. ちなみにいろいろな目的から多言語でやっていることもあり, 1 文 (1 ページではない) を読むのに少なくとも 3 時間はかかる. 1 文だけでも十分な情報量があり, それはそれでいいのだが, やはり短くても文章全体を読み切ったという達成感も大事にしたい. 端的に言えば飽きてきてしまう人もいるだろう. 語学と物理・数学を一緒にやるのも非常に大変だという話もあるにはある.
アインシュタインの原論文の勉強会はこれで続けるが, その一方で別の語学勉強会を次のような企画を試してみたい. タイトルの通り, 「Wikipedia の英語記事を読んでみようの会」だ. もちろん数学や物理などの記事を英語で読む. Wikipedia を選んだのはやはり多言語展開を念頭に置いている. 少なくとも日本語では英語のページを訳した記事もあり, 他の言語でも同じようなことがあるかもしれない. そして明らかに同じ言葉や概念に対して他の言語での説明がある, またはある可能性が高いため比較もしやすいからだ.
よくリスニングしろ・ペーパーバックを読んでみろといった指南がある. 興味がある続くモノとして映画もいいなどと書いてある. しかし理工系の人間は困るはずだ. そんなものに興味はないと. もちろん人の趣味は多様だからそうした題材でも楽しめる人は確実にいる. しかし一石二鳥で数学・物理・プログラミングと一緒に語学が勉強できればいいのに, そう思う人もまた一定数確実にいるはずだ. 何より私がそうだし, 私と同じ趣味を持つ人が一定数いることもはっきりとわかっている.
最近は英語での数学や物理の講義も YouTube に上がっている. 例えばフィールズ賞受賞者の Borcherds が自分のチャンネルに動画をあげていさえする. 以前よりは格段に手に取れる英語を含めたコンテンツが増えていてこんなに嬉しいことはない.
しかし語学の基礎知識に不安があり, 実際に何となくは読めるがきちんとは読めないという人も多いのではないかと思う. 本だと読み切りたくなってしまうだろうが, 量が多いといろいろな事情から読み切れずたいてい途中で終わってしまう. 程々の分量の文章が読みたい・読み切りたい, そう思うことはないだろうか.
そこで実際に数学・物理をテーマにした Wikipedia の英語記事を読んでみてはどうか, そういう提案をしたい. Wikipedia はその性質からある単語や概念に関して程々のボリュームで解説がついている. 数学や物理のネタを筆頭に, 興味ある記事を読んでそれで語学も一緒に勉強できたらこんなお得なことはない. これを実現させようというのがこの企画である.
私は「大人の高校」または「理系のためのリベラルアーツ・総合語学」を目指したサービスを企画・立案・展開している. そのうち有料化して本格化しようと思っている. いまはこれを狙ってモニターを募集しつつ試験的に少人数で様子を探っている. 何か 1 テーマ, 具体的に Wikipedia の記事を読んでどんな感じになるか調べたい. そんなにたくさんいても仕方ないので 2-3 人集まれば実際にテストをする. 毎週 1 時間で 2 ヶ月くらい試験的にやってみたいので, 興味がある方はお問い合わせなどから連絡してほしい. 何を読むかは集まったメンバーと相談して決めたい.
今回の企画はあくまで語学に比重があるので, 数学や物理に関する話は深くは議論しない予定だ. 数学・物理もきちんとしたいという方は別途相談してほしい.
いったん参加者を募集したところ次のようなコメントを頂いた.
理工系の英語の教材としては, 科学雑誌の読み物記事なども個人的には面白いと思います. 英文解釈の良いトレーニングになります. ご参考まで.
いろいろなところに書いているように, 理工系のためのリベラルアーツ・総合語学の裏テーマとして, 語学を軸にした文系人のための理工学入門も考えている. 実際, 私が所属している語学コミュニティの人で, 英語の読解・文法学習用にアインシュタインの原論文を多言語で読もうの会の動画・コンテンツを紹介したら次のようなコメントを頂いた.
あれ程理科や数学が苦手だった自分に, まさかあのアインシュタインの原論文を読める機会があるとは思わなかった. ほんの一部ではあっても本当に嬉しかったし, この喜びは誰かに共有したい.
語学講座の中では限界もあるとはいえ, 必要な範囲で数学・物理をはじめとした理系知識の話をするのは大事なことだ.
さらに次のような話も出た.
今まではそのまま「資産」にできるページを考えていましたが, 雑誌の候補紹介記事を見たら, 何というか文系の人向けには小学校・中学校レベルの理科的な話の方がよさそうだという霊感を感じました. 普通に英語自体を勉強したくて, そのネタとして数学・物理を使うか, 語学から数学・理科に迫るかで何を使うか変えるとよさそう, という気分です.
科学といってもいろいろで, 言語の発達に関するものだったり, 意外と身近なテーマがあり, また, 英語自体も定評があるので, 文理問わず, 英語を勉強したい人, 教養を得たい人に需要があるかと思います. 日経サイエンスには「英語で読む日経サイエンス」という日英対訳のページがあります.
理工系のリベラルアーツをうたう以上, 数学・物理・プログラミングだけでは羊頭狗肉である. 私自身, 興味関心の幅を広げていかなければ口だけ人間になってしまうという危惧もある. そこで上の記事で引用されているいろいろな記事まで射程距離に入れることにし, 試験的な会のタイトルも変えてみた.
今回の試験企画に関する話と, 今後展開する勉強会の内容とがある.
これを基本にしたい. 1 つの記事が全て読み切れなくても気にせずそこで終える. 2 ヶ月 1 テーマと区切ってモチベーションを保つのが目的だからだ. もっと言えば, 途中までしか読めなかったからと言っても, そこまでは頑張って読んだわけで, それ自体が大きな成果だからだ. 2 ヶ月間 1 テーマをきっちりやりきった事実を大事にしてほしい. 逆に言えばそれでおさまる程度のコンテンツを選ぶのも大事だと思っている.
基本的には各参加者にはいわゆる生涯学習として自分自身で勉強を続けてほしいと思っている. この企画はあくまでその補助の一つで, 一人では大変なことを皆で乗り切ろうという部分に焦点がある. 残った部分は興味があれば自分で引き続きやってみてほしい.
もちろんテーマによって継続でやった方がいいこともあるだろう. それはそれとして適切に対処したい. ただし今回の試験企画のメインテーマはそこではない.
「アインシュタインの原論文を多言語で読もうの会」で文法をゴリっとやっているため, どちらかと言えばそこで切り落とした単語の深掘りをやってみたい. 英語はいろいろな言語の要素をチャンポンにしためちゃくちゃな言語で, 少し掘るといろいろな言語の要素が顔を出す. 特に単語・語源調査の面からそこに迫りたい.
ただし文法的にきちんと追いかけるのも大事だと考えてはいる. これは実際に参加名乗りを挙げてくれた方からの次のコメントによる.
できれば文法解説も入れて「語彙と文法の両輪があってはじめてきちんと文が読めますよ」ということが伝えられるような講座だと嬉しいです.
雑誌の文章には, アインシュタインとはまた別の読解の難しさ (楽しさ) がありそうなので. 一見やさしそうなのに実は難解な構文が多々出てきて, 必要に応じてスラッシュや矢印などのマークを入れながら解析しています.
今回実際に読む文章がどこまで文法的にハードかにもよるが, 構文・文法解析が必要なところには適切に対処したい.
これは私自身が勉強を楽しむこと, 教育を通じて自分自身の理解も深めること, そして勉強会を気楽に開催するための工夫といった目的がある. さらにもう一つ, そもそもこの試験企画を立ち上げようと思った目的は, 相対性理論の原論文を読む会の文法処理が重過ぎてワンテーマが読み切れないことにある.
少し準備してみたところ一番最後のそもそも部分, つまりワンテーマ読み切り勉強会にするのが恐ろしく大変そうになることがわかった. これは単語の深掘りをやろうとしたときの問題だ. 多少は触れたいがこれとワンテーマ読み切るのをどう両立するかが課題になっていることがわかった. いま考えているのは一回さらっと全体を読んでから, 必要に応じて深掘りするのはどうかという部分. 特にせっかくだから各記事の科学的な内容自体も勉強したいという思いもある. 本格始動させてみてわかることもあるので, 2 ヶ月間いろいろな試行錯誤をしていく.
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