第 002 回 分詞の解説, 第 1 文の訳と文法事項

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分詞の解説

分詞

分詞についてはまず次の大方針を持つといいでしょう.

文への直し方や事例については現在分詞・過去分詞の項も見てください. 先に 1 つ事例を紹介します.

この違いを独力で理解できるようになることが大事です. ちなみに, 意味がわからなくなったら Google で画像検索してみるのもいいでしょう. "terrifying look" で調べると見ていて怖い画像が出てきます. 一方 "terrified look" で調べると怯えている人の顔が出てきます. 検索して出てきた画像のイメージと自分の理解が違いそうな場合, 上の原則に基づいて考え直してみてください.

現在分詞

現在分詞は「進行感・ライブ感」, つまりいままさに何かしている状態を表しますという説明はよく見ますし, 間違いではありません. しかしこの手の説明に引きづられておかしな解釈をしてしまうこともあります. あなたは次の文・句の意味や修飾関係が理解できるでしょうか?

まずは自分で考えてみてください. 説明は次の通りです.

「進行感・ライブ感」とだけ覚えていくとこのような事故が起きかねません. 実際よく誤解している人が大人でもいます. 現在分詞の ing を単純に「---している」と思ってはいけないのです. また現在分詞は進行形で使われる場合は別として, 「今まさに---している」というより名詞の継続的な性質を表すことも多いです.

元の動詞が自動詞のときは次のイメージを持つといいでしょう.

元の動詞が他動詞のときは次のイメージを持つといいでしょう.

他動詞の現在分詞はどちらも「今まさにしている」というより名詞の継続的な性質を表しています.

過去分詞

元の動詞が自動詞のときは次のイメージを持つといいでしょう.

元の動詞が他動詞のときは次のイメージを持つといいでしょう.

第 1 文の解説

英文と訳

どの言語で読んだところで, この一文だけでは逐語訳はできても物理として何を言っているかはわからないでしょう. 実際には第 1 段落の主題で, 続く文章で具体例として磁石と導体の間の相互作用の説明が出てきます. 実際の文章の読解ではある 1 文を読解するために周囲の文との関係, もっと言えば文章全体の中でのその文の役割を考えて読まなければいけないこともよくあります.

ちなみに \cite{AlbertEinstein1} だと, この文メインパートは次のように訳されています.

つまり私が「現象固有には見えない非対称性」と書いた部分は, 「本質的には同じはずの現象を同じように説明できない」という意味なのです. そしてこれが気に食わないことが当時の電磁気学の問題でした. 一文一文をきちんと訳すためにも物理学上の時代背景や前後の文章の流れも知っていなければなりません.

文構造・文法事項

英語
文構造

まずは文構造を確認します.

まず It is known that で that 節が主語になる構文であることを見抜きましょう. この主語を表す that 節の本体は Maxwell's electrodynamics leads to asymmetries です. これに限らず挿入がやたらと多い文ばかりなので, 文構造を正確に捉えて本体を正確に見抜く訓練が必要です. 挿入が 2 つ入ってわかりにくいのですが, leads の主語が electrodynamics なのも注意です. 三単現の s があるので主語は単数です. 学問名としての electrodynamics は不可算名詞で扱いとしては単数なので, この文法事項を知らないと主語・動詞の対応が正確につけられません.

最後の which do not --- は asymmetries を修飾する関係代名詞節です. 動詞が do なので複数形に対する修飾であることに注意しましょう. 学問名としての electrodynamics は不可算名詞で扱いとしては単数なので, こちらの修飾とはみなせません.

そして as usually ---, when applied to --- が副詞句として文全体を修飾しています.

次に注意すべき点をさらに細かく見ます.

It is known that ---

It is known that --- からはじめましょう. 英語は長い主語を嫌がります. 英語は動詞を早めに見せたい言語と言ってもいいですし, もっと強く文構造を早めに見せたい言語と言っていいでしょう. いわゆる SVOC の第 5 文型では find it C to do といった構文がよく出てきます. 例えば次のような例文があります.

英語は文の型が文の意味を決める部分があります. その型をきちんと見抜くのが重要で, そこに文法学習が生きてきます.

もとの文の解析に戻りましょう. 主語が長くなるとそれだけ文構造を把握するまで時間がかかります. それを避けるために仮主語として it を置いてすぐに動詞を出し, 主語の本体は that 節で受けます. この構文を見抜く必要があります.

さらに be known で受動態も使われています. By による真の主語の明示はありません. 強いて言うなら「全物理学者」が真の主語です. 受動態は主語を明示したくなかったり書きにくい場合に使われます.

真の主語である that 節は Maxwell's electrodynamics leads to asymmetries でした. ここの動詞 lead は目的語がないので自動詞であり, 文型は第 1 文型 SV です. 細かい訳語のニュアンスはあるものの, to A という副詞句がある第 1 文型の文の本質的な意味は「A に向かう」です. いまの場合「内包している」といった訳語を当ててもいいでしょう. どんな asymmetries を持っているのかが気になります. それが which による関係代名詞節で補足説明されます.

asymmetries which do not appear to be ---

次に asymmetries which do not appear --- を考えます.

単に asymmetries と言われてもよくわかりません. こういう場合は修飾語・修飾節を使って補足説明をつけます. ここでは関係代名詞を使って修飾しています. Appear は自動詞であり, 第 1 文型の文です. There is/exist 構文が典型的なように, 第 1 文型は文自体に「存在する」「そういう存在である」という意味を持ちます. Which 節は主語がないので asymmetries が主語であり, とにかくまずは asymmetries が存在するのです. 動詞 appear を使ったのは存在の意味を柔らげるためだと思ってください. 単に「存在する」のではなく「そういう存在であるかのように見える」と主張するために 動詞 appear を使っています. どういう存在であるように見えるのかが to be の不定詞句で説明されています.

この文にはもう 1 つの見方があります. それは appear to を助動詞のようにみなして SVC の第 2 文型 asymmetries are inherent in the phenomena を基礎に据える見方です. 型として第 2 文型が持つ意味は「S と C は等しい」です. 特に動詞が be 動詞で C が名詞の場合は直接的に等号だとみなせます.

これらはまさに be 動詞が等号だとみなせる例です. 動詞 become も第 2 文型を作れます. Be 動詞ではない以上, 「S はこれから C になる (C と等しくなろうとする)」といった意味に変わりますが, 等号を基礎にした意味を持つことは同じです.

ここで appear to を助動詞とみなすのは, 完全な等号とみなすと意味が強くなりすぎるので弱くするためです. 可能性を表す意味での助動詞 may や can の用法と同じです. 動詞 appear には「---に見える」という意味があるので, その意味を使って等号の意味を拡張・変更しています.

なぜこうした話をしたかというと, 同じような構造・用例がよく出てくるからです. 有名なのは動詞 seem でしょうか. 動詞それぞれが持つ固有の細かいニュアンスを除けば次の文はだいたい同じ意味です.

念のため appear と seem の違いについて Weblio の seem の項 からニュアンスに関する説明を引用します.

(seem は) 通例話し手の推量をこめた見方・判断を示す語で,文法上の主語と判断の主体は一致しないことが多く,時に判断の主体を示すのに to a person を従えることがある.

【類語】 seem は通例話し手の主観的判断を表わす; appear は外観がそのように見えるということを意味するが,「実際はそうではないかもしれない」という含みをもつことがある; look も appear と同じように外面的なことを表わすが,「実際もそうである」ということが多い.

---as usually understood at the present time---

まず --- で囲まれた部分は挿入句・挿入節として理解してください. 特にここでは分詞構文で副詞句になっています. 分詞構文にはいくつかの用法があります. 今回は as で用法を指示しています. As は as でいろいろな意味があってややこしいものの, 理由を表していると思えばいいでしょう.

動詞 understood の意味上の主語をどう考えるかは少し悩む部分です. ただ副詞句として全体を修飾している以上, 主節の主語である that 節が主語であるとみなしても問題ないでしょう.

when applied to ---

これも分詞構文で, when を使って時間的な条件句であることを表しています. As 句の挿入を無視して考えれば, applied の意味上の主語は Maxwell's electrodynamics でいいでしょう.

ここでは動詞 apply to について補足します. 前提として前置詞 to には「何かを何かに向ける」意味があります. 例えば I go to my house. は「私を自分の家に向ける」「私は自分の家に向けられている」という意味で, 動詞 go の意味によって向け方が「行く」になっていると読みます. ここでは Maxwell's electrodynamics が moving bodies に向けられていて, 意味が apply で指定されています. 理論がその適用対象に向けられることを日本語では「適用する」と言うので, そういう訳語を当てればいいでしょう. 実際 apply を英和辞典で調べるとそのものずばりで出てきますし, Weblio では次のような説明があります.

3〈規則・原理などを〉〔…に〕適用する,応用する 〔to〕.

Apply this rule to the case. その事例にはこの規則を適用しなさい.

ここでは規則が物理法則または理論に変わっているだけです.

ポイントは apply の意味を知らなくても前置詞 to の意味・イメージから動詞の意味が決まってしまうことです. 具体的にどんな単語を選ぶかは to の漠然としたイメージをどう具体化するかによって決まるのです.

こう考えるようになるともし知らない単語が出てきても状況証拠から意味が推定できます. 犯罪捜査の推理のように思っていいですし, 考古学などでの推定を想像してもいいでしょう. こうした推論力を鍛えるのは数学や物理でも非常に大事で, そのためには 1 語 1 語の理解を徹底的に深める必要があります. 数学や物理でも同じように 1 つ 1 つの原理原則を徹底的に理解して深めることが大事だと言われます. 語学学習にも数学・物理学習の原理原則が直接適用できます.