第 003 回 第 2 文を詳しく読む

まず確認

注意

これを読んでいる方への注意・言い訳

これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください.

勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します.

適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

講義動画と関連リンク

はじめに

今日の予定

進捗

TODO

次週予定

今日のメモ

2020-09-25

Man: 男性名詞, 単数, 3 人称, 「人はみな」 One can say that ---. Mann: ドイツ語の男性. On: フランス語. homme 人.

z. B. = zum Beispile = for example zum = zu + dem. zu = 「ツー」と発音 (ドイツ語): zu 不定詞 = to 不定詞. to と zu は音として似ている. 英語とドイツ語で用法も似ている.

(fr) par exemple = for example f = フ, p = プ. (en) garden, yard (fr) jardin

私が知っている範囲の欧米語. 単語の意味は子音が決める. s_ng: song, sing, sang, sung.

denke -> denken = think

analyser = analyze = 分析する

mutuelle = mutual.

古典論ではいわゆる磁石がない. ファンリューエンの定理.

van = von of von Neumann.

内容: コンテンツ (案) からの転記

英文と訳

中高生にとって国語の読解でも大事なことがあります. それは「例えば」を含む文, そしてそこからつながる文の理解です.

まず日常的な書く・話すで考えましょう. ふつう一般的・抽象的な話はわかりにくいので例が必要です. あなたも日常生活の中で何かわかってもらえないことがあったとき, 「例えばこんなことがあるだろう」と説明する機会があるはずです. もちろんわかりにくい何かを説明するための工夫です. 書く・話すときには自然にやることです. この感覚をきちんと読解にも活かしましょう. これは受験・問題解答の点から「読解テクニック」などと言われることもあるようですが, そんな大層な話ではありません.

さて, 読解として大事なことは次の点です.

こう思ってください. 第 1 文の訳の説明で「この 1 文だけを読んでも逐語訳こそできても物理としての意味を捉えるのは難しい」と書きました. アインシュタインもそれをわかっていて例を挙げて説明しています.

数学や物理を勉強するときにも何かわからないことがあったら例を作るのは決定的に大事です. 結城浩さんの『数学ガール』では「例示は理解の試金石」という印象的な言葉で表現されています. そのくらい大事なことです. この 1 文には英文解釈としてはそう難しい要素はありません. しかし学習上の配慮など総合的な視点からは非常に重要な示唆を含んでいます. ここまできちんと読み取り, 自分の学習・実践に活かせるようになってください.

メモ: a は any と使われることもある. a の理工系的使い方として文法で説明しておくとよさそう.

文構造・文法事項

英語

文構造

本文では take と the reciprocal action に for example が挟まれて出てきます. 「例えば」と言っているだけの独立した挿入句です. 慣れていないと読みにくいかもしれません. 文構造としては添え物なので上の分解では最後に添える形にしました.

この文を単純化すると take A (of B) という形で命令文であり, of B は名詞句 A を修飾しています. 細かく見ていきましょう.

動詞ではじまっていて主語がないので命令文であることを読み取ります. Take の目的語が the (reciprocal electrodynamic) action で, reciprocal action (相互作用) が何と何の間の相互作用かを表すのが of 以下で補足されています.

ここで面白いのは冠詞です. A magnet と a conductor の相互作用には冠詞 the が使われています. A magnet と a conductor という一般の対象間であっても, その (reciprocal) action は物理法則で特定されるという感覚なのでしょう.

For example は副詞句として文全体を修飾します. 英語ではここで出てくるような形での挿入がよくあります. 補足も参考にしてください.

補足

日本語からすると不思議な挿入

日本語でも口語ではいろいろな挿入表現があります. しかしこの文での for example のような挿入の仕方・場所に関して, 私は日本語の硬い文章, 特に理工系の文章で見かけた記憶はありません. 強いて言えば記憶にあるのは大学受験のときに読んだ人文系の評論・随筆です. ちなみにドイツ語原文でもフランス語でも同じ位置に挿入しているので, 英独仏ではふつうの語順・感覚なのでしょう.

私がこの手の英語の文章のような日本語での挿入表現を見かけた機会として強く覚えているのは, 漫画の「ジョジョの奇妙な冒険」です. 例えば第 5 部後半でブチャラティによる次のセリフがあります.

ふつうの日本語で見かけるのは次の 2 通りだと思います.

著者の荒木飛呂彦は洋画・洋楽が好きなようで, いろいろな形で海外の事情を取り込んでいます. 上の呼びかけに見える「ジョルノ」の挿入は英語で良く見られます. そもそも作中ではイタリア人の発言ですし, それを織り込んだ表現なのかもしれません.

何にせよここで出てくる「不思議な挿入」は英語の英語らしさを司る部分でもあります. 楽しんで鑑賞してください.

単語の意味を深く知る

ここでは語源を中心に深掘りしています. しかし他には英英辞典を使うという手もあります. 基本的な語彙力がない中高生には厳しいので, まずは基本的な語彙力を鍛えるために語源に遡ろうという手法を提案しているのです.

ここで 1 つコメントしておきたいのは第 2 文の主要な動詞 take です. Take はふつう訳語として「取る」を挙げることが多いでしょうが, 今回は take the action という形で出てきた上で「考えよう」という訳語を当てています. これは「取り上げよう」と訳せば「取る」に近い表現ではあります. しかしドイツ語では denken = think でもあり, 「考えよう」を採用しました. ちなみにフランス語では analysons = analyze でまた違う単語を当てています.

ここで英語としての意味を深く知りたいと思ったら英英辞典を調べてみましょう. 例えばオンラインの英英辞典で take を調べると次のような説明があります.

これがここでの take の意味でしょう. 日本語でも「授業を取る」という表現があり, それと対応する「取る」です.

英英辞典の使い方についても 1 つコメントしておきます. ある程度の語彙力, できれば大学受験突破程度の語彙力をつけた上で, 難しい単語よりも take のような中学生でも知っている基本単語を英英辞典で調べてみましょう. 基本単語は多くの場所で使われていて多種多彩な意味があります. 実際 LONGMAN では意味が 33 個列挙されています.

よく使われる基本単語に対する認識の深さがその人の理解の深さを決めます. そしてもっと大事なのは「よく知っていると思った単語であっても, 実はいくら汲んでも尽きないほど深く広い」のだと知ること・体感することです.

命令形の意味

命令形・命令文は日本語の言葉通りの命令の意味を持つとは限りません. もし第 2 文を文字通り命令だとすると「何で論文を読んでいて命令されないといけないのか」という話になります. 実は命令文には提案としての意味・用法があり, ここでは実際に提案の意味です.

命令文のニュアンスを取り違えると「こちらは命令しているのに何でやらないのか」という話にもなるでしょう.

ちなみに, 実際の会話では命令の意図が強くなるほど丁寧な言葉になることがあるようです. 日本語でも「やりなさい!」と言われるより, にっこり笑いつつ有無を言わさない様子で「申し訳ないのですが, これをやって頂けると, 私, とっても嬉しいのですけれど?」などと言われた方が怖いでしょう. 英語にも同じ気分があるのです.

例を作る難しさ

訳のところで説明したように例を作るのは大事です. どのくらい大事でかつ難しいかというと数学では具体例を作るだけで論文になるほどです. 永田雅宜という数学者はヒルベルト第 14 問題を反例による否定的解決が世界的に有名で, Mr. counterexample と呼ばれています.

物理では例を作るのは現象の発見があたるように思います. この視点で言うと, 理論的に知られていること・予言されていたことを実験的に実現するのはこれまた非常に重要な業績です. どのくらい評価されているかと言えば, 分子の存在を実験的に証明したことで有名なペランは 1926 年にまさにこの業績でノーベル賞を受賞しています. ちなみにペランの実験のもとになったのは, 特殊相対性理論と同じく 1905 年にアインシュタインが書いたブラウン運動に関する論文です. 次のページの記述を引用しておきます.

ブラウン運動の理論 [2] 論文の原題は『熱の分子論から要求される静止液体中の懸濁粒子の運動について』 この論文の目的は,「ブラウン運動をする粒子の運動を測定することによって,原子(または分子)の存在が結論づけられる」ことを示すことだった.当時,物理学者の間でもコンセンサスが得られていなかった原子論が,実験によって決着できることを述べたのである.論文中では,Newton力学の現象論(物理的考察)とランダムに動く粒子に対する確率過程論(数学的考察)を併用し,理論の検証として「粒子の平均2乗変位」が観測可能な量であると結論した.この予言は,フランスの物理化学者ペラン J. Perrinによって,1908年に実験確認され,原子の概念がゆるぎなく確立することになった.ちなみに,博士論文は,このブラウン運動に関するものであり,アインシュタインの論文のなかで最も引用度が高いのは,博士論文であるという. この成果は,その後の物理学で,より小さな粒子の発見への足がかりとなったばかりではなく,確率過程という数学理論への発展を促した.(米沢富美子,「原子の実在を証明 ブラウン運動の理論」,数理科学 2003年10月号 p.31-37)

ここで数学への貢献が謳われていますが, 実際に数学ではそのものずばり「ブラウン運動」と呼ばれる数学的対象があります. 数学科の大学 4 年から大学院程度で議論するレベルの対象です.

これも有名な話ではありますが念のために書いておくと, アインシュタインのノーベル賞の業績は同じく 1905 年に出した光電効果の理論の論文が発端です. そしてもう 1 つ, 光電効果の実験的検証と高校物理でも有名な電気素量の測定によって, アインシュタインがノーベル賞を受賞したのと同じ年にロバート・ミリカンがノーベル賞を受賞しています.

アインシュタインがなぜ偉いか (すごいか) というと, 1 つあるだけでもすごいノーベル賞級の仕事を連発しているからです. 現在固体物理学と呼ばれる巨大な分野がありますが, 固体の物理・物性物理にはじめて量子論を適用して分野を切り開いたのもアインシュタインですし, 2001 年にボース-アインシュタイン凝縮の実験的実現に関わる仕事でノーベル賞が出ていて, 名前の通りアインシュタインが貢献しています.

ボース-アインシュタイン凝縮ですごいのは, はじめボースが光の量子統計に関して論文を書き, それが周囲で認められないからといってアインシュタインに論文を送ったところ, アインシュタインは即座にその価値を認め, さらに光以外の現在ボース粒子と呼ばれる系にまで一般化した理論を組み上げたという逸話です. 私が知る限りでさえ少なくとも 4 つのノーベル賞に関して本質的な貢献があります.

固体物理は半導体物理などの基礎であり, 半導体でもノーベル賞は出ています. 半導体の基礎理論を支える分野を開拓したことを貢献とみなすなら, これもノーベル賞級の貢献とみなしてもいいでしょう.