第 007 回 第 3 文の単語

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この動画に特化したリンク先は次の通りです。

(講義動画と関連リンクの内容)

以下いつもの関連コンテンツ群です。

(YouTube 動画の説明欄にいつも張るリンク集)

YouTube 公開用: これを読んでいる方への注意・言い訳

これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください.

勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します.

適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

講義動画と関連リンク

はじめに

今日の予定

進捗

TODO

今日のメモ

内容: コンテンツ (案) からの転記

いまの気分メモ

最初に紹介: 大事な参考文献の紹介

中高生には少し難しいと思いますが 1 つ大事な視点を提供してくれる次の本を勧めておきます.

もとが大学生向けの講義資料なので, 数学をある程度知っている前提がありつつ, 基本的な文法を一度勉強した上で一定の語彙を持っている必要があります. しかし豊富な数学の例文があり, 数学で使う文法に絞って解説されているため, 特に力を入れて学習するべき項目がわかります. 数学で必要な文法と物理で必要な文法には重なりも多く, もしあなたが物理にしか興味がないとしても参考になるはずです.

この本から 1 つ面白い説明を抜き出しておきます. P.20 からの引用です.

C) の場合を日常の文と比べてみよう. 例えば犬好きの人が "A dog is a friendly animal" といった場合, 現実には例外があって吠えかかる犬もいる. しかし, 数学の文の場合は例外なしに成り立つと解釈する.

当たり前と言えば当たり前ですが, 数学で使う英語と日常で使う英語に微妙な食い違いがあるのも間違いありません. 他に日常の英語・口語英語・会話の英語ではあまり使わないとされる表現, 文章の英語だからといって説明がなおざりにされる表現がまさに使われるのが数学の文章英語であることもよくあります. そうした「実用的な」視点から数学の英語を解説してくれている本です.

他には「英作文は英借文」とも言われていて暗記も勉強する上で大事な要素です. しかしふつうの例文暗記では飽きてしまうことも多いでしょう. そんなとき, 数学の例文暗記という形で対応するのも一手です. そしてそうした例文がたくさん載っています. そういう使い方をするのもお勧めです.

単語

物理の専門用語

observe -> observ -tion

observable

動詞 observe も参照してください.

この論文では observable は形容詞です. 実は observable は量子力学で「観測可能量」という名詞として使われることがあります. 専門用語・術語としての用法です.

observe

Wiktionary によると中期フランス語の observer, ラテン語の observare (to watch, note, mark, heed, guard, keep, pay attention to, regard, comply with, etc.) に由来します. Etymonline によると単語として ob (in front of, before) + servare (to watch, keep safe) と分解できます. 印欧祖語からの語幹 *ser- は to protect の意味を持ちます.

see -> sehen go -> gehen take -> nehmen

英語だと名詞と動詞が同形のものが多い. start も名詞と動詞が同形.

日本語は動詞の語尾が「う」の列であるというのと同じく, フランス語は動詞の語尾が -er, -or, -ir になるルールを持つので, observer はこれで動詞です. 英語の「--- する人」の意味の -er ではありません.

ラテン語の observare は ob (before) + servare (to keep) と分解でき, さらに印欧祖語の *serw- (to guard) に由来します.

phenomenon

フェノメノンとして日本語化されている言葉でもあります. Phenomena と特殊な複数形を取るのはギリシャ語の形をそのまま使っているからです. 後期ラテン語 (Late Latin) の phaenomenon (appearance), 古代ギリシャ語の phainómenon (thing appearing to view) に由来します. つまりギリシャ語由来の単語です. 英語には見られない複数形を持つのはギリシャ語由来の単語だからです. また印欧祖語の語根 *bha- は to shine の意味を持ちます.

また, 一般に ph がつく単語はギリシャ語に由来していることがよくあります. 薬学や薬局を意味する pharmacy は古代ギリシャ語の pharmakeía (the use of drugs) に由来しますし, ゲームでよく出てくるテュポーンは typhon で, ギリシャ神話に出てくる神とも怪物ともいわれる巨人です.

時々ゲームにも出てきていて, 2020 年時点ではグラブルのテュポーンが有名でしょうか. ある程度の年齢の人にはファイナルファンタジー VI のテュポーン先生が印象深いかもしれません. 台風 (Typhoon) の語源とも言われているそうですが, 私はあまりよくわかっていません.

学術用語には ph がつく単語はよく出てきますし, それらはたいていギリシャ語由来です. そもそもラテン系の語彙に ph を含む単語はほとんどないそうで, 上で紹介しているように ph を含んでいるのはギリシャ語由来のことが多いのです. Phenomenon で典型的なように変な活用をすることも多く, 見抜きやすいでしょう.

depend

ラテン語の dependeō に由来していて, これは dē- + pendeō (to hang) に分解できます. この dē- は of, from の意味で, pendeō はペンダント (pendant) の pend です. 何かにぶらさがることはその何かへの依存を表すと考えたのでしょう. また de はフランス語にもあり, 英語でいう of の意味を持つことも注意しておきます.

使うときはたいてい depend on の形です. 対応する前置詞が on であることも覚えておく必要があります.

relative

Wiktionary によると後期ラテン語の relātīvus, ラテン語の referō (to carry back, to ascribe) の完了受動分詞 relātus に由来します. これは re- (again) + ferō (to bear or carry) に分解できます. この ferō は ferry (フェリー) の語源です.

この fer に関して, 例えば堕天使のルシファー (Lucifer) の fer も同じです. ちなみに Lucifer の luci は lux, luminus など光の意味です. 光を奪う存在が堕天使という意味なのです.

相対性理論がまさに theory of relativity であり, 相対性理論の名前の由来になる基本的な語彙なので何度も出てきます.

Etymonline によると後期ラテン語 relativus (having reference or relation) があり, これはラテン語の relatus から来ていて, さらに referre (to refer) の過去分詞という由来があります. 特に "person in the same family" という意味があります.

whereas

もちろん where +‎ as (that) のように分解できます.

TODO なぜこれが逆接のように使われるようになったのか?

customary

名詞 custom から派生した形容詞です. 詳しくは custom を参照してください.

custom

Wiktionary によると, 俗ラテン語 (Vulgar Latin) の cōnsuētūmen or costūmen, そしてラテン語の cōnsuētūdō の対格単数の cōnsuētūdinem (custom, habit), 同じくラテン語の cōnsuēscō (accustom, habituate) に由来します. 単語 cōnsuēscō は con- (with) + suēscō (become used or accustomed) に分解でき, これは sueō (I am accustomed) の起動形 (inchoative form) や suus (one's own, his own) に由来します.

またコスチュームとしてほぼ日本語化されている costume の二重語でもあります. Costume はフランス語の costume の借用語で, フランス語はイタリア語の costuma, そして究極的にはラテン語の consuetudo, consuetudinem (custom) に由来します.

view

古フランス語の veue やイタリア語の vedere に由来します. 古フランス語の veue は現代フランス語 voir の過去分詞の女性単数形 vue にあたります. イタリア語の vedere はラテン語 vidēre (videō の現在能動形の原形, present active infinitive) で印欧祖語の語根 *weyd- に由来します. Videō の見た目の通りビデオと関係があります.

draw

draw tragen d - t

Wiktionary によるとゲルマン祖語 draganą や印欧祖語 dʰregʰ- (to draw, pull) に由来します. ドイツ語の tragen (to carry), サンスクリットの ध्रजस् (dhrájas, gliding course or motion) と同根です. Drag の二重語でもあります.

between

Wiktionary によると be- +‎ twain に対応するゲルマン祖語の bi- (be-) + twihnaz (two each) に由来します.

case

まず場合の方から語源を確認しましょう. Wiktionary によると古フランス語の cas (an event), ラテン語の cado (to fall, to drop) の完了受動分詞 (perfect passive participle) にあたる casus (a falling, a fall; accident, event, occurrence; occasion, opportunity; noun case) に由来します.

日本語のケースにはカードケースのように「収納箱」のような意味もあり, もちろん英語にもその意味があります. Wiktionary によるとこちらの語源はラテン語の capsa (box, bookcase) で これはさらに capiō (to take, seize, hold) に由来します. また cash の二重語でもあります.

cf. school 学校, 魚の群れ

body

中学生どころか小学生でも「身体」という意味を知っているでしょう. 物理では「物体」の意味で使われます. このように専門用語として理解しなければいけない単語はたくさんあります. もちろん日本語でもエネルギーやポテンシャルのように専門用語としての意味を本歌に取りつつそれとはずれた意味で日常語として使われている言葉があります. まずはそういう概念・言葉があると知るのが大事です.

対応する印欧祖語は bʰewdʰ- でこれは "to be awake, observe" という意味があります. 観察対象のような意味から物体に派生していったのでしょう.

他の意味について少し触れておきます. Etymonline では 1660 年代から "main portion of a document" としての用例があると紹介されています. これは IT 系でもよく使われます. もしあなたが HTML を知っているなら, この中にも head と body というセクションがあるのを知っているでしょう. この body がまさに「ドキュメントの主要部」の意味です.

ちなみに上の portion はポーションと読みます. あなたは「ポーション」と聞くとゲームのファイナルファンタジーで出てくる回復アイテムとしてのポーションを想像するかもしれません. それは potion で別物です. 特に Wiktionary によると, ラテン語の potio (飲み物) に由来していて, ラテン語自体がさらにギリシャ語の poton に由来します.

以降第 4 文の単語: 第 3 文と間違った

物理の専門用語

neighbourhood

これは neighbour +‎ -hood に分解できます. Neighbour はゲルマン祖語の nēhwagabūrô (neighbour) に由来し, nigh +‎ bower に分解できます. Nigh は near と同根であり, bower はゲルマン祖語の būraz (room, abode) に由来し, ドイツ語の Bauer (birdcage) と同根です.

一方 -hood はゲルマン祖語の *haiduz に由来し, ドイツ語の -heit と同根です.

certain: 一定の

Wiktionary によると古フランス語の certain の借用語であり, 俗ラテン語の unattested form である *certānus, ラテン語の extended form である certus ("fixed, resolved, certain"), 同じ語源で cernere ("to separate, perceive, decide") の過去分詞 cretus に由来します.

読解編で見るように第 4 文で with a certain definite energy という形で出てきます. ここで問題なのは certain と definite の使い分けです. この 2 語は実際に同じような意味でどう使い分けているかが問題になります. いくつか調べてみた結果を引用しておきます.

certain: of a specific but unspecified character, quantity, or degree. "The house has a certain charm." Using "definite charm" in this case simply doesn't fit.

definite: free of all ambiguity, uncertainty, or obscurity. "We need a definite answer." Using "certain answer" in this case wouldn't mean the same thing.

上の with a certain definite energy については次のように使い分けているのでしょう.

Definite の意味については definite, 特に動詞の define の項も参考にしてください. Define の意味は「定義する」であり, 曖昧さなく範囲を明確にするイメージがあります. 特に制限をかけるというニュアンスもあります. これを前提にすると語のイメージがもう少しはっきりするでしょう.

definite: 決まった

Wiktionary によるとラテン語の dēfīniō の過去分詞 dēfīnītus に由来し, 英語の define とも関係があります. 単語 define の記述も参考にしてください.

読解編 (論文) の第 4 文には with a certain definite energy という句が出てきます. ここで certain と definite の使い分けが問題になります. Certain の項に解説をつけておいたのでそちらも参考にしてください.

energy: エネルギー

中フランス語の énergie, 後期ラテン語の energia, 古ギリシャ語の enérgeia (activity), energós (active) に由来します. この energós は en (in) + érgon (work) と分解できます. 物理での意味はトーマス-ヤングの 1802 年の講義に由来します.

ギリシャ語 érgon はヘレニック祖語 wérgon, 印欧祖語 wérǵom に由来します. これは古英語 weorc (English work) と同根です. ここまで来ると energy が work と同根であるとわかります. 物理の専門用語としても仕事 (work) とエネルギー (energy) の関係は重要ですが, 語源の上でもきちんと関連しているのです.

producing $\gets$ produce: 生み出す

ラテン語 prōdūcō ("to lead forth") の借用語です. これは prō- ("forth, forward") + dūcō ("to lead, bring") と分解できます.

current: 電流 (物理の専門用語)

Wiktionary によると古フランス語 courre (to run) の現在分詞 curant (courant) の借用語であり, ラテン語 currō (I run) の現在能動原形 currere (to run, move quickly) に由来します. Courant の二重語でもあります.

意味としては「いままさに流れているもの (走っているもの)」です. ここから貨幣 (currency: 金は世の回りもの) と言った意味も出てきます. 語源, そして語のコアミーミングには常に注意を払うようにすると, 急がば回れで語彙力と言語直観が磨かれます.

流れを表す英単語では flow も物理・数学でよく出てきます. こちらはゲルマン祖語の flōaną (to flow), 印欧祖語の plōw- や plew- (to fly, flow, run) に由来します. Wiktionary には float と比較するよう指示があり, そちらを眺めてみると float はゲルマン祖語の flutōną (to float), 印欧祖語の plewd-, plew- (to float, swim, fly) に由来します. 古ギリシャ語の pléō, ラテン語の plaustrum (wagon, cart) とも同根です.

places $\gets$ place: 場所

Wiktionary によるとラテン語の platea (plaza, wide street), 古ギリシャ語の plateîa に由来し, ギリシャ語については plateîa hodós (broad way) の略語です. 他には印欧祖語では plat- (to spread) に由来し, これは pleh₂- (flat) の extended form です.

単語 plazapiazza の二重語でもあります. 前者の plaza はスペイン語の plaza (town-square or central place of gathering) にも由来を持ちます. 後者の piazza はイタリア語の piazza に由来します.

スペルを見ると pizza, つまりピザとの関係もありそうですが, Wiktionary によると pizza の語源はまだ確かなことがわかっていないようです. 一応中世ギリシャ語 (Byzantine Greek) の pítta (cake, pie), 古ギリシャ語 píssa (pitch), ラテン語の pinsō (I beat, pound) に由来するのではないかとは書いてあります.

where: 関係代名詞

Wiktionary によるとゲルマン祖語 hwar (where), 印欧祖語の疑問代名詞 kʷo- に由来します. ドイツ語の wo (where) と同根です. フランス語では で, これはラテン語の ubi (where) に由来します.

この ubi は ubiquitous の ubi で, 一昔前にユビキタス社会と言っていたその ubiquitous です. ユビキタス社会は次のような意味です.

疑問詞はフランス語・ラテン語由来ではなくゲルマン語由来であり, 疑問詞のような基本的なゲルマン語由来であることは英語がゲルマン系の語彙である事情を反映しています.

parts $\gets$ part: 部分

Wiktionary によるとラテン語の pars (piece, portion, share, side, party, faction, role, character, lot, fate, task, lesson, part, member) の対格である partem, 印欧祖語の par-, per- (to cut, bore) に由来します. ラテン語の portio (a portion, part), parare (to make ready, prepare) にも似ています.

situate: 位置する

Wiktionary によると後期ラテン語の situātus に由来します. これは中世ラテン語の situō (to locate, place) の過去分詞であり, 同じくラテン語の situs (a site) に由来します.

数学で現在トポロジー (位相幾何) と呼ばれる分野は, フランス人数学者のポアンカレの論文 Analysis Situs に由来して実際にこのように呼ばれていました. 数学史では有名な話です.