第 014 回 第 6 文の読解

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これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください.

勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します.

適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

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内容: コンテンツ (案) からの転記

第 6 文

en.6

Examples of this sort, together with the unsuccessful attempts to discover any motion of the earth relatively to the light medium, suggest that the phenomena of electrodynamics as well as of mechanics possess no properties corresponding to the idea of absolute rest. They suggest rather that, as has already been shown to the first order of small quantities, the same laws of electrodynamics and optics will be valid for all frames of reference for which the equations of mechanics hold good.

de.6

Beispiele ähnlicher Art, sowie die misslungenen Versuche, eine Bewegung der Erde relativ zum "Lichtmedium" zu konstatieren, führen zu der Vermutung, dass dem Begriffe der absoluten Ruhe nicht nur in der Mechanik, sondern auch in der Elektrodynamik keine Eigenschaften der Erscheinungen entsprechen, sondern dass vielmehr für alle Koordinatensysteme, für welche die mechanischen Gleichungen gelten, auch die gleichen elektrodynamischen und optischen Gesetze gelten, wie dies für die Grössen erster Ordnung bereits erwiesen ist.

fr.6

Des exemples similaires, tout comme l'essai infructueux de confirmer le mouvement de la Terre relativement au «médium de la lumière», nous amène à la supposition que non seulement en mécanique, mais aussi en électrodynamique, aucune propriété des faits observés ne correspond au concept de repos absolu; et que dans tous les systèmes de coordonnées où les équations de la mécanique sont vraies, les équations électrodynamiques et optiques équivalentes sont également vraies, comme il a été déjà montré par l'approximation au premier ordre des grandeurs.

jp.6

光の媒質に対して相対的な地球のどんな運動を見つけられなかったことと合わせて, この種の例が示唆するのは, 電磁気現象と力学現象は絶対静止の概念に対応するどんな性質も持たないことである. それらはむしろ次の内容を示唆する: つまり既に 1 次の微少量までは示されているように, 力学の方程式がよく成り立つ全ての座標系に対して, 電気力学と光学の物理法則は正しい.

解説

英語第 1 文

構文

文構造を確認しましょう.

まず主節は A suggest that の構造で that 節があり, カンマに挟まれた, together with からなる副詞句が長い挿入があります.

Examples of this sort suggest that

これが主節です. 主語はもちろん Examples of this sort です. 間の長い挿入を無視して動詞 suggest を見つけられうかがまず勝負です.

Examples of this sort は「この種の例」と訳し, suggest that --- は「---を示唆する」と訳せばいいでしょう. 何を示唆するかが that 節の中身です. Examples は無冠詞の複数で, sort は単数で this の限定がついていることに注意してください.

よく suggest は suggest that のかたまりで出てきますし, 提案の内容までセットで骨格を掴みたいと思うのも人情です. 先に補足説明を除いた骨格を示しておくと次の通りです.

何故これが骨格なのか調べてみましょう.

(that) the phenomena of electrodynamics as well as of mechanics possess no properties corresponding to the idea of absolute rest

Suggest の目的語である that 節は主語が長いものの, 主な構造は the phenomena possess no properties です. The phenomena と possess の間にある of A as well as of B が phenomena の補足説明で as well as は and と思ってください. No properties の補足説明が corresponding to からなる形容詞句です. ついでに動詞が possess になっているので the phenomena は複数形であることもわかります.

ここで examples は何なのか, phenomena は何なのか, no properties は何なのかを説明する句がたくさんある構造がわかります. 先にこの骨組を見抜いておき, 修飾がある単語に対して「確かに補足してもらわないとわからないな」と感じるのも大事です. それぞれ複数形であることも大事です. 冠詞の有無にも注意しましょう.

では深掘りしていきましょう. まずは基本構造の the phenomena possess no properties からはじめます. 名詞 phenomena は phenomenon の複数形で「現象」という意味です. 動詞 possess は have と思ってください. 目的語の no properties は直接日本語では表現しづらいので多少意訳して, この全体は「その現象は (以下で説明する) 性質を何も持たない」と訳せます. 目的語の no properties は英語らしい表現で, 多くの場合「そのような性質はない」などと訳せば問題ありません. 次の例文がイメージしやすいでしょう.

次に主語を詳しく見てみます.

これは単に the phenomena of electrodynamics and mechanics と思えばよく, 「電気力学的な現象と力学的な現象」とシンプルに訳せば十分です. 電気力学と力学という専門用語, ギリシャ語由来の phenomena が複数形であることがポイントです.

次は動詞を詳しく見てみます. 動詞 possess は単純に「持つ」と思いましょう. もしあなたがサッカーが好きなら「ボールのポゼッション」という言葉を聞いたことがあるでしょう. 「ボールをどれだけ持っているか」という意味で, サッカーで言えばチームのボール所有支配率という意味です. スポーツなり何なり, 身近に英語を含めた多言語は溢れています. 自分なりの言語, ひいては情報収集ルートを整備してみてください.

次は目的語です.

TODO the idea の定冠詞に関して言及

No properties は冠詞のない複数形で正体不明です. 何かしら補足説明があるべきで, それが corresponding to からなる形容詞句です.

Absolute は「絶対」という意味で relative 「相対」に対応する単語です. Relative に対応する単語である以上, この論文のキーワードです. そしてここでの rest は「静止」という意味で, absolute rest で「絶対静止」です. 静止状態 (概念) は座標系の取り方による概念であり, 静止状態は相対的にしか定義できず, 絶対的な静止状態が存在しないという特殊相対性理論の重要な主張につながります. この論文の内容として本質的な部分です. 冒頭でテーマをすっきり論じるのは欧米系の文章作法であり, それに即して議論が進んでいることがわかります.

together with the unsuccessful attempts to discover any motion of the earth relatively to the light medium

挿入句で examples of this sort を補足しています. 第 5 文までは理論上の話であり, いわば人間の頭の中の話です. この挿入句が何を言っているかというと実験に関する話です. ここでの attempts は実験の話なのです.

物理は実験科学である以上, どれだけ理論的に優れて見えたとしても実験と合わないならその理論は捨てるしかありません. その重要な話を補足説明しているのです. これは理論の論文で理論に重点がある以上, 話の筋は理論的な問題です. しかし実験的にもきちんと支持されている話だという補足なのです. Together with attempts でここまで読み取る必要があります. 物理学者はそういう思考習慣があると言っても構いません.

ここで大事なのは attempts は単に attempts なのではなく, the (unsuccessful) attempts と定冠詞がついています. つまり「物理学者であるあなたなら先刻承知の試み」だと言っています. 高校物理でも出てくるマイケルソン-モーリーの実験があり, 当時でもこれらの実験を自然と結びつけられたのでしょう. この特殊相対性理論の論文には他の論文の引用がなく, これらの実験に関する論文をきちんと引用するべきだったという批判があることもコメントしておきましょう. 何にせよこの 1 文で実験に関する諸々を一気に説明していて, いわゆる大きな行間がある挿入句なのです.

読解上のコメントが先行しました. 文法的に解析しながら読み進めてみましょう. まず together with the attempts が基本構造です. どんな unsuccessful attempts なのかが気になるので 即 to discover の形容詞句での説明があります. Discover の目的語は any motion で, any motion をさらに of the earth が修飾しています. 最後の relatively to the light medium はまず to the light medium が any motion of the earth を修飾していて, relatively は to the light medium を修飾しています.

まずは to discover any motion から見てみましょう. ここの any は unsuccessful の un (not) と結びついています. 「いろいろがんばって見たがどんな運動も見つけられなかった」のです. どんな運動なのかが気になるので, それを of からの形容詞句で説明されています.

ここの discover の目的語は次の文 (節) であると思った方がわかりやすいかもしれません.

こうした節で表現すると any motion の any はこの構文ですっきりと表現するのが難しく, discover any motion と名詞で表現するとすっきり書けることもわかります. 念のため move relative to に関する例文を 1 つ紹介しておきます.

さて, 元の文章に戻りましょう. まずは of the earth で地球の運動なのだと説明されています. Earth は普通名詞で定冠詞がつくという教科書にも書いてある話が出てきて, 教科書が役に立つことを教えてくれます.

特殊相対性理論は運動の相対性を問う理論なので, 何に対して相対的な運動なのかが気になります. それが relatively to the light medium です. つまり「光の媒質に対して相対的な運動」なのだとわかります.

ここでまた the light medium と定冠詞がついていることに注意します. 「あなたも先刻承知の光の媒質」でありいわゆるエーテルです.

TODO as well as = and でもいいときはある. 翻訳者泣かせ. 「B だけでなく A」, 「A と B」どちらがわかっていることか, 重きを置くかで文脈によって決まる.

英語第 2 文

構文

主節は They suggest that で suggest する内容が that 節の内容です. 最初の they は前文の主語である「この種の例」を指しています. 主節は前文と同じで they suggest that という形になっていることにも注意しましょう.

この that のあとに ", as ...," とカンマで区切られた as 節は that 節に対する副詞節です. あとで調べることにしましょう. Suggest に対する that 節のメインの構造は the same laws will be vaild です.

They suggest rather that

これが主節で基本的には英語第 1 文と同じ構造です. Suggest が「提案する」で提案内容は that 節の内容です. 文章理解の上では主語 they の理解が大事です. 前文 (第 1 文) の主語 examples of this sort, together with the unsuccessful attempts と思えばいいでしょう.

ここの rather が解釈上重要です. 日本語では「むしろ」とでも訳せばいいでしょう. これは次のように捉えます.

つまり the customary view からの大きな転換を表しているのです.

目的語の that 節を見ると as has already からはじまる挿入節があります. この挿入節は後回しにして, that 節の本体を確認しましょう.