第016回 第6文の補足, 第7文の読解¶
まず確認¶
- 録画はじめた?
- 音は大丈夫?
- 一度音声が入っていなくてひどい目に遭ったことを忘れないように.
- 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
- 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.
記事公開手順¶
- 動画が変換でき次第, YouTube にアップしておく
- md を整理しつつオリジナルのコンテンツに追記する
- md の「講義動画と関連リンク」を書き換える
- YouTube へのリンクのタイトル・URL
- 自サイト記事へのリンク URL
- ブログに記事を上げる
- URL スラッグは「studygroup-for-relativity」
- Twitter で共有
- YouTube のタイトルと説明欄
- タイトルは md・ブログ のタイトル
- 説明欄は次の通り
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- 動画を公開して Twitter・Slack で共有
- md を GitHub にアップロード
YouTube 公開用: これを読んでいる方への注意・言い訳¶
これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください.
勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します.
適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.
講義動画と関連リンク¶
- YouTube へのリンク: 第 016 回 第6文の補足, 第7文の読解 アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を英語・多言語で読む会 よくわからない数学 理系のための語学・リベラルアーツ
- YouTube 勉強会シリーズのリスト: アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を多言語で読む会
今日の予定¶
- 第6文の補足
- 第7文の読解
進捗・TODO・今日のメモ¶
- 第7文の全体構造まで
- 次回は第7文の本文から
内容: コンテンツ (案) からの転記¶
第6文¶
補足¶
英語第 1 文¶
実験科学としての物理, そして数学¶
この論文は理論の論文ですが, 上で補足したように大事なところに関してはきちんと実験にも言及があります. 理論だからといって実験を無視してはいけないのです.
物理を勉強するためには数学の勉強も必要です. そこで数学の勉強に役立つ話もしておきます. 数学にもいろいろな形で「実験」が必要で重要です. 電磁気学でも有名なガウスは現代では数学者として有名です. そのガウスは常人には対応しきれない膨大な計算を捌いた人間としても有名です. そのガウスを受けて日本人数学者の高木貞治は「数学は帰納の学問である」と言いました.
数学ではどうしても一般的な定理に注意が向きがちですが, 膨大な計算例をもとに一般的な規則を予測・推測することこそが数学の核だと主張したのです. ここでいう「数学」は学校で「勉強する」数学ではなく, 自ら切り開いてく学問・アートとしての数学です. 現代では手計算以外にコンピューターを使った計算もあり, 特に物理ではコンピューターを使った計算の重要度が上がってきていますし, そのためには「人工言語の語学」, つまりプログラミングが大事になってきています.
この英語の講座では数学・物理・プログラミングについては議論しきれませんが, 補完する講座・コンテンツを準備しています. ぜひそちらも勉強してみてください.
エーテルの話¶
実験の話の中でエーテルが出てきたので本文の解説には盛り込みませんでしたが, 理論的にも重要なのでここで補足しておきます.
高校の波動の理論や振動・波動の理論では次のような話になっています.
- 波はパターンが空間を伝播する現象である.
- 波はそれ自体に実体があるわけではなく媒質の運動の伝播である.
波をこう定義して理解しようとしていて電場・磁場も波として伝わると見た以上, 電磁波の媒質が何かが当然大問題になります. 電磁波の媒質として想定されたのがエーテルなのです. エーテルがないとなると電磁波はどう伝わるのか, もっと言えば電磁波とは何なのか, 波をどう定式化し直すべきかという物理全体の問題に波及しさえします. 簡単に補足説明しかされていない挿入句は, 実は物理としてはこのくらい重要な転回です.
ちなみに高校の化学で有機化合物としてエーテルが出てきますが, 実はこのエーテルのこの語源は光の媒質としてのエーテルです. こちらも興味があればぜひ調べてみてください. 科学史, そして歴史を深掘りして楽しむ切り口になるでしょう.
イーサネット Ethernet, Aethernet
英語第 2 文¶
英文理解のポイント¶
ここでのポイントは 2 つあります.
- 1 次の微少量までは示されていること.
- 全ての座標系に対して成り立つこと.
前者は物理でよくある近似の話です. 高校の物理でも振動・波動, 光の議論ではよく近似を使ったはずです. ふつう高校物理で使うのは 1 次近似です. To the first order と言っているのはまさにこれです. いま見たい現象を見たい精度で確認できればいいので, 1 次でいいかどうかは何を考えているかによります.
大学の頃, 物理学科の光学の講義はレンズ開発の現場にいる人が講師で, その人が「この式は教科書には近似と書いてあるが, 現場でレンズを開発していると厳密に成り立つ式くらいの気分がある」と言っていました. 現場の開発者として持つべき感覚は工学のそれで物理ともまた違います. こうした背景がある表現なのです.
もう 1 つ, 全ての座標系について成り立つべしという要請は相対性理論の基礎基本であり, この論文のメインテーマです. 座標系は人間側の都合で使う概念でしかなく, そんなものに本質的に依存するようでは自然の記述として不十分だろうという程度のことで, 当たり前と言えば当たり前の主張です. 物理としては解析力学とも共通する発想で, 現代幾何学の母胎である多様体論の基礎でもあります.
歴史的には微分方程式を厳密に解くとき, (解の存在と一意性が言えているなら特に) 「解ければ正義」で, 実際に「何をどうすればそんな変換を思いつけるのか」としか思えない, めちゃくちゃな変数変換や式変形も考えます. 変数変換をした程度のことでもとの方程式の大事な部分が変わってほしくないわけで, こうした具体的な問題が背景にあります.
これはいわば「方程式の大事な部分」を物理と言っていて, それを突き詰めると方程式の不変性といった概念にも導かれます.
数学的補足: 「微少量の 1 次まで」について¶
高校物理でも波動の分野などで$\sqrt{1+x} \approx 1 + \frac{1}{2}x$という近似式が出てきます. 実は$\sqrt{1+x} = 1 + \frac{1}{2}x - \frac{1}{8}x^2 + \frac{1}{16} x^3 + \cdots$という展開があり, テイラー展開と呼ばれています.
ここで$x$が小さいとすると$n > 1$に対する $x^n$は急激に小さくなります. 表にしてみましょう.
$x$ | 0.1 | 0.001 |
---|---|---|
$x^2$ | 0.01 | 0.00001 |
$x^3$ | 0.001 | 0.0000001 |
$x^4$ | 0.0001 | 0.000000001 |
変数$x$の値が小さいとき$1$次の量, つまり$x$に比べて$x^2$はまさに桁違いに小さいので無視できます. 状況にもよりますが「有効数字での検出限界以下になって無視せざるをえない」と思った方が適切かもしれません.
この手の近似計算は高校レベルでさえよくやりますし, 大学に入ってからはなおのことよく出てきます. これは適当な解説書で勉強してみてください. もちろん私が作っている別の講座やコンテンツも参考になるでしょう.
第7文¶
en.7¶
We will raise this conjecture (the purport of which will hereafter be called the Principle of Relativity) to the status of a postulate, and also introduce another postulate, which is only apparently irreconcilable with the former, namely, that light is always propagated in empty space with a definite velocity $c$ which is independent of the state of motion of the emitting body.
de.7¶
folgenden = following nahmen = name Raume = room bewegen = be+weg <- vector
Wir wollen diese Vermutung (deren Inhalt im folgenden "Prinzip der Relativität" genannt werden wird) zur Voraussetzung erheben und ausserdem die mit ihm nur scheinbar unerträglich Voraussetzung einführen, dass sich das Licht im leeren Raume stets mit einer bestimmten, vom Bewegungszustande des emittierenden Körpers unabhängigen Geschwindigkeit $V$ fortpflanze.
fr.7¶
suit = following de = of of: 分離のof de = 分離の意味を持つ接頭辞, e.g. depart autre = other 光量 lumen like, alike = gleich peut = pouvoir = can (possible)
Dans le texte qui suit, nous élevons cette conjecture au rang de postulat (que nous appellerons dorénavant «principe de relativité») et introduisons un autre postulat --- qui au premier regard est incompatible avec le premier --- que la lumière se propage dans l'espace vide, à une vitesse $V$ indépendante de l'état de mouvement du corps émetteur.
- (NdT 2) (l'espace vide) Par «espace vide», il faut comprendre «vide parfait», que l'on peut presque assimiler à l'espace intersidéral dénué de toute matière.
jp.7¶
私達はこの予想を公準の地位にまで持ち上げよう: 以下ではこれを相対性原理と呼ぶことにする. そしてもうひとつ, 光はそれを放射する物体の運動状態によらず, 常に真空中を一定の速度$c$で伝播するという公準を導入する. 一見するとこれは前者と調和しない.