第021回 第9文の読解

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進捗・TODO・今日のメモ

内容: コンテンツ (案) からの転記

英語と格, 発音と文法

第9文

対象文

en.9

The introduction of a luminiferous ether will prove to be superfluous inasmuch as the view here to be developed will not require an "absolutely stationary space" provided with special properties, nor assign a velocity-vector to a point of the empty space in which electromagnetic processes take place.

英語解説

構造

これも長い文なので文構造に注意して読みましょう. Inasmuch as は「...だから」「...である限りは」という意味の接続詞で, まずここで文が切れることに注意します. 同じく接続詞の nor にも注意してください.

接続詞に注意しながら各文の骨格を抜き出します.

Nor がつなぐ文がどこと並置されているかは判断が必要です. ここでは inasmuch as と並べた上で省略された主語を the view としています.

The introduction of a luminiferous ether will prove to be superfluous

各文をさらに詳しく見ます. 文型は第 3 文型 SVO と見るのが素直です. 一方で prove to be の be に注目して第二文型 SVC とみなす手もあります. このとき will be able to と同じように will と prove to が助動詞・一般化助動詞としてはたらいているとみなします. ここでは後者の味方で進めましょう. つまりメインの構造は次の通りです.

TODO どちらでもいいが, きちんと書く.

まず the introduction「導入」が superfluous「余分」です. 余分な様子を補足するのが will と prove to であり prove は「証明する」なので, この論文で展開される議論が余分であることを示すこと, これからこの論文で展開するという未来または予告を表しています.

ここで introduction には唐突に定冠詞 the がついています. 何の introduction かというと of 以下で示されていて, luminiferous ether 「発光性のエーテル」, いわゆる光の媒質として想定されたエーテルです. この the はこの論文が書かれた時代, もしくは物理学史的な常識として「あなたもご存知, エーテルの導入」という気分を表しているのでしょう. 物理学史やこの論文が書かれた時代背景を知らないと, なぜこれが the なのかは理解できません.

TODO: ether の冠詞は a? 何でだろう? 不思議な使い方ではある. luminiferous がついている ether だから a をつけているのはそれはそう.

inasmuch as the view here to be developed will not require an "absolutely stationary space" provided with special properties

先程書いたようにメインの構造は次の通りです.

第 3 文型 SVO です. 主語は the view 「視点」で定冠詞がついているため既知の概念です.

TODO: 既知というわけでもない.

引き続き未来表現の will が出て来ていて, この論文で明らかにされることを示唆しています. 目的語は a space 「空間」と不定冠詞がついているので, まだ説明していない空間概念であることが示唆されます. ふつう space は抽象的な意味を持つ不可算名詞ですが, ここでは不定冠詞がついていて可算化していることにも注意しましょう.

The view は既知なのはいいとして, 具体的にどんな視点なのかが気になります. これは here to be developed で補足されています. To 不定詞句 to be developed はよくある日本語訳で言えば「開発される (視点)」です. ここでは未来表現ともセットで「展開される視点」と思えばいいでしょう. Here は to be developed を補足する副詞と思えばよく, 特に「以下, この論文で」くらいの気分で理解します.

次に目的語の a space の修飾内容を詳しく確認します. これは an absolutely stationary space provided with special properties で, an absolutely stationary space と provided with special properties に分けられます.

まず an absolutely stationary space は「絶対静止空間」と訳せばいいでしょう. 特殊相対性理論では絶対静止という概念が否定されます. 相対性理論の相対性という言葉の由来なので決定的なキーワードです.

後半の provided with special properties は熟語として有名な provide A with B 「A に B を与える」に由来していて, 受身形として A = a space が前に出ていて, B は special properties があたります.

この熟語は with の意味に囚われず provide A (前置詞) B, 特に provide A to B のように考えましょう. この「動詞 A to B」は型として「A を B に向ける」という意味があり, 向け方が動詞の意味で決まります. ここでは provide なので「与える」方向で B に向けています. 前置詞 with を使うのはコロケーションの問題で, 究極的には暗記するしかありません.

nor assign a velocity-vector to a point of the empty space in which electromagnetic processes take place

まず接続詞 nor 「---もない」に注意してください. Inasmuch as でつながれた前の文は will not と否定形の表現であり, こちらの文でも同じように否定的な内容を伝えていることがわかります. 接続詞 nor は等位接続詞なので前の文と並列的な意味・構造を持つことも示しています. この上で主語がないことにも注意してください. Nor が等位接続詞であることを思えば主語は the view だと思えばいいでしょう. さらに the view が明らかに単数である一方, 動詞は assign と原形です. このギャップを埋めるには前の文の動詞が will not require で助動詞 will があることに注意し, will が省略されていると見抜く必要があります. 名詞の単複は常に意識しましょう.

ここまで来れば次の基本的な構造がわかります.

構造としては assign A to B 「A を B に割り当てる」です. ここもやはり「動詞 A to B; A を B に向ける」の構造があり, 向け方が assign で指定されています.

文法上の直接的な目的語は a velocity-vector 「速度ベクトル」です. 速度・速さといえば speed をイメージするかもしれません. しかし物理で速度はここで出てくる velocity です. 高校物理でなぜ速度に v を使うかといえばこの velocity からです. 大学の物理では状況によって明確なので必ずしも厳密に使い分けないものの, 一般には速度はベクトルで速度の大きさである速さはスカラーで speed です.

TODO: 速さは本当にspeedか? あとで調べる.

不定冠詞 a がついていることも注意してください. この文全体の意味を考えると, a vector を a point に割り当てるという形になっていて, 不定冠詞の意味は「あるひとつのベクトルをある点に割り当てる」ことを意味しています. これは$v = v(x,y,z)$というベクトル値関数を考えるといっても構いません. 正確には nor assign なので「こういうベクトル値関数$v$を考えない」です.

TODO: 不定冠詞というより単数であることが大事.

Assign A to B の B にあたる a point を考えましょう. 不定冠詞 a の意味は上で説明しました. A point では一般的すぎてよくわからないので of the empty space と補足があります. The empty space は字義通りには「何もない空間」であり, 物理としては「真空 vacuum」と言うこともあります. ここで真空に the がついていることに注意してください. 例えば第 7 文では無冠詞で empty space が出てきます. 既に言及した empty space であることも示唆しています.

TODO: 説明が変な気がする. 真空は一つしかない? 場の量子論ではいろいろな真空がある.

最後に in which での関係代名詞があります.

動詞 (句) が take place 「起きる・起こる」で三単現の s がなく, electromagnetic processes という複数形の名詞があるので, これがこの関係代名詞節の主語・動詞とみなして問題ないでしょう. いま take place で自動詞扱いなので第一文型 SV です. どこで起きるのかが気になるわけで, それが in which の in で示されています. 当然先行詞が何かが気になります. 何らかの意味で場所であるべきで, 関係代名詞はふつう直前の名詞にかかるので素直に the empty space が先行詞と思えばいいでしょう.

TODO: エーテル: 電磁波としての光が伝播する媒質.

ここで注意してほしいことがあります. 前置詞 in は意味として「広がりの中にある」ことを表し, in space のような使い方をするのがふつうで in a point は不自然です. さらに point にはふつう at a point と 1 点を指す at が出てくるのがふつうなので, in which の先行詞としてはやはり a point ではなく space を選ぶべきです. また electromagnetic processes と複数の process が起こる場所としても, 1 点よりは広がりのある空間が適切です.

TODO: 一点の部分は説明微妙なので削るか書き換えるかする.

まとめると, in which の先行詞は文法的・機械的に直前の名詞と思って問題はありません. 一方で in との対応や意味的な対応からも直前の名詞 space を先行詞にするべきことが示唆されます. たくさんの「当たり前」が重なりあっていると言っても構いません. この当たり前をきちんと積み重ねていくと英語に対する感覚が養われていき, 文章を正確に読み書きできるようになります.

補足

電磁過程が起こる真空の点に速度ベクトルを割り当てもしない

これは絶対静止空間が存在しないのだから, それに対する速度ベクトルが何かを考える必要もないという意味です.

TODO: 何を言おうとしたか? マイケルソン-モーリー: 媒質(エーテル)の相対的速度を測ろうとして相対速度が検出できなかった実験.

このあたりは相対性理論にとって本質的な物理の内容に踏み込んだ議論なので, 物理の話をせずに済ませることはできません. そして英語の解説を中心とするこの講座では説明しきれない部分です. ぜひ物理として相対性理論をきちんと勉強してみてください.