第023回 第10文の読解

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まず確認

記事公開手順

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(講義動画と関連リンクの内容)

以下いつもの関連コンテンツ群です。

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YouTube 公開用: これを読んでいる方への注意・言い訳

これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください.

勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します.

適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

講義動画と関連リンク

今日の予定

進捗・TODO・今日のメモ

内容: コンテンツ (案) からの転記

第10文

対象文

en.10

The theory to be developed is based ---like all electrodynamics--- on the kinematics of the rigid body, since the assertions of any such theory have to do with the relationships between rigid bodies (systems of co-ordinates), clocks, and electromagnetic processes.

de.10

der: 男性名詞につく die: 女性名詞または複数形 das: 中性につく. der, die, das は名詞の格に合わせて変わる. der des dem den (1-4格) die der der die das dem des das (怪しい) die der den die

ドイツ語の名詞は必ず先頭が大文字.

jede = each, any andere = other auf = over da = then aus = out Aussagen = out say = 外に出して言う Beziehungen <- Beziehung = relation zwei = two Uhr = clock <- hour = fr. horloge = it. orolog

zwischen = between

Die zu entwickelnde Theorie stützt sich --- wie jede andere Elektrodynamik --- auf die Kinematik des starren Körpers, da die Aussagen einer jeden Theorie Beziehungen zwischen starren Körpern (Koordinatensystemen), Uhren und electromagnetischen Prozessen betreffen.

be + treffen

jp.10

全ての電気力学と同じように, これから議論する理論は剛体の運動学に基づく. そのような理論に関する主張は何であれ, 剛体 (座標系), 時計, 電磁過程の間の関係を扱うからである.

イオンの電気力学, 電子の電気力学 何とかさんの提唱する理論 相対論的粒子の上で適当な仮定がくっつく プラズマ

英語解説

文構造

基本の文構造は次の通りです.

まず接続詞の since に注目しましょう. 中学高校ではあまり見かけないものの, 専門的な文章では as, because のように理由を説明する従属節を導きます. 前文からの流れを重視して先に結論を書き, そのあとに理由を補足している構造を見抜いてください.

TODO since, asのニュアンスの話 because > since > as

The theory to be developed is based on the kinematics of the rigid body

形式的には受動態で書かれていて第一文型の趣があります. しかしここでは is based on を熟語または 1 かたまりの動詞句とみなして第三文型SVOとみなした方が素直です. 主語は The theory, 動詞は is based on, 目的語は the kinematics of the rigid body です.

memo: isを動詞でSVCの方がよくある? (趣味の話もある?) based onで形容詞句と取る.

先程書いたように動詞は is based on で熟語「---に基づく」という意味です. Base は名詞で基地といった意味も持ち, 前置詞 on の「上にいる」という意味から字義通りには「拠点の上に置かれた」という意味で, 転じて「---に基づく」になります.

主語は the theory to be developed で定冠詞が入っています. ここでのポイントは定冠詞 + to be developed です. まず定冠詞がついているので「あなたもご存知の理論」であり, ここまで紹介してきた理論です. いまは論文の前文でありここまで紹介してきたのはあくまで理論の概要なので, 正式には論文の続く記述で詳しく議論する理論です. それが to be developed で表されています. もちろん形式的には単なる to 不定詞句の形容詞的用法です. しかし前置詞 to には行き先指定の役割があり, そこから目的に向かっていく動的なイメージもあります. つまり「これまで概要しか語っていなかったが, 詳しい話はこれから発展させる」という意味も込められています. 前文でも出てきた the view here to be developed と同じです.

目的語は the kinematics of the rigid body で名詞は両方定冠詞つきです. この kinematics は学問名「運動学」で s がついていても単数です. 単純な学問名には冠詞がつかないので何か特定の運動学のはずです. それが of the rigid body 「剛体」で示されています. この定冠詞は特定の剛体を意識しているというより, 他の何かの運動学ではなく総称的・一般的な剛体の運動学という意味です.

特定の対象を指す定冠詞と総称的な定冠詞の用法については文法編, 冠詞の「定冠詞 the の使い方: all の意味, 総称的な用法」を参考にしてください.

---like all electrodynamics---

単純な挿入です. 基本的には修飾したい語の近くに置きます. ここでは動詞の近くにあることもふまえ, 素直に like は副詞句を導いていると見ます. 訳としては「全ての電磁気学のように」でいいでしょう.

TODO electrodynamicsはallがかかるので複数

補足で物理として注意するべき点を説明しています. 興味があれば眺めてみてください.

since the assertions of any such theory have to do with the relationships

Since は理由に関する従属節を導く接続詞です. 主な構造は次のようになっていて第三文型SVOです.

もちろん主語は the assertions, 動詞句は have to do with, 目的語は the relationships です. Of any such theory は主語を補足説明する形容詞句です.

主語の assertions 「主張」に the がついていることに注意しましょう. どんな主張かといえば of any such theory 「そのような理論のどれも」です. ここでの such はここまでの議論の流れを受けていて, 主節の主語の the theory と同じ類の理論という意味です.

TODO any --- と every --- でどんな感覚の違いがあるだろうか? anyだと例外がないとかいう感じのニュアンス入る.

動詞に関しては熟語 have to do with A 「A を扱う」を覚えてください. これは to do with A を to 不定詞の名詞用法と思い, 「A と一緒にするべきことを持つ = A に対処する, A を扱う」と翻訳できれば覚えていなくても理解・対処はできます. しかし語学に限らず, 何をするにしても一定量の暗記は絶対に必要です. 覚えるべきはきちんと覚えましょう.

TODO haveはいろいろな用法があるので, それ自体を深く覚えつつ応用できると便利だし, その必要がある. cf. I have a headache.

最後の the relations 「特定の複数の関係」は定冠詞がついて複数であることに注意しましょう. 関係である以上, 何かと何かを結びつける必要があり, その補足説明が必要で, それがまさに between 以下で説明されています.

memo: of the relations はネイティブでもtheを入れるかわかれる.

between rigid bodies (systems of co-ordinates), clocks, and electromagnetic processes

The relations が何の間の関係なのかを示す形容詞句です. 全て冠詞なしの複数形で, 一般的な剛体 (座標系, systems of co-ordinates), 時計, 電磁過程です. 座標系は単に coordinate system と書く方が多いでしょう. ここで Co-ordinates と複数なのは座標の成分が空間部分で x, y, z の 3 つに時間部分を加えた 4 つあるのと対応しています.

(TODO co-ordinates の複数の説明は上の説明で大丈夫?) 一次元の場合は単数になる用例が多い. 高次元だとふつう複数を取る. coordinate systemだとcoordinateが形容詞扱いで形式的に単数で書く.

剛体 (座標系) も電磁過程も, この時点で何を意図しているかまだわかりません. そしてこの関係を追いかけることこそまさに運動学の部の内容で, 特殊相対性理論の力学の核です.

単語

補足

力学と電磁気学の齟齬

挿入句の ---like all electrodynamics--- に対する補足です. ここを物理としてどう読めばいいかが問題です. ここで細かい議論はしきれません. 興味があればぜひ物理としてきちんと勉強してみてください.

さて, この当時の問題を現代的に整理すると, 力学の基礎方程式であるニュートンの運動方程式を不変にする座標変換がガリレイ変換である一方, このガリレイ変換が電磁気学の基礎方程式であるマクスウェル方程式を不変にしない問題がありました. 説明しきれないところなのでなぜ座標変換が大事かには触れません.

高校でも大学でも物理は力学からはじめます. 直観的であり, 必要な数学的知識も少なく済み, 計算練習のテーマもたくさんあれば物理の歴史上重要な問題も揃っているといった勉強のしやすさもあります. そしてそれ以上に物理で重要な概念がたくさん出てくるのです. 自然のモデル化, モデルの階層性や近似計算などの都合もあります. ある意味で一番物理らしい理論が力学なのだと言っても過言ではありません.

一方でマクスウェル方程式は電磁気学の基本中の基本です. これらを理論的・数学的に考える上で方程式を不変にする座標変換はやはり基本的な概念で, 力学と電磁気学で齟齬があるというのは物理の理論としては気分がよくないのです.

ここでマクスウェル方程式を不変にする変換はローレンツ変換と呼ばれ, まさに特殊相対性理論の誕生前夜の 19 世紀後半から 20 世紀冒頭に重要性がはっきりしました. 名前がついている通り, ローレンツが発見・整理した概念・議論です. ただローレンツは数学的にそうなると主張しただけで, これの物理的な意義を深めるにいたらなかったと言われています. そしてこれらの齟齬やローレンツ変換の物理を明らかにしたのがアインシュタインで, この論文なのです.

物理の問題意識や視点, もっと言えば論文執筆当時の問題意識, 物理学の研究動向がわからないと正確には読めない部分です.