第027回 第13文の英文読解・第14文の多言語比較

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まず確認

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内容: コンテンツ (案) からの転記

第13文

対象文

en.13

Let us take a system of co-ordinates in which the equations of Newtonian mechanics hold good(footnote).

(footnote: i.e. to the first approximation.)

de.13

Es liege ein Koordinatensystem vor, in welchem die Newtonschen mechanischen Gleichungen gelten.

ja.13

ニュートン力学の方程式がよく成り立つ座標系を取ろう. (すなわち一次近似の精度で考える.)

英語解説

文構造

基本の構造は次の通りです.

脚注も入れてあります. 文構造としてはいわゆる Let's go の Let's です.

Let us take a system of co-ordinates

強いていえば次のように書き換えられます.

TODO Let us の説明も入れる

まず目的語が a system で不定冠詞の単数, co-ordinates は複数です. 前文から本文に部が切り替わったので改めて仕切り直すという意味で, とにかく何か系 a system を取ったという符丁です.

Co-ordinates 「座標」は coordinates とハイフンなしで書くこともあります. これが複数形なのは$x, y, z$の 3 つまたは$x, y, z, t$の 4 つあることから来ているのでしょう. 数学でも一般相対性理論で重要な微分幾何でうんざりするほど出てくる言葉です. どんな座標系なのかが気になるわけで, それが in which の関係副詞節で説明されています.

TODO 上の関係副詞を関係代名詞・形容詞節なので修正する.

in which the equations of Newtonian mechanics hold good

先行詞は文法上では判定できません. 何を言いたいのかというと, 直前の名詞を修飾すると思えば co-ordinates になりそうなところ, 実際には a system を修飾していると見るべきだという話です. 意味がわからないのはこちらの方なので先行詞は a system です.

中身は第二文型SVCです. The equations が good であり, そのありようが hold で指定されています. 主語から順に見ましょう.

主語は the equations で定冠詞がついた複数形です. 「あなたもご存知の」と言われてもこれだけではよくわからないので, of Newtonian mechanics 「ニュートン力学」という補足が入っています. ニュートン力学の方程式は高校でも出てくる運動方程式で, $x, y, z$座標それぞれの成分に対する方程式で 3 本あるのを複数だと捉えているのでしょう.

ここでの動詞 hold は「成り立つ」という意味で, 物理や数学ではよく使われる用法です. 補語 good は素直に「よく」と思えばよく, hold good は「よく成り立つ」と訳します.

TODO ここの「よく」は「精度がいい」の意味.

単純な翻訳はこれで十分ですが意味がよくわからないでしょう. 実際脚注がつく程度には意味が捉えにくいとは言えます. 物理の議論が必要になるので補足でコメントします.

i.e. to the first approximation

これは hold good についた脚注です. I.e. は「アイイー」とそのまま読むこともあれば, that is と読むこともあります. 実はラテン語 id est の略で「すなわち」の意味です. (it is.) 英語 that is も「すなわち」の意味です.

est = (be 動詞の活用) (fr) être = je suis, tu es, il est.

To the first approximation は「一次近似で」という意味で, 「よく成り立つ」という精度に関わる注意で, これまた物理ではよく出てくる議論です. 定冠詞 the がついているのは英語の感覚という意味で注目するところでしょう. ここでの to は「---の範囲まで」という意味を表しています.

節終了

第14文

対象文

en.14

In order to render our presentation more precise and to distinguish this system of co-ordinates verbally from others which will be introduced hereafter, we call it the stationary system.

de.14

Wir nennen dies Koordinatensystem zur sprachlichen Unterscheidung von später einzuführenden Koordinatensystemen und zur Präzisierung der Vorstellung das „ruhende System".

fr.14

Pour distinguer ce système d'un autre qui sera introduit plus tard, et pour rendre cette notion plus claire, nous l'appellerons le «système stationnaire».

it.14

Chiamiamo questo sistema di coordinate il "sistema a riposo", per distinguerlo nel discorso dai sistemi di coordinate che si introdurranno in seguito e per precisare la descrizione.

sp.14

A este sistema de coordenadas lo llamaremos "sistema en reposo" a fin de distinguirlo de otros sistemas que se introducirán más adelante y para precisar la presentación.

ru.14

ロシア語も格変化と活用があり, その原形がわからない. さらに名詞は辞書の見出し語は単数の主格らしく, その形が判定できないので辞書で満足に調べることもできていない.

Для отличия от вводимых позже координатных систем и для уточнения терминологии назовем эту координатную систему «покоящейся системой».

sch.14

为丁使我们的陈述比较严谨, 并且便于将这坐标系同以后要引进来的别的坐标系在字面上加以区别, 我们叫它"静系".

ja.14

我々の議論をより厳密にするため, そしてこの座標系と後で導入する座標系を言葉の上で区別するために, それを静止系と呼ぶことにする.

英語解説

文構造

基本は次の通りです.

To 不定詞による長い副詞句があり, 最後に主節が来ています. 主節の構造は第五文型 SVOC です.

we call it the stationary system

第五文型は「S は V の視点で O = C であると思っている」という意味を持っています. ここでは it = the stationary system であると call する, つまり「そうみなす・定義する」という意味です. 実際 call は「この概念をこう呼ぶ」という形で定義のときに使われる単語です.

主語 we はいわゆる論文の we で, 目的語の it は前文の「ニュートン力学がよく成り立つ座標系」です. 補語の the stationary system には定冠詞がついていることに注意してください. 「あなたもご存知の」というよりも前文で性質を特定した系という意味での特定が入っています.

In order to render our presentation more precise

ここでは and で to 不定詞句がふたつ並んでいるひとつ目です. In order to は to 不定詞句が特に副詞用法であることを表す符丁です. 文型としては第五文型の VOC で, our presentation 「我々の議論」を more precise 「より厳密に」するためと訳せばいいでしょう. 動詞 render は「与える, 描く」といった意味で, ここでは第五文型の型の意味で訳せば十分です.

and to distinguish this system of co-ordinates verbally from others

先程書いたように in order to のもうひとつです. 動詞 distinguish は「区別する」という意味で, this system of co-ordinates 「この座標系」を区別するため, というのが基本的な意味・構造です. ここでは system で冠詞代わりに this が使われています.

区別するためには比較対象が必要でそれは from others で示されています. 複数系で無冠詞なことに注意しましょう. ここでの others は other systems で, 日本語でもこの手の省略はよくあります. ただ others がいまひとつ曖昧なままです. それが次の関係代名詞で補足されています.

which will be introduced hereafter

明らかに主語が欠けた節なので先行詞は主語にあたるはずです. 文法上特別な事情がなければ直前の語を修飾するので, others が先行詞でこの節の主語と判断していいでしょう. 動詞が will になっているので三単現の s があるかないかといった文法上の判断基準は使えないことに注意してください. もっと難しい文章をきちんと読むためにも, 当たり前の判断基準を常に気にかけるのが大事です.

ここでのもうひとつのポイントは未来表現を表す will と, 未来を表す副詞 hereafter です. Others はこれから議論する systems だとして, 文章を読み進めるモチベーションを与えています.

節終了