第028回 第14文の英文読解・第15文の多言語比較¶
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まず確認¶
- 録画はじめた?
- 音は大丈夫?
- 一度音声が入っていなくてひどい目に遭ったことを忘れないように.
- 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
- 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.
YouTube 公開用: これを読んでいる方への注意・言い訳¶
これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください. 勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します. 適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.
講義動画と関連リンク¶
この記事・動画に特化したリンク先は次の通りです。
- YouTube へのリンク: 第14文の英文読解・第15文の多言語比較 アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を英語・多言語で読む会 よくわからない数学 理系のための語学・リベラルアーツ
- YouTube 勉強会シリーズのリスト: アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を多言語で読む会
以下いつもの関連コンテンツ群です。
記事公開手順メモ¶
- 動画が変換でき次第, YouTube にアップしておく
- 勉強会用ファイルを整理しつつオリジナルのコンテンツに追記する
- 動画へのリンクを書き換える
- YouTube のタイトルと説明欄
- タイトルは記事のページタイトル
- 動画を公開して Twitter・Slack で共有
今日の予定¶
- 第 14 文の読解
- 第 15 文の多言語比較
進捗・TODO・今日のメモ¶
- 第15文の多言語比較まで
- 次回: 第 15 文の読解から
内容: コンテンツ (案) からの転記¶
プチ共有¶
- ロシア語はドイツ語と同じで格があり, ロシア語は 6 つ.
- これまたドイツ語と同じく, 格のおかげで語順をかなり自由に取れる.
- 発音の重要性
- 思いついた: たぶん「発音抜きの語学は式抜きの数学・物理と同じ」
- プロソディ: 英語の文の強弱のリズム・ストレス・メロディ.
- 発音しないとわからない部分がある.
- 語呂の良さ: 俳句の五七五 (中国語の五言絶句, 四六駢儷文など)
- 言語ごとの特色もある
- どこまで本当か知らないが, ラマヌジャンを育んだインド, ヒンディー語は音のリズムがよいらしい.
- クルアーンも韻律を重視した文章だとか.
前回の補足: 一次近似について¶
(ニュートン力学がよく成り立つ範囲で)
もう一つ, 次の補足とは別に, 後知恵的になぜこれが一次近似にあたるのかコメントします. 英語にだけこの脚注があるのはまさにこの後知恵にあたるからでしょう. ここでは単に「そうはいっても状況を限定すればよく成り立つのはわかっているのだから, ニュートン力学にも一定の信頼は置こう」と言っているだけです.
純粋にこの論文が書かれた時代の知識だけから, 「ニュートン力学がよく成り立つ」が一次近似とは言えません. 次の議論によって相対性理論に対してニュートン力学が一次近似として得られることはわかります.
実はローレンツ因子を $\gamma = 1 / \sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}}$ とすると, 相対論的運動エネルギーは $E = \gamma mc^2$ と書けます. ここで $\gamma$ を $\frac{v^2}{c^2}$ に関してテイラー展開して一次まで取ると, $\gamma = 1 + \frac{1}{2} \frac{v^2}{c^2}$ と書けるので, もとの運動エネルギーに代入すると $E = mc^2 + \frac{1}{2} mv^2$ と書けます. 第一項はいわゆる静止エネルギーで有名な式です. これに対して一次近似の項として非相対論的な運動エネルギーが出てきます. つまり一次近似としてニュートン力学が復元できました. いわばこれを先取りした表現が英語版の脚注です.
第14文¶
対象文¶
en.14¶
In order to render our presentation more precise and to distinguish this system of co-ordinates verbally from others which will be introduced hereafter, we call it the stationary system.
de.14¶
- nennen = name
- dies: 定冠詞類
- zur = zu + der (<- die)
- sprachlichen <- sprachlich <- sprechen = (en) speak
- Unterscheidung = distinction
- einzuführenden <- ein + zu + führenden <- zu einführenden
- führen
- führend
- ge-
- führenden
- -ung: 女性名詞, die-der-der-die
- von später einführenden Koordinatensystemen: 弱変化
Wir nennen dies Koordinatensystem zur sprachlichen Unterscheidung von später einzuführenden Koordinatensystemen und zur Präzisierung der Vorstellung das „ruhende System".
ja.14¶
我々の議論をより厳密にするため, そしてこの座標系と後で導入する座標系を言葉の上で区別するために, それを静止系と呼ぶことにする.
英語解説¶
文構造¶
基本は次の通りです.
- we call it the stationary system
- In order to render our presentation more precise
- and
- to distinguish this system of co-ordinates verbally from others
- which will be introduced hereafter
To 不定詞による長い副詞句があり, 最後に主節が来ています. 主節の構造は第五文型 SVOC です.
we call it the stationary system¶
第五文型は「S は V の視点で O = C であると思っている」という意味を持っています. ここでは it = the stationary system であると call する, つまり「そうみなす・定義する」という意味です. 実際 call は「この概念をこう呼ぶ」という形で定義のときに使われる単語です.
- TODO 数学・物理の call の用法. 「呼ぶ」と書いたら「そう定義する」の意味.
主語 we はいわゆる論文の we で, 目的語の it は前文の「ニュートン力学がよく成り立つ座標系」です. 補語の the stationary system には定冠詞がついていることに注意してください. 「あなたもご存知の」というよりも前文で性質を特定した系という意味での特定が入っています.
- TODO 補語に the がつく理由は再考. the earth に the がつくのと同じような感じ? 総称に近い感じ? 「そういうもの」という感じ.
In order to render our presentation more precise¶
ここでは and で to 不定詞句がふたつ並んでいるひとつ目です. In order to は to 不定詞句が特に副詞用法であることを表す符丁です. 文型としては第五文型の VOC で, our presentation 「我々の議論」を more precise 「より厳密に」するためと訳せばいいでしょう. 動詞 render は「与える, 描く」といった意味で, ここでは第五文型の型の意味で訳せば十分です.
- TODO presentation は数学・物理用法? 少なくとも「議論」と訳すべきではある.
- TODO render: 3DCG とかでレンダリング.
and to distinguish this system of co-ordinates verbally from others¶
先程書いたように in order to のもうひとつです. 動詞 distinguish は「区別する」という意味で, this system of co-ordinates 「この座標系」を区別するため, というのが基本的な意味・構造です. ここでは system で冠詞代わりに this が使われています.
区別するためには比較対象が必要でそれは from others で示されています. 複数系で無冠詞なことに注意しましょう. ここでの others は other systems で, 日本語でもこの手の省略はよくあります. ただ others がいまひとつ曖昧なままです. それが次の関係代名詞で補足されています.
- TODO 副詞 verbally に関する説明.
which will be introduced hereafter¶
明らかに主語が欠けた節なので先行詞は主語にあたるはずです. 文法上特別な事情がなければ直前の語を修飾するので, others が先行詞でこの節の主語と判断していいでしょう. 動詞が will になっているので三単現の s があるかないかといった文法上の判断基準は使えないことに注意してください. もっと難しい文章をきちんと読むためにも, 当たり前の判断基準を常に気にかけるのが大事です.
ここでのもうひとつのポイントは未来表現を表す will と, 未来を表す副詞 hereafter です. Others はこれから議論する systems だとして, 文章を読み進めるモチベーションを与えています.
節終了¶
第15文¶
対象文¶
en.15¶
If a material point is at rest relatively to this system of co-ordinates, its position can be defined relatively thereto by the employment of rigid standards of measurement and the methods of Euclidean geometry, and can be expressed in Cartesian co-ordinates.
de.15¶
- das-des-dem-das
- 定型第二の法則
- letzterem <- last
- durch = through
- starre <- star = strength
- Maßstäbe = standards = 物差し
- stab = stuff
- -ung = 女性名詞を作る接尾辞
- die Methode -> Methoden (pl)
- ausgedrückt (分離動詞 ausdrucken) aus + drucken
- 過去分詞 aus + gedrückt
- aus = out
- express
- unter = under
Ruht ein materieller Punkt relativ zu diesem Koordinatensystem, so kann seine Lage relativ zu letzterem durch starre Maßstäbe unter Benutzung der Methoden der euklidischen Geometrie bestimmt und in kartesischen Koordinaten ausgedrückt werden.
fr.15¶
Si un point matériel est au repos dans ce système de coordonnées, alors sa position dans ce système peut être trouvée grâce à une règle à mesurer en utilisant des méthodes en géométrie euclidienne, et exprimée en coordonnées cartésiennes.
- en = in
- peut = pouvoir = possible
- trouvée = found <- find
-
règle = regular = rigid
-
(NdT3) (une règle à mesurer) L'inexactitude, inhérente au concept de simultanéité de deux évènements (presque) au même endroit, et qui doit également être résolue par une abstraction, n'est pas discutée ici.
it.15¶
Se un punto materiale è a riposo rispetto a questo sistema di coordinate, la sua posizione rispetto a quest'ultimo può essere determinata mediante regoli rigidi utilizzando i metodi della geometria euclidea, e può essere espressa in coordinate cartesiane.
- (it) e = (en) and = (fr) et = (sp) y = (ru) и = (de) und
sp.15¶
Si un punto material se encuentra en reposo con respecto a este sistema de coordenadas, su posición se puede determinar y expresar en coordenadas cartesianas mediante escalas rígidas, utilizando la geometría euclidiana.
ru.15¶
Если некоторая материальная точка находится в покое относительно этой координатной системы, то ее положение относительно последней может быть определено методами эвклидовой геометрии с помощью твердых масштабов и выражено в декартовых координатах.
sch.15¶
如果一个质点相对于这个坐标系是静止的, 那么它相对于后者的位置就能够用刚性的量杆按照欧儿里得几何的方法来定出, 并且能用笛卡儿坐标来表示.
ja.15¶
もしある質点がこの座標系に対して相対的に静止しているなら, その位置は剛体の物差しによる測定とユークリッド幾何の方法で定義でき, デカルト座標で表現できる.