第034回 第17文の多言語比較・読解

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まず確認

YouTube 公開用: これを読んでいる方への注意・言い訳

これはコンテンツの原稿案であり, 私の勘違いや単純なミスを含めた間違いも含まれた文章・コンテンツです. そのつもりで内容を眺めてください. 勉強会の最中や後で指摘を受けてオリジナルの原稿には修正を入れ続けますが, 多重管理が大変なのでこちらの記録自体はいちいち修正しません. もちろん指摘は歓迎しますし, 個々の md に関して指摘された部分は修正します. 適当なタイミングでコンテンツ・サービスをリリースするので, もしあなたが間違いを潰した (少ない) バージョンのコンテンツで勉強したいなら, それを待ってください.

講義動画と関連リンク

この記事・動画に特化したリンク先は次の通りです。

以下いつもの関連コンテンツ群です。

(YouTube 動画の説明欄にいつも張るリンク集)

記事公開手順メモ

進捗・TODO・今日のメモ

内容: コンテンツ (案) からの転記

メモ

イギリス英語の fibre

フランス語の単語本に書いてあったので備忘録を込めて. タイトルの fibre のように, 一般的にイギリス英語で -re, アメリカ英語で -er と書く単語があります. イギリス英語の -re はフランス語の記述をそのまま残している (ことがある) とのこと. これはフランス語由来の言葉で, さらに言えばラテン語由来の可能性があることも示唆しています. 単語遊びをする上で大事でしょう.

英語の関係代名詞 whom

目的格のときに who は whom にしてもいい. この whom の m は何か? ドイツ語の定冠詞で der-des-dem-den, das-des-dem-das と三格に m が出る.

I play {∅/a/the} guitar.

I'm Ringo, and I play the drums. I'm Paul, and I play the bass. I'm George, and I play a guitar. I'm John, and I too play guitar, sometimes I play the fool.

ここで、早速ですが樋口 (2009) で答え合わせをしましょう。ただし〔…〕は引用者注で、例文は省略しました。

3.1.5. 楽器名

play に続く楽器名もしばしば無冠詞で用いられます。 これは、このとき楽器名はジャズバンドなどにおけるパート、 つまり、「役割」を表すので、原理Ⅲ〔英語の名詞部は、 「働き」を表すときは a/an をとらず、 「個体」として認識されるときは a/an(あるいは他の限定詞)をとる〕により、 冠詞をとらないからです。 (以下の例文の多くで in a/the band(または類義語句)が共起しているのがその証拠です;"play the 楽器名" に関しては §8.6.2 参照。) 他方、楽器名が無冠詞で learn/study/teach などの目的語として用いられるときは「演奏法」(§2.4「技法」)を表します。 辞書では the がかっこに入っている例もありますが、 the がある場合とない場合とは同義ではありません。 the の有無は、典型的には、バンドでのパートを表すか否かによって決定されるからです。

イタリア語で「私の本」 il mio libro = the my book.

第17文

対象文

en.17

Now we must bear carefully in mind that a mathematical description of this kind has no physical meaning unless we are quite clear as to what we understand by time.

sp.17

Será necesario tener en cuenta que una descripción matemática de esta índole tiene un sentido físico solamente cuando con anterioridad se ha aclarado lo que en este contexto se ha de entender bajo "tiempo".

ru.17

При этом следует иметь в виду, что подобное математическое описание имеет физический смысл только тогда, когда предварительно выяснено, что подразумевается здесь под «временем».

sch.17

现在我们必须记住, 这样的数学描述, 只有在我们十分清楚地懂得"时间"在这里指的是什么之后才有物理意义.

ja.17

いま私達は次の点を注意深く考えなければならない: つまり時間という概念に対する理解が完全に明確になっていない限り, この種の数学的記述は物理的な意味を持たない.

英語解説

文構造

基本的な構造は we bear (in mind) that であり, bear in mind 「心に留める, 考える」は we think that と思えばよく, あとは考えている内容を表す that 節が長く続くだけです.

Now we must bear carefully in mind

これは第三文型SVOと思えばいいでしょう. ここでは副詞 carefully を挿入だと思って無視して bear in mind を熟語動詞・動詞句とみなします. もちろん bear 本来の意味「持つ」を重視しつつ in mind で「心の中に持つ = 心に留める, 記憶する, 考える」とみなしても構いません.

これに対して must で強制した上, carefully で覚え方を注意させ, now で他のいつでもなくこのタイミングで, と詳しくしつこく強調しています. 内容を読めばまさに物理の本道をきちんとやりなさいというメッセージです.

that a mathematical description of this kind has no physical meaning

何を bear in mind しなければならないかを調べましょう. この that 節は第三文型SVOで基本構造は次の通りです.

これが unless まで含めた that 節の本質的な内容です. 文法的に見ると主語は不定冠詞 + 単数, 動詞は主語の単数を受けて三単現の形, 目的語は no + 名詞の単数形になっています.

TODO この a は any のような意味を持っている.

主語の a description 「あるひとつの記述」が何なのかと言えば, mathematical 「数学的な, 数学の」です. さらに of this kind 「この種の」という補足もついています. もちろん前文の内容「座標の値を時間の関数とみなす」を受けています.

目的語 no meaning は physical 「物理的な」という補足説明がついています. 翻訳の問題としては has no meaning と, 動詞は肯定形にして目的語を否定にして否定の意味を表現する英語の表現技法に注意してください. こう書くと英語としてもすっきり綺麗に表現できるので, 英作文上も重要な技術です.

物理の論文として重要なのは「数学的な記述」と「物理的な意味」の対比です. 主節でくどいほど「ここにポイントがある」と主張しているのです. 人類レベルの物理学者であるアインシュタインの言葉であることにも注意しましょう. 私達はよくこの自明な事実を忘れるのです.

unless we are quite clear as to what we understand by time

最後に that 節の思考内容の補足説明として条件の副詞節を追加しています. 全体としては unless が入っていて「こういう状態でない限り」という条件文で, その状態が何かと言えば第二文型SVCでごく単純には次のような構造です.

この内容を we are clear と表現できるのが英語です. もちろん後者の「明晰な理解」と書いたのは節全体の意味を判断した上で書いています. これに対して quite 「まったく, すっかり, 完全に」という副詞をつけて最上級の強調をしています.

「私達が邪魔ものがなく透き通った状態にある」を基点にして考えましょう. 「透き通った状態」というのは何に対する状態なのかが気になるので, as to で導かれています. 前置詞が導くので名詞または名詞句が来るはずで, それが what が導く名詞句です. その内容が what we understand by time 「時間という言葉によって私達が何を理解しているか」です. もっと強く言えば「時間という物理の概念を何を表したいのか」, そして「時間という概念を物理として真剣に考えているか?」という読者への問い掛けでもあります.

ドイツ語解説

節終了