動画紹介:千早誕生祭[貧乳はステータスだ!希少価値だ!]の数学的解釈について

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以前作った動画の感想を呟いて下さった方がいたので, アピールを兼ねてその反応を紹介したい. 動画名は「千早誕生祭[貧乳はステータスだ!希少価値だ!]の数学的解釈について」で, 動画は これ と これ と これ だ.

タイトルと内容の一部がアレなので大半の女性には極めて受けが悪いだろうが, アイドルマスターで作っている時点で視聴者を絞り込んでいるわけで, 男性に視聴者層を絞り込む代わりにたくさんの男性に見てもらおうと思い, この内容, タイトルで作った.

とりあえず感想とその後の極めてハートフルないくつかのやり取りをここにもまとめておこう.

該当ツイートは これ と これ と これ と これ と これ と これ と これ だ.

ふとニコニコ動画で彼の動画を探してみようと思い立ち検索してみたら『微分ヤクザ』というタグがついていて怖い。 

怖すぎる動画を見終えた。 貧乳教の私は美香さん複素多様体説に感動したが『実連続函数は整函数で一様に近似できる 1D T.Carleman 1927, d≧2 A.Sakai 1982』を 思い出して絶望している。 

自分の昔の専攻がまさか貧乳教の悦びを砕くとは思ってもみなかった。 

どんな巨乳も少し熱方程式の時間変化を加えれば貧乳と同じクラスに入れるのかと思うと落涙するばかりである。

実際にやりとりをした部分は以下の通り.

@phasetr 斬新さに腹抱えて大笑いはしたのは事実ですが、嘲笑はしてません。 気を悪くさせた事を謝罪します。 申し訳ありません。 

@yan_tyabouzu こちらこそすみません。 普段嘲笑という言葉を「暖かく見守る」くらいの意味で使っていて、今回もそういう使い方です。 むしろ喜んで頂けたようで何よりです。 そういうリアクションをしてもらうためにあれを作ったので 

@phasetr とても楽しく見させて貰いました。 何故これほどの函数論の理解をこの方法で表現したのかと考えたら笑いが止まらず、 昔の専攻が函数論だった事もありネタに勝手に乗りました。 調子に乗り過ぎたかとびくびくしてたところです。 寛大さに感謝します。 

@yan_tyabouzu あと近似定理の話ですが、あくまでexactだからこそ尊いので精度の良い近似はあくまでまがいものというスタンスです。 動画でも言いましたが、解析関数では触れられない広い世界を生きる連続関数にもそれ自体の深い意味があると思っていますので、そこは死守したい 

@phasetr なるほど。道理ですね。 私は『稠密な部分空間で十分』の堕落にはまっていたようです。 精進します。 

どうでもいいのだが, 上記の「美香さん」は「千早」だろうか. それとも「美香さんの複素多様体説」だろうか. 何はともあれ, 春香さんと美希の共同研究なので, 春香と美希が交じった説がある.

まずは動画自体の解説をしておこう. 3 つ合わせて 50 分近くと結構長いので視聴時は十分注意されたい. 第 1 部では講演の常道として研究のモチベーションの話から入る. 数学的には微分の復習から入り関数論への接続で終わる. 第 2 部は 1 変数関数論ショートコースであり, 貧乳と複素多様体の類似について議論がなされる. ちなみに動画投稿直後, 第 1 部から第 2 部で視聴者が 9 割減っていた (今も大体そのくらいだが). タイトルホイホイの意味を知る冬だった. 第 3 部は今回の研究としてはおまけの部分で, 資金的に研究を支えた伊織への感謝を込めた内容になっている. 数学的には多変数関数論で, 岡潔の業績に深く関わる正則領域の議論の魔解釈について論じている.

ここで少し (分かる範囲で) コメント, やり取りについて補足をしておこう.

怖すぎる動画を見終えた。 貧乳教の私は美香さん複素多様体説に感動したが『実連続函数は整函数で一様に近似できる 1D T.Carleman 1927, d≧2 A.Sakai 1982』を 思い出して絶望している。 

自分の昔の専攻がまさか貧乳教の悦びを砕くとは思ってもみなかった。 

どんな巨乳も少し熱方程式の時間変化を加えれば貧乳と同じクラスに入れるのかと思うと落涙するばかりである。

この定理は知らなかったのだが, ものすごく大きく言えば類似の定理として「任意の連続関数は多項式はいくらでも精度良く近似できる」という, Weierstrass の多項式近似定理というのがある. 証明はいくつかあるのだが, 例えば伊藤清三『ルベーグ積分入門』に熱核を使った証明が書いてある.


また, Stone-Weierstrass の定理という抽象版もある. 関数環, または作用素環の文脈での証明がある. 関数環的な証明は吉田耕作『Functional Analysis』に, 作用素環的な証明は Kadison-Ringrose の『Fundamentals of the Theory of Operator Algebras』に書いてある.

  
熱方程式の時間変化云々という記述があるので, 『ルベーグ積分入門』の熱核を使った証明のように, 適当に熱核と畳み込みを考えるとか何とかするのだろうと勝手に思っている. 詳細については yantyabouzu さんに問い合わされたい.

@phasetr とても楽しく見させて貰いました。 何故これほどの函数論の理解をこの方法で表現したのかと考えたら笑いが止まらず、 昔の専攻が函数論だった事もありネタに勝手に乗りました。 調子に乗り過ぎたかとびくびくしてたところです。 寛大さに感謝します。 

1 変数もいまだに解析接続や Riemann 面を理解できていないし, 特に多変数の方はほとんど勉強すらしていないので, 何か申し訳ない気分になった. 

@yan_tyabouzu あと近似定理の話ですが、 あくまでexactだからこそ尊いので精度の良い近似はあくまでまがいものというスタンスです。 動画でも言いましたが、解析関数では触れられない広い世界を生きる連続関数にもそれ自体の深い意味があると思っていますので、 そこは死守したい 

@phasetr なるほど。道理ですね。 私は『稠密な部分空間で十分』の堕落にはまっていたようです。精進します。

この辺は言葉通りだ. 動画でも言っているが, 連続関数の世界, 可微分関数の世界, 解析関数の世界それぞれに味があり, 意味があるので全てに遠く思いを馳せたい.

最後に私の (多変数) 関数論との関係を書いておこう. 1 変数については, 物理学科で嫌でもやるのでそれはそれ. 全くの別件だが近々これについて東大でのイジングゼミで復習的にやった内容を Amazon で DVD にして販売する予定だ. 今まで通りニコニコや YouTube での無料配布の方がいいのではないだろうかとは今でも思っているが, Amazon の流通に載せて広めること, リーチできる範囲を増やすことを第一の目的としている. またアイマスのようにマニア向けのものとしての内容はそれはそれでいいのだが, やはり一般に何かしたいと思うと著作権的なアレもある. そこをうまく回避すべく自録りの DVD にしよう的なアレもある. 超話が脱線したが, 1 変数については物理学科必修というところ. 多変数について, 一番最初はやはり岡先生の話を聞いたときだ. 学部 2 年の頃かと思うが, 志賀浩二『複素数 30 講』の記述だ. この中で多変数関数論についての岡潔の業績についての小話があって, そんな凄い人がいたのか, と感心した記憶がある. 結局ろくに勉強できていないのだが, 多変数関数論への興味はこの時に湧いた.


その後, 学部 4 年になって修士課程で何をどうするか考え, 色々勉強なり調査なりしていたときに第 2 の出会いが出てくる. 場の量子論か量子統計をやろうとは思っていたのだが, とりあえず基本だろうと思って, (今ではほぼ廃れている) 公理的場の量子論の勉強をしていた. これは主力兵器が関数解析と多変数関数論になる. 他にも色々あるのだが, Edge of the wedge theorem (楔の刃の定理) という多変数関数論の定理があり, これが基本的な道具なので, 勉強しないといけないな, ということで少し勉強してみようとした. 実際には Streater-Wightman の『Pct, Spin and Statistics, and All That (Landmarks in Physics)』でまとめて出てきたのだが.


別件だが楔の刃の定理など, 格好いい名前の定理はそれだけで勉強する意欲をそそることは強く主張しておきたい.

あと上記の本は死ぬ程難しかったので誰にもお勧めしない. 私を遥かに越えるレベルで数学ができるなら問題ないだろうが, そもそもこんなイレギュラーな本は数学の人は読まないだろうし, 物理の人だって, わざわざ PCT やスピン-統計定理の厳密な証明など読まないだろう. 基本的に物理の人間として数理物理を志してしまった異常者だけが読む本だ. 少なくとも昔の人はこの本で勉強していたようだし, この本が読みこなせるとか想像を絶する. 時々「本書を読む上で予備知識は必要ない. 最低限の数学力があればいい」とかいう記述があって, そんなわけあるか, という突っ込みまでセットで言われることがある. この本では関数解析の予備知識は確かにいるが, おそらくそれ以外の予備知識は本当に仮定されていない. 本当に気でも狂ったかのように数学力に満ち溢れた物理の人間が読んでいたのだろうし, 実際にそういう人間が私の分野での重鎮として今も君臨しているので戦慄する. 一昔前の構成的場の量子論や厳密統計力学の本はふざけているのかと思う程読むのがつらいのだが, 昔の人はアレを読みこなせたのだろうし, そうした観点からすると「最近は学生の力が落ちた」と言われるのもむべなるかな感ある. どれくらいつらいかを具体的にいうと, 例えば Reed-Simon の本で証明が半ページくらいで終わっている定理が, 新井先生の本では 4 ページくらい使っていることがある. 新井先生の本が丁寧すぎるという話もあるが, 何にしても Reed-Simon はつらい. 私の分野では論文で引用される標準的な本 (多分代数幾何での Hartshorne みたいな感じ) なので実につらい.

折角なので Twitter でこういう感じの物理の人を挙げておくと, 大栗さんや村山さんがおそらくそういう感じ. 確か桂先生だったと思うが「大栗さんも村山さんも数学むちゃくちゃできる」と言っていた. 一流の数学者にこう言わせるとかリアルに戦慄する.

話を元に戻そう. 公理的場の量子論で edge of the wedge がある, というところだったが, 面倒なので適当に済ますけれども, これは解析関数の解析接続に関する定理だ. 詳細はWikipedia 先生にぶん投げておくが, 見てもらうと分かるように物理の人間が発見し証明した定理だ. 公理的場の量子論に限らないが, 物理的に意味がある特殊な状況に特化した定理というのが時々でてくる. Streater-Wightman の本などを参照してほしいが, 公理的場の量子論だと他には JLD domain の話などもある. ちなみにこの定理は量子統計でも出てくる. ハミルトニアンの摂動に対する安定性の議論をするところで使ったりする. 簡単にいうと, 物理的に言って (有限温度, 特に高温では) 少しゴミが入ったくらいで平衡状態が大きく変わることはないだろうと思える. 数学としては, ゴミを本来のハミルトニアンに対する (小さな) 摂動だと思って, その摂動論がうまいこと作れるかという話になる. ここでガチャガチャやっていると楔の刃の定理が出てくる. 折角なのでこれも言っておくと, ここでの議論での基本的な道具は何よりもまず冨田-竹崎理論だ. 「竹崎」は当然, 先日「数学まなびはじめ」の書評で言及した竹崎先生.

歴史的なところはあまり知らないのだが, 少なくとも関連する議論の中で RIMS にいた荒木先生の功績も大きいと聞いている. 荒木先生は直接話をしたことが 1-2 度はあるが, 竹崎先生ほど面白い話は紹介できない. 荒木先生がよくいうらしいジョークとして「物理学者は証明がたくさんないと理論 (?) を信頼しないが, 数学者はもちろん証明 1 つで十分」というものがある. 分かる人には分かるジョークなので良い子は身近な数学者か物理学者に聞いてみよう.

あとこんな話も聞いたことがある. 学者はその専攻した学問と結婚しているので, 伴侶はその辺覚悟しておかないと色々とアレ, という話がある. 荒木先生の奥様が正にそうなようで, 旦那が研究ばかりしているのでその穴埋め的なアレで, 作用素環の若手で結婚していない人を見つけるとお見合いを持ちかけにいくと聞いた. これはどこまで本当なのかは確認していないため良く分からないので, 取り扱いには注意されたい.

あと楔の刃の定理は代数解析でも理解できるらしい. まだそこまで勉強できていないのだが, ほぼ自明なレベルでクリアな理解ができると聞いた. 例えば森本光生『佐藤超関数入門』の最終章で 1 節割かれている.


代数解析に興味を持った理由の 1 つでもある.

もう楔の刃の定理の話はいいか, という気分になったので別の話をしたい. 全然別の話だが, 多変数関数論の話として, 深谷先生の集中講義がある. 深谷先生が近くの大学で集中講義をするというので, 専門が全く違うにも関わらず聞きにいったことがある. 分かったのは整係数のホモロジーが出てきた, とかそのくらいのどうしようもないアレだが, 講義中「これは上空移行の原理で示せます」という発言があった. 上空移行の原理は岡潔が発見した原理だ. 本が家にあるのだから調べればいいのだが, 面倒なのでさぼって記憶で書くと, 上空移行の原理は正則性を調べるべき問題を次元を上げることで連続性の問題に帰着させる手法だったと思う. 正則な世界でやった方が縛りがきつくなるので逆に考えやすくなることもあるので, (勉強していないだけだが) どういうことなのかいまだに分からないが, とにかく名前が異常なくらい格好いいので見たその瞬間に (名前を) 覚えた定理だ.

何の話かもはや分からなくなってきているが, 疲れたので今回はここで終わろう.


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