物理の一般と数学の一般と, その狭間の数理物理と

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あまり見かけない話だが, 私にとっては大事なことなのでここに記録しておきたい.
一言でいうと, 物理として一般的な数学的設定は数学としては具体的または特殊な設定で,
そこから出てくる変な数学的問題を適当な意味でどうにかするのが数理物理, とかいう感じの話をしたい.
ここでは超弦理論と幾何みたいな方向の話は一旦おさえたい.
あまりよく知らないから, という理由もある.

まず具体的にいうと, 物理として一般的な数学的設定というのはこういう感じ:
量子力学を考えよう.
電子と原子 (原子核) からなる系を考えると次のような Hamiltonian からなる系を考えることになる.
一応現実的に, 3 次元にしておこう.

\begin{align}
H
=
-\sum_{i=1}^{N_{\mathrm{e}}} \triangle_i – \sum_{i < j} \frac{e^2} {\left| x_i – x_j \right|}
-\sum_{i,j} \frac{e e_j} {\left| x_i – R_j \right|}
-\sum_{i,j} \frac{e_i e_j} {\left| R_i – R_j \right|}.
\end{align}
ここで $x$ が電子で $R$ が原子核の方を表している.
$e$ が素電荷で, $e_i$ が原子核の電荷だ.
細かい話は別にどうでもいいのだが.

ここで問題にしたいのは, 上の設定は物理としてはかなり一般的な設定ということだ.
(もう少し一般にしたければ量子電磁場を入れるとかいう方向もあるし, それが最近の数理物理での話で,
しかも Summer School 数理物理 2013 での特に廣島先生の話と関係が深いところだが, それは置いておく.)
そして数学としては特殊な (具体的な) 作用素の作用素解析に対応する.

数学としては単なる具体例をやっているだけと言えるのだが, この例が数学的にかなり鬱陶しいことが問題だ.
まず Coulomb ポテンシャルだが「原点まわり」での発散がある.
無限遠でも積分が発散する: $\int_{\mathbb{R}^3} \left| x \right|^{-1} dx$ を極座標で書くと分かる.
関数自体は簡単だがかなり鬱陶しい挙動をする.
そのために起こる面倒くささの処理に面白さを感じて積極的にやっていくというのがとりあえず数理物理だ.
物理的なモチベーションや物理的な興味がない限り, そもそも面白さを感じることが難しく,
真っ当な数学の人がなかなかやろうとしないラインで数学をすること, と言ってもいいかもしれない.

ちなみに, こうした性質を持つという範囲でポテンシャルを一般化するという方向の研究はないでもない.
特に自己共役性に関する部分ではそれにも意味がある.
だが, 私の趣味に関する部分でいうなら, あくまで Coulomb ポテンシャルに限定して議論することに意味がある.
この関数に特化してぎりぎりまでシャープな結果を出すことが物理として大事だからだ.
物理として意味があるなら, 数学としては特殊で構わない.
大事なことは最後に物理としてシャープな結果を出すことにある.

ここで物質の安定性を考えてみたい.
物質の安定性というのは量子力学の起源としてとても大事な話だ.
量子力学の起源にもいくつかあるが, ここでは電磁気学的なところを出そう.
加速運動をする荷電粒子は電磁波を出すという議論がある.
電子は原子核のまわりを円運動するという素朴な描像があるが, 等速円運動と思っても,
円運動である限り加速度がある.
つまり電磁波を出すのだが, 電磁波を出すとその分荷電粒子のエネルギーが減る.
エネルギーが減ると速度が減り, 軌道半径も小さくなる.
軌道半径が小さくなると電子が原子核に落ち込んでしまい, 原子が不安定になる, という話だ.
これをおさえるために量子力学が登場した, という側面がある.

普通の理論物理の文献ではあまり出てこないようだが,
これを基準に考えると, 量子多体系が安定に存在することも自明ではなくなる.
ここにメスを入れようというのが物質の安定性の問題だ.
実際, ここを真面目にやっているのは Lieb を筆頭とする数理物理の人々しかいないらしい.
「物理的」な議論も, 数理物理的な証明ができたあとにその物理として大事な部分を抽出した形で出てくると聞いている.
あまり数学を知らない人向けに一応言っておくと, 数学をしているときちんと穴のない議論をするために,
「技術的に面倒なこと」をする必要が出てくる.
何かごちゃごちゃと収束やら極限の順序交換ができるか, とかの話をしなければいけないとでも思っておいてくれればいい.
その辺を抜いて「物理的な議論」を作る, という話なので, この分野は完全に数学というか数理物理先行の話題といえる.

話が飛んでしまったので, 物理としてシャープな結果と数学としての特殊性という話に戻そう.
何がいいたいかというと, ここでは電子がフェルミオンであるという性質を使わないといけないということだ.
詳しくは Lieb-Seiringer の本を読んでもらいたいが, 基底エネルギーが粒子数に比例する形で下からおさえられないといけない.

ここで系がボソンだけだと基底エネルギーが粒子数の 7/5 乗に比例してしまうことが分かっている.
つまりボソンだけの系は不安定なのだ.
系がフェルミオンだけなら問題ないか, もしくはもっと強くフェルミオンを含めば問題ないか (系に電子があるか), というのは非自明な問題だが,
現実的な設定としては後者の設定下で証明をつける必要がある.
そしてそれは実際できている.
このときに系にフェルミオンがいるという設定は, Hilbert 空間にすると次のようになる.
現実に合わせて多成分系を考えると $L^2 (\mathbb{R}^{d_1}, \mathbb{R}^{d_2}, \cdots)$ という空間で考える必要がある.
フェルミオンが電子だけで $\mathbb{R}^d_1$ 部分に対応しているとすると, ここの成分だけ座標について反可換,
他の座標については各粒子系の成分ごとに可換, という変な空間で作業する必要があるということだ.
$L^2$ を使う分野はたくさんあるが, 少なくとも私が知る限りでの微分方程式論でこういう空間を扱っているのは見たことがない.
幾何では微分形式に合わせて反可換な関数を扱うというのは考えられるし, 一般のテンソル上で議論するときに形式的には現れるが,
どこまで本格的に扱っているのかは知らないので分からない.
ただ物理的な設定をそのまま素直にやろうと思うと, $\mathbb{R}^d$ 上での微分方程式論ではほぼ触らない空間上での議論が必要になる.
そしてそういう空間上での議論が物理として本質的になるというのもまた大事.

究極的にはやはり物理にも数学にもインパクトを与えられるようなことをしてみたい, というのはあるが,
今のところ私が関わっている部分の構成的場の量子論, 厳密統計力学は物理としては時代遅れ,
数学としては特殊で面白いかのかどうかよく分からず, 「数理物理として面白い」という話しかない印象がある.
物理でもなく数学でもない数理物理という分野があるのだ, と思えば, むしろここにこそ存在意義を見出すべきで,
最近は特にそう思っている.
市民であってプロの研究者ではないから, 物理も数学も最先端にはついていきづらいという状況下で,
それでも自分が最先端にいられるところというと結局そういうあまり人がいないところでふんばるしかないというところもある.

ここで何であろうとも最先端にいなければならない, というのは大事にしたい.
ニコマスなり何なりでいわゆる「プロデュース業」をしようと思っているわけだが,
そこでのモチベーションの大きな部分は「子供の頃の自分が見たかった世界を見せる」ということだ.
これは「天才達が見ている世界, 世界トップの人が見ている世界」といってもいい.
どれだけマニアックであろうとも, 世界トップであることは (子供の頃の私にとって) 決定的に大事なので,
そこは愚直に守りたい.
これが一般的な感覚ではない (らしい) ことは承知しているが, 大学で自分と同じような趣味をしている人間に出会い,
またニコニコで数百名であろうとも確実にそういう層が存在することも理解した.
だからその層に向けて何かするのだ.

あとついでにいうと, 数学ができる人間が世界で一番格好いいと思っていて,
また人並に格好よくなりたいという希望もあるので, そこの欲求を満たしたいというのもある.
世間と格好いいと思うことが決定的にずれているだけで, 気分の上では格好つけたいというのはほとんど変わらないと思っている.
さらにこの間 Twitter でも言ったが, 女性一般はまあどうでもいいのだが, 数学ができる女性にはもてたいとは思うが,
そもそも数学できる以前にしようと思う女性自体がいなくて困るので,
そこを増やすべくプロデュース業に勤しまねば的なアレもある.

いつも通りよく分からない文章になったので自分に失笑している.


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