Thurston によるコンパクト・シンプレクティックだが Kaehler ではない多様体の例

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TL を見ていたら Thurston の論文が引用されていて, ちょっと「おお」と思ったのでとりあえず読んでみた. これ だ. シンプレクティック多様体は解析力学でも出てくる多様体で, 最近は超弦とかその辺との兼ね合いもあって精力的に研究されているという話を聞いている. Kaehler ももちろん非常に筋のよい対象で, 複素幾何の中心的な対象だと聞いている.

シンプレクティックは実多様体, Kaehler は複素多様体だが, 両方とも実次元は偶数なのでこういう比較にはきちんと意味がある. またこれで始めて知った程度に幾何弱者なのだが, 「多様体 (M) が閉でシンプレクティックなら概複素構造を持つ」ということなので, こう何となく複素構造とかも持ってくれる可能性はある. その辺から「全ての閉シンプレクティック多様体が Kaehler になるか」というのは結構大事な問題だったようだ. ちなみに逆はすぐ分かる. 例えば Wikipedia を見てみよう.

で, 結局反例があるということを Thurston が言った, というのがこの論文のようだ. 2 次元トーラスの微分同相群, (mathbb{Z} oplus mathbb{Z}) の表現からファイバーバンドルを作って, そのコホモロジーを見るとアウト, という話だった. もう滅茶苦茶に不勉強なためコホモロジーが大体さっぱりなのだが, 反例を作る前に Kaehler の奇次元 Betti 数が偶数になる, という事実が紹介されているので, そこから分かるという寸法.
1 つだけではなくもっとたくさん反例が作れることを注意した上で, 別の予想を立てて論文は終わっている.

この論文が面白いというか紹介したい理由の 1 つとして, Guggenheimer の論文が出たがそれが間違いだった, ということを反例を使って示したところがある. 教科書でも時々あるが, 論文 (研究) レベルになると当然間違いがある可能性があるということ. Fermat 予想が何度も「証明」されたとか「立方体倍積問題の証明」などそういう話を耳にすることはよくあるかもしれないが, 結構色々なところで実際にあるということはもっと注意してもいいかと思った的なアレだった.

あと, 関西のつどいでも話した反例が大事的な話だが, Thurston が反例を作ったのを論文にしているということで, 面白い反例を作ったらそれ自体論文にできるのだ, ということも言いたい.

追記

Kaehler の 奇次元 Betti 数の話は Wikipedia の Laplace 作用素のところ から来ることを教えて頂いた. あと 森の未知さんのツイート も引用しておこう.

これは学部生や修士課程学生が読むには非常にいい文章だと思う. >RT 

件の Thurston の論文, とにかく短くて, 私の記憶だとたったの 2 ページ. すごい結果なら 2 ページで済むというのも知っていていいだろう. 

手法も胞体分割でコホモロジー (ホモロジーだったかも) を計算するという, かなりのローテクノロジー. それで 2 ページで本質的に重要な結果を導いたわけでやっぱり Thurston はすごい. 

私も低次元トポロジーには疎い人間で Thurston の論文はあれくらいしか読んだことないのだが, あれだけ読んでも Thurston の偉大さは分かる. 

Godbillon-Vey 類の連続変化の話も森田先生の本で少しフォローしたことがあるが, あれもローテクノロジーだったと思う. それでかなり本質的な例を構成したんだよなぁ…. 

三次元多様体論で Thurston の業績が決定的なのはよく聞くし実際そうなんだろうと思うけど, 具体的に何をしたかは結局今も理解できていないような.

ということで皆も読んでみよう. そして基礎知識から私にレクチャーしてほしい.


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