9/13-14 に第 5 回関西すうがく徒のつどいに参加してきた

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9/13-14 と京大で開かれた関西すうがく徒のつどいに参加してきた.
http://kansaimath.tenasaku.com/?page_id=734
数学カフェなど, 小規模ではあるが私もイベント運営をはじめたので,
そういう点も改めて参考にしていくべくレポートをまとめておく.

雰囲気が知りたい人は togetter のまとめなども見てほしい.

目次

プログラム

一応プログラムも紹介しておこう.
そこそこバリエーションはある.
今回はないが, 3-4 回は数理論理だとか
数学科でもあまり見かけない話もあった.

私は 2 日目のラストで講演している.

1 日目
講演 1

  • 位相(再)入門 [梵天ゆとり(メダカカレッジ) @y_bonten]
  • 統計雑談 [きいと @keytto]

講演 2

  • とぽろじー入門 [すうさん @k1ito]
  • 有限要素法〜連続体力学への応用〜 [佐藤]

講演 3

  • Selberg の漸近公式と素数定理 [関 真一朗]
  • 超関数入門と少しの研究成果 [大類 昌俊 @masatoshi_ohrui]

2 日目
講演 1

  • 曲面上の「直線」と「最短線」〜測地線の方程式に親しむ〜 [ring @matsumoring]∼
  • 環の次元論 — 次元を渡る旅 — [keno @keno_ss]

講演 2

  • 超越数入門 [なれ @nareO7]
  • ちょっとばかりイレギュラーなアーベル群をつくるはなし [515ひかる @515hikaru]

講演 3

  • とにかく大きい数を考える [sappy @__sappy__]
  • Ornstein の同型定理について [徳富 蘇峰 @tononro]

講演 4

  • 闇空間 \(\mathbb{R}\) の性質 [alg_d @alg d]
  • Google ページランクの数理 [相転移P @phasetr]

1 日目の感想

梵天さんの位相入門

これをまず聞いた.
物理のための数学講座でも少し位相に触る予定なので,
その復習という目的もある.

\(\mathbb{R}^n\) から距離空間, 位相空間と行く流れに関する
本当に入門的な内容だったが, いくつか発見があったというか,
まだ位相のことを何にもわかっていないと痛感させられた.

一番ポイントだと思ったのは \(\mathbb{R}^n\) から位相空間に一般化していくとき,
有限交差をどう導入していくかという洞察だ.
言われてみればまともに考えたことがない問題だった.
任意濃度の合併についても考えてみると無茶苦茶という気はする.

そして, 確かに開集合にだけ着目していくと有限交差がどこから出てくるのかわからない.
バックで閉集合や他の位相の入れ方と比較しつつやれば
それなりに適当に盛り込めるとは思うのだが,
そもそもそれに気付くだけでも時間がかかった.

また, 純粋に開集合にだけ着目して
有限交差性の必然性をどう導入するのか, ぱっと思いつかない.

あと有限交差が開集合系による位相の議論の中ではじめて出てくるのが
どこか調べる宿題が出たのだが, これはかなり面白そう.
まだやっていないのだが.

写像の連続性の定義では, 基本的には逆像の方が集合演算の性質がいいから
そちらを使うという話も出た.
それだけならもちろん有名な話だが, それならば, といって
普通の像で保たれる性質は何かと言う方向でのコンパクトの話になった.
この流れでコンパクトを考えたことはなかった.

写像の像の方で伝播していく性質, 逆写像でなければ伝播しない性質を
ピックアップしてみても面白そう.
https://github.com/phasetr/math-textbook に一節作ってまとめたい.

途中, \(\mathbb{R}^n\) (または距離空間) でやっているのか
位相空間にまで持ち上げているのか, 基礎となる空間の明示がなかったので混乱するときがあった.
私が勝手に位相空間の話にもう移ったのだと早合点したからといってもいいのだが.
数学系のひと相手に話すとき, 私も気をつけないといけないなと改めて感じた.
懇親会では最近のプロデュース活動についてもいろいろ話した.
要はお金にする部分をきちんと考えていこうぜ的な方向をを本格的に始めたという話.

第 2 講演, 有限要素法

次は有限要素法の話を聞いてきた.
物理のときに微分方程式は散々触ったが数学としての微分方程式論,
いまだにほとんど全く把握していないのでつらいこともあり, その辺も期待した.

人のことを言えた義理ではないが, 数学的準備が長くて
有限要素法自体が駆け足になってしまったのが悲しい.
講演者が誰に何を伝えたいのかという部分もあるので難しいところだ.

具体例を交えて実用上のメッシュの取り方とか,
衝撃波のように動的にメッシュを取り替えたい場合の処方だとか
そういうのも聞きたかったが, 前提知識を要し過ぎという感はある.
1 次元ではあれど, 微分方程式の境界値問題, 混合境界値問題の具体例を
きちんと把握できた部分には十二分な意義があった.

微分方程式論ももう少しきちんとやりたい.
というか物理のための数学講座があるから
そこで強制的にもう少し勉強しようという課題を自分に課していきたい.
https://phasetr.com/offers/mp.math-phys-school-monitors.lp.html

第 3 講演 Selberg の漸近公式と素数定理

院から数学科ということもあり, 素数大好き人間には
あまりお目にかかったことはなく, リアルに素数の話をする
数学徒と素数の話をしたのははじめてという感がある.
ちなみに関さんには数学アクセサリ, \(\zeta\) のチョーカーと
ワイエルシュトラスの \(\wp\) のイヤリングを贈呈しておいた.
講演は超がつくレベルのハードアナリシスで爆笑した.

ハードアナリシスといっても私が普段触れているのとは違う方向だが間違いなくプロの仕事.
Selberg やばい.
そして所々でて来た小ネタが楽しかった.
“\(O (1)\) を叫んで死んだ数学者がいたという”とかいう話は語り継いでいきたい.
それ以外にも名言が連発されていた.

例えば次のような発言.
“\(e\) にはあまり興味がなかったが, 自然対数でないと素数定理に変な定数がついて汚くなるし,
素数定理を通じて \(e\) の素晴らしさを理解した”
“次の黒板に移りましょう. 次のではなくて一枚だった. 黒板は連続, いや連結です”

こういうのを自然と口走るのは病気だし素晴らしい.
どんどんやってほしい.

あとあまりのハードアナリシス+行間で演習問題がたくさんついた
補足プリントが 3 枚も事前に用意されていた.
これをきちんと埋めたのを作れば Kindle とかで出版していいと思う.
関さんに打診してみたら自分でまとめている Riemann \(\zeta\) 記録集には
盛り込むらしいのでぜひ公開してほしい.

懇親会その他

懇親会に限った話ではないが, 数学アクセサリを女性陣に布教してきた.
つどい終わったら自分でも作る! と言っている人がいたので,
急ぎ作り方などを http://math-accessory.com/ にアップしないといけない.
鋭意努力する所存.

懇親会では魔法少女 (そういう渾名というか何というかわからないのだが
そう呼ばれている人がいる) に大学での地獄のような教官の言明について悲しみを共有した.
あとめっちゃ説明下手だった感があるので全く通じていない感があったが,
物質の安定性周りの話を物理の人にちょろっと説明した.
超反省した.

また, 引きこもりの人見知りなので, いつも通りあまり知らない人と話せなかった.
いい加減何とかしたい.

2 日目

keno さんの環の次元論 — 次元を渡る旅 —

Togetter にもあるが, 環は定義するのに剰余環や帰納極限は
説明なしで出してくるとか, 攻撃力の高い講演だった.
http://togetter.com/li/719312
はじめ「よい環」としか言っていなかった Noether 環も
結局性質を使って証明つけていた気がする.

可換環論と代数幾何, 初等的な部分は前からやりたいと
思っていたのだがその熱が高まってきた.

ちょっとばかりイレギュラーなアーベル群をつくるはなし [515ひかる @515hikaru]

\(G = A_1 \otimes B_1 = A_2 \otimes B_2\) と直和分解されるが
\(A_1\), \(A_2\) と \(B_1\), \(B_2\) が互いに同型でないとかいう
変な性質を持つねじれのない可換群 \(G\) の話.

“いろいろな反例で遊ぼう”という DVD を作ったくらいの市民なので
変な例は気になって仕方ない.
ねじれなしの可換群で, しかもそんなに滅茶苦茶に難しい
えげつないわけでもないのにこんな変な性質があるというのは衝撃だった.

内容はまあいいのだが, 大事なことを口頭だけで済まして
板書をしないというのは頂けなかった.
聞きもらした部分が実につらい.
自分もそういうことはやってはいけないと戒めていきたい.

Ornstein の同型定理について [徳富 蘇峰 @tononro]

確率まわりの力学系の話で, Bernoulli 系のエルゴード理論とか
そういう感じの話だったのだが,
講演者が内容を無理矢理に詰め込み過ぎて破綻していた.

ハードな解析を頑張る系の話なので明らかに
ポイントを絞る必要があったのだが, それに盛大に失敗していた.
その意味では関さんは非常によく立ち回っていたというのを感じる.

京大勢と思しき人々が「何それ. 定義がよくわからない」などと
突っ込みを入れまくっていて, 非常に心地よい時間だったことは間違いない.

Google ページランクの数理 [相転移P @phasetr]

自分の講演だったが全部終わらなかったので超反省した.
明らかな事前準備不足で, やはり準備に手を抜いてはいけないと痛感した.

内容としては Google のページランクに関する工学・数学の話だ.
原稿は https://github.com/phasetr/math-textbook に置いてあるし,
以前作った動画もある.
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7599426

数学としては本当に教養の線型代数なので,
工学部分の説明に力を入れつつ, 数学的にも非常に筋のいい
面白い話題がたくさんあるから数学としても勉強になるから
一通り全てやりたかった.
工学部分は話しきれたのだがそこで終わってしまい,
最後, 数学として一番面白い部分が話せず非常に申し訳ないことをした.
今思い出しても反省しかない.

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