立川さんの「弦理論における数学の使われ方」とかその辺からの堀田さんからの華麗なぶっこみを受けたのでその記録

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何か斜め上からのぶっこみを受けたので流れを記録しておきたい.
まずぶっこまれたツイートから.

プロが市民にとんでもない無茶を回してくるのでつらい.
それはそれとして流れを出しておこう.
まずは立川さんのツイートから.

ついでにこれもメモ.

そして堀田さんのツイート.

笑止が【困っていること。また、そのさま。】なら意味はわかる.
http://tinyurl.com/m5wlrcf

逆に物理屋は数学者より本質を掴んでいる場合もある

本質を掴んでいるのではなく【物理的に信頼できる】という数学者とは
別の判断軸, 推論の方法があるというだけだと思っている.

書評:Simulations’ Achille’s heel でも平井武先生の
『線形代数と群の表現 II』23.7 節 で Weil の話を引いているが簡単に書いておこう.

1940-50 年代のはずだが, Lorentz 群のユニタリ表現に関して,
当時の数学の状況からすると無限次元の表現論はまるで
何もできていなくて Weil ですら手をこまねいていたところ,
相対論的場の量子論で必要だからということで,
しびれを切らした Wigner が突撃して世界を切り開き,
Dirac が続いたという話がある.

ここでポイントなのは数学的にいい加減であろうとも
物理という信頼できる軸と, 絶対に必要だという背水の陣が
引かれていたからできたのだろう.
もちろん Wigner と Dirac も常人の参考にならない化け物だが,
数学サイドも Weil という化け物で大概参考にならないので
ちょうどいい勝負だ.

数学的に何が起こっているかわかったから,
そのあとでようやく道具を整備して切り込むことができた,
とか何とかいう Weil の述懐が引用されているので
興味がある向きはぜひ読んでほしい.
群の表現論としても面白い本だ.

まだ緻密でない表現だとしても確実にその本質を語っている場合もある。

数学的な本質を語っていることがどのくらいあるのかは気になっている.
結果が正しいことはあってもそのままでは数学的にまるで正当化できず,
本気で正当化しようと思ったら凄まじい迂回の上に大理論が必要になることも
よくあるので, 数学的な意味でも本質に迫っているのは
かなりレアケースなのではないかという気もするが,
各ケースを調べたわけではないので何ともいえない.

Fourier が既に使っていたとかいう
小松彦三郎先生の数学史の話を聞いたことがある.
有名な話なのだと思うが, 確か太田浩一先生の
電磁気の本には Heaviside も導入していたという話がある.

あまりよくわかっていないのだが, そもそも歴史的に
数学の中で超関数がどうしても必要になる状況はあったのだろうか.
ニュートンが力学やるのに微積分の理論を作ったという感じで,
物理で必要だからいい加減だろうが何だろうが先に
概念を切り出してきただけ, という感じはする.

ただ Fourier は応用数学で, Heaviside も応用数学・応用物理系の人で
純粋数学者からは「何かわけのわからないことを言っている人間がいる.
あれはひどい」という扱いだったとかは聞くので,
いろいろ微妙なところはある.
同じく太田先生の本だったと思うが,
Heaviside については Hardy が「何か面白いことがあるかもしれないし,
ああいうのでもいいのでは」的なことを言っていたとかいう記憶があるが,
まあ少数派なのだろう.

現実の物理現象は数学で扱う極限的理想状況にはないので、超関数理論を学ばなくてもデルタ関数を十分に使いこなすことができる。

この辺はいろいろと思うところがあるのだが,
物理学科で育った身としていうなら, 物理をやりたいなら物理をやれ,
数学したいなら数学科に行け, という言葉に尽きる.
超関数なんてやっている暇があるなら物理やってほしい.
どこに書いてあるか忘れたが, 深谷賢治先生も
「数学的な詳細を気にしている物理学者の講演はつまらなかった.
そんな細々としたことはこちらがやるから大きな夢を見せてほしい」というような
ことを言っていた記憶がある.
すぐに見つからないが, 『数学者の視点』だった気はする.

ちなみに, 私は【理論的な扱いとして理論物理では
理想化極限を取っている系の振る舞いを最大精度で理解したい】
というところに興味を持ち, それを自らの
バトルフィールドと (今のところは) 設定したので,
そんな感じでやりたい.

分野としての特質でいうなら, 数学の定理には常に適用範囲があり,
それを越えると本当に何が起きるかわからない.
(あくまで今から見て) 昔の数学は相当いい加減だし,
物理などでよくある「例による証明」も普通だったし,
数学的な厳密性は時代の関数という間がある.

遠い未来でどうなのかは不明だが, 現代の数学的厳密性は
実際に野放図に定理を書いておかしなことが起こりまくってきた末に
どうしようもなくなって厳密にせざるをえなくなった結果という理解をしている.
単純に, 見ているところ, 何に注意しなければ自分の分野で困るかが違うだけだ.

あとあまり関係ないが, 数学者も物理の用語をかなり雑に濫用することがある.
以前非線型 Schrodinger の人 (確か今早稲田の応物にいる
小澤徹先生だった気がする) がある量を「エネルギー」と呼んだとき,
物理の人が「それは物理として何か意味があるのですか」と質問していた.
それに対して「適当な意味で保存する量で, 何となくエネルギー的な
量なのでエネルギーと呼んでいるだけです」と返していた記憶がある.

数学の人も物理を大事にしないことはよくある.

直観の深さとかあまり関係なくて, 見ている世界が違うだけという感じがする.
超うるさいことをいうなら, 物理だろうが数学だろうが
凡百は所詮凡百だし, 物理学者一般ではなく
現代数学との関係も深い分野にいる
物理学者に優れた人がいるというだけの身も蓋もない話なのでは.

これも前に少し書いた.

要は数理物理というとき, 数学者・物理学者で特に言葉の使い方が違うし,
さらにそれぞれ内部でも使い方が違うので定義をきちんとしましょう的な話.

数理物理学では、非常に数学的にも緻密なレベルでの証明であると同時に、その内容が物理的にも意味がある設定になっているかが鍵。

大栗さんや村山さんは数理物理の人と認識されることがあるようだが,
特に厳密なことはやっていないと思っている.
数学者にインパクトを与える仕事はたくさんしているのだろうし,
代数幾何の桂利行先生ですら「彼らは数学めちゃくちゃできる」と言っていたから
数学もよくわかっているのだと思うが, きちんとした証明はしないだろう.

あと【その内容が物理的にも意味がある設定になっているかが鍵】も結構つらいし
かなりアレなこともある.

厳密であっても現実と無関係なら無価値とされる。

この定義でいうなら私は数理物理やっていない感がある.
正直, 赤外発散の克服という問題が, 現実との関係はともかく
そもそも現代物理でどの程度意味があるのか全くわからない.

ちなみに電子を有限体積の Hubbard とした電子-フォノン相互作用系が
数学的 (形式的) にはフォノンの BEC を起こすというのを
arXiv に上げたのだが, 物理の人から「いや,
平衡状態でフォノンの BEC 起きないから」という指摘を受けたことがある.
あと, 北大数学にいる宮尾さんにも同じ指摘を受けたので,
その意味でも相当駄目っぽい.

いまだにあまりよくわかっていないのだが
次の理由でフォノン BEC は駄目らしいということは理解している:
フォノンが BEC 起こすような状況だとフォノンがかなり
バンバン出ていることになるが, その状況は
格子がガンガン揺れまくっているしそれは平衡状態と呼べるのか?

非平衡なら BEC はありうるとかそういう話もあるようだが
全くわからないのでつらい.

さらにちなみに, この辺からまた,
恐ろしく数学色が強いテーマを思いついたので
いまそこでいろいろ研究しているのだが,
数学の問題として定式化しているだけで
数学として面白いかどうかはまた別の話というところもまたつらい.
構成的場の量子論・厳密統計力学の数理物理としては
意味がある問題だとは思っているが,
まだ誰かに相談できるほどまとまった形にしておらず,
身近に相談できる人がいるわけでもないのでつらい.

長くなったのでとりあえず結論をまとめておくと
市民はつらいというところに落ち着く.


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