このサイトは学部では早稲田で物理を, 修士では東大で数学を専攻し, 今も非アカデミックの立場で数学や物理と向き合っている一市民の奮闘の記録です. 運営者情報および運営理念についてはこちらをご覧ください.
理系のための総合語学・リベラルアーツの視点から数学・物理・プログラミング・語学 (特に英語) の情報を発信しています. コンテンツアーカイブに見やすくまとめているのでぜひご覧ください.
次の本を元に脳内授業の例, 数学版をたくさん出していきます.
やさしい理系数学 三訂版 (河合塾シリーズ, 河合出版)
勉強法として脳内授業をお勧めしています.
また見ていない方は次のページや
Kindle にまとめた書籍を参考にしてください.
『やさしい理系数学』は「内容はいいのに解説が少ない」という評判なので,
ここではその解説部分を補充する形でやっていきます.
大学受験に限らず何か聞きたいことがあれば
このページを参考に気軽に質問してください.
必要な情報がなく, 適切なアドバイスができないことが多いためです.
リンク先のページには LINE・メールの連絡先も書いてあります.
どんどんアウトプットすることが大事です.
積極的に解答を書いて私まで送ってくださいね.
メールや LINE だと式を書くのが大変でしょうから,
書いた紙を写真に撮って画像で送ってくれればいいですよ.
問題 3(室蘭工業大)
\(x^n + y^n + z^n – nxyz\) が \(x+y+z\) で割り切れるような正の整数 \(n\) を求めよ.
ポイント: 問題 3
3 次の因数分解公式, 実験, 特殊値から絞り込む,
オーダーを見る (特に偶数時の振る舞い) といったポイントがある.
方針: 問題 3
まず次の 3 次の因数分解公式は覚えておこう.
時々出てくる.
\begin{align} x^3 + y^3 + z^3 – 3 xyz = (x + y + z)(x^2 + y^2 + z^2 – xy – yx – zx). \end{align}これを試験本番でひらめくというのはさすがに大変だ.
形自体は綺麗だし覚えにくいということもないだろう.
これを念頭におけば \(n=3\) が求める正の整数の 1 つであることはわかる.
だから問題はこれ以外の \(n\) があるかどうかで, これを示すことに精力を注ぐことになる.
これもとりあえず割り算してみよう.
\begin{align} f(x, y, z) = x^n + y^n + z^n – nxyz = (x+y+z) q(x, y, z). \end{align}形式的に 3 変数関数 \(q\) が出てくるが気にすることはない.
これさえ書いてしまえば \(x+y+z=0\) としてみるところまではいくだろう.
\begin{align} x^n + y^n + z^n = nxyz. \end{align}そしておそらくここで手が止まる.
一番シンプルなのは次数を見ることだ.
左辺は \(x\), \(y\), \(z\) の \(n\) 次式だが右辺は \(xyz\) で 3 次式になる.
この \(n\) が一致しないといけないので \(n=3\) しかありえない.
また別の見方として数列の極限でよく使う手法も紹介する.
受験生が知る必要は全くないが, 大学でもよく使う標準的なものの見方だ.
わかりやすいように \(n\) を十分大きい偶数, 特に \(n = 20\) としよう.
\(x\), \(y \to \infty\), \(z \to – \infty\) (\(z = – (x+y)\) だから)
とすると左辺は 20 乗のスピードで正の方向に大きくなっていくが,
右辺は高々 3 次のスピードでしか大きくならないし, そもそも負の方向に飛んでいく.
要は全くスピードが釣り合わないし方向も真逆だ.
これは \(n\) が十分大きくなくても成り立つし,
似たような議論が \(n > 3\) の奇数であっても成り立つ.
\(n < 3\) だと右辺のスピードが早くなる.
つまり \(n=3\) しかありえないのだ.
これをきちんと書けば解答になる.
他には特殊値を代入して決定する方法もある.
これはある種の実験と言える.
実験の一種と思えばこの問題特有の解法なのではなく一般的な手法と思えるだろうし,
実験の威力もわかるはずだ.
最後に: 気軽に質問してください
大学受験に限らず何か聞きたいことがあれば
このページを参考に気軽に質問してください.
必要な情報がなく, 適切なアドバイスができないことが多いためです.
リンク先のページには LINE・メールの連絡先も書いてあります.
コメント (2)
トラックバックは利用できません。
記事の編集ページから「おすすめ記事」を複数選択してください。
Copyright © 相転移プロダクション
どうしてx+y+z=0と仮定できるんですか?
コメント・ご指摘ありがとうございます.
これは例題 1 の問題 1, 問題 2 でもやっていることです.
この場合は明確に変数が $x$ 1 つだけですが,
変数が $x$, $y$, $z$ と 3 つあるように見えるから
混乱するのではないでしょうか.
$y = b$, $z = c$ として $f(x) = x^n + b^n + c^n – 3bcx$ が
$x + b +c$ で割り切れるときの正の整数 $n$ を求めよ,
これと同じことをしているだけです.
例題 1 の問題 1 では因数定理を使って $f(c) = 0$ とやっていて,
今は $f(-(b+c)) = 0$ になっているわけです.
もしかしたらある程度本の書き方に合わせた形,
$x = – (y + z)$ と書いていたらすんなりわかってもらえたかもしれません.
何かわからないことがあれば追加で質問してもらっても構いません.
ブログで質疑応答がやりづらかったり面倒だったりするなら,
LINE @phasetr に質問を投げてもらっても構いません.