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次の本を元に脳内授業の例, 数学版をたくさん出していきます.
やさしい理系数学 三訂版 (河合塾シリーズ, 河合出版)
勉強法として脳内授業をお勧めしています.
また見ていない方は次のページや
Kindle にまとめた書籍を参考にしてください.
『やさしい理系数学』は「内容はいいのに解説が少ない」という評判なので,
ここではその解説部分を補充する形でやっていきます.
目次
解説『やさしい理系数学』第 14 章 微分法とその応用 例題 44 三重大
問題 (三重大)
\(f(x) = \frac{1}{2} \cos x\) とする.
- 方程式 \(f(x) = x\) はただ 1 つの解をもつことを示せ.
- 任意の実数 \(x\), \(y\) に対して, \(|f(x) – f(y)| \leq \frac{1}{2} |x – y|\) が成り立つことを示せ.
- 任意の実数 \(a\) に対して, \(a_0 = a\), \(a_n = f(a_{n-1})\) (\(n= 1\), 2, 3, \(\cdots\)) で定められる数列 \(\{a_n\}\) は \(f(x) = x\) の解に収束することを示せ.
ポイント
(1)
解があってしかも 1 つだけというのをどう示すかが大事.
\(f(x) = x\) ときたら \(g(x) = x – f(x)\) と変換するのは標準的なので確実におさえる.
最高次の項の係数が正のとき, 奇数次多項式 \(p(x)\) は
\(x \to \pm \infty\) で \(p(x) \to \pm \infty\) となること,
偶数次多項式 \(q(x)\) は \(q(x) \to \infty\) となることは当たり前だがここで威力を発揮する.
解の存在は中間値の定理が保証してくれるのでこれも使い方をおさえる.
(2)
勘所は不等式処理だ.
平均値の定理, (区分求積法からの) 積分不等式,
三角関数の式変形と方法はいくつかある.
不等式にどれだけ親しめているかが数 III の分水嶺なので,
いろいろな処理の仕方を確実におさえること.
(3)
例題 41 と同じで極限を求めるのにはさみうちを使う.
これも標準的な手法なので絶対に落としてはいけない.
方針
(1)
こうきたら \(g(x) = x – f(x)\) として挙動を調べるのが基本中の基本.
まずは関数の全体的な挙動に気を配る.
\(f(x)\) は三角関数なのでがちゃがちゃ揺れるだけだから,
奇数次多項式としての \(x\) に注目すると \(x \to \pm \infty\) で
\(g(x) \to \pm \infty\) になる.
\(g(x)\) は連続だから中間値の定理が使えて \(g(x)\) は解を少なくとも 1 つ持つ.
あとは解が 1 つだけというのをどう示すかだ.
もちろんいくつか候補はあるが,
素直なのは (狭義) 単調増加性を調べることだろう.
単調増加性がいえれば \(x \to \pm \infty\) の振る舞いから \(g(x)\) はただ 1 つしか解を持てない.
単調増加性を見たいなら導関数の振る舞いを調べればいい,
と来るのであまり悩むことはないだろう.
悩むようでは演習が足りない.
\(|\sin x| \leq 1\), \(|\cos x| \leq 1\) という自明な不等式は (2) でも使う.
本番では「これが数 III 範囲の問題です」と言われて出題されるわけではない.
そこまで踏まえた上でふだんからすぐに方針を決められるように鍛えておかないといけない.
(2)
問題の全体を眺めれば (3) の誘導であることは明白.
一方で受験生がこの不等式を示すのは慣れていないと大変だろう.
数 III の範囲でいうなら,
受験生の解答らしいのは平均値の定理を使う解答が標準的か.
この場合, 平均値の定理は不等式を導くための道具であるという認識を普段から育てておく必要がある.
平均値の定理は見かけ上等式に関する定理なので,
相当訓練しておかないといけない.
\(|\sin x| \leq 1\), \(|\cos x| \leq 1\) という自明な不等式は数 III・C,
特に 数 III ではよく使うので確実におさえておかないと,
最後の最後でどうしたらいいかわからなくなる.
本では三角関数の和積公式を使った別解もあるが,
それでもやはり最後は三角関数の不等式に落とし込む必要がある.
私のお気に入りは微分積分学の基本定理から積分不等式に叩き落とす方法だ.
区分求積法にまで戻れば三角不等式を使っていることになるので,
三角不等式の訓練にもなる.
(3)
本質的に例題 41 と同じなので,
その部分は完璧にしておかなければいけない.
(2) の誘導があるとはいえ, はじめの 1 ステップを踏めるかが勝負を決する.
この問題は割と面倒なことに気付く必要がある.
数列 \(\{a_n\}\) が収束するかどうか自体の判定,
収束するとしてそれがただ 1 つかどうか自体を判定する必要があるからだ1.
そして普段は「(\(1/2\) などの具体的な値) に収束することを示せ」というような問題が多いが,
ここではそれが \(f(x) = x\) の解という表現にしかなっていない.
だからこの (ただ 1 つの) 解を \(\alpha\) として仮置きする第 1 ステップを踏めるかがまず難所.
次に (2) を誘導と思ってそれを使う方向に頭を持っていけるかが次の難所.
\(a_n = f(a_{n-1})\) としてくれていて,
\(\alpha = f(\alpha)\) と重なるからそこを見抜けるかも大事だ.
例題 41 でも使った, (2) の不等式を繰り返し使う定型処理が身についていればあとは問題ないだろう.
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