このサイトは学部では早稲田で物理を, 修士では東大で数学を専攻し, 今も非アカデミックの立場で数学や物理と向き合っている一市民の奮闘の記録です. 運営者情報および運営理念についてはこちらをご覧ください.
理系のための総合語学・リベラルアーツの視点から数学・物理・プログラミング・語学 (特に英語) の情報を発信しています. コンテンツアーカイブに見やすくまとめているのでぜひご覧ください.
次の本を元に脳内授業の例, 数学版をたくさん出していきます.
やさしい理系数学 三訂版 (河合塾シリーズ, 河合出版)
勉強法として自学自習・独学・脳内授業をお勧めしています.
また見ていない方は次のページや
Kindle にまとめた書籍を参考にしてください.
- 大学受験 のページ: 関連資料, 記事一覧あり.
- 独学のすゝめ 大学受験勉強法 あなたが大学受験で失敗・後悔しないために: 私はなぜあなたにいい大学・難関大に入ってほしいのか
『やさしい理系数学』は「内容はいいのに解説が少ない」という評判なので,
ここではその解説部分を補充する形でやっていきます.
目次
解説『やさしい理系数学』第 7 章 積分法 例題 20 名古屋大
問題 (名古屋大)
\(\alpha\), \(\beta\) は, 任意の 1 次関数 \(g(x)\) に対して, つねに
\begin{align} \int_{-1}^{1} (x – \alpha) (x – \beta) g(x) dx = 0 \end{align}が成り立つような実数で, \(\alpha > \beta\) とする.
(1) \(\alpha\), \(\beta\) の値を求めよ.
(2) 任意の 3 次関数 \(f(x)\) に対して, 次の等式が成り立つことを示せ.
\begin{align} \int_{-1}^{1} f(x) dx = f(\alpha) + f(\beta). \end{align}
ポイント
- 偶関数と奇関数の特性, 特に対称性.
- 対称的な区間上の積分.
- 解と係数の関係.
- 多項式の割り算.
割と力づくでいけるのだが,
【任意の 1 次関数】とか【任意の 3 次関数】をどう処理するかで悩む.
なるべく楽にやりたいと思うのが人情なので,
その辺でどう踏ん切りをつけるかという話でもある.
問題を解く上では関係ないが,
(1) というか, 仮定の \(\alpha\), \(\beta\) が存在すること自体がかなり衝撃的だ.
(2) も割といわくありげな式で気になる.
本を読むとルジャンドルの多項式に対する注意があり,
「ああそれか」という感じ.
知っていても受験では役に立たないのでどうでもいいが,
私の専門に限りなく近い話題の 1 つでもあるから紹介したい.
直交多項式, 直交関数系という概念がある.
細かいことは抜かすが,
(線型の) 偏微分方程式を解くときに出てくる.
他にもラゲールの多項式やルジャンドルの陪多項式などいろいろある.
電磁気学や量子力学で出てくる偏微分方程式を解くときに出てくるし,
特殊関数やそれを使った偏微分方程式の解法というところで,
もうやめてくれと泣き叫びたくなるほどたくさんの多項式や関数と微分方程式とその解法を覚えさせられる.
さらに Hilbert 空間での完全正規直交系に一般化される.
Hilbert 空間論は解析学で基本的な空間で,
数学科の解析学専攻なら必ず戦うべき相手であり,
永遠の友人だ.
量子力学の舞台でもあるし,
私のバトルフィールドでもある.
このブログでは数学についてもまずは基本的な解法・アプローチを覚えるように言っているが,
大学に入ると大学受験の比ではない量と難度の暗記と酷使を求められる.
受験程度で根を上げるようでは大学に入ってから地獄の毎日になるだろう.
覚悟しておいた方がいい.
方針
(1)
ポイントでも書いたように, 【任意の 1 次関数】をどう処理するかだ.
割とこの時点で手が動かない人が多いのではないだろうか.
条件がそれしかないから適当な方法で積分の計算に落とすしかない.
一方, 変なことをすると面倒になりそうなので楽をしたい.
そもそも何をどうすればいいのか.
この狭間でせめぎあい, 悩むだろう.
結論からいうと \(g(x) = px + q\) として,
任意の \(p\), \(q\) で与えられた等式が成立するように
\(\alpha\), \(\beta\) を決める原始的な方法しかない.
方針が決まったらあとはがんばって計算するだけ.
計算では奇関数・偶関数と区間の対称性を使ってなるべくさぼることを考えよう.
さぼるところに頭を使った分だけ計算が楽になり,
ミスが減る.
(2)
(1) を誘導として使うのが素直な方法だろうが,
これも割と手が動かないかもしれない.
(1) を使いたいなら示した式の形を捻り出すしかないので
\begin{align} f(x) = (x – \alpha) (x – \beta) g(x) + q(x) \end{align}とする.
つまり \(f(x)\) を \((x – \alpha) (x – \beta)\) で割れば,
\(f(x)\) が 3 次なのだから \(g\) は 1 次関数になるし,
あまりの \(q(x)\) も 1 次関数で \(q(x) = mx + n\) と書ける.
前半部, \((x – \alpha) (x – \beta) g(x)\) のところは積分すると消えるので,
後ろの \(q(x)\) の積分だけ見ればいい.
一方 \(f(\alpha)\) と \(f(\beta)\) も \(q(x)\) の値に帰着するから,
これなら何とかなりそうだろう.
あとは実際に値を比較して等しくなるか確かめればいい.
もう 1 つの解は誘導を無視して,
(1) と同じく 3 次関数を具体的に設定した上での直接計算だ.
結論から言うとこちらの方が早い.
本でもこちらの解法をメインに据えている.
最後に: 気軽に質問してください
大学受験に限らず何か聞きたいことがあれば
このページを参考に気軽に質問してください.
必要な情報がなく, 適切なアドバイスができないことが多いためです.
リンク先のページには LINE・メールの連絡先も書いてあります.
この記事へのコメントはありません。