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発端のツイート.
#数楽 https://t.co/9YSyonXQYL の続き
奥村晴彦著『Rで楽しむ統計』 p.55より【ランダムにお金をやりとりすると、指数分布に近づき、貧富の差は増す】
指数分布の確率はe^{-βE}に比例(β>0)。Eはランダムに選んだ個人が保有するお金の量。— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月14日
これの解説ツイート群.
#数楽 https://t.co/tWgy5CuAWD
リンク先のツイート以後の解説を難しくし過ぎた。初等的な議論で示せるので以下で解説します。設定:nは大きいとし、n人のそれぞれがお金を保有しており、n人分の合計金額は一定であり、ランダムにお金をやり取りしまくる。
続く
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 続き
帰結:そのn人におけるお金の分布は指数分布で近似されるようになる。(各人がE円のお金を保有している確率はe^{-βE}に比例するようになる。)
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 訂正版。続き。証明の概略。
n人が保有する金額の合計をnUと書く。n人が保有する金額は0以上で、総和はnUになる。可能な場合全体は集合Ω_n(nU)={(E_1,…,E_n)∈Z_{≧}|ΣE_i=nU}で表現される。あとは場合の数を評価する計算になる。続く
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 続き。i番目の人が金額Eを保有することと残りのn-1人が保有する金額の合計がnU-Eであることは同値なので、その場合の数は集合Ω_{n-1}(nU-E)の元の個数に等しい。その個数をΩ_n(nU)で割ればその場合の確率が得られる。続く
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 Ω_n(nU)の元の個数はほぼnUのn-1乗に比例し、Ω_{n-1}(nU-E)の元の個数はほぼnU-Eのn-2乗に比例するので、i番目の人が金額Eを保有している確率はほぼ(nU-E)^{n-2}/(nU)^{n-1}に比例する。これで本質的に議論終了である。続く
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 nが大きくて、EがnUよりずっと小さいならば
(nU-E)^{n-2}/(nU)^{n-1}
=(nU/(nU-E)^2) (1-E/(nU))^n
≈(1/(nU)) e^{-E/U}.i人目が金額E保有する確率はほぼ e^{-E/U} に比例することがわかった。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 Uは1人あたりが保有する金額の期待値なのだが、確率密度函数 e^{-E/U}/U の確率分布(指数分布と呼ばれる)の期待値もUなのでつじつまは合っています。Uは統計力学における絶対温度に対応しています。
個人が保有するお金の平均値←→統計力学における絶対温度
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 以上のような話は統計力学の教科書に書いてあります。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 現実の資産分布はどうなっているか?このツイートの添付画像は https://t.co/uwohBb7TAj より。 pic.twitter.com/5xgUv0Z5Nf
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 もう1つ。このツイートの添付画像は https://t.co/DeM4igpoWe より。 pic.twitter.com/xxPC2vkVZj
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 指数分布のグラフは添付画像のような感じになる。 pic.twitter.com/98bCTCi2cx
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 指数分布の普遍性を理解してもらうために授業時間に次のような実験をすることが考えられる。
(1)出席者におもちゃのお金を配る。全員に同じ金額を配ってもよきし、偏りがあってもよい。
(2)ランダムに相手を変えながら、じゃんけん勝負をしてお金をどんどんやりとりしてもらう。
続く— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 適当な時刻に、保有しているおもちゃのお金を集計して分布を記録する。十分時間が立つと分布は指数分布に落ち着くことが確認できるはず。
物理の授業時間にやってもらえると助かる。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 上の方で説明した指数分布を出す計算と、R^n内の原点を中心とする半径√(nU)のn-1次元球面上の一様分布を1次元部分空間に射影して得られる分布はn→∞で正規分布に収束するという計算は本質的に同じです。両方の計算をやってみればわかる。「熱浴」の話の簡単な場合。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 T=σ^2とおく。R^n内の原点を中心とする半径√(nT)の球面上の一様分布を1次元部分空間への射影で得られるR上の確率分布はn→∞で平均0、分散Tの正規分布に収束し、分散Tは統計学における絶対温度に対応します。
この話がお金の指数分布の話とほぼ同じなのは明らか。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 半径√(nT)のn-1次元球面を考えることは、R^nの座標をT=(x_1^2+…+x_n^2)/nと球面上の座標に分解することをやっていると考えられます。以前紹介しましたが、その分解は、PerelmanさんのRiemann幾何的熱浴のアイデアのTaoさんによる解説にも〜
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 続き〜にも登場します。 https://t.co/xnyY3CdgAB における(9)式を見て下さい。そして(15),(16)式以降の議論を見れば、一様分布の射影の話はラプラス方程式+熱浴から熱方程式を出す議論の一部だと解釈されるべきであることがわかります。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 総量一定のお金をランダムにやり取りする話(現実世界の貧富の差の問題と関係がある)とポアンカレ予想を解くためのに使われたアイデア(純粋数学の最深部)は地続きで繋がっているのです。下世話に感じられる話は実は下世話ではない。高尚に見える話も単に高尚なわけではない。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 「熱浴+注目系でのエネルギー保存則より確率がe^{-βE}に比例する」という話は統計力学の教科書に書いてあります。しかし、既出の https://t.co/xnyY3CdgAB における熱浴+注目系上のラプラス方程式から注目系上の熱方程式を出す議論は見たことがない。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 続き。どこかに書いてあるならば教えて欲しいです。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月15日
#数楽 大数の法則と中心極限定理はすでに実用的な統計学を習得した人たちにとって空気のようなものになっているのですが、大偏差原理から出て来る話(先の総量が一定のお金のランダムなやりとりで指数分布が自動的に出て来たりする話がその最も簡単な例)についてはそうではないと思う。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月16日
#数楽 大偏差原理の取り扱いを知っていれば、統計力学における熱浴のアイデアで、所謂指数型分布族(統計力学におけるカノニカル分布の一般化、正規分布や指数分布を含む)がどのような場合に普遍的に出て来るかがわかります。これも空気のごとくみんなが使えるようになると素晴らしいと思う。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月16日
#数楽 総量一定(より正確には1人あたりの量の平均値一定)のお金をたくさんの人たちの間でランダムにやりとりするケースでは、注目する個人意外の人たちが「熱浴」の役目を果たします。奥村さんの新著でも紹介されていたようにこの例は基本的で分かりやすいと思う。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月16日
#数楽 注目する個人(もしくはより一般に注目する系)が集団(熱浴)とやりとりするものはお金である必要はなく、なんでもよい。ただし、指数型分布族を出すためには、注目する個人と集団の全体でやりとりするものの総量は一定でなければいけない。たったれだけの条件から〜続く
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月16日
#数楽 基本定理:ベースになる個人の制限がない場合の分布密度をq(x)とするとき、個人が函数f(x)で表される量をサイズn-1の集団とランダムにやりとりするとき、全体でのf(x)の合計がnUのとき、n→∞で分布密度はe^{-βf(x)}q(x)に比例するようになる。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月16日
#数楽 ただし、U≦∫f(x)q(x)dxであるとき、β>0は、Z=∫e^{-βf(x)}q(x)dx、(1/Z)∫f(x)e^{-βf(x)}q(x)dx=Uという条件で決まる。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月16日
#数楽 例:総量nUのお金をn人でランダムにやりとりする場合にはM≧Uに対する[0,nM]区間上の一様分布を個人の制限なしの保有するお金xの分布密度と考えます。そして、f(x)=(注目する個人が保有するお金)=x. 結果的に得られる確率分布の密度函数はe^{-βx}に比例。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月16日
#数楽 例続き。このとき、Z=∫_0^∞ e^{-βx}dx=1/β、β∫_0^∞ x e^{-βx}dx=1/β=Uなので、β=1/Uとなり、平均Uの指数分布の密度函数e^{-x/U}/Uが得られる。
指数分布が普遍的に現れて来る様子がわかります。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月16日
#数楽 積分範囲が0から∞になっているのは、q(x)として[0,nM]区間上の一様分布を選び、nを大きくしたときの様子を見ているから。
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月16日
#数楽 例:個人ではなく粒子達がエネルギーf(x)=x^2をランダムにやりとりしている場合。n個の粒子全体でエネルギーの総和はnUであるとし、制限を付けないxの分布密度q(x)dxは区間
[-√(nU),√(nU)]
上の一様分布とする。続く— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月16日
#数楽 例続き。nを大きくすると注目する粒子のエネルギーの確率密度函数はe^{-βx^2}に比例するようになる。ガウス積分の計算を実行すると、β=1/(2U)、Z=√(2πU)となり、確率密度函数は平均0、分散Uの正規分布になります。続く
— 黒木玄 Gen Kuroki (@genkuroki) 2016年9月16日
他にやりたいことがガンガン増えてきて全く触れられていない話題として,
大偏差原理の勉強がある.
統計力学でいろいろ関係あるらしいし,
前からずっとやりたいとは思ってはいるが全く何もできていない.
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