お便りへの返信/相転移プロダクション

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以下、メルマガの転載です。

次のようなお便りを頂いたので,
とりあえず思うことをつらつらと.

いつもメイル送信ありがとうございます。
当方も貴殿の様な講座を立ち上げたく
研究、調査に励んでいます。
それに関連して最近「12才が書いた量子力学」という本に
はまっています。

入門と専門の中間部分について書いたとのことで
貴殿の講座で扱っていない部分と思いますが
貴殿の見解をお聞かせくだされば
幸いです。

最初に断わっておくと,
私はこの本を読んでいませんし,
読む気もないです.
いかにも, といった感じの地雷臭しかしないので.

目次の記述が妙に気になるので,
後半で内容も読まずにそこだけ突っ込んでおきます.

まず次の部分, 指示が曖昧で
何を求められているのかわかりませんでした.

入門と専門の中間部分について書いたとのことで
貴殿の講座で扱っていない部分と思いますが
貴殿の見解をお聞かせくだされば
幸いです。

何に対する見解なんでしょうか?
「入門と専門の中間部分について書いた」という部分?
それとも「貴殿の講座で扱っていない部分」という部分?

まずは前者,
「入門と専門の中間部分について書いた」という部分に
対するコメント要求と思って書きます.
結論から言うと, 上掲書の
入門と専門の定義がよくわからないので何とも言えません.
ここでは適当に私が思うところを改めて書いておきます.

人の趣味は多種多様なので,
いろいろな人がいろいろな思いを載せて
いろいろ作ればいいんじゃないでしょうか.

Amazon のレビューを見ても,
彼の作った「12才が書いた量子力学」で喜ぶ人がいるのだし,
それはそれできっと意味があったのでしょう.

ちなみに一番これは「しょっぱいな」と思ったのは
内容紹介の次の記述.

10歳の頃には物理学の他にも天文学、
歴史、哲学、医学、論理学、経済学、
法学などあらゆる学問分野の本を読み漁り
(最盛期には年間3000冊)

「いや, 1 冊読むだけで 1 年かかるのでは?」
と思っています.
ろくな読み方をしていないか,
その程度の本しか読んでいないのでは?
という感じしかしないですね.

これ, ペレ出版側の大人の事情的な,
コピーライティングなのでしょうし,
こういうところに惹かれる大人もいるのでしょうが,
これが覿面に嫌ですね.
これだけでこの本を読む気が失せるレベルの
嫌なコピーです.

この点については我らが伊原先生の
『志学 数学』を勧めておきます.

  • http://m.phasetr.com/l/m/quAJt91UvQgWlE

特にこの P.17 の記述を引用しておきましょう.

「自分は一ヶ月に一冊読んでいる」などという先輩な仲間に惑わされないように.
本質的なところを感じとれない人の方が,
すぐ数値的な評価をしたがる.
数学者になる, ということは, より深い価値がわかる人をめざす,
ということでもあると思います.

もちろん, これはこれで「偉い先生のお小言」のように思い,
不快感を感じる方も多いのでしょう.

ペレ出版の人達はこの辺のことは「わかっている」でしょう.
それよりもこの本のターゲット層に響く言葉として,
「年間 3000 冊」を挙げたのでしょう.
それはそれでマーケティング, コピーライティングとして理解できます.

そしてこの辺, 決定的な認識のギャップというか,
はっきり言えば嫌悪感というかある種の倫理観が出るところですね.

数学や物理などのアカデミックな人達が
踏み越えられない一線であり,
マネタイズするときのハードルです.

実際, 私もこの手のコピーは受け入れられないですね.
ならどんな文章をどんな人達に向けて書いて
届けるのか, それについては実際に募集ページを見てみてください.
理工系の知人に見せると「あれもうさんくさい」と
よく言われるのですが,
いまの私に書ける精一杯ギリギリのラインです.

あと言葉に対する書き手側の意識と受け手側の意識の問題もあります.
例えば, 私の認識では,
現代数学観光ツアー 物理のための解析学探訪
(http://m.phasetr.com/l/m/w1AxHjLU8KjSTW は入門です.

「小学校の面積からはじめているし,
中学校の頃の自分が喜ぶと思って書いた.
紛うことなき入門用コンテンツである」
といまでも思っています.

ここでの「入門」はゴリゴリの数学・物理系の
志向を持つ人への入門という意味ですね.
「解析門前払い」と名高い
杉浦光夫の『解析入門』で言うところの,
入門もこの意味であろうと思います.

この認識からしてずれていそうな気がするので,
コメントに苦慮しています.

ちなみに「中高数学に挫折したのでリベンジしたい」
とか「昔挫折した中高数学をじっくりとやり直したい」
という意味での「入門」を想定して
「応用からの中高数学再入門 中高数学駆け込み寺」
(http://m.phasetr.com/l/m/y6L78yocaKgVYQ を作りました.

ここでの入門は「役に立つ」という視点から
数学の世界に入ってみましょう,
特に興味関心がある人が多いっぽい
物理への応用を意識したところから,
まずはどこに何を使うのかを知ることからはじめましょう,
という意味での入門です.

懇切丁寧にわかりやすく,
というタイプの入門ではありません.

これ, いまスウェーデンの理学部数学科に通ってらっしゃる方
2 人のお子さんを持つ方から,
「内容は結構腰を据えて読まなければいけないようなものが多かった」
というコメントを頂いたので,
「そんなに難しかったのか」とか
「もっと気楽に読み進めて大きな姿を
視界におさめることに意識を向けてほしい」とか
思ったりしました.

なかなかうまくいかないものです.

すでに大分長いですが,
「貴殿の講座で扱っていない部分」について.

私の認識だと,
私が作っているコンテンツやサービスは
「入門, または入門から専門への橋渡し」です.

数年前までは数学科や物理学科の学生向けに,
学部 1-2 年が大学院または研究最前線を見る,
というスタンスの「橋渡し」セミナーをよくやっていました.

DVD にもした「よくわからない数学 色々な反例で遊ぼう」は
京大で開催された数学のイベント,
関西すうがく徒のつどい (通称つどい) で,
学部 1 年や高校生にもできる「研究」くらいのスタンスで
勉強から研究への「橋渡し」としたという認識でいます.

  • つどいのページ http://m.phasetr.com/l/m/q0hGK7AqMW3ztM
  • DVD へのリンク http://m.phasetr.com/l/m/n7scdgliiMmnIo

こういう認識なので,
やはりこのコメントを寄せてくれた方とは,
きっと決定的に認識がずれているのでしょう.

一応言っておくと,
その認識のずれはいいとは悪いとかいう話ではありません.
強いていうなら私の認識のずれは
多分大きな問題で,
それで「マネタイズ」したいというのなら,
むしろ致命的な問題でもあるのでしょう.
実際よく言われることでもありますから.

最後, ちょっとした目次へのツッコミを.

第3章 数学的定式化―量子論から量子力学へ

本読んでないので量子論という言葉と
量子力学という言葉を
どう定義して使っているのかわからないものの,

私の感覚だと量子論の方が抽象性が高く,
「極微の世界の物理」くらいの意味で
使われている方が多い印象です.

一方, 量子力学は有限自由度かつ非相対論での
量子論, くらいのイメージがあります.

前期量子論とかその辺の言葉の上っ面を適当にかじって,
量子論から量子力学とかそういうイメージで
言葉を使っているんでしょうか?
このメールを下さった方,
コメント頂けると嬉しいです.

第4章 内在的矛盾と解釈問題―量子力学は正しいか?

地雷感高まる節タイトルで, やばそう.
内在的矛盾というの,
何を言っているのかは気になりますね.
「量子力学は正しいか?」という問いも,
量子力学がどう定義されているかにもよりますし.

相対論的量子論や,
必然的に出てくる (無限) 多体系の扱いを考えると,
その時点で相当厳しい感.
水素原子も励起状態が固有状態になっていて,
そのままだとレーザーも作れず,
どうしたって量子電気力学, 場の理論が必要です.

有限自由度の量子力学では記述しきれない,
というかなり限定された意味なら量子力学が
間違っているかどうかはともかく,
間違いなく限界はあります.

他にも気になることはあったのですが,
とりあえず簡単にコメントできることと言えば
このくらいでしょうか.

こんな人間がこう考えてこう活動している,
というところを紹介できると思ったので,
いろいろ書いてみました.

今回からメルマガにアンケートフォームもつけてみました.

  • http://m.phasetr.com/l/m/8q4uXGSzsTz6X9

他にもいろいろ連絡手段は出していますが,
匿名の方が送りやすそうな気がするので.
何か思うところがあれば気軽にコメントしてください.


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