数学と物理とプログラミング: 学部 2-3 年レベルとは何か

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以下のツイートが発端です.

(自分にとって) 見やすいように編集しつつ引用します.

発端

ずっと前から思っているが,
数学と物理とプログラミングにまたがる話で,
数学とプログラミング,
物理とプログラミング,
数学と物理ができる人はいても,
数学と物理双方学部二-三年程度をふんわり知っていてプログラミングもギリギリできる,
みたいな人が社会に出てこない (コンテンツを作ってくれない).
アカデミアに引きこもっている層なら数は増えるだろうが,
数学と物理周りの話はしてくれてもプログラミングに関わる話をろくにしてくれないイメージがある.
その辺を突けばまだ市民にもできることがあると思って今いろいろやり始めている.
誰かもっといいの作って欲しい.
機械学習とかよりも.

電波猫さんとのやりとり

数学と物理とプログラミングをどれも齧ってるつもりだけど,
学部 2-3 年程度がどれくらいのものかよく分からないし,
多分できてない.

数学に関してかなり使える基準だと思っているのは多様体の本が難なく読めるかどうかです.
線型代数の抽象論が必要で,
陰関数定理・逆写像定理・常微分方程式の解の一意性存在定理を使いこなせ,
テンソル代数のイデアルによる商代数の構成がわかるなら相当確固たる基礎があります.

物理だと解析力学・電磁気・熱力学・量子力学・統計力学あたりを「よくはわからなくても何となく一通りは聞いたことがある」「一通り専門用語を知っていて関連する計算ができる」レベルですでにかなり厳しいと思います.

物理はまだしも数学については,
知識としては学部 2-3 年でも,
運用できるレベルに至るのが下手をすると学部四年のゼミで鍛えられて大学院でようやく何とか最低限の運用技術習得くらいな感触があり,
実際は相当高い水準です.
少なくとも解析系市民としてはかなりのハードルを感じる事案でした.

きびしい.

線型代数の抽象論は明らかにやばくわかっていない・そもそも知らないことがはっきり認識できますが,
微分積分と微分方程式は理解はともかく使えている感を感じている人は多そうな一方,
多様体で必要なのは息切れして教養数学で手薄になる陰関数定理・逆写像定理こそクリティカルに効くこと,
これらが直観的にはかなり明確ではあるものの,
証明が長く厳しく多変数で記号もつらく,
そもそも直観的な理解さえほとんどされていないであろうことがまず厳しさ第一ポイントです.
常微分方程式のハードルはある意味さらに厳しく,
普段散々微分方程式を解いている・解けていると思う人ほどおそらくつらい.
具体的な方程式を解けるかどうかではなく,
一般の正規系の非線型常微分方程式系の局所解の一意性存在定理こそが問題で,
そもそも解の一意性と存在定理自体に興味を持たない応用勢を軒並み焼き尽くしていくハードルです.

強い人だとそれらを何となくパワーまたは「そんなもん知るか」で乗り越えていくのですが,
半端に数学をわかった・使える気になっている人だけを特異的に綺麗に粉々に破壊していく要素が多様体論に詰まっています.
自動的に学部の数学をかなり広く勉強できてお得と言えばお得です.

解析はかなり苦手意識がありますが,
沼が深そうですね.

沼とかではなく,
現行の非数学科ではたいてい全く必要なくて,
数学科の数学で必要になるだけの話です.
いらないからやらないし知らないし知らないままで物理・工学できるのです.
ミュージシャンが何かの機会を「クールなこれを何か知らないが問題ない」という例のアレです.
無理に知ろうとするからつらい.

数学と違って物理はある程度計算できればそれなりにレベルアップした感が持てるのがいいところという感じがある.
数学だともう何をどうやっても駄目なものは駄目で何一つわかって気がしないだけではなく,
実際に本当に何もわかっていないし,
計算さえ何もできない.

物理は「何もわかっていなくてもとりあえず計算できる」があり得るし,
逆に「計算はよくわからないが (実験を通じて) 多少なりとも物理を知った気になれる
(わかったかどうかは別の問題)」があり得る.
人によってはあるのかもしれないが,
数学で物理に対応するこの事象に出会ったことがない.

番外編: 数学科の本を物理関係者が読む

とりわけ物理の人間が勘違いしているのだが,
数学科向けの数学の本は適切な水準の数学科の学生に向けて書かれていて,
他の誰をも対象にしていない.
他学科の身で「わかりづらい」というのはそもそも「お前は対象ではない」事案なので,
あるなら物理の人が書いた本を読むか,
我慢するしかない.

数学科の学生が物理の本なり工学の本を読んでいて「数学的に厳密ではない」と言い出したら「国に帰れ」と言わざるを得ないだろう.
「お前のための本ではない」と.
それと同じなのでさっさと諦めて欲しい.
諦めて読むのをやめるか,
数学科の数学とダイレクトに戦うしかない.

もちろんいつだって最終手段である「専門家・友人との議論」と,
「自分で本を書く」手段は残っている.
私のような市民ならともかく,
大学生ならもう最終手段を取るしか,
ほぼ全ての場合に道はない.
はやく諦めて本を書け.

それに合わせて具体例が欲しいとかいう話,
どのくらいの本をどう読んできてどのくらい数学ができてどんな本を読んでいるかがまず真っ先に問題になる.
例えばこのツイートの話.
適切な具体例がたくさん書かれていても「抽象的で意味がわからない」となっている可能性がある.

数学で具体例が必要事案,
何をもって具体例とみなすかがまず大問題で,
多分初めのうちは線型空間に具体例がいるはずなのだが,
そのうち別の概念の具体例として (抽象的な) 線型空間が出てくるし,
初学者にとって抽象的な例がある程度知っている人には手触りのある最高に具体的な例になったりする.

当然,
多段階で具体例を山ほど知っていることが前提になっている.
数学的な段階を吹っ飛ばして本を読むと「この本を読む数学の人間ならこのくらい知っているだろう.
そうしないとまともなページ数で本かけない」問題もあり,
そこを飛ばしてアタックした他学科の学生は地獄を見るだろう.

それを読むための基礎体力がないので,
諦めて暴力的な基礎体力作りに励むしかない.
基礎体力がなければもちろん数学科学生であっても読めない.
物理の本でも最低限の計算力を少しずつ鍛えるのであって,
いきなり量子力学や電磁波をやると計算量で圧死する.
社会は厳しいのでもうどうしようもない.

このような具体例が構成されている.
「線型空間のテンソル積と本質的に同じなので詳細は省略する」と環や加群のテンソルでやられるし,
そこから同値条件だと言って普遍性に飛ばされたりする.
「集合と写像という数学の基礎だから」と言われても応用系でやらないから即死もある

「この証明ではテンソル積の具体的な構成を用いています」 (そして現れる,
バカでかい線型空間のバカでかい部分空間による商空間)


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