偏微分方程式まわりの物理の数理: グリーン関数に関わる数学の難しさ

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次のツイートにいろいろ反応したのをまとめておく.

偏微分方程式論を学んだら階段関数とデルタ関数の積みたいなヤバそうグリーン関数がなんでオッケーなのかわかるんだろうか— まるまる (@butsubutsu_wawa) July 6, 2020

以下, まるまるさんのツイートは引用にして私のツイートを適当に編集しつつまとめる.

私の観測範囲だとそういう具体的な話を議論している本を見かけたことがありません.

リプライありがとうございます. デルタ関数等は超関数の意味で微分はできるが, 普通の微分はできないと習ったので超関数が偏微分方程式の特解になることに疑問がありましたが, 具体的に議論しなくても一般論から数学的に正統化できるという感じなのでしょうか.

だいぶ長くなると思いますが, 基本的には全て修羅の道です. 一般的な話をいくつかしたあと多少具体的な話をします. まず物理では解があることを前提にその性質を調べるのが普通なわけですが, 数学的にはその前段階の解の存在と一意性がすでに大問題です. そして物理の研究フェーズのはるか手前です. 例えば, 学部三年くらいでやる連続体の力学, 流体力学でのナビエ-ストークスは解の存在と一意性が言えたらフィールズ賞をあげます事案な訳で, 一事が万事こうだと思ってください. 物理として嬉しいことが何かできている方が珍しい, そういう気分です.

私の学部の頃の教官 (専門は数学としての非線型偏微分方程式) が言っていたのは, マクスウェルのような線型の方程式でも, レイリージーンズ (だったか何か) では境界条件で非線型性が出てきて, そこで問題が一気に難しくなると言っていました. その程度に何もできていません.

一般に超関数の積は定義できません. 関数解析的なシュワルツの超関数はもちろん, 佐藤超関数でもダメだったはずです. 最終的に頑張ればそれっぽいことは数学的にもできるのかもしれませんが, かなり紆余曲折を経た議論になるでしょう. コロンボーの一般化関数という理論があり, これは「超関数の積が取れる」体系だそうで, これを使って一般相対論をやっている人たちがいるようで, 本もあって持っているのですが, 専門違いなのもあって全くわかりませんでした. 超関数の積自体は数学的に正当化できる理論はあるようですが, 具体的な PDE で物理の人が満足するような話は何一つないでしょう. そんなのができたところで物理にとって何の役に立つ, と失望するだけと思います. それこそ今日話題の愚鈍な狂人石井晃事案です. ああ言いたくなる気持ちはわからないではありません. 私はその辺の数学に首を突っ込んで数学科にまでいったくちで, むしろ無力さを噛みしめながらそれでも自分の興味ある「物理」がそこにあると思ってしまったので歯を食いしばってやっていたわけで.

グリーン関数自体は数学でも普通に議論はあります. ふつうの PDE であまり見かけたことはないのですが, 幾何解析の文献では見かけます. グリーン関数というよりはグリーン作用素とかレゾルベントという言葉で出てきます. レゾルベントに関しては, 私の専門の作用素論では基本的な対象です. ただ, PDE の視点からレゾルベントを見た経験があまりなく, PDE 方面での意義や扱いは私はよくわかっていません.

私の知る限りの範囲で数学と物理での扱いの違いを書くとこんな感じです. 物理だと拡散方程式を初期値が点源 (デルタ関数) の場合を解く, みたいな形でグリーン関数が出てきます. あとは畳み込みで重ね合わせて一般的な解を得る, みたいな. これ, 初期値が超関数の超関数方程式で死ぬほど扱いづらいです. 数学では点源の方程式よりも初めから「一般の (可積分な) 初期値関数で考える」みたいな形にして, 初期値が超関数の鬱陶しい形自体を回避します. 数学的にはそれで「一般的』だから構わない, みたいな感じです. ここで物理との意識の違いも出てきます. 物理でのグリーン関数というか初期値が超関数の時の解は, 一般解を得るための道具というだけではなく, 点源のもとでも解というそれなりに物理的な意義を持つ対象で, これはこれで物理として本当に大事です. しかし数学的にはピーキーでやりづらい. こういう意識のギャップもあり, 物理で欲しい状況が数学的にきちんと議論してある本は必ずしも多くありません. 何か合理化はできるかもしれませんがそういう風に書いてある本を見たことがないので専門外なことも手伝って私はよく知らない, という話がいろいろあります. 全空間での拡散方程式の初期値がデルタ関数の解くらいなら簡単なのでいくらでもどうにでもなりますが, 数学でよくやる一般の領域内での初期値・境界値問題が同じ難易度でできるのか, そういうことを書いてくれている本があるかどうかは全く知らない, とかそういう感じです.

PDE とは少し離れますが, 量子力学での摂動はきちんと収束するのかを気にして最終的に数学者として世界をリードした加藤敏夫という人もいます. これは私の専門から見て完全に先達です. 気にし始めたら数学者にならざるを得なかったとかいうレベルで数学マターなので気にしても物理にいいことないという社会の厳しさ. この辺を実体験ともに思い知らされたので「物理をやりたければ物理をやれ, 数学をしたいなら数学科に行け, 半端者はどこにも何にも届かない」みたいなことをいつも言っています. 本当に物理のはるか手前の問題解決で数学的にフィールズ賞, みたいな話がよくあります.


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