自己共役拡大の物理と教育: 「理論物理学者に数学を教えようの会」でも取り上げたい

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発端

次のツイートによるようだ.

ほぼ全ての量子力学の教科書の無限井戸の解析やばいよという話:https://t.co/aMWc66K5QZ

・関数解析的に気をつけるべき点を見落とすと、xの多項式になるように重ねた状態に対して、エネルギーのベキの期待値が計算方法に依存する(矛盾

・より一般の無矛盾な境界条件があり、それが物理量に影響する— Masazumi Honda (@masazumi318) September 12, 2020

あとこれ.

前半は田崎さんが日記を書いてた頃に議論してた話https://t.co/1Jd1oAyuxC
後半の Weyl-von Neumann の self-adjoint extension まで議論してるのを見たのは初めて https://t.co/hjGm5Av1D9— Ryo Suzuki (@suzuki__r) September 13, 2020

まず上でも引用されている, 田崎さんと全さんのやり取りをまとめた記事を記事名つきで引用しておこう.

上記ツイートに全さんが反応した.

いま時間見つけてちゃらと読んでみました。結論言うと、無限壁で量子力学として一般的に許される境界条件であるよく知られた「ロビン」条件を、古典的なフォンノイマン風自己共役拡張法から再導出した、という「だけ」なので、アルヴェベリオ達の教科書「Solvable models …」に全て載てるやつです。 https://t.co/SChk9VesU4— 全卓樹 (@Quantum_Zen) September 17, 2020

で最後にチャラと書いてある実験的検証ですが、そのような壁を具体的に構成する手順がないとダメで、それは実はすでになされてて Fulop-Tsutsui-Cheon 2002にあります。実際の実験屋さんによる検証が待たれます。— 全卓樹 (@Quantum_Zen) September 17, 2020

技術的にいえばこの論文 https://t.co/nzyIAZw8Tb は、も少し一般的な点状相互作用を同様なフォンノイマン式自己共役拡張であつかったFulop-Tsutusi 2000のサブセットをやった事に相当します。— 全卓樹 (@Quantum_Zen) September 17, 2020

ついでにこれ.

有限壁を普通に高くしていくと必ずディリクレになるので、量子的な無限壁が数学的に非自明であることから「無限壁ヤバい」とする本論文の主張はちょっとアレで、寧ろ「凸凹な壁の特異な無限極限でやばい無限壁も実際に作れますよ」ってのがこの問題の状況の正しい説明だと、私には思えまする https://t.co/SChk9VesU4— 全卓樹 (@Quantum_Zen) September 17, 2020

ふげんしますと、この話をちょっと違ったふうに拡張してったのが、我々のコロナ社の教科書に書いた「量子グラフ理論」なので、興味ある人はそっちも読んでみてください— 全卓樹 (@Quantum_Zen) September 17, 2020

言及されている論文

次の論文だ.

For the example of the infinitely deep well potential, we point out some paradoxes which are solved by a careful analysis of what is a truly self-adjoint operator. We then describe the self-adjoint extensions and their spectra for the momentum and the Hamiltonian operators in different physical situations. Some consequences are worked out, which could lead to experimental checks.

私のコメント

全さんにリプライを飛ばしたツイートを引用していこう. 自分のツイートだし面倒なので引用はコピペでさぼりつつ編集する.

どこまで扱うかはともかく、境界条件の設定は「物理」なわけで、境界条件に応じて非可算無限個の自己共役作用素がある(新井・江沢の量子力学の構造に1次元区間での例がある)、この現象があるからこそ数学で物理を書けるというのはコメントすべき感があります。— 相転移P (@phasetrbot) September 17, 2020

どこまで扱うかはともかく、境界条件の設定は「物理」なわけで、境界条件に応じて非可算無限個の自己共役作用素がある(新井・江沢の量子力学の構造に1次元区間での例がある)、この現象があるからこそ数学で物理を書けるというのはコメントすべき感があります。

数学では病的と言われ、物理の人間は興味がなく、数理物理だと(重要性は)自明扱いなのか自己共役拡大の議論でほとんど言及されないっぽいこの話題、かなり好きな問題です。私の知る限りですが、具体的なモデルでの解析は極端に難しく一般論もほぼないようなものなので、物理では気分以上無理でしょう.

これまた私の観測範囲だと、全空間で議論する例が多く、ほとんど本質的に自己共役なクラスで済ませるので、数理物理でも自己共役拡大が多彩な研究事例はほとんどないのではないかと思います。アハロノフ-ボームだとトーラスを抜く関係上境界条件問題が出てその周りで議論があるらしいのは知っています.

谷村さんが非単連結領域上の量子力学といってアハロノフ-ボームをやっている(いた:前に数理科学で見かけた)のもありますが、これは微分幾何との関連みたいな話がメインで自己共役拡大の話はあまり触れられていなさそうな気分があります。

これ, 数理科学での実際の記事タイトルは何だっただろうか. 忘れてしまった.

自己共役拡大が問題になる例、初等的には境界条件が出る有界な量子系かアハロノフ-ボームのようなトポロジカル無効果が出るところかで、前者は井戸のような面白さを主張するのが難しそうな初等的な例、後者は(数学的に)難しくて手に負えないので、あまりいいネタがないように思います。

私の物理はほぼ学部3年で止まっているのでまったくわからないのですが、井戸の問題、あれは学部3年で扱う以上に物理的に何か面白いことあるのでしょうか?

あっまないですね。— 全卓樹 (@Quantum_Zen) September 17, 2020

大して面白くもない問題で語っても「数学の話をしたいなら数学科でしてください」事案になってしまうのでさすがに厳しいと思います。本質的に自己共役なところでしかやったことがないので私もまともな具体例を全然知りません。強いていうなら量子統計の熱力学的極限を取る前の有界系くらいです。

Hirokawa, 2000, Canonical Quantization on a Doubly Connected Space and the Aharonov-Bohm Phase
私が知っているのは廣川先生のこの論文です(院の頃読もうと思って難しく読めなかった)。物理の学部レベルが既にバリバリの研究水準という数学・数理物理あるあるです。ご存知とは思いますが、アハロノフ-ボームの話は新井先生の量子現象の数理でも少し言及があります。

「理論物理学者に数学を教えようの会」をやることになったので、この辺の話も盛り込もう

今ふと思い出したが、非平衡統計で有限系の両端に温度が違う系をつなげた場合に実現する非平衡定常状態にミクロのハミルトニアンがどう影響を及ぼすかみたいな問題設定で自己共役拡大な話関係したりするか?非平衡で上のような設定が実際に論じられているのは知っているが無限スピン鎖だったような。

理論物理学者に数学を教えようの会

今度「理論物理学者に数学を教えようの会」をやることになったので適当なタイミングで触れようと思うのですが、何か物理的にいいネタあるでしょうか?さっきの論文くらいですか?

ちとその辺考えて私もまとめてみます。ひまみつけられたら、ですが。— 全卓樹 (@Quantum_Zen) September 17, 2020

多分物理的に興味が持てるのは、単電子トランジスタとかへの応用の考えられる「量子グラフ理論」方面への拡張だと、私の興味からすると、思えます。— 全卓樹 (@Quantum_Zen) September 17, 2020

本を買いたいもののお金がない厳しい社会に生きているのでお金に余裕が出たら買って眺めます。

Solvable models in quantum mechanics, 理論物理学者に数学を教えようの会でも取り上げたい. これの紹介記事, 早く書いてまとめて勉強会をスタートさせたい.


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