2020-11-20 第 010 回 第 5 文読解 アインシュタインの特殊相対性理論の原論文を多言語で読む会

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YouTube 公開用: これを読んでいる方への注意・言い訳

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講義動画と関連リンク

はじめに

  • 吃音があり, 言葉は非常に聞き取りづらいと思うのでそのつもりで聞いてほしい.
  • 必要なら適当な手段で文章を書いて「話す」こともある.

今日の予定

  • 第 5 文の読解

進捗

  • 第 5-2 文の “In the conductor, however, we find an electromotive force” まで

TODO

  • stationary の類語の記録

今日のメモ

内容: コンテンツ (案) からの転記

英文と訳

ドイツ語原文 (de.5) がこの英訳では 2 つの文にわかれています.
原文に合わせて 1 つにまとめました.
一般に和訳するときも難しければ無理に 1 文で訳さず,
2 文・3 文にわけましょう.

en.5

But if the magnet is stationary and the conductor in motion,
no electric field arises in the neighbourhood of the magnet.
In the conductor, however, we find an electromotive force,
to which in itself there is no corresponding energy,
but which gives rise
—assuming equality of relative motion in the two cases discussed—
to electric currents of the same path and intensity
as those produced by the electric forces in the former case.

de.5

Ruht aber der Magnet und bewegt sich der Leiter,
so entsteht in der Umgebung des Magneten kein elektrisches Feld,
dagegen im Leiter eine elektromotorische Kraft,
welcher an sich keine Energie entspricht,
die aber
— Gleichheit der Relativbewegung bei den beiden ins Auge gefassen Fällen vorausgesetzt —
zu elektrischen Strömen von derselben Größe
und demselben Verlaufe Veranlassung gibt,
wie im ersten Falle die elektrischen Kräfte.

fr.5

Mais si l’aimant est au repos et le conducteur mis en mouvement,
aucun champ électrique n’apparaît à proximité de l’aimant,
mais une force électromotrice qui ne correspond à aucune énergie
en soi est produite dans le conducteur.
Elle provoque cependant
— dans l’hypothèse que le mouvement relatif dans les deux cas est le même —
l’apparition d’un courant électrique de même intensité
et de même direction que la force électrique,
comme la force électrique dans le premier cas.

jp.5

しかし, もし磁石が静止していて導体が運動状態にあるなら,
磁石の近傍に電場は発生しない.
一方, 導体中では起電力が発生する.
この起電力にはそれ自身対応するエネルギーが存在しないが,
いま議論されている 2 つの場合の相対的な運動の等価性を仮定すると,
この起電力は先のケースでの電気力によって発生する強さ・経路と同じ強さ・経路の電流を発生させる.

解説

英語
第 1 文
# 構文

まずは構文を調べます.

  • no electric field arises
    • in the neighbourhood of the magnet
    • (But) if the magnet is stationary
    • and (if) the conductor (is) in motion

英文解釈上, まず文頭の but に注目しましょう.
前の文と反対のことを言っているサインです.
文と文のつながりを表す接続詞は丁寧に見てください.
先程は磁石が動いていて導体が静止していました.
逆接なので今度はこれが反転しているはずです.
そう思って読解を進めます.

構文としては if の条件節がカンマまで続いてから主節がはじまります.
この大きな構造を見てから細部にうつります.

# But no electric field arises in the neighbourhood of the magnet

最初に言った通り文の解釈上 but にまず意識を向けましょう.

主節は第 1 文型 (SV) です.
どこで arise しているか,
つまり存在している場所を表すために
in — the magnet の句があります.
最初の時点で field が可算扱いなのか不可算扱いなのかは判断が難しいものの,
どちらにせよ動詞 arises に三単現の s がついていて単数扱いなこと,
no field の no は冠詞のように働くことにも注意してください.
No one can say that — のような表現も合わせておさえるとイメージしやすいはずです.

No electric field arises は杓子定規に訳すと「ない電場が発生する」です.
対応する日本語・日本語訳が不自然であったとしても英語としては自然な表現です.
Arise は rise を含むので「立ち上がる」といった意味で,
「電場が立ち上がる」のは「電場が発生する」と訳せばいいでしょう.
まとめると日本語としては「電場が発生しない」と訳します.
No+名詞は否定的な内容をすっきり簡潔に書けるとても便利な英語表現なので,
ぜひ覚えて使いこなしてください.

もちろんどこで電場が発生しないのかが気になるので,
補足情報として in 以下で電場がどこで発生しないのかを説明しています.
Magnet はともかく,
neighbourhood は「周囲」です.
訳では数学用語を使って近傍をあてています.

# if the magnet is stationary and the conductor in motion,

冒頭の if は条件を表す副詞節を導きます.
If の副詞節の中を見てみましょう.
第 4 文と違い「磁石が静止していて導体が動いている」状況であると言っています.

If の中に第 2 文型 (SVC) が and で並んで 2 つあります.
日本語でもよくあるように並列構造があると単語や表現が省略されることがあります.
この and の範囲は if の中に 2 つある,
つまり if (A and B) と思っても構いませんし,
if 文自体が 2 つ並んでいる,
つまり (if A) and (if B) と思っても構いません.
さらに the conductor in motion は本来 the conductor is in motion で,
be 動詞が省略されています.

単語としては stationary が初めて出て来ました.
これは相対性理論の中でも重要で覚えるべき単語です.
しかし知らなくても意味が推測できなければいけません.
何故かというと but で前の文と比較されているからです.
文章の流れとして現象は相対的な運動に依存するべきだと言っていて,
前の文では磁石が運動状態にあったのだから,
今度は磁石が静止しているはずです.
だから stationary は「静止状態にある」と訳すべきです.
第 4 文では at rest が対応します.

他に理工系頻出語として出てくる stationary の訳は「定常的な」です.
Stationary state で「定常状態」と訳します.
特に空間的な変化があっても時間的な変化がない状態を定常状態と呼びます.
適当な意味で時空間的に変化がない系は平衡状態
(equilibrium state) と呼びます.

static の話, station.
statue.
stay.

第 2 文
# 構文

まずは全体の構造を掴みます.

  • we find an electromotive force
    • , to which in itself there is no corresponding energy
    • , but which gives rise to electric currents
      • of the same path and intensity
      • as those produced by the electric forces in the former case
      • —assuming equality of relative motion in the two cases discussed—
    • In the conductor
    • however

主節は we find an electromotive force であとは全て修飾です.
ダッシュで囲まれた挿入もあれば関係代名詞の非制限用法もあり,
単なる長さに留まらない難しさがあります.

この文に限らず,
大きな構造を掴む上では接続詞,
または意味上接続詞の働きをする単語には注意しましょう.
ここでは冒頭の however と but which の but です.
逆接の接続詞なので前の話と何かが反転しています.
論文や教科書のような説得的な文章を読むときは接続詞を正しく読み取ることが大事です.

そして修飾構造の本丸も “, to which” と “, but which” です.

TODO ここの but which は非制限用法で問題ない?

どちらも関係代名詞の非制限用法です.
But は等位接続詞で同じ概念を並べていて,
いまは非制限用法の関係代名詞を意味としては逆接で並べています.
この 2 つの関係代名詞の先行詞は共通していると見ていいでしょう.
前者の “, to which” は in itself という修飾があり,
後者の “, but which” は gives で入っているので,
それぞれ単数の名詞に対する修飾だと判断します.
つまり we ではなく an electromotive force を修飾しています.
単複の情報から文法的に機械的に決まっていることを見抜けるかが大事です.
あなたが物理をわかっているなら文脈からもわかります.

さらに electromotive force には
an と不定冠詞がついていることからよくわかっていない,
つまりまだきちんと説明していない言葉であり,
補足説明がなければならないと思えるかどうかも大事なポイントです.

全体的な構造の分析はこのくらいでいいでしょう.
以下, 細かく文を見ます.

# In the conductor, however, we find an electromotive force

However は逆接の意味の副詞です.
接続詞ではないことを念のため注意しておきます.

The conductor は導体でずっと言及されている対象であることを表す定冠詞がついています.
An electromotive force は起電力で,
不定冠詞がついていることに注意しましょう.
ここでは抽象的な意味を持つ不可算名詞ではなく,
物理として具体的な起電力を指しているのです.
概念として初めて出てくるのであとに補足説明があるはずです.
ちなみに後半の the electric forces は電気力と訳すべきでしょうが,
この文ではこの冒頭の語と合わせて起電力と訳した方が適切です.

主語として we を使っていることにも注意します.
人文・社会学系だと解釈がわかれることも多く,
we を使うと「we というのは誰だ」「私はそんなふうに思っていない」と突っ込まれると聞いたことがあります.
理工系でも議論がある部分に we を使うと同じことが起きることはあります.
しかし自然の振る舞いを見ている物理では誰が見ても・考えてもそうなるべき見解を出す必要があるとされていて,
we がよく出てくる傾向があります.

royal we

動詞 find は英作文でも役に立つ単語です.
読解から話がずれるので補足でコメントしてあります.

# , to which in itself there is no corresponding energy

第 4 文の「磁石の周囲にある量のエネルギーを持つ電場が発生する」と対応する表現で,
先行詞は素直に an force と思えばいいでしょう.
文法としては前にカンマがあるので関係代名詞の非制限用法です.
先行詞と主節までセットで訳せば「対応するエネルギーが存在しない起電力を見つける」です.

ここで in itself は修飾の副詞句で,
メインの構造は there is no corresponding energy で第 1 文型 SV です.
To which は corresponding force to something の
something が関係代名詞が修飾する名詞として抜かれて,
to が which と結びついた形になっています.
物理的にエネルギーに対応する概念と結びつけるたいので,
やはり an electromotive force を修飾していると見るべきです.

To which の to とセットにした correspond to something という熟語を覚えておきましょう.
「something に対応する」という意味です.

# , but which gives rise to electric currents of the same path and intensity

全体としては長い節です.
挿入の “— assuming … discussed—” を無視して構造を見ます.
訳は「同じ経路と強さを持つ電流を与える」でいいでしょう.
英語として詳しく見ていきます.

逆接の接続詞 but がある上に再び関係代名詞の非制限用法です.
どれだけ複雑な構文なのかと途方に暮れますが仕方ありません.

ここでは (an electromotive force) gives rise to electric currents がメインの構造です.
続く要素は electric currents を修飾しています.
続く構造を見抜く上で大事なのは same — as の部分です.
As 以降の分析は後回しにして, 表題部分の文を見ましょう.

まず electric currents of the same path and intensity でいったん切れます.
ここで何が same なのか? という疑問が湧いてきます.
実はこれを as those が受けて説明しているのです.
熟語表現として same A as B があり, これを使っています.

動詞の gives rise to something は熟語で,
「発生させる, 生み出す」といった意味で produce と同じです.
三単現の s があるので主語は単数のはずです.
接続詞 but は関係代名詞の並列を指していると見るべきでしょうから,
ここは素直に a force が先行詞だと見ていいはずです.
物理としてもエネルギーが電流を生むというより,
起電力が電流を生むと言った方が自然です.

目的語にあたる electric currents は電流です.
定冠詞が the がつかず無冠詞の複数形になっていることに注意しましょう.
単に current だけでも電流を表します.
Current はラテン語で to run, move quickly を意味する currere を語源にしていて,
動くモノという意味があります.
深掘りすると面白い単語なので単語編で詳しく眺めると楽しいでしょう.

Path は物理だと「経路」という訳を覚えておくと便利です.
例えばファインマンの経路積分が path integral です:
もちろんファインマンはノーベル賞を取った人です.
Intensity は「強さ」です.
これも理工系ではよく出てくる単語で覚えておくべきでしょう.

最後に the same と言われても何とどう同じなのかが気になります.
本来は same A as B という熟語で理解すべき部分なので,
この部分を次に調べてみましょう.

# as those produced by the electric forces in the former case

The same path and intensity as those で,
the same A as B の as B 部分です.
この部分は「前の場合の起電力によって生み出される (のと同じ)」と訳せばいいでしょう.

ここで those が何を意味しているかで悩むかもしれません.
いま those の前には electric currents と
same path and intensity があるからです.
ここでは electric currents of the same A as B であり,
ここは一種の並列構造なので those は electric currents produced by と読むべきでしょう.
物理としても produced by the electric forces な those は
path and intensity ではなく electric currents でないと意味が通りません.

([TODO: those の説明] these ではなく those にする気分をどう説明するか?
Path and intensity より遠い electric currents を指しているから,
という説明は正しいか?
意味としては問題ないように思うが.)

ここで the electric forces と冠詞が the になっていることにも注意しましょう.
冒頭で an electromotive force と不定冠詞だったのが変わっているのです.

([TODO: 単複の変更] 何で単複が変わっているのか.
どう説明をつければいいのか.)

最後の in the former case は former が問題かもしれません.
これは前者・後者という場合の「前者」です.
単語編の former も参考にしてください.
ちなみに後者は latter です.

# —assuming equality of relative motion in the two cases discussed—

最後に assuming からはじまる分詞構文を確認します.
英語での節・句の挿入は日本語とだいぶ違う趣があり,
どこにどうかかっているかを把握するのは重要です.

文法的な判断は必ずしも簡単ではないと思いますが,
assume の意味から言って意味上の主語は we で問題ないでしょう.
つまり we assume equality of relative motion in the two cases discussed が対応する完全な文であり,
第 3 文型で we assume equality が主な構造です.
無冠詞 の equality が何かと言えば of relative motion で修飾されていて,
さらに in the two cases の補足があり,
two cases を discussed でさらに詳しく修飾しています.

(TODO: 文法的に主語をどう判定すればいいか?)

動詞 assume の意味は「仮定する」で理工系最重要・最頻出単語の 1 つです.
これと suppose は数学の定理や言明の仮定で「—と仮定する」というときの「仮定する」に使う単語です.
Assume と suppose にも微妙なニュアンスの違いがあります.
詳しくは英英辞典で調べましょう.

目的語の equality は相対性理論の文脈では「等価性」などと訳すといいでしょう.
Relative motion は「相対的な運動」で,
この relative は相対性理論の相対性です.

Equality は何かと何かが等しいと言わなければならないので,
その 2 つは in the two cases で表されています.
どの the two cases かを示すのが discussed で,
「いままさに議論されている 2 つの場合」と訳します.
この「2 つの場合」はもちろん導体と磁石のどちらが動くかによる場合分けです.

最後にここでの equality が無冠詞なことに注目してください.
「いままさに議論されている 2 つのケース」と言う具体的な equality のようにも思います,
しかし一般に equality 自体は抽象的な不可算名詞
「等価性」は抽象的な等価性であり,
無冠詞扱いでいいのでしょう.
これについては数学・物理で独特の語感があるため補足パートで説明します.

補足

英作文で便利な find

第 2 文で出てくる動詞の find は「—なことを見つけた」ことを表したいときに使いやすい単語です.
日本人が思うよりも便利に使える単語で英作文でも役に立ちます.
例えば次のように「わかる」「気づく」といった意味も表せます.

  • I found that the car was stuck in the mud.
  • 車が泥の中に入って動けなくなったのに気づいた.

他にもいくつか英作文で便利な単語があります.
例えば have は異様に便利です.
「体重が 70 kg である」というのを “I have 70kg weight.” と言えます.
せっかく詳しく文章を読むので,
「自分でもこれを使えると便利だ」という英作文・英語表現もためてください.

数学・物理では equalities/inequalities がありうる

タイトルが結論です.
日常的なふつうの英語では equality はまさに抽象的な単語で,
不可算名詞と理解するのが自然なのでしょう.
しかし数学や物理では等式・不等式という意味で equalities/inequalities を使います.
等式や不等式はまさに具体的な式が星の数ほどあり可算名詞として使う機会が多いのです.
もっといえば Inequalities というタイトルの世界的に有名な数学の教科書があるほどです.

実を言えば本文での equality に関して,
はじめて見たとき私は数学・物理として「具体的な項の等価性・等号・等式」をイメージしたので,
可算名詞にするべきではないかと思ったのです.
しかし翻訳した人にとっては「議論しているケースの等価性」という抽象的な等価性をイメージしたから不可算名詞をあてたのでしょう.
実際, 不可算名詞をあてた方が適切と思います.

名詞の可算・不可算は数学・物理での感覚と日常言語の感覚に微妙な齟齬があります.
気になったらきちんと調べるようにしてください.


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