数体の素元星座定理/理工系の総合語学・リベラルアーツ/メルマガから

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理系のための総合語学・リベラルアーツの視点から数学・物理・プログラミング・語学 (特に英語) の情報を発信しています. コンテンツアーカイブに見やすくまとめているのでぜひご覧ください.


数体の素元星座定理

細かいことは何もわかっていませんが,
とりあえず数学情報を共有します.

【ご報告】
あの定理に出会い、憧れてから十余年。
博士号取得後、あの定理に真剣に向き合い始めてから約四年。
この東北・仙台の地における我々の仕事について、
ようやく一つの形にできたことをここに報告致します。

Green-Taoの定理を有理数体の定理と見た際に一般の数体に拡張可能かという問題に関し、Terence TaoがGauss数体の場合を2006年に証明しました。Taoは一般の数体の場合にも成立すると予想し、少なくとも整数環がUFDかつ単数群が有限群(10個しかない)の場合には証明できるだろうと予想していました。
これに対し、我々はTerence Taoの予想を全ての数体に対して精密な形で解決しました。名付けて「数体の素元星座定理」

フィールズ賞の業績にもなったグリーン-タオの定理の拡張が証明された,
という話です.
もちろん, まだプレプリントを出しただけなので,
数学者集団の厳しいチェックに通るかどうかという部分はあります.

グリーン-タオの定理はフェルマーの最終定理よろしく,
「中高生でも意味はわかるが証明が破滅的に難しい」タイプの定理です.
そしてグリーン-タオの何が面白いのかいまだによくわかっていませんが,
関さんの話なので面白いことは絶対に間違いないと思っています.
新年早々景気のいい話でもあり, とりあえずシェアしておきます.

今年の目標: 「理工系の総合語学・リベラルアーツ」を進める

11-12 月, 毎週の怒涛の出張対応で生活習慣が破壞され,
ペースが掴めずにメルマガも出せていませんでした.
今月以降も仕事が忙しくなりそうでどうなるかわかりません.
YouTube 動画など日々の形のコンテンツをどこまで出せるか微妙ですが,
裏では方向性を決めてコンテンツを作り続けています.

いくつかオンラインの勉強会をやっていて,
それは強制的に半公開になるので少なくともそこでの成果は外に出せると思います.

ようやく統計学に少し慣れてきたので,
統計学・機械学習系の勉強会ではベイズ統計とそのプログラミングを,
黒木さんのツイートや資料を整理するところからはじめていこうと思っています.

中高数学 + Python 勉強会はそのコンテンツ自体のブラッシュアップと,
これの Julia 化を目指してやっていく予定です.
上の黒木さんの統計コンテンツの整理で Julia に触れるので,
それと並行して進めます.

あとは語学, 特に英語です.
アインシュタインの相対性理論の原論文,
学部 2 年でのドイツ語原文へのアタック以来の再挑戦です.
あのときは物理以前にドイツ語にやられましたが,
今回は私の語学力もあがっている上,
英語論文をメインに据えたので問題なく読み進められるでしょう.
1 回 1 時間で 1 文進むか進まないかという進捗なので,
他に参加してくれている人達が飽きてしまわないか問題があり,
これを飽きさせずに継続させられるか,
私のコンテンツ力が試されています.

語学に関してこれはこれできちんと進めますが,
これだとそこそこの量のコンテンツを読み切らないといけない問題があり,
もっといい意味でつまみ食いできるコンテンツを作らないといけないこともわかったので,
並行して短期集中で勝手気ままにつまみ食いが許されるコンテンツ案を練っています.

ここまでの反省: ガチガチの数学・物理系コンテンツしかない

上記語学系コンテンツ案はいまコンテンツ自体を仮組しながらブラッシュアップしています.
その中でも反省的に盛り込んでいるのは,
私が数学・物理方面でガチガチのコンテンツしか作れないことです.

ときどき「文系プログラマー」みたいな人からの相談を受けていて,
最近の機械学習関係で中高数学の内容+プログラミングでいいのがないかという話があります.
ごく単純に機械学習という話なら,
この辺は本以外にも Udemy での動画コンテンツなどいろいろなコンテンツが出ているので,
わざわざ機械学習素人の私が作る必要はないと思っているところです.

ただ, 私が作った中高数学+プログラミングのコンテンツの案内ページにも書いたように,
私がほしかったタイプのコンテンツがいまだ完全に不足しています.

この方面はこれでまだいろいろ作る予定ですが,
もう 1 つ根源的な問題があります.

数学に苦手意識を持つ人達の話を聞いていると,
「数学的思考」みたいなものに対する憧れみたいなものもかなりあるように思います.
これをどうしようかと.

「数学的思考」とやらが何なのかもよくわかりませんが,
何かそれっぽいモノは見せたいという気分があります.
新型コロナで完全に止まって久しいものの,
地元の中高生向け理工系学習支援の中にも, 何というか,
「文系向け数学・数学的思考訓練」みたいな要素は取り入れたいと思っていました.

ただふつうに数学・物理でやってしまうと,
私はガチガチのものしか作れないのでどうしようかという問題に帰ってきます.
それならそれらしきことを別のモノに載せてやればいいのですが,
どうしたものかわからず,
プログラミングと組み合わせてみたという気分もあります.

ここで文系自認の人なら, 数学よりもまだ語学の方が親和性があるだろうというのが 1 つ,
プログラマーなら英語ドキュメントは読まないといけない機会はあるからそれと絡めればもう少し何とかなるのではないかというのが 1 つ,
一般理工系でも英語に触れる機会は多いのに理工系視点での語学コンテンツはあまりないのでそこを埋めたいのが 1 つ,
という感じで「語学で学ぶ数学的思考」という気分のコンテンツを作ってみています.

最終的に理工系中高生に向けたコンテンツ展開を考えていますし,
数学・物理は理工系にとっての言語でもあります.
そこで「理工系のための総合語学」という立て付けにして,
しばらく数学・物理・プログラミング・英語 (語学) で進めてみようと思っています.

今年の数学: 幾何を充実させる

去年から勉強内容を本格的に幾何にシフトしました.
現代数学探険隊の案内ページでも
「指数定理などの幾何の重要な定理の勉強にここで紹介した解析学の知見は役に立つ」
と書いていましたが,
本当にきちんと役に立つ内容に仕上げられているのがわかって,
改めて安心しました.

とりあえず軸になる本を決めてそれを読み進めてノートを取りつつ,
自分のノートを見直してわかりにくい記述をゴリゴリ埋めていきつつ,
「この定理もほしい」「これは別のところに移動させたい」など構成を練っています.

微分幾何をメインに進めていますが,
とにかく線型代数です.
関数解析方面とはまた違う線型代数・微分積分のミックスで,
線型代数がまるでわかっていない・使えていないことを痛感させられ,
厳しい気持ちになっています.

もう少しで微分幾何の基礎の基礎に関わる内容について一通りノートが取り終えられるので,
次はトポロジー関連の話を解析学からアタックする方向を考えています.
具体的には関数論をやります.
1 変数だとホモトピーもかなりよく出てきますし,
多変数なら層のコホロモジーでゴリゴリにコホモロジーができるはず.
それ以外にもネーター環など可換環の基本的なところも必要になって,
いろいろな所を解析学ベースで勉強できる利点がある分野です.
改めてきちんとノートを取って進める予定です.

多様体論のノートは作りかけで止まっているので,
それもじっくり進めようと思っています.
ホイットニーの定理やらなめらかな三角形分割やら調和積分やら,
基本的な定理の証明がまとまった本がなく,
本当にいらついています.
ド・ラームの本にホイットニーは載っていて,
捩形式の議論もあればカレントによる調和積分もあるものの,
何か読みにくくて放置したままとかいう状況で,
多様体のノート作りをしばらく放棄していました.
コンテンツ公開するときにこれでは困るので,
まだしばらく幾何系のコンテンツが公開しにくい状況です.

いま整備しているのは微分幾何でもベクトル束を前面にゴリゴリに押し出した記述なので,
もっと他のコンテンツを整備しないと, という気分です.

ちなみに YouTube でしばらく線型代数系のコンテンツを集中投下していたのは
これで線型代数の整理が必要になったその成果です.

超弦理論や指数定理に興味があるという人がときどきいます.
そこではやはり微分幾何が基本的な道具です.
先々まで行けば他にもいろいろありはしますが,
少なくとも私が把握できている素朴なレベルの指数定理では,
最低限, 私と同レベルで線型代数が制御できないとどうにもなりません.
ぜひ線型代数をゴリゴリとやってください.
多様体の基礎がない状況でどこまでできるかは微妙なところですが,
ベクトル束を勉強するといい感じで必要な線型代数の知見やレベルがわかります.

多様体の基礎から調和積分まで,
過剰な一般化がなくベクトル束もきちんと書いてある本として,
北原・河上の『調和積分論』を勧めておきます.

私はいったんディラック作用素と楕円型方程式の解析からのノートを作ったのですが,
この本は多様体の基礎からはじめて,
熱方程式のアプローチで調和積分にアタックしています.
熱方程式からの調和積分ノートを作るときのために参考文献としてストックしてあって,
なかなかよさそうです.
誰か読んでくれるならオンライン勉強会をやってもいいくらいです.

あとは解析学から入れる幾何としてモース理論もやろうと思って幾星霜です.
有名なミルナーの本もある程度読んだことがあるのですが,
いくつかの命題の証明が当時の文献に丸投げされている箇所があり,
「そんなものが手に入るか」と思って放り投げた記憶があります.
幾何の本はこんなのばかりでどう勉強しろというのかと思っていて,
それが現代数学探険隊を作りはじめたモチベーションの 1 つでもあります.

ちなみにモース理論は微分積分,
特に微分をやっていると何故か幾何がわかるといういい話です.
もう少し具体的に言うと,
高校で散々やった導関数の増減表からのお絵描きを激烈にハードにやると,
それできちんとグラフの概形よろしく多様体の情報が取れることを示す理論です.

一応モース理論も文献を 2 冊紹介しておきます.
幾何の人に教えてもらった本でかなり有名な本のようです.

後者はフレアーホモロジーから触発されたという理論構成で,
ソボレフ空間などをゴリゴリ使います.
これを読んだときソボレフ系の数学に対してまだまだ不慣れだったので, 私には厳しい本でした.
いまならがんばればもう少し読めるとは思いますが.

前者はミルナーの本をもっと丁寧にした本だと思えばいいでしょう. たぶん.
CW 複体の基礎だけは仮定されていますが,
CW 複体のホモロジーはきちんと書いてあります.
多様体の基礎はどうしても仮定されてしまっていますがそれは仕方ありません.
現代数学探険隊の解析学編,
幾何としては明らかに不足してはいるものの,
陰関数定理・逆写像定理と多様体論の関係について最低限触れた上で,
ベクトル場と微分形式もできる限り多様体論との接続がいいように書いておいて本当によかったと思っています.
出せるコンテンツがいまだに全く何もないわけではないと言えるので.

いろいろやりたいことはあります.
まずは線型代数含め,
関数論と幾何のための代数の整備みたいなあたりを YouTube に出そうとは思っています.

今年も地味に・地道にやっていきましょう.

ではまたメールします.

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  1. 2017 08.29

    数学は体力だ

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