通信講座 量子力学のための線型代数とその計算 2022-08

基礎からの三ヶ月コース

三ヶ月, みっちり量子力学してみませんか?

募集は終了しました.

これは理工系出身の方からの次のような要望を頂いて作った短期集中型の通信講座です.

一方で次のようなコメントもありました.

こうした点をふまえてコンセプトを整理した通信講座のシリーズです. 特に今回は線型代数とその計算がメインテーマです. もちろん単純な数学的・理論的な線型代数ではありません. 最近の量子力学の発展では量子情報的な視点が今まで以上に重要性を増しています. 特に有限次元の線型代数が物理の本質を抉る道具になっています.

一般論もさることながら, 具体的な二次・三次・四次の行列計算も重要です. 特にベルの不等式は二次・四次の正方行列の計算の議論です. 低次の行列だからといって決して馬鹿にはできません. 特にミスなく大量に処理するのは至難の業です. 十分な計算力がなければ簡単に跳ね返されます.

とはいえ, もしあなたが物理に取り組みたいなら, 数学の勉強よりも物理の勉強に時間を割きたいはずです. ここで難しい舵取りを迫られます. 実際にいくつか量子力学や量子情報の本を眺めていても, 物理や情報の議論にまじって純粋な数学の話題がところどころにはさまりますし, 100ページを越える量の補章がある本さえあります.

そこで折衷案として物理に軸足を置いた線型代数, そして計算練習の機会を提供する機会を企画・提案したのがこの講座です.

なぜ量子力学か?

勉強するご利益はいろいろあります. 純粋な物理はもちろん応用から見ても決定的に重要です. 特に半導体などの量子工学と直結する物性理論の基礎は量子力学・量子統計力学です. そして超伝導のようにメジャーで格好よさそうな現象の多くは量子力学に起源があります. 最近応用面からも注目を浴びている量子情報も, 名前にある通り量子力学の理解が重要です.

さらに端的に言いましょう. そうした応用の議論もさることながら量子力学はシンプルに憧れの対象です. 物理を勉強したい理由, そして勉強したい分野の筆頭はやはり量子力学と相対性理論ではないでしょうか. 量子力学はそれを勉強すること自体が目的の人も多いはずです.

これは主に私のメルマガ読者の方に向けた講座です. その視点からすればもうシンプルに憧れの量子力学に挑もうと言い切った方がよほどストレートに心に響くと思います. したがって量子力学の意義に関してこれ以上は語りません.

さらに深い量子力学や相対性理論の開講も現在予定中です. そしてこのどちらも一定以上の線型代数の理解と計算力が重要です. この講座では進んだ議論にとっても大事な力を育てます.

なぜ線型代数か?

理工系では学部の教養数学として必修で組み込まれています. それだけ重要だからです. 力学や電磁気学など微分方程式をゴリゴリ解く形で微分積分は直接的に使う機会が圧倒的に多いからか, 私は微分積分に対して「何の役に立つのかわからない」, 「何の意味があるのかわからない」と言う理工系の人を見かけたことはありません. しかし線型代数に対してはびっくりするほど良く目にします. それ以外にも「実世界が三次元なのに四次元以上の議論をする意味がわからない」と嘆く工学部学生を見たことさえあります. 学部一年のときの衝撃の記憶で今でも忘れません. あまりに驚いて何も言えませんでした.

何はともあれ何故かその意義が伝わっていないのが線型代数です. 一方で「こんなに役に立つならもっと早く教えてほしかった」と言う人も時折見かけます. 最近は統計学や機械学習のような応用方面からも線型代数の重要性が喧伝されていて, 大学を出てようやくこれらと出会ったときに線型代数の威力を知る人も多いようです.

いろいろ書きはしたものの, 一言で言えば量子力学の数学的基礎が線型代数です. 物理的な正当化はいろいろあれど, 2022年時点では量子力学は線型代数で処理するのが標準的な方法です.

面倒な点がいくつかあります. 何をどうしても量子力学で必要な線型代数は凄まじい計算量を誇ります. 理論的に見ても抽象的で一番面倒な部分を積極的に使います.

例えばテンソルが曲者です. 電磁気学や流体力学でよく出てくるため, 言葉自体はよく慣れていてハードな計算にさえ慣れている人も多いでしょう. しかし量子力学で出てくるテンソルは, そうしたよく慣れたテンソルとは似ても似つかない形で出てくると感じる人も多いはずです.

テンソルは合成系の議論で必須の概念であり, 合成系の議論は量子情報では本質的です. 現代的に量子力学を勉強するなら必ず触れたいベルの不等式や量子もつれの議論でも基本的な意義・役割があります.

かといって「だから線型代数をやりましょう」と言われても「自分は物理がやりたいのであって数学がやりたいのではない」と思うのももっともです. だからこそ大学のカリキュラムでは物理の面白さに浸り切っていない, 低学年の訳の分からないうちに教養の数学と称して理論と計算を徹底的に叩き込みます. 物理の面白さに気付いてしまって数学よりも物理がしたい人達, 非理工系出身の人, 理工系であっても細かいことを忘れている人がなぜ勉強しづらいのかと言えば, この凄まじいギャップに耐えられないからです.

私の出身はまさに物理です. 物理学科は本質的に物理と数学以外にやることはなく, 低学年のうちに四の五の言わずに物理で必要な最低限の数学を固め打ちで叩き込まれました. 物理抜きでの数学の固め打ちを楽しいと思える人ばかりではありません. しかしどこかしら何かしらで絶対に向き合わなければいけない対象でもあります. そしてそのギャップを埋めるべく考えたのがこの通信講座なのです.

もう一つ大事なのは実際に物理に必要な形を見せながらの数学学習です. 極端に言えば純粋に数学的な対象に物理由来の名前がついている場合があります. そうした物理での呼び方を知るだけでも数学の勉強が楽しくなる人もいるはずです. 一般的な定理を理解するためには適切な具体例を知り, 適切な計算練習をするのは決定的に重要です. そして量子力学の線型代数にはその事例が溢れています. 実際に量子力学の用語も使いつつ, 量子力学を強く意識しながら線型代数を勉強しましょう.

通信講座としてのスタイル

箇条書きでまとめます.

配信側でペース配分するのが通信講座のポイントです. 進めたい人はどんどん進められるように最初に全体コンテンツは配る一方, 「どうか毎回がんばってこのくらいはやってほしい」という内容・量を送ります. 定義をはじめとした知識関連の回は多少ボリュームが多めになるでしょうが, 毎回なるべく一定の分量を送るようにはしています.

実際に手を動かして計算しなければ計算力は身につきません. 事前にしっかり時間を確保してください. 量子力学の通信講座第一段としてなるべく負担が重くない問題を選んで出すつもりですが, 軽い計算ばかりしていても計算力は育ちません. 一定の負荷は常にかかる前提で事前に三ヶ月の予定を立ててください.

さらに毎回簡単な確認をクイズ形式で出題していて, 便宜的に宿題と読んでいます. もちろん解答つきです. 復習なしでは理解を深めるのも理解を定着させるのも覚束ないのが現実です. しかし一回勉強した部分を復習するのは億劫です. だからこそ復習込みの確認問題つきでカリキュラムを組んでいます. ぜひ知識の定着・理解の深化に有効活用してください.

独学でハマるパターンとは?

自分の経験を思い出すだけでもいろいろな苦しさがあります. それに加えて物理・数学外の知人・友人の話を聞いてきて, 大きく言えば次のようなパターンがあります.

こうならないように, 週に二回, 無理のない量を定期的に送る形にしています.

予め注意しておきます. 前回の運動学や力学では余力がある方のためにハードな計算を含む問題も入ったコンテンツを配布してはいたものの, 物理としてはかなり軽めの計算だけを課題として取り上げていました. しかし今回は早いうちから多少ハードな計算が出てきます. 結果がわからない段階で問題を解いていたためでもありますが, 二次正方行列の問題で結果がうまく整理できなかったために三日かかった計算もあります. 二次正方行列でさえ既に大変なのです.

必要以上に警戒して気後れする必要はありません. しかし三ヶ月は徹底的に計算するぞという十分な気合と覚悟をもって臨んでください.

独学のつらさを解消する工夫

通信講座によってペース配分はできたとしましょう. しかし実行にうつせなければ何の意味もありません. そしてこの実行こそが最大のハードルです. いくら通信講座の形式で一回一回取り組みやすい分量で届いたとしても, 実際に取り組まければ意味はありません.

具体的な私自身の経験も書いておきます. 私も大人になってからいくつか通信講座を受講しています. 興味があってそれなりの金額を払ったにも関わらず, 一週間に一度, 15分の動画視聴でも楽ではありませんでした. 時間的な負担よりも精神的な負担です.

他にしないといけないこと・したいことがあるため, たったの15分であっても時間を割くのが面倒だったのです. 仕事にも何にも関係ない数学を勉強する時間と余裕はあったので, 純粋に通信講座の勉強に対する精神的な負荷です. 一年半の長期にわたる通信講座を受けたこともあれば, 三ヶ月程度の通信講座もありました. どれもコンスタントに粛々と続ける工夫が課題でした.

勉強を続けるにはどうするか?

この通信講座では定期的な勉強会の開催で継続的な勉強をサポートします.

週に二回, オンラインミーティングの形式で一時間ずつ勉強会を開きます. 詳しくは受講者の要望も確認しますが, 一回は「もくもく会」形式, つまり黙ってコンテンツを勉強する会にし, もう一回は質疑応答の時間に当てることを考えています. もちろん両方とも質疑応答の時間でも構いません. いろいろなご都合もあるでしょうから, 途中参加・途中退出も全く問題ありません.

通信講座の期間である三ヶ月はできる限り毎日, 10分でいいから勉強時間を取ってほしいのが本音です. しかし家事・育児などそうも言っていられる状況ばかりではありません. 知識確認は細切れの時間でできる部分もありますが, 計算練習は大きくまとまった時間を確保しなければなりません. その時間として週に二時間は確保してほしく, 動機づけに使ってもらいたいと考えています. 勉強していて一人でつまって疑問点が解消できないときもあるでしょう. ぜひ有効活用してください.

もちろんオンライン勉強会への参加は自由です. 顔出しも必要ありませんし, 話す必要もありません. 自分一人でやる・できるから参加しなくても問題ない人はそれで構いません.

実は2022年に入ってから, 私はほぼ毎日22:00-23:00はもくもく会の時間としてオンラインミーティングを開いています. この時間の一部をそのまま通信講座専用に転用します. 通信講座専用の時間として二枠取っただけなので他の日もぜひ気軽に参加してください. 質問があれば回答もします.

質疑応答は勉強会で対応

計算力養成が基本軸で, 計算の不明点が疑問の中心になる見込みです. メールや文章ベースでじっくりやり取りした方がよいやり取りもありますが, 直接やり取りした方が楽なこともあります. 特に計算関係の疑問は直接やり取りした方が速く正確に対応できそうなため, サポートは勉強会での対応をメインにしようと思っています.

もちろん必要に応じてメールなどでの文章対応もします. まさに私がそうであるように吃音など会話に困難がある人もいるでしょう. そういう人に無理に勉強会に参加させて話させるわけにもいきません. 聾者もいるはずでそうした方々に対する適切なサポート方法にも工夫の余地があります.

さらに文章ベースでのやり取りのためにSlackなどのチャットサービスも使います. 勉強会前後のzoom解放の連絡やスピーディーな質疑応答対応のためです.

いろいろな工夫を入れているのでぜひサービスを使い倒してください.

短期集中型の意義: 長く続けるために

これも以前の反省に基づきます. 以前, 二年の通信講座を展開していました. 講座の内容からすればこれでも短いくらいです. しかし二年もあれば途中で状況が変わります. 実際に途中で数学の勉強をしている余裕がなくなる方が何人かいました. 司法試験などならともかく, 直接役に立つわけでもない数学の勉強に対して, 大人がそこまで長期の予定を立てて動けるわけもありません.

そこで今回期間として三ヶ月を設定しました. 1-2ヶ月では短すぎてほとんど何もできません. 一方で半年程度になるとどうしても中だるみします. 確実に予定をおさえられ, しかも緊張感を保って続けられるのはこれが限度ではないかと見ています. どうか三ヶ月は予定も調整して頑張ってほしい, そうすれば一つの山は越えられる, そうした願いと実体験にもとづく設定です.

三ヶ月も続けられたなら, その先も自分なりにペースメーキングし続けられる仕組みも整っているはずです. それはきっと数学や物理以外にも応用できるはずで, あなたの今後の人生にもきっと役立つでしょう.

人を巻き込もう

これも私の経験に基づく手法です. 特に興味はあるが自分一人ではやれない・続かない勉強をする場合に有効です. 他人, それも時間の限られた大人を巻き込んでいるので, いい加減なことをするわけにはいかなくなり, 準備・勉強に時間を割く強制力が出ます. 勉強会サポートはこのためです.

特に要望があれば, 参加される方を講師役にした勉強会形式も考えています. 講師役というと準備が大変と思うかもしれません. しかし私が考えているのは, 単に各回のコンテンツの読み上げのようなもので, 事前に入念な予習をした上で講義をしてもらうのは考えていません. 勉強会ではじめてコンテンツを目にする, つまり予習なしで講師役を務めてもらって構いませんし, むしろそれをお勧めします. 大事なのは積極的に発言してもらうことで, 「一回読んだくらいではよくわからないですね」で終わっても構いません. 何度も復習してもらうのが前提だからです.

「確かにそこは難しいですね」という苦労話の共有だけでも気持ちが楽になるはずです. 一人でやっているのではない, 同士がいる, この感覚を持ってもらうのが目的です. 要望があれば私が話すのでも構いません. あなたが勉強に楽に取り組めるようになることだけが目的です. ぜひ気楽に勉強会を活用してください.

カリキュラム

今回は量子系講座の初回として, 必要以上に突っ込みすぎないようにしました. 最終的なカリキュラムは少し変わるかもしれませんが, 基本路線は変わりません. できる人は自分で自由にどこまでも行けるでしょう. そうでないならこのくらいのところから地道に取り組んでほしい意図で, 今回はごく基本的な概念や計算での確認だけに留めています. 計算量が多くてもどうしても確認してほしい内容であれば盛り込んであります.

  1. 量子力学・量子情報に関わる記法・記号集
  2. パウリ行列の定義と関係式
  3. チレルソン不等式またはチレルソン限界
  4. 行列 v·σ の固有値 1 の固有ベクトル
  5. 密度行列と確率混合
  6. 三次ユニタリ行列の積による分解
  7. 正規直交基底の変換とユニタリ行列
  8. 密度行列の二乗のトレースの評価
  9. ある条件をみたす N^2−1 個のエルミート行列の構成
  10. 例: 二次元量子ビットとブロッホ表現
  11. 定義: ゲルマン行列, 例: 三次元量子ビットとブロッホ表現
  12. 一般のブロッホ表現
  13. ブロッホベクトルの長さと密度行列の固有値
  14. 例: 一般の場合
  15. ブロッホ表現と代数的性質
  16. 行列表示の例
  17. 作用素の積に対する行列表示
  18. 恒等作用素の行列表示
  19. 正規直交化の例
  20. パウリ行列と外部積
  21. 外部積の行列表示
  22. 対角化不可能性の検証
  23. パウリ行列はエルミートかつユニタリ
  24. エルミート行列に特化したスペクトル分解の証明

念のため改めて書いておきます. これは今回提供する全体コンテンツのうち, 三ヶ月の通信講座で対象にする節です. 私の語学学習の都合もあって英訳をつけているためその分の水増しはあるものの, 現時点で量子力学・量子情報に関わるパートは150ページ程度で100節以上あります. 三ヶ月間, 週二回の通信講座では24回分しかないため, 今ある分の全ては扱い切れません.

簡単な知識の確認もあれば4ページにわたるハードな計算問題もあります. 目次を見れば大まかに節ごとの所要ページ数がわかるので, それで計算量を判断するといいでしょう. ぜひお好みのアプローチで三ヶ月取り組んでください.

三ヶ月終了後の過ごし方

はじまる前から言うのも変な話ですが, 大事なことなので最初に言っておきます. まずはゆっくり休んでください.

はじめからよく知っているのでもない限り, 三ヶ月やった程度では消化不良が起きる内容です. 特に計算力はそんなに簡単に育ちません. 一方, 日々の生活もある中で三ヶ月も集中して取り組んだのです. 趣味でのんびりと取り組む方もいるでしょうが, きちんと理解しようと思ったら決して楽な三ヶ月ではありません.

じっくり休んで英気を養ってください. もし勉強を続けるにしても, 新しいことに取り組むよりものんびりとした復習をお勧めします.

こう思えたならそれは素晴らしく, 「この三ヶ月でもやはりここがわからなかった」があっても構いません. 私も学部一年の頃に全くわからなかったことがあり, あとで改めて確認する機会があって「ああ, これはこういうことか」, 「たったこれだけのことか」と思えたこともたくさんあります. 逆に「わかった気になっていたが全然わかっていなかった」と思った経験もあります. これも大きな発見で理解の進展です. 見えていなかったことが見えたからこそそれまでの理解の不十分さがわかったからです.

さらに言えば, 通信講座で課した節・計算問題は配信した全体PDFコンテンツの一部でしかありません. 通信講座本編で触れなかった分の計算をじっくり追いかけてもらうのも一手です. 重ための計算が残っているので, じっくり計算するだけで2-3ヶ月かかってもおかしくありません. 焦って早く読み終えようとすると, なかなか終わらない現実にうんざりしてしまいます. のんびり・じっくりが大事です.

私自身, 学部のときは計算を追い切るだけでも大変で, ようやく物理を考えられるようになったのは大学四年になり, 一通り数学の腕っぷしと物理の基礎知識が一通り揃ってからです. もしあなたがそういう状態なら, 今度は計算ではなくその物理を深める時間を作るのも大事です. 物理を深めるためにもっと計算したくなることもあれば, 数値実験のためのプログラミングを勉強したくなるかもしれません.

一筋縄ではいかないのが物理であり数学です. 長く付き合いたければたまには距離を取る期間も大事です. あなたにその意志があるならば物理も数学も逃げずに待っていてくれます.

参加資格・費用

参加をお勧めしない人

そろそろ有料講座としての話をはじめます.

まず, 参加資格は特にありません. あえて言うなら次のような人に参加はお勧めしません.

順に説明します.

ゴリゴリに量子力学の物理が勉強したい

偏微分方程式・シュレディンガー方程式のいろいろな現象の理解を基礎にした, 20世紀量子力学の本は定評のある良書がたくさんあります. 21世紀的な, 量子情報・量子測定的な議論を重視した本もいくつか出始めています. そうした本を読んで自分で勉強してください.

趣味に応じて好きに勉強してもらうのが一番です. ただ, 何の指針もなく送り出すのも不親切でしょう. 今後の講座展開に沿う形でいくつか紹介します.

数学の理論, そして何より計算上もそこまでハードではないにも関わらず, 物理としても凄まじい結果が出てくる量子情報的な議論を意識して勉強するのを勧めます. 数学的な準備が少ない割に手っ取り早く面白い議論に辿り着けるのが何よりの利点です.

私には極めて読みにくかったモノもありますが, いくつか本や文献を挙げておきます.

ストレートに量子力学を勉強したいなら堀田・谷村本を勧めます. 堀田さんの本は用語の使い方が雑で私には非常にストレスフルでしたが, 純物理の人にはいいのかもしれません.

量子情報的な方向ではニールセン-チャンが著名です. ニールセン-チャンがつらいなら量子情報科学入門はお勧めです. どちらも量子力学・量子情報への応用を軸に置いた線型代数が, 定義・定理・証明ベースで一から書いてある点でもお勧めです. 私の講座はもっと具体的にいろいろ計算し倒して遊ぶ部分にフォーカスがあります. 通信講座の内容に関する物理・情報的な補足を得るための副読本や終わったあとに読む本としてもお勧めです.

そして小澤さんの講義録です. 正直, 私は量子情報と言われるとあまり元気が出てきません. どうしても物理よりも情報的な視点が強く, そのテイストに乗り切れないからです. しかし量子測定となると, 私にとっては俄然物理の匂いがしてきて元気が出てきます. もちろん量子情報から見ても重要な分野です. 著しく数学的なスタイルなので物理系の人には読みにくいかもしれません. しかし完全に行列(有限次元の線型代数)での議論です.

計算には時間がかかる

最低でも三ヶ月はみっちり時間を割いてほしいので, それができない人は参加してもつらいだけです.

学部教養レベルの線型代数に触れたことがない

今回は量子力学に関わる形で線型代数の計算力を増強するのがテーマです. もちろん数学的に細かいところまで理解していたり覚えていたりする必要はありません. かといって線型代数を全く知らないのではさすがに耐えられないでしょう.

自力でバリバリ計算する気がないと意味がない

2022年のメインタスクである例と計算編の延長にあるため, バリバリ計算してもらって計算力をつけ, いろいろな例を計算し倒せるようになるのが目的です.

よく本を眺めるだけで手を動かさない人がいます. 博覧強記の人でもない限りこれでは知識さえ定着しません. 何より計算を眺めて理解できるのと, 実際に手を動かして自力で計算を完遂しきるのには深く広い溝があります.

実際に計算練習しなければ計算力は身につきません. 難しい内容に挑むときには自分で簡単な問題を作ってそれを解いて勘を育てる場合もよくあります. 簡単な問題さえ解けないのではどうにもなりません. 倦まず弛まず計算を続けましょう.

教えてどうにかなることではない

計算にもスポーツのような実技の側面があります. いくらよい指導を受けたとしても, くり返し反復練習をしなければ競技能力は上がりません. どうしても大量の計算練習と試行錯誤が必要です.

とにかく自分で計算して計算力をつけてもらう意図もここにあります. そもそも教えてどうにかなる部分ではないのです. 私のタイポもあるでしょうし, 「この計算のここがわからない」と言われたらその質問には応えますし, 必要に応じてコンテンツに加筆します. それでも計算自体は自分で手を動かしてやってもらわなければはじまりません.

残念ながら一所懸命手を動かさなければ計算力は育ちません. プログラミングによる数値計算であっても, 裏では手計算を含めた大量の確認事項があります. ここをサボってできるようになった話を聞いたことがありません.

計算が大事とわかっていても気後れしてしまうなら, ぜひオンライン勉強会も有効活用してください.

費用感

結論から言うと次のように設定しました.

費用に対する感覚はいろいろあるでしょう. 前回の経験を踏まえ, 大まかに言って一ヶ月一万円の計算です. 三ヶ月で三万になると思うと決して安くありません. そんな人は費用のイメージとして毎日ジュース一本・夕飯のおかず一品の我慢を考えてみてください. よくコンビニに行くなら, コンビニでの買い物を意識的に控えて出費をおさえると思うとちょうどいい具合でしょうか.

理解が定着するまで何度も復習が必要です. 多少のリニューアルや内容の変更はあるにせよ, 同じ講座を何度も受けてもらうことまで考えています. とにかく続けてもらわなければ話にならないので, このくらいの負担が限度だと思っています.

他社サービスとの値段・内容の比較

念のため他のサービスの値段も紹介しておきます. ありがたいことに最近は個人指導が流行っています. そこでは基本的に一時間で7,000円が相場のようです. 私が理論物理学者を相手に個人指導したときもその程度の値段でした. 他にも三ヶ月程度の連続講座を見ると20,000-30,000円が相場です. これは多人数向けの一方的な講義なのがディスカウントポイントです.

今回は既に用意してある計算練習系のコンテンツでバリバリ計算してもらうのが目的であり, 講義負担はなく, 質問対応も配布コンテンツの内容に限定するため負担が少ない見込みのもとでこの金額にしました. 週二回, 各一時間のもくもく会・勉強会開催があるためサポートは決して薄くありませんし, 手を抜くつもりもありません.

最後に. 私は学部では早稲田で物理を学び, 修士では東大で数学・数理物理を勉強・研究していました. 自分で言うのも何ですが, 大学の中ならともかく, この二つの基礎科目に対して同時に一定以上の耐久力を持つ人間に大学外ではレアキャラです. 数学科の数学から見ても, 物理学科の物理から見ても大事な部分をフォローできます. もしあなたがこうした点に興味関心があって, 継続的にじっくり勉強していきたいと思っているならぜひ積極的に参加してください.

お申し込みはこちら

お申し込みは次のリンクからどうぞ.

募集は終了しました.

今回の企画は単にコンテンツを読み進めるだけではなく, 知識を確認しつつ具体的に計算力を身につけてもらうのが主眼です. 実際を手を動かしてみると思った以上に理解できていない点が見えてきます. そうした精神的な負担も込めてこの三ヶ月は決して楽ではないでしょう. 一方で三ヶ月間という明確な終わりも見えています. もしあなたが本腰を入れてやってみようと思えたならぜひ積極的に参加してください.

残念ながら今回は予定が合わない人もいるでしょう. あなたもそうかもしれません. しばらくしたらまた通信講座を企画します. 何度も書いているように一度やった程度ではなかなか身につきません. 理解を深め, さらに定着させるにはそれ相応の時間と努力が必要です.

サービス・サポートを工夫しつつさらに安価に再受講できるプランも考えながら進めています. 無理なくくり返し勉強できるような環境作りを重視しているので, 次の機会を楽しみにお待ちください.

最後にもう一度申込リンクを添えます.

募集は終了しました.

次は通信講座の勉強会でお会いしましょう.