Manjul Bhargava は驚くほど美しい数学を生み出している.
しかしその大半は私の専門分野ではない.
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前回と同じく, 地の分の「私」は Terence Tao のことだ.
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私の興味と重なる分野 (ランダム行列の理論だ) での彼の仕事として
彼が多くの共著者と進めている楕円曲線のさまざまな数論的特徴の
統計的性質のモデリングがある.
これには予想の定式化も厳密な仕事もある.
具体的にはランクや Selmer 群や Tate-Shafarevich 群の研究だ.
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ランダム行列, 何となく確率論と線型代数の話か,
と思っている人もいるかもしれないが, かなりの魔界だ.
とりあえず Wikipedia を張っておこう.
http://goo.gl/ttiQId
【現在では核物理学のほかに, 量子カオス, 固体物理学,
統計力学, 数論, 生態学, 遺伝子工学, 金融工学, 無線工学,
複雑ネットワークなどの研究で応用されている. 】とのこと.
このとおり, 物理でも数学でもいろいろなところで出てくるし,
以前東大数理で毎年開かれている Summer School 数理物理でも
ランダム行列の話題が出たときがある.
http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yasuyuki/mp2005.htm
ほとんど名前だけしか知らないが, Wigner の半円則がとりあえず有名.
立川さんの YouTube でのミニ講義を紹介しておこう.
http://goo.gl/pCJ1zL
ちょっとググったら次のような PDF も出てきた.
http://web.mit.edu/18.338/www/Acta05rmt.pdf
http://cims.nyu.edu/~zeitouni/cupbook.pdf
http://terrytao.files.wordpress.com/2011/08/matrix-book.pdf
目次を眺めただけだが, 超幾何に Painlevé も関係するらしい.
自由確率論は作用素環ネタで, それは上記
Summer School 数理物理でも出てきた話で,
九大の植田さんがやっていたりする.
Golden-Thompson 不等式は私も使ったりする.
量子統計で使うのだ.
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例えば Kane, Lenstra, Poonen, Rains との共著
http://arxiv.org/abs/1304.3971
では, これら統計的性質の全てを予想するランダム行列モデルを提出している.
例えば Tate-Shafarevich 群の \(p\)-要素 が,
ある \(p\) 進ランダム行列の余核のように分布することを予想している.
これは以前のポストで議論した Cohen-Lenstra の発見的議論の精神に沿った話だ.
http://terrytao.wordpress.com/2009/10/02/at-the-austms-conference/
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predict の訳語がよくわからない.
アブストで conjecture という単語が踊っているので,
予想にしてはおいたのだが, それなら conjecture にするのでは, という気もする.
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しかしさらに強く印象的なことは, Manjul と共著者達が
このモデルに関していくつか非自明な事実 (例えば,
あるモーメントが予想された漸近的な性質を満たす) の証明に成功していることだ.
はじめてこれらの様々な統計的性質の非自明な上下界を与えている.
例えば楕円曲線がどのくらいの頻度でランク 0 になるか
ランク 1 になるかの下限を得ている.
また最近, Gross-Zagier
http://www.ams.org/mathscinet-getitem?mr%3D833192
や Kolyvagin,
http://www.ams.org/mathscinet-getitem?mr%3D1106906
そしてその他の人達の仕事と合わせて, Skinner と Zhang との共同研究
http://arxiv.org/abs/1407.1826
で驚くべき結果を導いている.
それは (高さで順序づけられた) \(\mathbb{Q}\) 上の全ての楕円曲線のうちの
少なくとも 66% が Birch Swinnerton-Dyer 予想にしたがうという結果だ.
http://goo.gl/9MJncq
以前は曲線の positive proportion が予想にしたがうことすら知られていなかった.
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何を言っているのかさっぱりわからない.
訳も正しいのかわからない.
大変困っている.
Positive proportion, この場合どう訳したものか.
それはそれとして, Birch Swinnerton-Dyer 予想は
リンク先の Wikipedia にもある通り,
ミレニアム問題の一角なので超がつくレベルの難問だ.
予想の定式化からして何を言っているのかわからない.
あと上で Kolyvagin が出てきたが,
これは Wiles による Fermat 予想の解決で使われたとかいう
Kolyvagin-Flach method の Kolyvagin だろうか.
http://goo.gl/w0dFfS
Wikipedia を見ていて, Wiles ももう 60 を越えているのか,
と時の流れを思いつつ, 下の方にこの Bhargava が学生だと
いう記述を見つけ, 感慨にふけった.
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予想の完全解決にはまだ道程はある.
特にランク 2 以上の少数の曲線に関してはまだ理解が進んでいない.
そして Bhargava 達の仕事で使われている Gross-Zagier,
Kolyvagin の理論は \(\mathbb{Q}\) 以外の体では使えない.
しかし少なくとも統計的な意味で予想は
射程圏内にあるという望みは与えている.
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最後の一文, 訳があっているのか非常に不安だ.
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