数学のゼミを DVD にするという新しい試みであるから,
この形式についての感想と DVD 自体の内容についての感想を分けて述べたいと思う.
【内容について】
本作は「反例をつくる」ということに注目した数学科 1, 2 年生程度の
「反例を作る」という事は少し数学をやっている人達の中では当たり前に行われている事である.
しかし, 数学書にはどのようなプロセスでその反例が考えられたのかは載っていないことが多い.
プロセスが見えやすいものもあれば,
「どうやったら思いつくんだよ! 」などと思ってしまうものも存在する.
そのような見えづらい反例を減らすのに必要なことが,
その問題の”背景”を考えてみることだということをこの DVD はサジェストしてくれる.
この点は良い勉強になった.
このような年長者の経験的な部分を学べる機会というのは非常に有益だと思う.
また, 数理物理が専門の方である事もあり,
超関数が物理からの要請によって生まれた数学的対象であるという話をされていた.
この話は聞いたことが無かったため新鮮だった.
【形式について】
実際のゼミや発表では, リアルタイムで内容が正確に把握できず,
かつ確認もできず進んでしまうことが存在する.
しかし, 一度動画を止めて定義等を自分でゆっくりと確認できるため,
きちんと話が理解できる層が広がっているのではと感じた.
そのため, 数学科の 1, 2 年生を想定した内容になっていると作中で述べていたが,
実際にはもう少し広い範囲が楽しめる内容になっていると思う.
しかし, 時間の制約というものが少しネックだとは感じた.
ある程度しっかりとした数学の議論をしようと思うと, 驚くほど時間がかかるものである.
これは, 実際の大学等の数学の講義を考えていただければ明らかだろう.
そのため, キッチリとした議論を学ぶのにはあまり向かないのかも知れないと感じた.
実際的には非常に局所的な話を掘り下げる, その分野を概観する等の内容がこの形式にはあってるのではと思う.
以上, 特に自分が強く感じた点について述べてみた.
蛇足であるが, 自分はこのような DVD がでたならば積極的に買っていきたいと思っている.
作者のように数学に対して愛情を持っている人は強く尊敬している.
そのような人が数学科内外にもっと増えていけば非常に喜ばしいことだと思う.
そのためには, 広い範囲の人が数学を楽しめる形式を整えることは重要だと思う.
そういう意味では DVD という形で数学を広めるこの試みは非常に意味のあるものだと思えた.
このような新たな試みには積極的に投資していきたい.