はじめに: 全体の大枠を掴もう/中高数学駆け込み寺 第一回

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目次

講座の目的: 微分方程式のシミュレーション

今回はイントロとして説明することがいくつかあります.
私が作っている他の講座と同じように,
この中高数学駆け込み寺では細かいことを詳しくやっていくよりも,
数学を勉強するモチベーションになるように数学の大きな姿をお見せしていきます.
で, 実際に何をするのかというと,
微分方程式のシミュレーションを通じて中高数学の大枠を掴んでいきます.
もっと具体的に言うと微分方程式のシミュレーションには中高でやる数学がほとんど全て出てきます.

  • この数学はこんなところでこういう風に使うのか!

使われているシーンを具体的に見てもらってモチベーションにしてもらおう,
そんな講座です.
この講座では文字計算には慣れていることを前提にしています.

微分方程式って何?

  • 微分方程式はどこでどんな風に使われているの?
  • この講座では具体的にどんなことをするの?

あなたが中高生なら微分は聞いたこともないかもしれません.
あなたが中高の数学の復習をしたいと思っている大人なら,
「自分にはまだ微分なんて早いんじゃ?」と思っているかもしれません.
メインの微分方程式が何だかわからないんじゃ読み進めるのはきついですよね?
というわけでまずは微分方程式の説明をします.

微分方程式は理工系の基礎です.
いわゆる自然法則は微分方程式で表現されることが多いのです.
これがどこで使われるかというと,
例えば洪水が起きたときの被害予測に使われます.
どんな規模で起きた洪水が市街地のどこまで進入してくるか?
こういうシミュレーションをテレビで見たことがないでしょうか.
このシミュレーションに使われているのが微分方程式です.

微分方程式は何に使うの?

他にも微分方程式はありとあらゆるところで使われています.
ゲームの CG を自然に見せるためにはまさに自然法則に則って風や水の動きを表現しないといけません.
だから微分方程式がその背後に隠れています.
天気予報はいまの気象条件から未来の様子を予測する必要があります.
この予測にも微分方程式を使っています.
機械を動かしていると熱くなることがありますね?
あまりにも熱くなりすぎると機械が暴走してしまうので熱を効率よく逃がす必要があります.
そのためには熱の流れを考えてその流体の動きをきちんと制御する必要があります.
ここでは熱の流れの微分方程式を考えてそれをシミュレーションします.
車を作るとき空気抵抗を調べるためにも流体力学が必要で,
シミュレーションも使ってモノづくりにも活かしています.
他にもいちいち挙げきれないくらい身の回りに微分方程式のシミュレーションを使っているモノがあります.

微分方程式自体をきちんと調べようと思うと大学の数学が必要です.
でもシミュレーションを中心に考えれば中高の数学でかなりいろいろなことがわかります.
わかるだけじゃなくて実際に微分方程式を解いて遊んでみることだってできます.
この自分でも遊べるところまで持っていけるのが大事じゃないかと思っていて.
それが微分方程式のシミュレーションを選んだ理由の 1 つです.

さて, ここまでで微分方程式が何で大事かはわかってもらえたでしょうか?
これをやれば数学をいろいろ遊び倒せそうと思ってもらえたら嬉しいです.
ちゃんとがんばれば自分でゲームを作ったりもできますしね.
次はもう少し数学的な内容に踏み込みましょう.

何はともあれ微分に関する話をやるわけです.
そして微分は高校でやる内容です.
あなたは微分に対して嫌な思い出を持っているかもしれません.
あなたは「中学レベルからやり直したいのにそんなの無理だ!」と思っているかもしれません.
もっと簡単なところからやってほしいと思っているかもしれません.

でもこの講座では中高数学の大枠を掴んでもらう講座です.
そして今回はこの講座の大枠を掴んでもらう講座です.
どうかもうしばらく辛抱して読み進めてください.

シミュレーションの実際

まず何をするのかを見てもらいたいので,
次のページを開いて 1 番下までスクロールしてください.
動画の再生ボタンがありますから動画を再生してみましょう.

これは 1 次元移流方程式のシミュレーション結果です.
プログラムを書いてコンピュータに計算させ,
その結果をアニメーションさせています.
移流方程式は微分方程式なのでそこで微分を使っています.

コンピュータは数学的に厳密に微分を計算できません.
極限を取れないからです.
そうかといって全く何もできないわけじゃなくて.
実は微分の定義にしたがって微分を近似して計算しています.
微分を近似すると実はただの引き算 (と割り算) になります.

さっきのページの上の方,
式 (2)-(4) を見てください.
こっちにも同じ式を書いておきますね.

\begin{align}
\frac{\partial u}{\partial x}
\approx
\frac{u(x+\Delta x)-u(x)}{\Delta x}.
\end{align}

\begin{align}
\frac{u_i^{n+1}-u_i^n}{\Delta t} + c \frac{u_i^n – u_{i-1}^n}{\Delta x}
=
0.
\end{align}

\begin{align}
u_i^{n+1}
=
u_i^n – c \frac{\Delta t}{\Delta x}(u_i^n-u_{i-1}^n). \label{math_refuge00001}
\end{align}

見ての通り加減乗除の四則演算しかしていません.
特に上のページの (4) にあたる式 \eqref{math_refuge00001} に注目してください.
実はこの式にしたがって計算した結果をアニメーションでお見せしたのがさっきの動画です.

細かいことは追々やっていくとして何をしているか大雑把にいうと,
ベクトルなり数列なりの計算です.
また式 \eqref{math_refuge00001} を見てください.
右上にある添字 $n$ に注目すれば左辺は $n+1$ で右辺は $n$ です.
これは数列の漸化式とも思えますね?

数列も高校でやる内容です.
あなたが中学生ならちんぷんかんぷんでしょう.
でも実際に高校でやることがモノづくりなり何なりで
役に立っていることが感じてもらえればとりあえず OK です.
ちなみに移流方程式は上でもちょっと出てきた流体力学で出てくる微分方程式です.

もっと言うなら文字式の計算がゴリゴリ出てきていることも注意した方がいいでしょうか?
文字式できないとこの計算全く追えないですからね.
細かいことを言い出すときりがないので,
いったん今回はこのくらいにしておきましょう.
まとめると今回は次のポイントを掴んでもらえば十分です.

今回のポイント

  • 微分方程式のシミュレーションをやっていく.
  • シミュレーションは実社会でいろいろな応用がある
  • 微分といっても近似を使うから結局は加減乗除しか使わない.
  • シミュレーションでは文字式の計算, ベクトル, 数列など中高の数学をバリバリ使っている.

今回くらいのレベルでもベクトルで言うと
100 次元ベクトルとかそういうレベルの計算が必要です.
手計算ではやってられないのでプログラムを書いて計算して,
さらにプログラムを書いて図にしたりアニメーションにしたりしています.
このプログラミングについてはどこまで深掘りするかは未定です.
要望が多いなら別にきちんとやろうかとも思っています.

今回お見せしたのは変数が 2 つある偏微分方程式でちょっと難しいです.
変数が 2 つあるとややこしいので次回以降,
しばらく変数が 1 つしかない常微分方程式というのを見ていく予定です.

最後にアンケートをお願いしています.
改善に繋げていきたいのでぜひコメントをお願いします.

では次回をお楽しみに!

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